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パンツは、はいててもいいですか?  作者: 北 郷
第2章 高校編(パンツをめぐる攻防)
5/6

そりゃあ、霊の類でしょ

金縛りに悩む主人公夏樹。彼は悩んだ末に幼馴染でもある友人貴樹の姉、誘雌を訪ねる。そして、彼女の出した結論は・・・。

 久しぶりに木戸家にお邪魔することとなった僕は、誘雌ゆうめの招きにより、腐れ縁の友である高貴の部屋では無く4,5年ぶりになるだろうか、姉の誘雌の部屋へと通されることとなった。

 既に目的が誘雌に会うことであるのがバレてしまっているので当然と言えば当然ではあるのだが。

 自分の部屋なのだから当然なのだが躊躇いも無く扉を開ける誘雌。


「さあ、遠慮しないで入って」


 と促す誘雌の言葉に、昔に感じたことの無かった妙な緊張と興奮が僕の胸を襲い、恥ずかしながら脚が思うに進まない。

 そんな、僕の心に気づいているのか何なのか、


「大丈夫怖くないから」


 振り向く僕に意味は不明だがニタリと笑い、後ろから背中を押す高貴。ここは、妙な緊張を妙な方向に取られるのも悔しいので、平然を装い部屋の敷居を跨ぐ。


 誘雌の部屋は相変わらず飾りっ気が無い。それが、非常に懐かしくも思えるのだがちょっと残念に感じるのは何故だろうか?でも、以前との歴然とした違いも一つ感じてしまっている。

 それは、確実に部屋の香りが大人の女性を感じさせたことである。

 その香りがヤバい。思わず香し過ぎて、胸の奥の肺胞の一つ一つの隅々にまで行き渡らせたい欲望にとらわれてしまう。ウッカリ山の新鮮な空気を欲するように大きく深呼吸をしたらどうしようなんて、心配してしまう自分が悲しい。もちろん、後先を考えずに易々と欲求を満たしたりはしないが。

 しかし、そんな僕の心情を皮膚の外から覗き込めるヤツがここに居る。

 

「ははーん、緊張してるんでしょ?

 空気は無料ただだから、深呼吸でもしてリラックスして話を聞かせてちょうだい」


 この彼女の嗅覚は恐ろしい。特に僕の心を探ることに長けている気がする。彼女に言わせると僕の態度や表情が分かり易いからだそだが、幼い頃彼女に頭が上がらなかったのは、この嗅覚で全てを見ぬかっれていたことが大きい気がする。

 もしかしたら人間じゃない可能性も考えたこともあるくらいだ。でも、だからこそ今の彼女が頼もしいく感じる。僕を嗅ぎ分けれる彼女だからこそ、こんなことを相談出来る分けなのである。

 

 彼女にベッドに腰を掛けるように促され、高貴は机の前の椅子を引っ張り出して、逆向きに座る。

 誘雌は、机に半分お尻を乗せる形の半立ち状態。この時のお尻の潰れ方と、地面と平行だった、ショートパンツの裾のラインが若干切れ上がり、やんわりとしたV字になるのがヤバい。


 ―――いかん、視線に気付かれてしまっただろうか。


 気付かれてしまったに決まっている。が、3秒ルールが未だ健在であれば、責められはしないはず。


「さて、聞かせて。夏樹をそんなに悩ますことについて」


 案の定、視線の意味を追求されることなく、誘雌は早速本題を聞いて来た。

 僕は無意味な強がりの猿芝居は止め、僕は高校の入試の当日の夜に出くわした初めての金縛りから、その後に起こった3度の計4度の金縛りのことをこと細かに話して聞かせることにした。

 話の途中からは彼女は瞼を閉じ、考えるように下を向きながら頷きながら聞いていたが、僕の話が終わると同時におもむろに顔を上げ、


「まさに珍現象ね・・・」


 呟く様にそう一言口にしてから、いつもの様にハキハキした口調で話始めた。


※因みに、その呟いた一言がきっかけで僕の金縛りは、それ以降「珍現象」と呼称されることとなる。


「そうね、この世にあるその手の不可思議な出来事の代表的なモノと言えば、まず宇宙人ね、それから魔法使い、魔法少女に使い魔、妖精に精霊って可能性もあるわね、それに、地底人、魔界の何ぞや、妖怪の類、それに諸々の霊と言ったところかしら。 天使や、神々の力って言う人もいるけど。それは無いわね。そこは、そんな近くに有ってはいけないものだから。

 そうね、でもその殆どは若者の大いなる性への好奇心から発生する、夢や妄想って言ったところなんだけど・・・」


 誘雌は、やはり端から僕の話を寝ぼけ話と決め付けることは無かったが、客観的にその部分も可能性の一つとは考えている様である。しかし、僕には自信がある。絶対に”夢”や”妄想”ではない。


「夢とか、思い込みじゃあないですって、それには自信があるから。ホントに」


 つい大きな声で断言してしまった僕に話の流れから否定するのかと思ったが、彼女は真剣な顔で


「そうね、この場合、私もそう思うわ」


「そう思いますか、やっぱり」


 あっさりと肯定してくれた。


 ――― さすがは先生(性のだけど)


 何か解決した訳ではないのだが、ホッと安心をして少し気が楽になるのを感じる僕。

 強制的に自分のことを僕らに”先生”と呼ばせていただけのことはあると言える。


「さっき玄関での吸ちゃんの行動の一部始終を見たところ、そう、具体的に言うと一番美味しいエサに向かって彷徨さまよう視線の脆さ、それに酸素を補給する呼吸速度から分析すると、夢や妄想ってのは有り得ないわね」


「いや、そこは具体的に言わなくても。それと吸ちゃんだけは勘弁して下さい」


 そんな僕の小声の突っ込みは、スルッと聞き流して、誘雌は昔同様マイペースに話を進める。


「一般的な性に目覚めたばかりの青少年が、パンツに手を掛けたところで夢が終わる筈がないのよ。青少年の夢ってのは、もっと心が現れていいわけよ。そんな中途半端なところでそれで終わるはずがないの。

 だいたい、吸ちゃんはその時、夢精はしたの?」


「ちゃんとって、何ですか、す、する訳、ないでしょ!」


「その様子じゃ、その後に自慰行為にも至ってないわね」


「それも関係ないでしょ!」


 誘雌は、そんな僕の突っ込みを全て聞き流し、話を続ける。


「じゃあ、もう”夢”や”妄想”って線は無い訳よ。しかし、かと言って魔法使いに魔法少女、使い魔ってのも無いわね。だいたい私のところより先に吸ちゃんのところに現れるはずがないもの。

 それに、地底人は家の鍵が無きゃ入れないし、魔界の何ぞや、妖怪の類が下半身に拘る訳がないわ。そうなるとその珍現象の正体は・・・」


「そうなると?」


「ってことは姉ちゃん、正体は?」


 僕の疑問に、貴樹も乗ってくる。

 途中から、どちらかと言うと相談と言うよりも誘雌の話の面白さに惹かれて、楽観的な結論を待っていた僕。高貴もそうだったのではないかと思う。しかし、彼女が語った可能性の中に一つ残っていたものがあった。それが、


「そりゃあ、霊の類でしょ。消去法で」


 あっさり怖いことを仰せられる誘雌。手足が急激に冷たくなる僕。多分顔も青かったのだろうと思う。高貴も言葉を失う。


「そんな青い顔で心配しなくても大丈夫だって。大船に乗った気持ちで私に任せなさい!」


 金縛りなのだから霊と言う言葉が意外ではないはずなのだが、そうハッキリと言い切られてしまうとビビりまくってしまう僕。それに高貴。それでも、誘雌の自信満々な言葉が、まさに宗教的な救いを与えてくる。

 

※因みに、それ以降の僕は誘雌の指示を何の疑いも無くと言えば嘘になるが、そう言っても過言でない程の信頼感をもち、彼女の指示に従うことになる。


 僕が誘雌からの質問に答えて行く中で、誘雌は珍現象の起こる日にはある規則性に気付いたと言うのだ。

 まず最初に起こったのは、高校の入学試験の終わった当日であって、その後に起こった3回が、入学発表の日、次は入学案内が届いた日、一番最近に起こったのが、事前登校の前日である。

 いずれも、高校に関係した日に絡んでいることである。更に、そこから誘雌は次に珍現象が起こる日を推測したのである。

 それが、彼女曰く入学式の前日の夜なのだ。確かに言われてみれば関連性から考えて、入学式の辺りと言うのは、次に起こってもおかしくはない。

 誘雌曰く、「きっと、霊も興奮するのね」だ。すなわち、入学試験が終わって、試験が上手くいったことで興奮。試験発表で入学が決まって興奮。更に、入学案内が届いて興奮。そして、事前登校が明日に迫って興奮てなわけだそうだ。

 それから行くと、入学式が終わった当日の夜よりも、前日の夜の方が興奮するはずと言うのが、誘雌の論理である。

 と言うことは、明後日の夜が、5回目の珍現象の日と言うことになる。


 誘雌はそこまで説明すると、何か思いついたような顔をして、電話をしてくると言い、一旦部屋から出て行った。

 そして彼女は暫く、時間にして2~30分くらいだろうか、経過して戻ってくると、手の中にくしゃくしゃの丸めたカラフルな布を持って戻って来た。そして、彼女はこう言った。


「吸ちゃん、明日はこれと一緒に寝て頂だい」


 彼女が開いた掌からは、縮んだバネが元の形状に戻ろうとする様に、様々な色彩と形態の3枚のショーツが飛び出したのである。


<つづく>


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