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パンツは、はいててもいいですか?  作者: 北 郷
第2章 高校編(パンツをめぐる攻防)
2/6

金縛りVS最強の綿

時間は、高校入試に戻って。

主人公、須佐野夏樹すさのなつきは人生初の金縛りに会うのだった。

 ――― 時間は2年10カ月ほど遡って・・・ ―――

 僕、須佐野夏樹すさのなつきの高校入試は、2日間に渡って行われた。

 その2日目の最終日を終えた僕はその帰り道で、同じ高校を受験した腐れ縁の幼馴染、木戸高貴きどたかきとファーストフード店に立ち寄ることにした。

 名目は試験の反省会だったが、お互いにかなり疲れていたのだろう、立ち寄った駅前のファーストフード店でのポテトからはいつもの美味を感じることも無く、多少の会話を終えると、そそくさと口の中に押し込んで、何方からともなく席を立つこととなった。


 家に帰ってからは、両親の気遣いで、夕食の間も試験の話に触れることも無くまったりとした時間を過ごすと、そそくさと二階の自室へと向い、いつもより一時間も早くベッドで横になった。

 試験は、まあそれなりに出来たし、倍率はと言えば1.1倍。間違いなく名前も書いたし、余った時間で見直しまで出来たのだから、まあ、滅多なことでは落ちることはないだろう。

 そんな余裕が、不安よりも疲れを優先させていたからだろうと思う。


 それよりも、僕には試験場でちょっと気になる出来事があったのだ。それは、試験場を出る時に、物陰から僕に視線を向けていたのではないかと思われる人影があったことである。

 鈍感な我が友、高貴たかきは全く気付かなかったらしく、僕のことを自意識過剰と決め付け上、反省会の時も簡単に僕の話を切り捨てやがった。しかし、同じことが3度もあったのだ。幾ら慎重派の僕でも自意識に対し、普通に自信を持ってもいいんじゃないだろうか?


 ――― あれは、絶対に僕を見ていたに違いない!


 残念なのは、僕が視線を向けると巧みに物陰に隠れてしまうので、男女の確認すらも出来なかったことだ。もしかすると、既に僕のことを見初めた可愛い女の子だったかもしれないと言うのに。

 まあ、それは高貴に百歩譲ったとして自意識過剰だったとしても、特に恨みを買ったりうようなことをした覚えもないのだから、単に小学校の頃の懐かしい友人だったのかもしれない。もしかすると、単に向こうの見間違いと言う落ちも考えられるが、そこは前向きに考えるべきじゃないだろうか。入学してからの楽しみも一つ増える分けだし。

 そんなことを思いつつ、僕はi-Podのヘッドホンを外して、布団を頭まで被った。


 両目を閉じると、静まり返った部屋が何故か今日はちょっと気にってしまう。これも試験のことが頭の中から抜けてしまい、周りの音を気にする余裕が出来たせいだろうか。

 雨も降って無く、風が無いので外からの音も聞こえて来ない。大通りから遠いせいもあるが、車も通っていなければ、人通りもないみたいだった。

 

 ――― 静かだなぁ

 

 そう思いながらも、僕は早々にウトウトしてしまったらしい。

 それから、どの位経ったのか分からないが、窓ガラスが小さく”ゴン”と言う音を鳴らしたのを耳にしたのは、ぼんやりとした意識の中であった。

 寝ぼけながらも、誰かが投げた小石が当たったような音ではさそうである。そんな判断をした。


 ――― 風か・・・?

 

 先程まで無風だったことを忘れ、そう判断すると、僕は眠さを優先させて起きるのを止めた。

 すると、もう一度、窓が同様の音を鳴らしたのである。そして、以降その音は、ほぼ等間隔の間で音を鳴らしていく。そう、時間にして、2~30数秒置きくらいだろうか。

 何度かその音を耳にすると、流石に再び少し気になったのだが、眠いと言う煩悩は、風のイタズラだと思い込むことにすることも可能とするみたいで、いつの間にか、僕は再び眠りについていたのだった。

 

 それから、どれくらい寝ていたのだろうか、急な悪寒と、言葉で言い表せない異変を体に感じ、僕は不快と共に目を覚ましたのである。

  

 ――― なんだ、これ?


 良く分からないが、血の気が引いて行くのを感じる。そして、


 ――― か、体が動かない・・・


それは、亀甲縛り(実際にどんなものかは知らないが)以上に固い肉体的な束縛であった。

 瞬間的に、何か霊的な、或いはオカルトチックな拙いことが起こってしまった恐怖に襲われる僕。それが直感からか、状況から連想した先入観からなのか分からないが、とにかく怖いことに間違いが無い。心臓の鼓動は高鳴り始め、既に全身が冷たい。全身の血液が一気に抜けてしまった感じだ。とにかく、そんな状態に本能が焦り始めた。

 だが、焦ったところでこの状況から逃れられない。体が全く言うことを聞かないと言うより、端から動かないことが当たり前の様な気持ちになってしまっている。どうにもならない術に掛かったようなのだ。

 もちろん、声も出ない。

 ただ、不思議と視界は普通に開けているのっだ。 

 消し忘れた照明は、煌々と点いているのは分かるし、そこが間違いなく自分の部屋で、ベッドの上であることも分かる。


 ――― これって、やっぱ・・・

 あれ的なものなのかぁ?

 あれかぁ、あれぇ!

 

 史上最高に焦っている割には、何故か良からぬことを考え出す方向には頭が働く。


 ――― 一体、この後に何が待ってるんだろうか↘

    僕はこの後、無事でいられるのか・・・


 そう思うとさらなる恐怖が我が身を苦しめ、気が狂いそうになる。


 ――― やばい、やばい、全然やばい!


 が、何も出来ないし、何かをしようなんて思考の余地もない。

 丁度その時である。追い打ちをかける事態が発生した。

 足元に何か感じるのだ。

 何らかの人的生物が乗り上がって来た感覚を感じるのだ。

 もちろん見えはしない。布団の中の出来事だ。でも間違いなく人的なモノだと断言出来る自信があった。

 更に、その重みは、のそのそと徐に僕の体の上を這い上がって来るのである。

 なのに、不思議とそれはそれ程重くは無い。それが返って不気味っだたりする。

 僕は、もうパニック状態。声にならない声を脳内の喚き散らす。

 しかし、そんな中でも、防衛本能は働く。唯一思うのは、これ以上、上って来ないでくれと言うことだ。


 ――― 来るな、これ以上来るな、戻ってくれ・・・。


 時間的には全く不明だが、そんな長い時間ではないと思う。そんな願いを聞いてくれたのか、どうなのか、物体はのそ~っと膝の上を越えたろころで止まったのだ。


 ――― や、やった、止まってくれた。


 でも、降りてはくれない。

 

 ――― なにをする気だ?!降りてくれ、戻ってくれ・・・。


 そうだ、お経だ、お経。そう思った無宗教な僕は知っている限りの仏教用語を心の中で叫んだ。

 だが、そこから何の効力も得られない。

 そこで止まった人的ひとてき物体なのか霊体なのかは、一呼吸と思われる間の後、始めたのである。

 その得体の知れない何かが、引っ張り始めたのだ。

 パジャマを来ていない僕のパンツの裾を二本指で摘まみ、物凄い力でずり下ろそうと引っ張るのである。

 僕の視覚にその事実は見えてはいない。でも、断言して言える。絶対に汚そうに二本の指に摘まんで引っ張っているのは、かつて脱がされた経験の無い僕でも分かる。


 ――― 何故だ。僕のところに現れるんだ。

 決して、今まで霊感が強かった訳でも無ければ、想像力が豊かだった訳でもない。

 なのに、何で・・・。

 何て、不幸だ、不運なんだ。

 この先どうなるのだ。パンツを脱がして何をしようとするんだ?

 まさか、まさか、まだ用途をフルに使い熟していない僕の大切なお友達に何かしようとするんじゃないだろうな・・・まさか。 


 それは物凄い力だ。荒れ狂う台風の様な凄まじさと表現するのが適格だろうか、或いは、隕石が大気圏に突入した時のエネルギーと表現したらいいのだろうか、とにかく物凄いことこの上ない。

 もう、僕は恐怖と不安のどん底でパニック状態。脳は既に大爆発、戦国の嵐。

 なのだが、そんな中でも、僕の中にも冷静さが少しだけ残っていたらしい。僕は気づいたのだ。

 それは、何故だろう僕のパンツは微動だにしないのである。寝相のすこぶる良い僕は、姿勢よく”気お付け”の姿勢寝ていたので、掌は元々パンツに触れていた。その掌に当たる触覚が全く変わっていないのである。

 もちろんパンツにベルト等してはいないし、もちろん金属製でもない。普通の綿製品である。


 そこで、何故だろうか?僕の心にスッと安心の火が灯ったのだ。

 冷たくなった背筋に熱が戻って来たのだ。

 すると、どうだろう。気が少し緩んだ瞬間、僕は再び眠りについたらしいのだ。


 ・・・・・・。


 気が付けば、カーテンの隙間からは点けっぱなしの照明が比較にならない、まばゆい光が部屋の中に差し込んでいた。どうやら、戦乱の夜を終え、朝を迎えたのである。


 僕はハッと思い、飛び起きてみる。すると、体はいつもの様に問題なく動く。

 そして、下半身に目を向ける。

 あれだけ強い力でパンツを引っ張られているにも関わらず、しっかりパンツは穿いたままである。 

 どうやら、最後の砦は守られていた。それに、 中を覗くと、良しっ、異常は窺えない。

 意外と綿と言う素材は強いらしい。いや、ゴムが強いのか・・・。

 

<つづく>


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