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ゆうてんで参る  作者: 南傘野けさ
人形と錬金術師
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02

 金を稼ごう。

 そう思い、俺はランデルへ向かう事を思い立った。

 ランデルは深淵の樹海とアンディスカ王国の王都グライゼンとの中間にあたるツヴェール連合国の都市の一つだ。

 ツヴェール連合国はアンディスカ王国の属国同士が合併し生まれた国である。

 そういう理由もあってツヴェール連合国はアンディスカ王国をぐるりと囲むように領地を持っている。

 まるで王を守る騎士であるかのように。

 

 ランデルを含む大体の都市ではとある仕事を斡旋してくれる施設がある。

 とある仕事とは魔族退治である。

 身分証明も何も必要なく仕事を受けられる。

 俺も勇者になる前はこの仕事でお金を稼いできた。仕事の種類にもよるが結構な金になる。

 まあ金になる仕事には実績がそれなりに必要とされるのだが。

 目標を決めたのは良いが一つ問題があった。

 ここからではランデルまで――というか人が居る場所まで結構な時間がかかる。

 単純計算で三、四日、歩きっぱなしでようやく最も近い村に到着といった具合だ。

 現時点最盛期で不老、魔王を倒した俺でも餓死はする。

 そして、もう一つの事実が更に事態を絶望的にしていた。


 考えてみよう。


 集落が無いという事が何を意味するか。

 それは人が暮らすには不適な土地だという事だ。

 はっきり言えば、近くの集落までには広大な砂漠が広がっていた。


 ・・・・・・あれ?


 そこでふと疑問がよぎる。

 俺は過去に戻る前、満身創痍でここまでたどり着いたのだ。

 状態は現状より断然悪かった。

 それなのに俺は何故たどり着けたのだろうか?

 食糧も持ってこれなかったはずだし、追手の攻撃を受けて体力も無かった。

 無一文で手持ち無しで国を追われたのだから当然水も持ってきているはずがない。

 しかし、記憶の中で俺はどこかに隠れて簡易だが食事を摂っていた。

 夢、というわけではないだろう。

 この事実が夢であるのなら俺はここに来るまでに餓死している。

 目を閉じ、じっと記憶を探る。

 ぼんやりと記憶に古びた小屋が浮かぶ。

 その周辺には砂漠の中で唯一緑が生い茂っていた場所があった。


 ・・・・・・思い出した。


 表札に錬金術師の隠れ家と堂々と書いてあった砂漠の小屋だ。

 荒れていて既に誰も住んでいなかったが食糧と水の備蓄が置いてあった。

 それを拝借して何とか生き延びたのだった。

 当時は錬金術師の隠れ家と表札を置いていながら何一つそれらしきものが置いていなかったのが印象的だった。

 ただの食糧庫じゃねえか、と。

 ここまで思い出せば目的地を一時変更。

 俺は思い切り地面を蹴って高く飛び上がる。

 高度は易々と樹海の樹々を超え、緑色の景色から限りなく白に近い黄色の景色が視界を埋め尽くす。

 現在はあの頃より十年前になる。

 小屋があるかどうかの保証はない。

 俺は上昇中滞空中と万遍無く辺りを見渡す。


「あった!」


 数十キロ先に小屋らしき建造物を見つけた。

 現在地点から北西方向、ランデルへの直線ルートからは少しズレてしまうが背に腹は代えられない。

 落下中、頭の中に必死で方角と距離を刻み付ける。



 いざ行かん、錬金術師の隠れ家!


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