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夢幻の騎士  作者: 遠坂遥
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真辺梓の後日談

最終回です。

遺された騎士は、亡き恋人に何を思う?

真辺梓の後日談


 灰の臭いが、私の鼻をひくひくさせる。煙は真っ青な空へと昇っていく。まるで、彼の想いごと空に届ける様に。

 私の得意なことは小説を書くことだ。正直、彼よりも実力は上だと思う。私はあの日のことを、彼の文体や表現を参考にして記した。文章を書くのは随分と久しぶりだったが、それなりに上手く書けたと思う。

 ところで、実に不思議なことなのだけれど、あれから数日経つに連れ私の中から彼と過ごした記憶や、彼を好きだったはずの心が徐々に薄れてきている様なのだ。あれほどまでに彼のことで私の頭は一杯だったのに、あまりにもあっさりと私は彼を忘れてしまいそうなのだ。

 だけど、彼を忘れたところで何かが解決される訳ではない。私の中には今喪失感しかない。心にぽっかりと穴が開いてしまったかの様なこの感覚は、恐らく当分の間癒えることはないだろう。

 いくら抗おうとも、彼に関する記憶は刻一刻と薄れていっている。まるで夢から覚めるとその夢の内容はほとんど思い出せなくなってしまう様に、目覚めは、楽しかった記憶も想いも、全てを消し去ってしまうのだと私は思った。彼が私に与えたものが、全て夢の彼方に消えていくのだと思った。


 私は先日手術をした。その結果、私の病は完治した。足は相変わらず動かない。だけど、私は死ななかった。生きながらえることが出来た。

 鳳君は光士郎の葬儀の時私に言った。

 「君を助けられたことは良かったが、彼を死なせてしまった。出来ることなら、僕はみんなを助けたかった。彼がしたことは、僕はまだ深く理解出来ていない。まだまだ、僕には心を整理する時間が必要なようだ」と。

 心の整理が必要なのは私も同じだった。身体は治った。だけど、さっきから言っている様に私はちっとも晴れやかな気分にはなれなかった。私の心の穴は塞がる気配が全くなかった。そしてそれが今後埋まるのかも、今の私には分からなかった。

 光士郎は私に、牧村光士郎という人間から、真辺梓という人間が解放されるべきだと言った。でも、その必要が本当にあったのか、今の私にはまだ分からない。

 そもそも解放とは何だったのか。私自身は、今まで決して彼に束縛されていたつもりはない。だから私は何からも解放されたりしない。確かに私は彼とのことを深く考え過ぎるあまり、あまりに極端な答を選択してしまった。だがそれは私が悩みぬいて出した結論だ。その答に問題があったとしても、その選択に後悔など含まれてはいない。彼がいなくなったのは、私にとって解放などではなく喪失でしかなかったのだ。私という人間のアイデンティティーを、私は喪失したのだ。

 今の私は、ぐらぐらの今にも崩れそうな吊り橋の上に立っている様なものだ。一歩間違えれば壊れて、バラバラと崩壊していくだろう。

 それくらい今の私は不安定な存在だ。それは恐らくこれからしばらく続くと思う。

 死の縁で光士郎は私に、この世界はもしかしたら彼が見ていた夢なのかもしれないと言った。私の夢が、私の悲しみを表した凍える様な寒い世界だったのに比べ、彼の夢は実に温かかった。想いは捻じ曲げられたのかもしれない。だけど、そんな温かな世界なら、それに浸るのも悪くないと、私は思うのではないだろうか。彼は、夢は有限だと言った。だけども私は、決して夢に限りがあるとは思わない。彼の夢はどこまでも深く、私のことを愛してくれたのだから。

 

 色々と思う所はある。辛くて、泣きそうになることもある。だけども、今の私は決して後ろ向きな訳じゃない。なんとか前向きになろうと努力しているのだ。

 少なくとも、今の私はまた夢の中に引き籠ったりはしない。いくら温かくとも夢は夢だ。現実で生きて欲しいと彼が言ったのなら、私は現実と向き合わなければならない。

 覚悟は出来ている。私はもう彼との夢の日々を懐かしんだりなどしない。

鎧は夢幻の彼方に置いてきた。構えた剣は、十字架に供えた。

 騎士はもう現れない。夢の中に置き去りにしてきた。もう騎士の力は借りない。

 私は、裸のまま歩き出す。

いつか、未だ見ぬ幸せのありかを探して、私は一人で歩き続ける。

もう決して、振り返りはしない。それだけは、約束する。


以上で物語は終わりです。

長々と駄文に付き合って下さった方、どうもありがとうございました。

難解と言うよりも、単純に分かり辛いストーリーだったかもしれません。それでも今の自分にはこれが精一杯なので、どうか寛大な気持ちでお願いします笑

少しでも沢山の方が読んでくださって、沢山の人が感想をくださったら嬉しいです。

ありがとうございました!

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