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葉月ちゃんと壱也さん 2  作者: 藤城 瑞香
壱也さんに惚れるまで
2/5

まだ付き合ってもいませんからね。

長身の体によく似合う紺色のストライプのスーツ。皺一つない薄いブルーのシャツ。スーツよりも濃い紺色のネクタイには、シルバーのタイピン。黒い髪の毛をワックスで後ろに流し、整った眉毛。スッと伸びた鼻筋に薄いくちびる。肌も綺麗で清潔感があり。物腰の柔らかな言動。


「ちなみに俺は結構稼いでるから、もし専業主婦したかったら仕事も辞めていいよ。あ、子供は何人欲しい?」


見た目も経済力もパーフェクトなのに、性格が残念すぎる。


「俺、兄弟いなかったから、2人は欲しいけど、葉月ちゃんはどう?」



これ以上黙り込んでると、本当に婚姻届を持ってきかねないと思いニコリと笑う。


「わーすごい。当たり前のように私と結婚する前提で話してますね。」


「お金あって格好よくて優しいなんて、こんなお買い得な男なんてなかなかいないよ?」


「ははは。自分で言ってて痛くないですか?」


「ん?なにが?」


「もーいーです」


食べ終えたご飯のお皿を重ねて台所へ向かう。ちなみに母はこの間、私たちの会話をききながら「あら」「まぁまぁ」「うふふ」と微笑んでいる。


母の目には私が照れているように見えているんだろう。


「ぁ、もうそろそろおいとましようかな。葉月ちゃんの好きなドラマ始まっちゃうしね。」


「なんで知ってるんですか。」


「君のことならなんでもしってるよー。」


「え、こわい。」


明るく話してるけど、内容だけ聞いたらストーカーですけど?

ちなみにそのドラマが先週から始まった新番組であることに気づいたから更に怖い。


「そんな顔しなくても大丈夫だよ。ついさっき、お義母さんに聞いて知ったんだよ。『今日はドラマがあるから9時には帰ってくる』ってね。超能力みたいでビックリした?」


「ストーカーみたいでビックリしました。」


「あはは」


いや笑えないです。


壱也さんは終始笑顔のまま、母に軽く挨拶した後、じゃーまた明日ねーっと帰って行った。



ーーーーー

ーー





そういえば帰ってきた時に、家の前にあの高級車がなかったことに気づいて母にたずねると。


「お母さん今日ねパン粉買い忘れちゃったから、駅前に買い物行ったんだけど、偶然いっちゃん駅前のお花屋さんに居るとこ見ちゃってね!声かけたら、はーちゃんへのお花買うところだって言うじゃない?車は駅前のパーキングに置いてたみたいだけど、ちょっと離れてたからって、そのまま歩いてきちゃったのよー」と能天気な返事がくる。


「・・・お母さん、お願いだから次からは簡単に他人をうちに入れちゃダメだよ。」


「あら、いっちゃんは はーちゃんの婚約者だから他人じゃないわ!」


目をキラキラさせて話す母に、聞こえないように小さくため息をつく。


リビングのソファへ移動して、テレビをつけると、ちょうどオープニング曲がながはじめる。


高校生の青春ラブストーリーが描かれたドラマが始まった。



『おれが今度の試合で優勝したら、付き合ってくれる?』


爽やかなセリフにほほを染める女の子。



画面から少し離れたソファーで思う。



それに比べて、


『こんなお買い得な男なんてなかなかいないよ?』



顔はキラキラしてる、キラキラしてるけど、





うん、全然キラキラしてない。



鈴寺 睦月(すずでら むつき」

42歳

毎朝 高級車で家に来る胡散臭いイケメンの「俺たち将来結婚します」と言う発言を「まぁ素敵」の一言で娘の婚約者に認定する(壱也にとっては)素晴らしいく(葉月にとっては)迷惑なお母さん。


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