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この世界はどうしてこんなにも  作者: 崎坂 ヤヒト
二章 学園編入編
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三つのプロローグ三人目

まだ日の出始めたばかりの早朝。

その、対して大きくもなければ綺麗な装飾がある訳でもない神社。

美和野神社というその神社は近くの住民でさえ全く参拝に来ないほどに人気がなかった。

そんな神社に今朝は来訪者がいた。


「ほっ、ほっ」


その来訪者の少女はジャージを着込み、ランニングの途中なのかペットボトルの入ったウエストポーチをつけている。

彼女は社に近づくとウエストポーチからコンビニの袋を取り出し、躊躇なく扉を開けた。


「神様ー、お久しぶりですっ。夏休み中実家に帰ってて、参拝できなくてすみませんでした。今日はお供えにおにぎり作って来ましたよ」


その少女は美和野神社唯一と言っていい、純粋な信者だった。

元々寺の子供であったその娘は高校に通うために実家から離れてくらしていた。

実家の周りにも高校はあったにはあったのだが、何分田舎だったので子供の数はどんどん少なくなりとうとう廃校が決定してしまったため、生徒の受け入れをしなくなってしまったのだ。

なので一人電車で十駅の距離を出てきた。

ちなみに十駅とは言うが、田舎の十駅を都会のものと一緒にしてはいけない。

一駅間隔が十五分は当たり前なのだ。とても通えません。

しかもちゃんとスーパーなど生活基盤がしっかりしている地域を探せば家から相当離れてしまうのだ。

そもそも実家から駅までは車で30分はかかるので通いはありえなかった訳なのだけれど。

そこまではまだ普通の田舎から出てきた子で済むのだが、実はこの子には秘密があった。


―――霊感が強い。


それはもう、めちゃくちゃ強かった。

お墓に赴いては未練たらたらなおばあちゃんの話を聞いて成仏させて上げたりしていた。

この夏も、お盆に還ってきた方々を成仏し直してあげるのはとても万人には分からない苦労だった。

そんな彼女がこの地にやって来て最初に作った知り合いは、この社の中にいた人魂、もとい『神』だった。

人の霊が神として崇められる例は結構多いが、ここの神社に眠る神は最初から『神』として生まれた存在だった。

神様の話では五百年ほど前までは結構信仰されてたのだが、他に大きな社がいっぱいできて、次第に廃れたらしい。


『よく今まで無事でしたね』

『本当に大変だった。前に取り壊しに来た奴等を一時的に憑依して乱闘させてやってどうにかなったが、気を抜くと危ないだろうな』

『えっ、それ神様の祟り………』

『え? 何?』


ずいぶんと好き勝手している神様だったが少女との相性は悪くなく、少女も神という存在と話が出来ることに感銘を受けて毎日のように参拝に訪れていた。

しかし、流石に長期休みは実家に帰るので参拝には来れなかった。神様にももちろんその話をしており、今日久々に会える。

と、思ったのに。


いない………。


社の中は空っぽだった。


「な、なんで……」

「あれ? お前帰ってたの?」


後ろから男の人の声が聞こえてきた。

誰か知り合い、クラスメートかと思って少女は振り返る。

すると。


「あ……なたは…」


少女は目を見開いてその顔を見上げる《・・・・》。

そこにいたのは予想通りクラスメート。ただし、少女とは何の関わりもない男子生徒だった。

しかし、同じ学年なら、いや学校中の誰もが知っているであろうその生徒は。

揚羽西の恐怖の象徴。宮澤和希。

ただし。


「神様ぁーっ」

「おかえりー」


中身は別物だった。

しかも軽い。

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