本気?
遂にこの日がやって来た。
須藤先生に会う日が…。
(どうすんの俺!!!編集者って言っちゃうのか!?)
《じ、実は、俺、須藤先生の編集者なんです!》
《な、なんだって!って事は俺は作家!あ、記憶が戻った!し、死んでやる~!!!》
《はやまらないでください!!!》
なんて事になるんじゃないか?
やばいだろう!それは!
そんな事を考えながら俺は、須藤先生の病室に着いてしまった…。
「失礼します。桜田です…。」
「久しぶりだね。桜田。」
や、やめてくれよ!そんな純粋な顔みたら嘘なんてつけないよ…。
「あ、あの~」
「あ、この間貸してくれた本の事?」
「え、いやぁ~あのですね…。」
「面白くなかったよ。自分の本だしね…。」
「その話じゃなくて…え!?」
今、なんて言った?自分の本?なんで…。
「何?桜田。」
「だって…。なんで…。」
困惑状態の俺を見て須藤先生がクスッと笑った。
「やっぱり、かわいいなぁ~桜田。その表情、たまんない。想像以上だよ。」
何言ってんの。
「記憶は戻ってたんだ。俺が目を覚まして、桜田が先生を呼びに言った時にね…。」
そんな前から…。
「何?不満そうだね。」
「だって、そんな事一言も言ってくれなかった…。じゃあ何で今まで、記憶喪失のふりなんか…。」
「桜田が苦しむ顔が見たかったからだよ。自分を責めてる顔が…。」
何だよそれ!
「あんたって最低な奴だな!」
ベストセラー作家でも関係ない!人間として嫌い!
「…だから何?」
「え?」
声のトーンがいきなり下がった?
「だから何っていってんだよ。べつに最低な奴でも構わないよ。自分でもよくわかってるし。」
「開き直るなよ!」
「開き直るってなんかないよ。ただ、おもしろいからやっただけ。」
「おもしろい?」
何が?
「桜田が。必死に俺の正体隠そうとしたりさ。オロオロしてる姿が。」
「あんたって…!」
「なぁ、桜田。これからは、容赦しないから。」
「何がだよ。」
「今まで、いい人やってて、いい加減疲れてたし、もう、いいかなって。」
「だから、何が………わぁ!!」
須藤先生がいきなり俺の腕を引っ張った。
「何すんだ…………。」
よ、という前に俺はキスされていた。