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第十六話

ニコニコと人好きのする笑みを浮かべたままこの国のトップである伯父は俺を見ていた。

その瞳に見えるのは温かみで、歓迎されていることがわかり俺は微笑みを返して一礼した。


「笑った顔は、本当にマリーそっくりだなァ。怖い父親に似なくて何よりだ」

「喧嘩を売っているなら、言い値で買いますが?」

「冗談だって、本当に相変わらずだな俺の世話役は…」

「いつから貴方の世話役になったのか、小一時間ほど問い詰めたいところですが…父から聞きました。アルを王子の友人せわやくにとは一体どういうことです?」


そう言った父様は口は笑っていたが、開かれた目からは殺気が駄々洩れだった。

「くだらない理由だったら殴る」と明確な意思が込められている。

そんな父様の視線に気づいてるだろうに、この伯父は歯切れ悪く言葉を濁した。


「あー…それなんだけど…うちには今、レオって息子がいるんだが…最近の様子がちょっとおかしくてな…」

「貴方はいつでも様子がおかしいですけどね」

「うるせぇよ…それで今、学園に通っている訳なんだが…学園には寮があるが、それは地方から学びに来ている生徒が優先で、王都に家がある生徒は通学してもらっている。そんなに遠くもないからな」

「要点を簡潔に言いなさい」


伯父の言葉を切るように父様が腕を組みながら冷たく言い放つ。

いくら何でも、不敬罪にならない?

俺の心配を余所に伯父は頬を指で掻きながら肩を竦めた。


「…最近になって急に「寮に部屋を用意してほしい」とお願いされた。しかもレオの世話役のセリオーザ家の息子も同じことを言いだしたんだ。流石に変だと思って調べたら、どうやらレオの取り巻きの生徒達が一様に同じことを言いだして本当に入寮したんだ」

「…寮は整備されているとはいえ、上級貴族の生徒には手狭だし、色々と設備も足りないと思いますが?」

「そうなんだ、あそこは地方から学びに来ている王都に屋敷を持たない生徒が対象だから必要最低限の設備しか無い。なのにうちの息子を筆頭に上級貴族の男子生徒が次々と寮に入っているんだ。男子生徒だけな」

「…男子生徒だけ、ですか?」


それは、ちょっと変だよね。

俺が首を傾げていると伯父は俺を見て手を合わせた。


「そこで、何があったのか調べてほしいんだ。アルフレドならレオと同い年だし、何かと話を聞き出しやすいと思って…」

「…うちの息子を何だと思っているんですか?」

「頭の良くて、出来の良い、俺の甥っこ。そんで俺の可愛い妹と義弟おとうとの息子で頼りになる存在」

「…その可愛い妹は時期にこちらに来ますから、覚悟を決めておいてくださいね」

「え…あ…はい、了解です」


母様が来ると聞いて伯父は頬を引き攣らせた。

そんな伯父を一瞥して父様は俺を見た。


「アル、こんな事を言っている奴がいるけど…学園に入学するかい?」

「そうですね…確かに男子生徒だけ急に寮に入るようになったというのは、変ですね。調べるくらいなら大丈夫です。王子様が寮に入る理由を調べれば良いですか?」

「あぁ、こう言っては何だけど…あの子が寮生活出来るとも思えなくてなァ…何か理由があるなら知りたい。お願いする」


伯父はそう言って頭を下げた。

一国の王様がそんな軽々しく頭を下げていいものか分からなくて俺が狼狽えていると父様が静かに言った。


「気にしなくて大丈夫です。人に頼みごとをする時は誠意を見せなさいと教育したからね」

「別に、お前に言われたから頭を下げてる訳じゃないからな…それに、王様ってのは基本的に命令するばっかりで思う様に人を動かす力があると勘違いしやすいが、そうじゃない。その命令を忠実に誠実にこなしてくれる人がいて初めて象徴たる『王様』になるんだ。感謝の気持ちを忘れたら、あっという間に『愚王』になる」

「それが理解出来ていれば構いません」

「…本当に厳しい奴だなァ」


伯父は、国王はそう言って苦笑した。


「まぁ、お前みたいに言いたいことをズバズバ言ってくれる奴は居ないから。むしろ心地いい」

「そんな性癖聞きたくありません」

「性癖じゃねぇっ!!」


そう言いあっている二人は仲が良いのだろう、じゃれ合っている様に見える。


「あ、そうだ。二人ともこの後暇か?」

「今度は何を企んでいるんです?

「企むとは、人聞き悪いな。中央練兵場で御前試合があるから一緒に観に行こうぜ」

「…御前試合って、四日後じゃなかったでしたっけ?」

「あ、それ嘘。本当は昨日今日でやってて、この後は決勝戦なんだ」


俺はアッサリと『嘘』と言ってのけた伯父を見て固まると父様が深いため息を吐いた。


「また、くだらないことを…」

「いや、四日後まで大人しく王都に滞在するか分らんし。それなら騙し討ちかなって」

「…相変わらず、腹立つ奴だな」

「誉め言葉として受け取っておく」

「苦言だ、どこから聞いてもな」

「まぁ、アルフレドに見せたかったってのもある」

「見せる…ですか?」


俺の名前を出されて俺は伯父を見上げた。


「レオがどういう奴かをな」


つまり、見ればどういう人なのかわかるってことなのか?

人を見た目で判断するのは良くないと思うんだけど…




 

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