とある少年の日記
短めですが物語においては重要な部分だと思います
とある少年の日記
七月七日(木)
文芸部に入ってから二カ月以上たち、多少はみんなとも話が出来るようになった。話をしてみて気付いたのだが、ここには文学の才能を持つ人たちが実に沢山いると思った。その中でも、三田村さんは図抜けている。
文芸部一同で彼女の小説を読んでみたのだが、読み終わるや否や方々から称賛の嵐が起こった。そして僕もごたぶんにもれず、彼女の小説に感動を覚えた。彼女の描く物語は、頑張り屋の女の子が努力に努力を重ね、最終的に報われるという、ある意味では実にオーソドックスなものだ。だが物語に出てくる少女の健気さに読者は心を打たれ、その優しさに人々は引きこまれてしまうのである。優しく人の心を包んでくれる彼女の小説は、あまり感受性が豊かではない僕には描くことが出来ない繊細な文章によって形作られている。三田村さんは、いつも部室でお菓子を食べて友達を話しているばかりだと思っていたけど、本当は多分沢山の人生経験を重ねてきたはずだ。だからこそ、あれだけ良い文章が書けるのだと僕は思う。僕ももっと他人と関わり、感性を磨いて、彼女の様な文章を書いてみたいと思った。
ところで、彼女はかつてとある文芸賞で大賞を受賞したことがあるらしい。確かにあれだけの実力があればそれも頷けるというものだ。僕はこれまで数年文章を書いてきて少し有頂天になっていた気がする。人より文章が書けると自負していた部分があったのだ。だが、三田村さんの様な他の小説家の卵に触れあうことで、僕は自身の未熟さを痛感することになった。だが、僕はそれで自信を喪失し、書く意欲を失ってしまったかと言えば、もちろんそんなことはなく、前述したようにむしろ俄然やる気が出てきたほどだ。僕はこれまで以上に魅力的な文章表現を意識して書いていくことにしようと思った。
そう言えば、部活中誰かが三田村さんに賞状を見せてほしいと言っているのを聞いた。あれは確か、中根くんだっただろうか。彼はこの部活に入りたての頃僕に初めて話しかけてきてくれた人だ。彼は非常に熱心に人とコミュニケーションを取る。小説を書くのははっきり言ってこの部活の誰よりも下手だが、そういった他人と積極的に話すことは、僕はもっと真似をした方がいいと思った。そしてそれが感受性を磨く第一歩であるはずだ。
賞状に関しては僕も少し興味がある。僕はこれまで何かの賞を取るということとは縁遠かったから、何かに秀でている証をこの目で見ることは決して無駄じゃないと思う。恐らく小説を書く意欲もより向上するだろう。実に楽しみである。
それにしても、今日は珍しくこの日記を明るく書けた気がする。高校に入って三カ月経ってもまだ、僕には決まった友達が出来ていない。快適な学生生活を送り、もっと日記を楽しくする為にも、数日以内に是非とも友達を作りたいところだ。
今日は気分が良かったが、あの小説を少しばかり書いた。嫌なことがあった日と比べると、彼女の性格に多少の差が生まれている様な気がした。今日の彼女はただ優しいだけでなく、少し情熱的だった。僕の背中を押そうとしてくれた。僕は彼女の言う通り、もっと積極的に生きていこうと思う。そしてこれが一過性にならないように気をつけようとも思う。
変に思い悩んで、折角の良い日を台無しにしてしまってはもったいない。今日は少し早いがもう寝ることにする。今日はコーヒーも飲んでいないし、恐らくすぐに寝ることが出来るだろう。
では、また明日。
色々時系列がごちゃごちゃですがついて来て下さい><