超ポジティブな男性はすきですか?いいえ、鬱陶しいだけです。
短編の続きです
大学から帰宅した私を、数日前にドライフラワーへと変化した紅い薔薇がお出迎えする。
「・・・。」
生花の寿命は短い。
あの人がくれた薔薇を少しでも長く愛でれるようにと母が気を使ってくれたのだが。こんなものあのポジティブスーツに見つかれば絶対調子に乗る。
「わぁ!ドライフラワー?!葉月ちゃん、気に入ってくれたんだ!じゃぁ今度はピンクの薔薇にしようかな!」
・・・うん。言いそう。
帰って早々に、玄関であの人のことを思い出してしまったことにハッとして、頭をブンブンと振ってると、リビングから母の「はーちゃん、帰ってきたのー?、おかえりー」っと弾んだ声した。
あれ、お母さんご機嫌だなぁ
「ただい「葉月ちゃん、おかえりー」
返事と同時にリビングからニョキっと表れたのは。
「・・・何で居るんですか壱也さん。」
ピンク色の薔薇を持って爽やかにお出迎えするその人。
自分の想像力が恐ろしい。
バサッ
「13時間ぶりだね、寂しかった?」
「気持ち悪い挨拶しないで下さい。いりません。持って帰ってください。」
「そろそろ前の薔薇がダメになっちゃう頃かなと思って今度はピンクにしてみたけど、どう?綺麗でしょ?」
「ソウデスネ。」
これ以上話ても無駄だと悟り、げっそりしているとリビングのドアを開け「どうぞ」っと促す壱也さん。ここは私の家ですけど。
さらにはリビングへ入ると、何故か当たり前のように椅子を引きスタンバる壱也さん。まぁ素敵っ!っとか言わないでお母さん。
「いちいち執事みたいなことしないでください。」
「やだなー、執事だなんて。こんなこと葉月ちゃんにしかしないよ」
「私にもしないでくだい」
壱也さんの引いた椅子をスルーし洗面台へ。
戻ってくると「はい、葉月ちゃん。」
同じ位置から微動だにせず椅子を引いたまま待ってる壱也さん。
・・・・。
大人しく座った私に母が「いいわね、はーちゃん愛されてるね。いっちゃんはいい旦那さんになるわーふふふ。」微笑みながら夕ご飯を出してくれる。壱也さんが調子乗るからお母さんは喋らないで。と言いたいけど、この言葉にも母のことだから「もー照れちゃって」とか言いそう。ついでに壱也が「葉月ちゃん照れてるの?嬉しい!」とかいって目を輝かせそう・・・。
想像するだけで疲れる。すべてをスルーするしかないけど、
「ありがと。もーおなかぺこぺこで・・って、いつまでそこに立ってるんです?」
「いや、せっかく葉月ちゃんが褒めてくれたからね。執事らしく佇んでみようかと思ってね。」
「そうですか、迷惑です。食べにくいのでやめて下さい。」
さすがに真後ろに立たれると食べづらいし、そもそも褒めてない。
わたしの言葉にクスっと微笑み、ナチュラルに向かいへ座る。
お味噌汁に手を伸ばしたところで、ふと、壱也さんがスーツ姿だと思い出す。仕事終わりに直接ここに来た?
「壱也さんご飯は?」
「もうお義母さんと頂いたよ。そのコロッケも美味しかったです。」
「まぁ!」
その漢字でお母さん言うの止めて。そしてお母さんも喜ばないで。
「俺は7時には仕事終わらせたんだけど、葉月ちゃんが何時に帰ってくるかわからないって聞いたからね、まさか9時まで帰ってこないなんて思わなくて心配したよ。お疲れ様。」
「誰情報ですかそれ。」
「本当は大学に迎えに行きたいんだけどね、俺行くって言ったら記録とか途中で止めて帰ってきちゃうでしょ?葉月ちゃん、優しいからね。」
「・・・。」
「そんなところも好きだよ。」
無表情で黙々とご飯を食べる私と対照的に微笑みを止めない壱也さん。
・・・・。
じーーーっ。
「なんですか?」
「葉月ちゃんが看護師さんになって、働いたら。俺もちゃんとご飯作るからね。って思ってね。ほら、看護師って、夜勤もあるでしょ?家事は協力しなきゃね。」
「・・・」
アラサー男子、ハート強過ぎる。