戦闘編
今回、文字数は一万五千文字ほどです!!
時間がある時にお読みください!
俺は霊夢の部屋で一夜を過ごし、翌朝、男部屋に向かう。
「ほーら! おーきーろー!! 朝だぞー!!」
「うぅ……まだ眠いよ……」
もう少し寝たいと、そう駄々を捏ねる神居やその他諸々を起こそうとするが……はてさて、どうするかな。
「早く起きねえと、お前ら朝飯抜きで戦うことになるぞー!?」
俺がそういった途端、何人かはハッと目がさめる。戦闘狂共め……まあ、俺も人のことは言えないけどな。
「はぁ……起きたら昨日の宴会場の所まで来いよ」
俺は何人かにそう伝えておくと、宴会場に一足先に足を運ぶ。
そこに残っていたのは……酔いつぶれてそのまま寝てしまった奴らや、食い散らかされたゴミだった。
「……掃除するか」
俺は能力でそのゴミを全て消滅させると、木刀を持って外に出……ようとした所で、布団を畳んだ女達と遭遇した。
これから朝食を作るところみたいだな。
「おはよう、早いなお前ら」
「霊斗様こそ、早いですね」
「ああ、まあ、今日はな」
俺は霊愛の返事に苦笑いしながら返し、そのまま玄関から外に出る。
「こんな朝早くから素振りか?」
「おお、黑狂か。お前もするか?」
「いや……軽く、模擬戦でもしてくれないか?」
「お、良いだろう。弾幕なし、能力無しでやるか」
俺はそう言って、真剣を取り出して構えると、黑狂は腰に刺さっている8本の剣の内の一本に手をかけ、居合切りの姿勢をとる。
かなり重い斬撃……! 俺は居合切りに対して、両手で剣をしっかりと支えて対抗し、そのまま押し返す。
俺は黑狂の居合切りを龍神王武で受け切ると、黑狂は少し離れて両手に3本づつ、指の間に剣を持った。
「六刀流……ゲームの政宗のアレか」
ていうか……六刀流って、どう考えても使いづらいだろう。
俺は黑狂の六刀流にツッコミを入れながら、剣を横薙ぎに振るい、全ての刀を落とす。
六刀流は刀の本来の使い方というよりは、爪状の武器と言った方が近そうだ。
ていうか、これだったら絶対に爪武器を使った方が効率が良い。
俺は残った二本の黒刀を振るう黑狂の攻撃を受け流し、避けながら黑狂の体を蹴り上げる。黑狂はそれをバックステップでかわすが、そのまま俺はかかと落とし……と見せかけ、逆足で回し蹴りをする。
振り上げた方の足に気を取られていた黑狂は回し蹴りをモロに受け、吹き飛んだ。
「やっべ……黑狂、大丈夫か?」
「……ああ。自分は無事だ。貴殿こそ、あんな無理な動きをして脚を痛めていないのか?」
「あの程度、何ともねぇよ。いっつもアレ以上の無理をしてるからな」
俺は座り込んでいる黑狂に手を伸ばす。
「……そろそろ行こうぜ」
「……ああ、そうだな」
黑狂は、その手を握り返した。
◇◆◇◆◇
「……いただきます」
宴会場にて、俺たちはそう言って、白米、お味噌汁、焼き鮭、おひたしのおかか和えという、『ザ・日本の朝食』とでも言わんばかりのメニューを口に運ぶ。
「どうかしら……?」
「ああ、すっげえ美味い」
「ふふ、良かったわ」
俺の答えに、霊夢は満足げに頷いた。
朝食を食べ終えた者から、昨日の闘技場へと向かっていった。前もって朝食の後は戦う、と伝達済みだが……せっかちな奴らめ。もう少し、味わって食えばいい物を……。
俺は食事を食べ終えると、そのまま空になった食器を能力で全て洗い、現代から買ってきた乾燥機に入れておく。
「霊夢、行こう」
「ええ、そうね」
俺の言葉に、霊夢は微笑みながら返す。
俺は博麗神社の鍵を能力で閉め、闘技場へと転移した。
◇◆◇◆◇
……さて、観客が少ないな……。
俺は能力で転移を操り、この幻想郷の住民や様々な世界から縁のある人々を観客席に召喚する。
「おお……!」
何人かが感嘆の声を上げるが、俺はそれを無視し、能力で会場の全員に伝える。
「みんな! 今日は、たくさんの猛者が参戦してくれた!! それを大いに喜び、盛り上がるぞ!!
戦争の開始まで、3!!」
「2!!」
俺が3本の指を立てた手を掲げると、観客たちは合わせて2本指を立てた手を掲げる。
「1!!」
「「スタートォォォォォ!!!」」
俺と観客たちの声が重なり、大音響となる。
その激しい空気の振動の中、1人の少女が動き出した。
「早速ですが、しっかり避け切ってくださいね。
弾幕『二式・8.8センチガトリング砲』」
少女は、巨大な本体と左右に10の砲門を持つガトリング砲を呼び出した。
少女が腕を横に振った瞬間、それは瞬間120発の狂気とも取れる弾を発射した。
「おいおい、呼白ちゃん。そんなにやったら、盛り上がらないだろう?」
「まったくですね」
そう誰かがガトリング砲を出現させた呼白に言った瞬間、『古明地 麗華』、『風見 幽透』はまったく同じ物を出現させ、弾幕を相殺させていく。
能力を解析すると、麗華は写し取る程度の能力、幽透は能力を司る程度の能力だった。
要するに、コピー能力なわけだ。
コピー能力。この場では、それは非常に有効な武器になるだろう。相手と同じ能力を使えるのは、それだけで脅威だ。だが……それだけで戦えるほど、この戦争は甘くない。その点で言えば、呼白達、神谷家ほど戦いづらい相手も居ないな。
幽透の能力は、相手の能力を見ること、理解することでその能力を使うことができる。弱点としては、理解する前に殺られてしまえば、能力の発動もクソもない所か。
麗華の能力はそのまんま。相手の技術や技を写し取り、自分の物として使うことができる能力。
弱点は、それを見ない限りは使うことができないことか。自分の能力を強化する技も、おそらくだが写し取ることはできないだろうな。
また、コピー能力を持っていない選手達も、それぞれの方法で弾幕を回避していた。
俺や桜、黑狂といった、何らかの術に自信がある奴は剣術で自分に向かってくる全ての弾丸を逸らし、受け流す。
仮面を外したシルクと、蒼いオーラを纏った磔、龍牙、さらには零士はその圧倒的スピードで、弾幕の射程範囲から逃げ続ける。
優一は「八式『無限結界』」と唱え、結界を使用して防いでいた。
海斗は「極符『全てを無視する体』」と唱え、あらゆる弾丸が受け流される……というか、通り抜ける。
茜は自分の周囲の重力を無効化し、自分の周囲のあらゆる物の動きが緩やかになる。
幻真とアルマは優一の結界の背後で、便乗していた。
このままだとジリ貧になるなとそう思った時、一瞬で空間が揺らぎ、ガトリング砲に君臨していた呼白が殴り飛ばされる。
そこには、弾丸を全て受け切った双刃の姿があった。
双刃の能力は『不死身である程度の能力』。双刃自身は霊力を持っておらず、あるのは異常な近接戦闘力と再生力のみ。
つまりは、あの弾幕を回避もせず、全て受けながら呼白の元まで向かったんだろう。
双刃の異常なスピードであれば、それも可能だ。
「僕は殺す、お前を殺す」
双刃がそう言うと同時に、呼白は一瞬で俺の後ろに転移してきた。
「ハァ……ハァ……あの弾幕をものともしないなんて、なんて異常なスピード……」
そう言うと同時に、呼白は霊力を解放した。
「この場にいる全員は、かなりの強さを持ってるみたいですね……わかった、本気で相手をするわ」
その異常な量の霊力を解放したことにより、幻真とアルマは吹き飛んで行った。
あいつら、何しに来たんだ……。
呼白が少し動くたびに、霊力の脈動を感じ取る。
観客の中には、失神する者も出てきた。
流石、神谷家の娘と言った所か……。
しかし、その霊力の波動は一瞬でせき止められた。
「悪いけど、俺……アンタとは、相性が良さそうだ」
そう言った龍牙は、本来呼白に流れていく霊力を体内に取り込み始めた。
呼白の能力だが……鑑定が効かないからおそらくだが、力を集めるタイプの能力だ。
その力の流れであれば、俺自身が丸ごと飲み込まれる危険性があるため、俺ですらも簡単には手が出せない。
もちろん、呼白には神谷家の例のごとく、能力が効かないことはわかりきっているし。
だが。龍牙は違う。力を動かす程度の能力であれば、呼白に流れていく霊力に干渉し、呼白のいない場所に流すこともできるからだ。
霊力は呼白の内部で生成されるわけではない。
それはつまり、力の流れを操る龍牙にとって、呼白の能力を『使えなくする』状況を作れる、格好の餌食というわけだ。
さらに、あいつには『無に変換する程度の能力』も備わっている。
呼白の周囲で龍牙の支配下に置かれた霊力は、無に変換されるか、龍牙自身に取り込まれる。まあ、ほとんど無に変換されるだろうがな。
霊力、妖力を無に変換するのに、代償はほとんど必要ないともあいつは過去に言っていたしな。
だが、それで勝てるかというと、また話は変わってくるだろう。
無限のエネルギーを封じたからといって、呼白にはまだ数え切れないほどの武器が眠っている。
「あいつは、僕が、殺す」
そこで龍牙と共闘するのが、双刃だ。
双刃は、相手の力など関係なく、殺すことに特化された化け物だ。
死なないのはどちらも一緒だろうが、そもそも霊力を持っていない双刃と呼白とでは、戦闘スタイルが180度変わってくる。
双刃が近接戦闘で呼白を追い込み、龍牙は霊力を弾き出すことのみに専念できる。
「殺すっ……! 殺す殺す殺す殺す!!!」
「ふふっ……こんなの初めてっ!! 良いわ! もっと楽しませて!!」
「お、俺の身にもなれ……!」
ご愁傷様、龍牙。戦闘狂2人に巻き込まれるなんて、哀れ以外の何者でもない。
龍牙は呼白へと流れていく霊力を弾きながら、呼白から放たれる遠距離攻撃を双刃に当たる前に動かす。
それでも、双刃の左腕が呼白の創り出した剣によって引き裂かれた。
双刃の右腕によって、呼白の顔面が腫れあがり、吹き飛ばされる。
それと同時に、双方が欠損部位を回復し、再び武力の衝突が起こる。
双刃の回し蹴りを右腕で受けた呼白は右腕が弾けたのも気にせず、左腕で双刃の腹部を殴りつける。
貫手で、穴の空いた双刃の腹に、呼白の手が通過する。その瞬間、双刃の腹は再生し、呼白をとらえた。
「……なんですって!!」
「聖炎『不死なる肉体の発火』」
双刃から発火した炎は、一瞬で呼白まで黒焦げにした。
「隙あり!! 『神威』」
「おいおい」
幽透が俺の背後からバチバチと真空電流が発生するほどの超スピードで殴りつけてくるが、俺はそれを右手で弾く。
「せっかく観戦してるんだから、邪魔するなよ」
「なっ……! 『デュアルクリムゾン』!!」
俺は幽透の乱打を全て捌き、隙ができた幽透に、霊力を込めた指を銃の形にして向ける。
「発射」
俺の指から、霊力の塊が発射された。それは巨大な閃光となって、すぐそばの幽透に向かっていく。
「『イージスの盾』!!」
幽透はそれを間一髪で防御スペルを使って防ぐが、その間に俺は龍神王武を取り出し、幽透を切り裂こうとしたところで、狙われていることに気づき、背後からの斬撃を返す。
「二刀一閃『閃く飛翔斬撃』」
黑狂から放たれた斬撃を弾いた瞬間、幽透が離脱しながら「『エレメンタルバースト』!」と叫んだ。
俺は幽透から放たれたその魔砲を空間の穴に閉じ込め、幽透の真上に開き、発射する。
「流石だね……!」
幽透はそう言いながら後退し、真上からの自分の魔砲を避けると「『エクストリームオーラ』」と宣言する。
すると、幽透を光、闇、無属性の三つのオーラが包み込み、さらに幽透の背中には光と闇属性の翼が生えた。
黑狂と幽透が俺に正面と背後から迫るが、俺はそれを怒りを爆発させたスペルで抵抗する。
「ああ、このスペルを使うのはお前らが初めてだな。褒めてやる。お前らは、第一段階を突破した。気をつけろよ、この携帯は制御が難しいから」
俺はそう言って、スペルカードを宣言し、同時に我が身を焦がさんばかりの怒気で包み込む。
「絶望『阿修羅降臨』」
俺は3面6手の鬼神、阿修羅へと姿を変える。
1面2手が、幽透を抑え込み、関節技を決めた。
1面2手が、黑狂の体を貫く。
残りの1面2手で、阿修羅のスペルカードを解く。
「……やっべ。やらかしちった」
俺は2人を再生させ、謝罪を述べる。
「すまなかったな」
「……貴殿はそんな暇があるのか?」
俺はそう言われた瞬間、背後から高く跳躍するし、迫り来る零士のかかと落としを右手で弾き飛ばす。
「さて、3対1ともなれば……勝機、あるよな?」
「もちろんだ。害をもたらす俺が居る。期待しててもいい」
「まあ、これだけ実力者が集まれば……勝てると思うが……」
「へーぇ。良いね、やってやろうじゃんか」
俺はそう言って、3人を挑発する。こいつらだって、零達に比べれば屁みたいなもんだ。
「じゃ、お構いなく」
そう言って、殴りかかってきた幽透の腕をかわし、さらに幽透の眼前に拳を突き出し、自らの勢いで幽透は俺の拳に衝突する。
「ぐ……!」
「はあっ!!」
黑狂が横薙ぎに俺に二本の黒刀を振るってきたが、俺はそれを左手に持った龍神王武で受ける。
「ちょっと、試してみたい奴が居るんだがなぁ」
俺はそう言いながら、右足の後ろ回し蹴りをがら空きの腹部に打ち込む。
「ぐふっ……!」
「まだまだァ!!」
零士のビームソードを俺は本物のアイギスの盾を召喚して防ぎ、さらにアイギスの盾の機能である『石化』によって零士は体が石化する光を浴びそうになる。
零士がそれを慌てて上空に跳んで避けると、俺の拳を受けたはずの幽透が俺の首をガッシリ固める。
黑狂がアイギスの盾を持つ俺の右手を黒刀で封じた。
「今だ零士!!」
「おう!!」
その声と共に、零士は空中から高速で突進する。
「やったか!?」
「まだまだ……甘いな、お前ら」
俺は立ち上がった零士の鳩尾を殴り、怯んだ所に霊弾を撃ち込み……零士は頭を零弾に貫かれ、倒れた。
「な……! どうして……!」
「く……そ……!」
おお、まだしゃべれるのか、すげえな。
俺はそう思いつつ、幽透の問いに答える。
「簡単だ。ぶつかる直前に転移を操って俺の座標を変えた、ただそれだけだ。お前らはよく頑張ったよ」
俺はそう言い、俺の本来のスペルを使用する。
「夢幻『霊時空』」
幽透と零士、黑狂は俺が接続した空間から放たれる最強弾幕に、なすすべなく貫かれた。
「さて……次は、と」
俺がそう言った瞬間、炎を纏った巨大な龍と、同じく巨大な真っ赤な目をした悪魔がぶつかり合ったのが視認できた。
悪魔の体を龍が縛り上げたり、炎を纏って突進する感じだな。
悪魔も、|蛇をハンティングする人のように、掴みかかろうと躍起になるがイマイチ成果は出ていないようだった。
二体から発せられる力からすると……これは幻真とアルマが召喚したのか。
「神符『七方神炎龍』」
そうこうしているうちに、龍が何匹にも増え、悪魔を包み込んで……悪魔は消滅した。
「ハァ……ハァ……」
あの龍達、厄介だな。
俺は龍神王武を用いて、龍たちを全部一刀両断する。
「な……!」
「幻真、恨みはないが覚悟してもらうぞ!!」
俺はそう言い、幻真の放つ炎のような弾幕を全て受け流しながら、幻真の背後に移動する。
俺が剣を鞘に収めると同時に、斬撃で幻真は音もなく倒れた。
「……さて」
空中でふわふわと漂う、白い狐のような少女を見つめる。
少女もまた、こちらを見つめ返した。
◇◆◇◆◇
〜磔視点〜
俺、白谷 磔は妖忌にもらった刀、真楼剣の切っ先を1人の青年に向ける。
「まあ、アンタが強いのは知ってる。だから、俺も本気でやらせてもらうぜ」
「良いだろう。……全力でこい」
「もちろんだ! 想符『アクセルモード4』」
蒼いオーラを纏い、俺は全能神にも負けない力で、俺は青年、大丈 優一に向かう。
全てを切る刀、真楼剣であの霊斗ですらも賞賛する実力者に、どれほど通用するのか試してみたい。
まあ、そんな気持ちが強かったわけだが。
俺の剣は、優一の剣で防がれた。
剣技は互いに拮抗し、弾き合い、せめぎ合い、相殺されていく。
最初は本当に拮抗しているのかと思ったが、実際には優一が手加減をしているということに気がついた。
俺はそれが、バカにされているようで腹が立ち、さらに剣が荒くなった。
その結果、勝負は一瞬でついた。
同じ様な剣を使って、同じような力を持ってして、ここまで差がある物なのか。
優一は俺の首元に黒い刀を突きつけたまま、俺に話しかけてきた。
「君は……まだまだ伸び代がある。誰かから戦闘技術を習うことをオススメするよ」
「うるせぇ!! 蹴符『ディフージョンシェル』」
「ぐっ……!?」
俺は怒気に紛れて、スペルを放つ。
俺の蹴り放った衝撃波は優一を軽く地面に突き落とした。
地面に倒れた優一に向かって、俺はスペルを放つ。
「想符『ファイナルブラスター』!!」
俺の両手から放たれるその一撃は、5秒間の反動と引き換えに、圧倒的な破壊力を誇る。
「八式『無限結界』」
しかし、優一は地面に倒れた状態のまま、冷静に結界を張って対処した。
「や……やば……」
「ここまで出させる奴は、中々居ないよ。ただし……少しだけ、君は結果を焦りすぎた。
八式奥義『エターナル・ブレード』」
優一はそう言って、八色に輝き始めた黒剣を構えた。……危ねぇ! 動ける!!
「幻符『イマジネーションブレード』!!」
俺は斬りかかる優一の剣を全ての効果を消す効果のあるスペルで上書きし、普通の剣へと戻す。
「……流石、ここまで俺に力を出させたことはあるね。けど……悪いが、君はここまでだ。二式奥義『海蛇』」
優一はそう言った途端、俺は背後から巨大な海竜に締め上げられる。
「う……ぐぅ……」
「一式奥義『流星群』」
優一がそう宣言した途端に、俺の周囲に100個ほどの結界で作られた弾が現れ、俺に向かって一気に飛んできた。
俺は、優一の弾幕によって大爆発に巻き込まれ……敗北した。
◇◆◇◆◇
〜神居視点〜
俺、神居は今、真正面に立つ猛者と向き合っていた。
彼の名は博麗 海斗。霊斗の教えを受けたこともあるという、博麗一族の出身だ。
だが、博麗神社に住む者として、何故だかコイツとは決着をつけなければならないと感じた。
海斗もまた、同じことを考えているのか、深刻そうな顔つきでこちらを見ていた。
「ハアッ!!」
「セイッ!!」
俺の炎を吹く剣、大烏丸と海斗が何処からか取り出した、真紅の槍がぶつかる。
さらに海斗は真紅の槍をこちらに突き出すが、俺はそれを避け、スペルを放つ。
「不知火『不死鳥』」
俺の大烏丸から放たれた炎は、そのまま鳥の形状となって海斗へと向かっていく。
「ぐ……! 負けてたまるかァ!! 魔装『ロンギヌス-鎧-』!!」
海斗は、それらを真紅の鎧を纏って弾き飛ばすと、俺はさらにスペルを放つ。
「百花繚乱『乱滅』」
俺の無数の強力な斬撃が、海斗に迫る。
海斗は、それらを全て結界や彼自身の技術で避けると、今度はこちらに攻めに入ってきた。
俺はそれを大烏丸と大狐丸の二本で捌き切ろうとするが、気づいたら小さな蟻地獄に触れていた。
それと同時に、力が抜けていく。
「な……! 何をした……!?」
「渦符『素敵な蟻地獄』」
海斗はそう言ったが……力が、入らねぇ……。
「ラストスペル! 極回『全てを突破する回転』」
海斗はそう言うと、力が抜けて動けない俺に対し、まるで竜巻のような回転力を持つ弾幕を俺に解き放ち……俺は、回転によって倒れた。
◇◆◇◆◇
〜霊斗視点〜
俺が白い狐のような少女、桜に向かって飛翔しようとすると、それと同時に横から終夜が飛び込んでくる。
「貰った!!」
終夜はそう言うと同時に魔力を持った剣を振りかぶるが、それは1人の少女と白色の剣に防がれる。
「アンタ……悪魔ね。それにしても……穢らわしい魔力だこと」
「そっちこそ、天使なんて種族だけにあやかって聖人気取りですかぁ? お前らだって、心のうちは俺たちや普通の人間と同じでしょう、ねぇ?」
「あら、わかってるじゃない」
終夜の挑発に静かに返した少女……茜は、白く光る剣の切っ先を終夜に向けた。
終夜がダーインスレイヴを振るうと同時に、茜は白銀に光る剣、春夏秋冬の能力を操る。
地面から生えた草木を巨大化させ、終夜の四肢を捉える。
「なっ!? く……そぉ!!」
終夜はそう言って、体中に纏わりついた草をぶちぶちと千切り、振り解く。
「剣技その壱『世界の切れ目』」
終夜はそう言ってダーインスレイヴを振るうと、そこにはスキマのような不思議な空間が出来上がる。
茜はそれを無視して、真っ直ぐに終夜へと向かっていった。
高く跳躍し、上からの一撃。
終夜はそれをダーインスレイヴで受けると、そのまま半身になって茜の攻撃をかわし、ダーインスレイヴで横薙ぎに斬りかかる。
茜はそれを受けると、その途端に下から上に向けての突風が巻き起こり、それは竜巻となって終夜を攻撃する。
「空なら私の場所よ!!」
茜はそう言って、6枚の羽を生やし、目が赤く光る。本気の証だ。
茜は圧倒的なスピードで翔び立つと、春夏秋冬で終夜を通りざまに斬りつける。
さらにそれを色々な角度から何度も繰り返し、終夜は最終的に、茜の膝蹴りによって地面に墜落する。
「ゲホゲホッ」
終夜は咳き込み、吐血するが、それと同時に大量の弾幕を放出した。
それは滞空している茜に向かっていくが、茜はそれを圧倒的なスピードでかわし、春夏秋冬を振るう。
ダーインスレイヴが弾かれた、その途端。
一筋の鮮血が茜から流れた。
「っ……!」
「誰が剣は1本だって言った?」
終夜の手元には、ダーインスレイヴではない短剣が握り締められていた。
その刃には、血がべっとりと付着し、その短剣がさっきまで刺さっていたことを示している。
「さぁ……そろそろ死のうか。魔砲『アルティメイトデーモンアタッチメント・シルバーナイフキャノン・ラストシューティングレイ』」
終夜はそう言って、魔力を充電する。
茜はその隙を突いて「剣技『枝垂桜』」と唱えながらどこからか取り出した桜の紋様の入った刀を振るう。
すると、桜型の弾幕が終夜の頭上に降り注ぐ。
「弾膜『タッチ・ザ・ハンド』」
終夜はそれを、全身にエネルギーを纏うことで相殺し、魔砲を放とうとしたその時、終夜の足元がマグマとなって崩れ落ちた。
さらに、巨大な氷の塊が終夜に向かって落ちる。
「なにっ!?」
「別にアンタ程度……スペルを使わなくなって倒せるのよ」
茜がそう言うと同時に、巨大な氷の塊は終夜に激突し、終夜はそのままマグマへと飲み込まれていった。
◇◆◇◆◇
〜???視点〜
「あら? 霊奈さん、どうしたんですか?」
「ふふ……実はね……」
霊夢さんの娘である霊奈さんはそう言って、私にチケットのような物を見せる。
私の名前は『魂魄 妖緋』。魂魄 妖夢の娘だ。
普段は西行寺家で幽々子様に仕えながら、剣の修行をしている。
そして、霊奈さんは霊夢さんと霊斗さんの娘で、私より2つ歳上の女性。
お祓い棒から成る光の剣を使った剣術と、遠距離から放つ追跡能力の高い強力な霊弾で、戦闘に関しては霊斗様抜きで右に出る者は居ない、天才巫女。
まあ、一方で巫女としての仕事はダメダメらしいけれど……。
「霊斗様に、参戦することができるってチケットをもらったのよ!! 娘には甘いんだから、霊王って二つ名なんて霞んで見えるわよ。さ、行くわよ!」
「えぇ!? 私もですか!?」
「当たり前じゃない。何のためにアンタにこれ見せたと思ってんのよ」
霊奈さんはそう言うと、観客席を守る結界にさっきのチケットを貼り付け、結界に穴を開ける。
「それとも、アンタ来ないわけ? 私はそれでもいいけど」
「いや! いきます! 行きますよ!!」
私はそう言って、穴を潜り抜ける。
「……新しい参戦者ですか? 人が減ってきた今来るなんて、よっぽど腕に自信がないんでしょうね」
「は? 何言ってんのよ!! そんなわけないじゃない!!」
いや、霊奈さん、今のは挑発でしょう。そんなこと、私にもわかる。
確か、この方は……古明地 麗華さん、だったかしら。
「あらあら、じゃあ、試してみる?」
霊奈さんは麗華さんが言い終わらないうちに、蹴りかかった。
麗華さんはそれを受け流し、すれ違いざまに霊奈さんの顔面を殴った。
「あなた……霊斗さんの娘ですね。霊斗さんの技術は、もうコピーさせていただいてます」
「煩い!!」
霊奈さんは麗華さんに向けてそう言うと、霊奈さんから距離をとった。
確かに、今日は霊斗様は自分が霊弾を放つことはなかった。
これなら、手出しできないはず……。そう思っていると、麗華さんは「時符『流るる時を見し時何を思わん』」とスペルを宣言した。
すると、霊奈さんの周囲をたくさんの弾幕が回転しながら、霊奈さんに迫る。
霊奈さんは上に逃れようとするが、霊弾の回転は霊奈さんとまったく同じ動きをした。
「チッ……」
霊奈さんは舌打ちをすると、スペルカードを掲げた。
「霊符『夢想流落周天』」
これは霊奈さんの周囲の障害物を、回りながら流れ落ちる弾幕でかき消す技だ。
それによって麗華さんの放った弾幕はかき消され、さらに役目を終えた霊奈さんの弾幕は麗華さんへと向かっていく。
麗華さんはそれを全て撃ち落とすと「幻想『百花繚乱花吹雪』」と宣言した。
すると、霊奈さんの周囲に色とりどりの妖弾を出現させ、それらが爆散すると小さなたくさんの弾幕が霊奈さんに襲いかかる。
「ふぅ……仕方ないわ。
真祖返り『博麗の血の根源』」
私は、過去に霊斗さんと龍牙様が話していたことを思い出した。曰く、霊奈さんには博麗の巫女としての才能、資質は0に等しい。しかし、龍神としての資質は誰よりも高いと。
◇◆◇◆◇
〜霊奈視点〜
私はそう唱え、私の中にある全細胞、全遺伝子を活性化させ、初代博麗の力を呼び覚ます。
初代博麗、博麗 霊龍。
彼は同時に、世界に代々君臨する、龍神の初代でもあったと聞く。
代々と言っても、今は2代目の龍牙さんだけど。
私の中には、初代様の血が強く残っているらしい。
この技は、今までの修行の中で、霊斗様がそんな私に教えてくださった数少ない技の1つ。
他の技は、霊夢様に教えてもらった。
霊斗様が霊龍様を打ち破った時はもう随分と年を取っていて、能力の使用もままならない状態だったらしいけれど、私のこの技は全盛期の霊龍様の力を使うことができる。
霊龍様の圧倒的な身体能力と、異常な貯蓄量の霊力、そして強力な能力を、私は全て引き出すことができる。
霊龍様の能力、『転移させる程度の能力』を。
この技を使い、私は腕に霊龍様の武器であった、金色の龍を模した小手を装着する。
龍人族の圧倒的なパワー、小手から放たれる霊力波。
それらを用いて、麗華に襲いかかる。
私を馬鹿にしたこと、後悔させてやるわ!!
霊力波は麗華へとまっすぐに向かっていく。
「くっ!」
麗華はそれを横に跳んで避ける。
私はそこを、長く伸びた尾で捕らえ、ラッシュを叩き込む。
「三連霊装拳!!」
それを顔面に受けた麗華は、崩れ落ちる……と見せかけ、地面を転がって立ち上がり、スペルカードを宣言した。
「『光の矢』」
そう言い放たれると同時に、私の頭上に大量の妖力でできた矢が出現する。
「あらら……これはヤバいわね」
「斬符『全てを断つ刀』」
私が忘れかけていたその時、光の矢は全て1つの斬撃にかき消された。
「ごめーん、すっかり忘れてたわ、妖緋」
「全くですよ、もう! さて……麗華さん、サヨナラです」
妖緋はそう言うと、緋色に輝く髪をたなびかせながら、スペルを宣言した。
「剣符『半霊剣』」
妖緋はそう言うと、妖緋の刀から白く輝く斬撃が放たれ、麗華を貫いた。
◇◆◇◆◇
〜霊愛視点〜
「さて……」
そう言って狙撃銃を構えた青年、シルクさんに対し、私は霊弾を出現させ、発射する。
「あいたぁ!?」
「早く逃げないと、ずっとこのまんまですよー?」
私はそう言って、弾幕の数をさらに増やす。
ここで手を緩めてはダメだ。仮面を外されてしまう。
そうなったら、私はこの人には到底敵わない。
だから、『外される前に』決着をつける。
……というか、一方的な蹂躙になりそう(もうなってる)けど、気にしたら負けだ。
「ちょっ、やめっ! タンマっ!!」
ここで止めたら、どうなるか分かったもんじゃない。
私は霊力が尽きるまで、ひたすらシルクさんを撃ち続けた。
いつシルクさんが気絶したのかは、よく分からない。
◇◆◇◆◇
俺は桜へと切っ先を向ける。
桜もニコリと微笑んだ。
開戦の合図は、それだけでよかった。
俺が霊神剣を装備すると同時に、桜も結界で作られた桜色の剣を手に持つ。
「陰陽『陰陽刀〜開花〜』」
桜色の剣から放たれる弾幕は、周囲の色を塗りつぶすほどに濃いものであった。
俺はそれを、霊神剣から放たれる弾幕を用いて相殺させると、一気に近寄り、接近戦へと持ち込む。
桜は術を操る能力でそれを全て巨大な太刀らしき剣で捌くが、さらに霊神剣から放たれる弾幕が周囲にばら撒かれることによって、剣術では賄いきれないほどの弾幕と俺の剣を相手にすることになる。
桜は不利を悟ったのか、俺から距離を取ろうとする。
「夢幻『霊時空』」
俺は、桜の去り際に別空間の穴をつなげ、そこに、詰まっている俺の霊弾がガトリングのように発射される。
桜はそれを結界術を用いることで防ぎ、さらに12個の宝玉を解き放った。
「桜符『十二神将の儀式』」
その12個の宝玉は、それぞれが爆散して弾幕を放った。
俺はそれを属性を持ったクナイの内、纏めてある8本を地面に叩きつける。
そこから、異常な成長速度を誇る炎と雷を纏った蔦が生え、その周囲にあった6つの宝玉を破壊した。
水のクナイはその水圧で近くにあった他の3つの宝玉を蔦ごと押し流す。
さらに、眩い閃光を桜が防ごうと目を閉じた所で、最後の闇のクナイが発動した。
それは、全てを吸収し、破壊するブラックホール。
桜はそれに抗いきれず、飲み込まれた……が。
「そうだよな、そんな簡単にはいかないよな」
ブラックホールと共に消滅した桜だが、元々ブラックホールがあった場所に、舞い戻っていた。
さらに、地面から一瞬でマグマが噴き出し、俺はそれに飲み込まれる。
まあ、そんなのは俺が霊力を解放することで何とかなるんだがな。
マグマを吹き飛ばすと、その瞬間、俺の足元から強大な霊力が発射される。
「ふふ……渾身の一撃よ。マグマを霊力で吹き飛ばした所で、その霊力はさっきの弾幕から形成される魔法陣によって、私の武器となる」
俺は足元から発射された霊力をアイギスの盾を召喚することで全て防ぎきり、さらにスペルを展開する。
「そろそろ、本気で行くか。希望『霊神王』」
俺はスペルカードを宣言し、次の形態へと移行する。
霊神剣とアイギスの盾を構え直し、さらに服装は博麗の正装へと変化する。
「切断『マスターソード』」
俺はそう宣言し、マスターソードを両腕でしっかりと携える。
その後、光を超える速度で桜を一刀両断した。
◇◆◇◆◇
「あーあ。負けちゃったわ」
「お疲れ様。あっちの方は……まだ決着がついていないみたいですね」
桜と麗華が話す、視線の先。
龍牙&双刃VS呼白の戦いは、未だ続いていた。
しかし、双方……特に呼白と龍牙には、限界が近づいていた。
双刃との再生と違い、2人の力は『回復』の範囲だ。それは即ち、体力を消費することを意味する。
そして、スタミナが切れるのは龍牙や俺と比べるとまだ年若い、呼白の方が早かった。
呼白の動きのキレがドンドンと落ちていく。
残りの霊力も少なくなり始め、呼白はもう少し霊力がたくさんあれば、もしくは能力が使えれば……と後悔していた。
そして、動きのキレが落ちた呼白に対して、動きが決して衰えず、尚且つ拮抗した戦闘を見せていた双刃が勝つのは、造作もないことであった。
だが。
双刃も、呼白の霊力と同様に消費する力があった。
それは、酒などから作り出されるエネルギーだ。
いくらエネルギーが満ちようとも、八千年の霊力に対抗できるほどの容量は持っているはずがない。
酒や食物をそのまま全てエネルギーに変換できるなら、その変換効率は100パーセント、つまり最高の一言に尽きるだろう。
だから、互いに、『先頭の限界』が近かったのである。
結局、先に倒れたのは呼白であった。
霊斗は、それと同時に起こるであろう現象を繋ぎ止め、なかったことにする。
霊斗自身が、8億年もの歳月をかけて培った霊力を、全て全世界の全てに分配した。
最低限、世界に必要な量を。
その後、無に変換された力が一瞬にして全て元の場所へと戻り、霊斗は霊力をギリギリ残した状態で耐えることができた。
そして。
呼白が居なくなった今、双刃と龍牙が停戦状態を破棄するのは明白であった。
まして、双刃は疲れや情を感じない人造人間。
龍牙も、呼白へと流れていた霊力を自らに取り入れていたため、戦闘という面では迷うことは何もなかった。
双刃は、エネルギー充電率が残り1パーセントとなっていることを確認し、ここに最後の一撃を込めることを破壊兵器兼人造人間故の、拙い脳で決定した。
龍牙もまた、全ての力を使って倒さなければならないことを感じ取った。
2人とも、全力の一撃。
そこに、余計な物は何1つ要らなかった。
龍牙の全ての力が込められた腕が、あまりの生命力容量に腫れあがる。
双刃の動きが、少しおぼつかなくなった。
双刃の一撃は、人体の弱点の1つである顎に命中し、そこで停止した。
龍牙の一撃は、双刃の鳩尾へと入った。
……そこで、龍牙の腕は弾けた。
彼の腕は、その衝撃には耐えられなかった。
そして。
双刃は後ろに硬直状態で倒れた。
龍牙もまた、腕を失い、さらには霊力を全て失ったことで、膝から崩れ落ちた。
◇◆◇◆◇
「……ふぅ」
ああ、やっと終わった。
甘味処に、戦闘直前で呼白の霊力が全てなくなった際に起こることを聞いて、その後俺の全ての霊力を用いれば少しの間だけ崩れる前を保てることを聞いた。
というか、俺の霊力総量、気づいたら測定不能とかなんとか書いてあった。
霊力総量は、その人物の持つ心と生命力、あとは経験によって作り出される。
その点で、俺は異常な程に濃い経験を8億年繰り返したということなんだろう。
その結果、世界を一時的にのみ保つことができたと。
まあ、世界の始まりと終わりを司る怪物を倒しちまったわけだからな。若干当たり前な気もする。
「霊符『霊力、生命力倍増』」
俺の急速に回復する霊力だが、流石に時間がかかる。このスペルは、まあその名の通り、一種のドーピングみたいなもんだ。
「霊斗!! まだ勝負は終わってないぜ!」
優一はそう言いながら、俺の目前に転移してきた。
「……おう、良いだろう。今回は初めっから全力でいくぞ?」
「お、望むところだ!」
「希望『幻想の勇者』」
「覚醒『終世者』」
俺と優一は、同時に羽を持った姿へと変化し、俺の周囲には7つの陰陽玉が、優一の周囲には黒い剣〈泉〉が握られていた。俺も龍神王武を握り、構える。
俺たちはほとんど同時に距離を取り、優一はスペルを唱えた。
「一式奥義『流星群』四式奥義『雷光』」
俺の周囲に赤と緑の結界弾が出現し、それらは俺に向かって一直線に飛来する。
「光『王の意思』」
俺がそうスペルを宣言すると、7つの陰陽玉は回転し、それに内包されている霊力の移動によって、輪っか型の弾幕が俺から広がっていく。
それらは360度、あらゆる部分から放たれ、結界弾はそれによって消滅する。
「大地終焉『コキュートス』」
優一がそう唱えた瞬間、一瞬にして優一の周囲の大地が氷、それは飛翔している俺にまで迫ってくる。俺はそれを能力で止めると、さらに次の武器を用意する。
「くそっ! 妖刀クナイ!!」
俺は、残っていたクナイ2本を優一に向けて解き放つ。
すると、クナイは優一の周囲を絶対零度の氷となって包み、さらにそれごと無属性のクナイから発生した空間の穴へと閉じ込められる。
しかし、1分後くらいに、優一は空間を破壊して出てきた。
「……見事なもんだな」
「ありがとよ。俺も連戦で限界が近い。これでラストだ。八式奥義『エターナルブレード』」
「前にも同じシチュエーションがあったな。闇『王の剣』」
俺と優一は会話しながらスペルを唱え優一は八式結界の全てが詰まった泉を、俺は陰陽玉が付与された龍神王武を握りしめる。
「ハァァァァ!!!」
「ウォォォォ!!!」
俺と優一の剣は衝突し、それぞれの効果がそれぞれを打ち消しあう。
「あ……もうダメだわ」
「奇遇だな……俺もだ……」
俺と優一は、霊力、妖力切れで2人とも墜落した。
◇◆◇◆◇
俺は桜の花の下で目を覚ました。
その時、良い匂いが俺の鼻腔をくすぐる。
「あら、霊斗、起きたのね。そして……お疲れ様」
「……? お、おう……」
俺は霊夢の言葉にうなづくと、優一が近づいてきた。
「霊斗、お疲れ様。ありがとな、最後ワガママに付き合ってくれて」
「なんだよ、俺とお前の仲だろ?」
2人でワハハと笑いあい、俺は近くにいた霊愛に事情を聞く。
「ああ、霊斗様。今はですね、宴会の準備中です。奥で、色んな人が料理を作ってくれてますよ」
「お、そりゃあ楽しみだ」
俺は霊愛の言葉に頷くと、それと同時にたくさんの食事が運ばれてきた。
「ほら、霊斗さま」
霊愛はそう言って、俺にマイクを渡してくる。
乾杯の音頭をしろというのか。俺、今の今まで寝てたんだがなぁ……。そう思いつつ、マイクを片手に立ち上がる。
「『みんな! 二日間、どうもありがとう!! 乾杯っ!!』」
「乾杯っ!!」
俺たちはそう言って、笑いあいながら宴会を終えた。これからも、こんな楽しい日々が続くと良いんだが……。
◇◆◇◆◇
東方宴王伝.fin……
妖緋、霊奈はこれからの私の作品からの友情出演です!
本当にありがとうございました!
これからも私の作品にご期待ください!