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この世界はどうしてこんなにも  作者: 崎坂 ヤヒト
一章 二重人格に至るまで
8/13

この世界はどうしてこんなにも儚い②

「うっ。ねえ。もうちょっとゆっくり歩いてよ」

「ごめん。ペース分かんなくって」


二人は商店街を歩いていた。

和希が真矢に引っ付いている感じだ。

どうしてかは分からないが、和希は真矢に触れている間は発作を起こさないと言う。

そのため、和希は真矢の腕にしがみついているのだ。

しかし真矢は、そんなことをしたことがないので、和希の歩くペースがつかめないでいた。

彼女じゃない、もう一人の方は、対照的に引っ張っていく感じだったので、むしろ真矢がついていかなければならなかったから参考にならないのだ。


(どうしたもんかなー)


今、二人が向っているのは商店街のおもちゃ屋だった。

和希は大家さんにあのアパートに住まわせてもらってから、全然外に出ていなかったらしく。地理に関しても、完全に無知だった。

真矢も実際に店に入ったことはないのであいまいだが、それでも辿り着かなければならない。

というのも。ゲームをやるのにゲームソフトというものを買う必要があるみたいで。その他にも、本体についてきたものとは別にコントローラーをもう一つ買わなければならないらしい。


「ソフトも二人遊べるやつじゃなきゃダメだよ。一人専用のもあるから」

「そうなんだ。詳しいんだね」

「基本だよ……何で知らないの?」

「僕。こっちで和希と会うまでは勉強しかしてなかったから。その他のことも、みんな適当になってて。そしたら倒れて。和希に苦い顔で『ばか?』って聞かれたよ」

「良かった。和希君はまだまともなんだね」

「そう思うよ。恐ろしく家庭的ってだけで。それ以外は普通だしね。暇なときはゴロゴロしてたりしたけど」

「本当におばちゃんじゃないの?」

「はははっ。確かに。でも家事はしっかり終えてからだよ」

「余計にだよ……もう絶対高校生じゃないよ」

「あっ。そうだ。一つ思い出したよ。和希の特徴」

「え、なに?」

「エアコン大好き」

「なにそれ?」

「和希がゴロゴロしてたのって、エアコンがあったからなんだよね。それまではいろいろ工夫してて大変そうだったよ」

「………………」


和希は、もう話の意図がすっかりわからなくなってしまったみたいだ。

真矢はそれに苦笑いすると。目的の店に着いた。


「えっと……。あっ、こっち」


和希に指差してもらい。真矢はその方へと向かう。

まずコントローラーはすぐに見つかり。選ぶのも時間はそんなにかからなかった。

ただ、ゲームソフトの方は。


「どれがいいんだろ?」

「やりたいジャンルとか選ぶんだよ。どういうのが好きかとかある?」

「うーん。脳のトレーニングとか」

「テレビじゃない方買って。というかそれ、遊びじゃないから。もうっ。分かった。私が選ぶ」


そう言って和希はソフトの選定を始めた。

真矢は完全にお荷物だ。

もう少し同年代の子供との接し方を学んでおくべきだったと後悔した。

でも、昔からこういうものは買ってもらえなかったし。

参考書類は欲しがればいくらでもくれたので。それが嬉しくてついそっちに流れて行ってしまったのだ。

あっ、もしかして買ってもらえなかったんじゃなくて、買ってもらおうとしてなかっただけかも。

なんか自分が馬鹿に思えてきた。


「えっと。じゃあこれっ」


真矢がそんな自己嫌悪をしていると。和希は自分のやりたいものを見つけたらしい。

いろんなキャラが乗り物に乗ってスピードを競うゲームみたいだ。

途中にアイテムなんかも出てきて、コースも選べるらしい。


「最近は乗り物も選べるんだよね」

「へー、やったことあるの?」

「小さいころの古いやつだけど。クラスで男の子とかが話してるの聞いたことあるよ。これはその二段階くらい後のやつだけど」

「そうなんだ。じゃあそれにしよっか」

「うんっ」


その光景は、仲のいいカップルのようだった。

そして、真矢は気づいていない。

今まで真矢が接してきた和希と、今の和希は違うのだ。

そのこと自体は理解している。

しかし。それが意味することまでは理解できてはいなかった。

前の、真矢が好きになった和希は、女の体に男が入った姿だった。

それが今は、女の体に、そのままの女の子が入っているのだ。

そうすると、物事のとらえ方も変わってくる。

この場にいない和希は、元が男だから真矢に触れていれば大丈夫という状況だと。嫌だけど仕方ない。という考え方をする。

しかしこの和希は十五歳の女の子。まだまだ乙女な考えが抜けきれないお年頃だ。

それが真矢に触れていれば、真矢と一緒にいる間は自分を保っていられる。

そんな状況になって一体何を感じるか。

運命や、絆。愛。

そんなものが真っ先に浮かんできてしまう。

つまり、簡単に惚れてしまうのだ。

何より、今の真矢はイケメンだ。

元がいいため、男になっても、その美貌は人を惹きつけた。

惹きつけるのが男から女に変わっただけのことだ。

真矢はそれに気付けていない。

自分が、いったい今の和希に対してどのように接しているのかを。




「やった。一番」

「また負けた―」


二人は買って来たレースゲームをさっそく始めていた。

場所は和希の部屋ではなく、大家さんの部屋だが。

先程大家さんに交渉し、部屋のテレビを使わせてもらえることになったのだ。

交換条件は今回はなし。

主に、和希の精神状態を考えての措置だった。

今はとにかく彼女の気を紛らわせることだけを考えて行動するべきだという結論になったのである。

もう一人の和希は、まだ現れない。

そろそろ来てくれないと、真矢も行動がとれなかった。

ちらりと、隣を見ると。和希は買ったことが嬉しかったのか「へへっ」と笑った。

その顔は可愛らしく、見てて微笑ましくなる。

でも。


「次どこにしようか」

「ねえ」

「ん、何?」


次のコース選びをしている和希を。真矢は真剣な表情で見据えた。


「やっぱり。何もしないのはまずいと思うんだ」

「え?」

「豊橋さんの辛いって気持ちは分かるよ。でもね。辛いからって、逃げてたら駄目だと思うんだよ。逃げてばっかりじゃなくて。立ち向かわないといけないと思うんだ」

「なに………言ってるの?」

「だからさ。克服しようよ。一緒に。僕も手伝うから。豊橋さんのトラウマを、ちゃんと克服しようよ」

「真矢君………」


和希はそれに顔をうつむけてしまった。

やっぱり、いきなり言うのは少し酷だったかな。と思っていると。


「うん」


和希は。頷いた。

それだけじゃなくて、両手をぎゅっと握って、戦うという意思表示をする。


「分かった。私、やってみる」


良かった。

やっぱり和希は強い子だ。


「真矢君も手伝ってね」

「うん。もちろん」


これが後にちょっと失敗だと悟るのだが。この時の真矢はまだそれを知らなかった。




三十分後。

失敗だったと知った真矢。


「ぐす、う、目に染みる」

「頑張って。もうすぐ終わるから」


真矢は、和希に玉ねぎのみじん切りを手伝わされていた。

切っているのは和希自身なのだが、真矢はその間、ずっと和希に手を添えている。

射的の時は駄目だったのに。中身が変われば状況も変わるとでも言いたげに、真矢に触れられている間の和希は穏やかだった。

涙でぐずっている真矢とは対照的に、和希は悠然としている。

それもそのはずだ。

彼女は厚いマスクに、花粉症対策用のアイガードまで装着しているのだから。

それら全部一つ分しか残ってなく、真矢は鼻がつーんとなって。手をどけられないから押さえることもできず。必死に苦しんでいた。

玉ねぎを鍋に入れてとかしている間にも切る作業は続き。すべての具材を切り終えてようやく真矢は解放された。

まず真っ先にティッシュに飛び付き。鼻をかんで。それから目元の涙をぬぐう。


「はあっ。やっと終わった」

「まだだよ。これから後、煮込まないと」

「え? まだあるの?」

「当然だよ。だってシチューだもん」


シチューは和希の中で、一番思い入れの強い料理らしい。

それを聞き、真矢が「じゃあ作ろうか」と言ってしまったのが始まりで。

真矢が触れていればトラウマも大丈夫という和希のために。それならとかって出たはいいが、この様だ。

料理経験が全くないために、手伝い方も分からないからこういうことになる。

これならもう少し料理の勉強をしておけばよかったと、今更ながらに後悔している。

そんな真矢とは対照的に。料理をしている和希は楽しそうで。その頬もほんのりと赤くなっているように見える。

それが何なのか、真矢にはよく分からなかったが。とりあえず元気になってくれたならよかったかなと思う。

それからシチューは無事に完成させることができ、パートから帰ってきた大家さんと一緒に三人で食事をとった。

ただ。それだけでは終わらず。

どうしてか。真矢は大家さんが帰って来てからも、ずっと和希の部屋にいた。

和希がお風呂に入っている間は、本棚の本を読ませてもらい。出てきてからも和希は真矢から離れず、逃がさなかった。

それがどんどん時間だけが過ぎて行って。


「あの。豊橋さん?」

「お願い。せめて眠れるまでは、そばにいて」


これは完全に甘えられている状況だ。

変に年頃の女の子に優しくし過ぎると、こういうことになる。

真矢はまだそのことを知らなかったのだ。

真耶もこの場にいない方の和希も、実際には普通とは言えないような環境下で暮らしてきたため、こうした状況に順応できないのである。


「え。あ。うん……じゃあ。眠ったら、出ていくね」

「うん。ねえ。また明日も来てくれるよね?」


真矢と和希は手をつないでいる。

和希がそれを望んだからだ。

その手が、二つになる。

両手で挟まれて、逃げられなくされた感じだ。


(えっと。これは……)

「もちろんだよ。また明日。朝になったら来るね」

「ほんと? 良かったー」


和希はそう言うと、笑顔になって、真矢を捕まえた手の力を緩めた。

どうしたものかな。

そう思いながら。真矢は和希が眠ってくれるまで、ずっとその状態で耐え続けた。

そうしてようやく眠ってくれたと思い、手を離すと。

パチリ

和希の両目は見開かれた。


「待て」


まだ続くのかと思い、疲れた顔をした真矢に、和希はそう言った。

それで、真矢の思考は変わる。


「和希?」

「そっ。ようやく眠ってくれたよ。大変だったんだよ、無闇に体の主導権奪って不安にさせてもまずいだろうし」

「そっか。だからずっと何も言ってこなかったんだね」

「まあ。ていうか真矢。もうちょっと考えて行動した方がいいぞ」

「え?」

「完全にペース持っていかれてただろ。人に優しくするにしても節度を持たないと、大失敗するぞ」

「………はい」


なんとなく、和希の言葉の意味を理解し、真矢は反省した。

つまり先程の、本来の体の持ち主の方の和希と、一方的に約束を取り付けられて、振り回されていたことを言っているのだろう。


「でも。彼女のためになると思って」


実際、彼女は楽しそうにしてたし。真矢は間違ったことはしていなかったと思う。

しかしそれに和希は冷たい視線を向けて。


「ばか?」


と言った。


「へ?」

「一生この体に引っ付いているつもりか? 日常生活を制限されて。全部もう一人にゆだねて生活するのか?」

「え………っと。それは。無理……かな」

「だろう。今、真矢はそれをやろうとしていたんだよ。たぶんそのうち朝起きたら真矢がいないって慌て始めるぞ」

「それはさすがに………」

「ないと言い切れる?」

「ません」

「よろしい。真矢がやっていたことは、むしろ逆効果なんだよ。甘やかせすぎるな」

「で、でも。じゃあどうしたらいいのさ。僕には分からないよ」


そう言って落ち込む真矢に、和希はため息をついた。

世渡りをしてこない子供はこれだから困るとでも言いたげだ。

一応、和希は三人の中では一人だけ十六歳で年上だが。それでも同学年のはずなのに。


「こっちも神様の相手で疲れたんだよ。チャンスを探っている間に興味なさそう

な視線で入浴シーンとか見てたり、ベッドの下のエロ本を探られたりとか」

「は?」

「ああ、こっちのこと。気にしないで。……まあ、そんな訳でこっちも楽ではなかったということが言いたいんだよ。おまけに最低な問題まで発生してきてるし」

「あの………さっきから和希が何を言ってるのか、全然理解できないんだけど」

「ああ。うん。いいよ別に。これから説明するから」


それから、和希の口から次々にかたられる話は、真矢の心境を変化させるのに十分な情報を秘めていた。


「そんな……じゃあ和希君の体には戻れないの?」

「そういうことになる。だから元の体に戻るっていう当初の目的は、そもそも叶わないんだよね」

「和希はそれでいいの? 鈴音さんと、もう、本当に」

「仕方ないさ。願いの末路としては、調度いい罰だよ。まあ、この体も結構気に入ってきたし、いいかな。とも思ってきたし」

「でも」

「大丈夫。今問題なのはこれじゃないし」

「………どういうこと?」


今、一番の問題は別にあった。

それは………タイムリミット。

神様の奴がこの土壇場でぶっちゃけやがった。

願いのシステムについて。

なんと美和野神社の神様は人の願いを叶える力を持っていたのです。

ですが小さい神社で、地元でも不良くらいしか寄り付かないその神社はまったく人気がなかった。

そもそも叶えることができる願いは五つまで。あ、これ残りのって意味です。

今までも何度か願いを叶えてきてあと叶えられるとしたらそれくらいだったということだ。

さらに詳しく説明すると、神様はすぐにその人の願いを叶えることはできる。しかし未達成の願いというものは存在するのだ。

例えば綺麗になりたいとか願ったとする。でもそれは人の主観によるものでしかなく、本当に綺麗になったと思うのはそれぞれの人で考えが違うだろう。

もし綺麗になったと周りが思っても、その綺麗がその人にとっては綺麗じゃない、ということもあるのだ。

神様の願いというのはその人の『欲』によって決まる。

だからその人の『欲』を満たしてなければ願いがかなったとはいえない。

そう言う場合は、一度キャンセルされることになる。

ただ、このキャンセルは元に戻すことでは当然ない。

それは願いを取り除き、その願いにかかわった存在を抹消するというものだった。

初めて聞いた時には愕然としたよ。

で、そのキャンセルまでの期間が三十日らしい。大体一か月ってことだね。

ちなみに残りあと三日。


「ええっ!?」

「落ち着け落ち着け」


それから真矢に話したのは、あの後神様に教えてもらった新事実。

そもそもが、今のこの事態は、神様の願いの連続が生んだ偶然だったのだ。

まず初めに豊橋和希の『救われたい』という願いがあった。

しかし、この願いを神様は無視した。

その程度の願い、この世界には腐るほどあるからだ。

しかし。そこにもう一つ願いが加わった。

豊橋和希を『救ってほしい』という願いだ。

これは大家さんのものだ。

この時、まだ神様は願いをかなえるつもりはなかった。

そして、運命の日が訪れた。

和希と真耶が美和野神社で出会ったあの日。

本来ならばその日に、豊橋和希は死ぬはずだった。

しかし、ここである偶然が起こる。

神様が願いを叶えようとしたのだ。

ちなみにその叶えようとした願いとはもちろん。


『せめて第一印象が怖がられなくなりますように』


これである。

これだけは、神様は深く同情した。

なんでこれに同情したかは聞かないでおいた。きっと神様にもいろいろあるのさ。

あと、真耶の『和希君と友達になれますように』と言う願いは、当然のように却下された。

そんなの勝手に叶えてろと言いたくなったそうだ。

で、ついでだからと彼女がぼそりと呟いた願いが叶えられた。

『男に生まれたかった』という願いだ。


「ついで……僕の願いって、ついで………?」

「うん。気持ちは分かるけどとりあえず落ち着こうか。話進まなくなるから」


まあそんな訳で二つの願いは叶えられることになったのだ。

真矢については半分嫌がらせのようなものだったが、本人には秘密だ。

蔵の中で神様が舌打ちしてた。

真矢は本当に全然関係ないが、和希の願いは都合のいい器があったので、そこに入れるという形で叶えられることとなった。

それが豊橋和希である。

死んで魂のなくなった器に新しい魂を入れる。

これで和希の願いは叶えられるはずだった。

それはいい。

問題はどうして神様はそんな行動をとったのか、ということに繋がる。

和希の願いを叶えるのならば、別に体を移し替える必要はないのだ。

真矢みたく、本人の体をいじればそれで片が付く。しかし、それをしなかったのは、もう一つの願いがあったからだった。

大家さんの願い。その真実は。


『救われた和希の姿が見たい』


というものだった。

神様は大家さんの願いの形そのものではなく、願いに対する大家さんの欲を重視していたのだ。

そのため、豊橋和希の抜けた体に、宮澤和希が入り。それによって一見救われたと見える状態を作ろうとしたのだ。

なんとも悲しい話だ。

神様の考えは無情だった。

いや、一つだけに対して、やけに感傷的ではあったけども。

まあ、そんな訳で、本来の叶えられる願いは三つだけのはずだったのだ。

しかし、思わぬ四つ目が、意図せず起こってしまった。


『救われたい』


その願いが。

原因は願いの対象にある。

神様は和希の願いを豊橋和希の体に向けて行った。

それによって間接的に大家さんの願いが、その体にも反映される。

願いの重複。それによって本来かなうはずのない願いまで、強制的に叶ってしまったのだ。

共鳴と言えばいいのか。

固まっていた物体に二方向から波の刺激が加えられ、その物体まで波を作ってしまった。

科学的なたとえで言うとこんな感じだ。

困ったことに、四つ目の願いまで持っていかれ、豊橋和希の魂は体に繋ぎ止められてしまった。

しかし一度は死ぬはずだった魂だ。

そう簡単に元に戻るはずもなく、最初はまったく動きを見せなかった。

しかし、じょじょにその魂は体へと戻り始め、夢という形で和希に浸食を開始。

それが幻覚や幻聴へと変わり。夏祭りの日。ついに目覚めてしまったのだ。

最悪なことに『救われたい』という『未達成』の願いと一緒に。


「で、ここで問題が発生しちゃったんだよ。彼女の願い。『救われたい』だけど。真矢はどうとらえる?」

「え?」

「救われるって、この場合どういうことか聞いてるんだよ」

「えっと。救われるってことは。楽になる、とか。あとはやっぱり幸せを感じたり?」

「まあ正解。じゃあさ。その楽になるってどういうことだと思う?」

「え、っと。やっぱりトラウマを……」

「うん。それだよね。これから目指すべき目標もそれだよ」

「じゃあ」

「でもさ」


ここで和希は、暗い顔で笑った。


「もう一つあると思わないかな? 楽になって救われる方法」

「え?」


分からないらしい真矢に、和希は笑顔を作った。

そして絶望の言葉を口にする。


「死んでしまっても、叶っちゃうんだよ」



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