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第九話

うーん、香ばしい香りが暴力的なまでの肉の串焼きにしようか、それともあちらにある汁物にしようか。


俺は屋台の連なる一角にやってくると何を食べようかと物色し始めた。

それにしても、やはり王都だけあるのか香辛料なども豊富に使われた料理が多い。

先程の串焼きは胡椒がふんだんに使われた品だし、汁物もハーブが数種類使われた複雑な香りがした。

どれも美味しそうで目移りして仕方ない。

そして気になるのが、何故か視線を集めている気がすること。

あちらこちらから視線を感じて落ち着かない。


太陽の光を溶かし込んだ様な輝く金色の髪が風に揺れ、楽し気に緩められた蒼紫の瞳は気が付いた人の視線を集めるに値する価値があった。

目の保養とはこのことかとアルフレドを見た人は思うのだ。


そんな視線を集めながら歩いているとポツンと他の屋台より小さな屋台が目についた。

そしてそこから香ってくる懐かしい香りに俺は引き寄せられるように歩み寄った。


「い、いらっしゃいましぇっ!!」


盛大に噛んだ店番らしき少女に俺は売り物を指さしてニッコリ笑った。


「これ、ください」

「あ、あ、ありがとうごじゃいましゅっ!」


年齢的には俺と同じか少し上の少女はまたしても盛大に噛んだがあわあわしながら商品を手持ちの皿に載せて差し出してきた。

俺は金額を少女の空いている手に乗せると皿を受け取り店を後にする。

後に残ったのは、破壊的なスマイルを正面から見たことにより顔を真っ赤に紅潮させた少女とアルフレドが乗せた代金だった。




「うわぁ、王都に行ったらあるかもって思ってたらやっぱりあったよ『お米』!!」


そう、少女が売っていたのはおにぎりだった。

しかもシンプルすぎる塩おにぎり。


「あとは、やっぱり串焼きかな」


そして串焼きとおにぎりを手に入れた俺は屋台のある一角に設けられた休憩スペースを見つけさっそく食べることにした。


「いただきます」


パンっと手を合わせると早速おにぎりを頬張る。

丁度良い握り具合で口に入れると解れる。

塩も強めにしてあり時間がたったであろう今でも塩を感じる。

そして何より、噛めば噛むほど甘みを感じるお米に俺は感動した。


「探してたんだよ、君という存在を…美味しい」


そして焼き立ての串焼きを頬張れば幸せが口いっぱいに広がる。


「あぁ、お肉とご飯のコンビはまさに正義としか言えない…やっぱり香辛料を沢山使えるのはいいなぁ」


普段の薄味も好きだが、たまにはこんなガツンと感じる味付けも捨てがたい。


あっという間に食べ終えた俺は暫し幸せの余韻に浸っていた。

そして先程のおにぎり屋に戻るとお米はどこで買えるのかを聞き出して父様との集合場所に向かった。


「すごく美味しかったから、また買いに来るね!」

「お、お、お待ちしていましゅっ!!」


最後の最後まで噛みっぱなしの少女であった。



 

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