表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆうてんで参る  作者: 南傘野けさ
人形と錬金術師
4/6

01


 目が覚める。青空が視界一杯に広がっていた。

精神だけ送ったという事は向こうの世界の自分は死んだ事になる。つまり転生というものに近いのではないか。

 起き上がって周りを見渡す。今いる場所は向こうの世界で死んだ場所――時遡の洞窟、その入り口だった。

 ん?

 時差ボケという奴かどうかは知らないが妙な違和感を覚える。体の感覚が少し狂っているような微妙に判断しづらい感覚。

 手足を軽く動かし、体のあちこちを触りながら痛いところなど無いか確かめる。

・・・・・・そういえば何でここに居るんだろうか?

 俺の体に異常がない。もし肉体ごと送られていたなら五体満足ではない。

 故に精神だけ飛ばされたのだろう。だが、精神だけならば俺がここに居るはずがない。

 ここに来たのは先程――時を遡る前が初めてだったのだから。

 改めて自身の体を見渡す。

 服は着ていた。麻で作られた白い服と茶色いパンツ。革の靴。下着も着用しているみたいだ。その上から焦げ茶色のローブを羽織っていた。

 装備は武器も防具も無し。

 ただ腰には少しのお金が入った巾着袋が着いていた。

 死ぬ前に無一文だった俺からしたら大した進歩である。

 いくら持っているのか、巾着袋の紐をほどいて中を覗く。

「これは……」

 袋の中身を見て、思わず声を上げてしまった。目に入ったのがお金ではなく一枚の紙だったからだ。

 こんな芸当が出来るのはソレくらいだろう。

 折りたたまれている紙を広げて、内容を確かめる。



『勇者君へ


 君に与えたオマケとそちらの現状を伝えておきたい。


 まず君は死んだ時間より十年前の時代に送っている。

 理由は今そこに居る君とそちらの世界に居た君の存在が重ならず、尚且つ途絶えないようにする為だ。

 そちらの君が死ぬと同時にこちらの君がそちらに送られた。一部の誤差も無くね。

 そうしてそちらの君という存在はそこにいる君という存在に置き換えられ、死んだ人間が生きているという矛盾をかき消しつつ、同一の魂が同時に存在する事態も防いだわけだ。

 勿論そちらの君の死体はこっちで処理したよ。死体が見つかったら元も子も無いからね。


 まあこれはこちらの事情で覚えておくのも忘れるのも君の自由だけど。


 次に君の体についてだ。


 本当はそちらの世界の君に魂を定着させる方が手っ取り早かったんだけど聖剣のオマケがあるからね。

 君の体を全盛期――元の君の歳より数年くらい先の体になると思うんだけど、その新しい体に魂を入れさせてもらった。

 そのおかげでそちらの世界の君が死ぬ可能性のある時間を探して十年前になってしまったわけだけど。

 そっちの方が色々手も回せるし暗躍出来て都合がいいよね。


 ていうか、八歳以降死ぬ可能性皆無ってどうなの?

 君、結構魔物討伐とか決闘でお金稼いでたよね。本当それで唯一の死ぬ可能性が足を滑らせて――って何?


 ・・・さておき、君の体は全盛期。

 さらにオマケで不老の体にしておいたから。不老不死じゃないからね。不老オンリー。

 普通に生きて普通に死ねるよ、君の場合老衰無しでは魔族と同じくらいの寿命になっちゃうけど。


 うん、長くなってしまったけど君が知っておくべきことは三つ。


 そこは十年前の世界である。

 君は不老の体を手に入れた。

 王女には関わらない事。


 じゃ、楽しく実りある二度目の生を。                                         君を送ったウォルドより』



 つまり、体に違和感を覚えたのは今の体が前より成長しているからか。

 それに十年前といえばブランチュリアさんは何歳だろうか。

 今思えば何も知らない。当然と言えば当然だろう。

 彼女が死ぬ直前に惚れたのだから。

 あと最後の王女について何も書いて無かったよね。



 うん。十年前か。



 ・・・・・・何しよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ