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天使のツバサ  作者: 黄原凛斗
天使どもがやってくる
9/9

夕飯は大人数で

「俺様最強天界戦士であるショウベルクウス様が来たからには大船豪華客船に乗ったつもりで頼るがいい!! さあ崇めろ称えろ!! 俺様は褒めれば伸びるぞ!!」


『…………』


 なぜかいる霧夜も敵の悪魔も、そして俺も思わず黙り込む程に痛々しい。天使二人はもう慣れたという感じが漂ってくる。

「ば、バカ天使が増えた……」

 呆れつつも最初に声を発したのは悪魔だった。その気持ちはとてもわかる。

「馬鹿天使とはなんだ!! この知性溢れる全知全能天才の俺様を捕まえておいて馬鹿とはなんだ!!」

「言葉の端々から馬鹿臭がするな」

 霧夜がボソッと呟く。残念ながらとてもよくわかってしまうその気持ち。

「ショウ、加勢する気なら――」

「聞いてない!! アキは聞いてないよ!! て、天使が三匹もいるなんて聞いてない!!」

 突然、悪魔がヒステリックな声で騒ぎ始めると笛を構えた。しかし、その瞬間、ショウという天使が動き悪魔の腹を一蹴した。

「がっ――!?」

「動くな悪魔。すぐに滅してやる」

 蹴り飛ばされた先では天野が剣を構えて白い輝きを放つ。しかし、悪魔も大人しく滅されるつもりはないのか必死にあがいて天野とぶつかる前に空へ飛んだ。

「天使にエクソシスト……無理!」

 悪魔はその場で音もなく消えさり、学校を包んでいた異様な雰囲気はゆっくりと溶けていった。

「……ショウ」

「ショウ君……」

 困ったような呆れたような天野とシオン二人。すると、ショウは鼻で笑う。

「はっ、お前ら随分と手こずっていたようだな。そもそも俺様から離れるとは言語道断。今後は俺の指示に従い俺様の覇道を支えるのだ! ははははははっ!!」

「改めましてカイトさん。これからどうぞよろし――」

「おいシオン! 俺様を無視するな!」

「ショウ落ち着きなって~。悪魔逃がしちゃったしー」

「……はぁ……天使が増えて始末に負えない」

 霧夜のため息に俺は深く頷く。というかお前本当になんでいるんだ。







 屋上で天使たちが騒がしくしているのを遠くから見つめる人影があった。しかし、即座にその場を離れて身を隠す。

「……本物の悪魔……まだ下級だからよかったものの……」

 校庭から屋上を見上げた彼女は悔しそうに歯ぎしりし手にした札を仕舞い込んだ。

 先ほど、二人が無事に屋上にたどり着けたのは彼女の術によるものだが気づかれることはなかったようだった。

「絶対、守ってみせる……海斗……」

 寂しそうに目を伏せた恵美は生徒たちが正気に戻る前に教室へ向かった。









「とても美味しかったです。ご馳走様でした」

「ふん、人間の作ったものにしては中々上出来だな」

「わかったから頼むから家から出てってくれ」

 気づいたら半分諦めていた天野ことユラはともかく新手の天使二人(そういえば天使の単位って何だろう)が当然の如く夕飯を家に来て食っている。そしてトドメには霧夜が何食わぬ顔で味噌汁を啜っていた。

「えっとさ……この天使どもはわかるけど何で霧夜まで……」

「飯」

「飯たかりに来たのかよ!?」

「――と、お前に言うことが色々ある」

 でも飯を食いに来たのも目的の一つなんだな。

「何だ。エクソシストもどきが天使である俺様たちよりも活躍しようという腹か? はっ、おこがましいにも程がある」

「黙れ三流以下の四流天使。滅するぞ。味噌汁おかわり」

「俺様も味噌汁おかわり!!」

「お前らさ、この食費の負担全部俺なんだぜ……」

 まあ生活費から削ってるから俺の財布が痛いわけじゃないが今後の出費を考えるときつい。ありえないだろうけどまさか霧夜まで住むとかないよな。頼むからそんなこと言わないでくれよ。

「念のため言うけど僕は言うべきことを言ったらすぐ帰る。そんなに遠くないしな。あいつはまだこそこそ隠れてるみたいだし」

「あいつ?」

「こっちの話だ。さて、もうわかっている通り、お前は『フェリシタル』と呼ばれる存在だ。これはある種の遺伝性の呪いみたいなもので僕の一族はその力を守るために代々裏から支えていた。先代フェリシタルであるお前の母、椎奈様から受け継いだもので十代後半からその力が発動するようになっている。最も、個人差があるようだがな」

 いきなり母親の話が出てきてもピンと来ないというか、そんなことまで知っているのかとただただ驚くばかりだ。

「つい最近十七歳になったばかりでようやく力が現れるようになり悪魔どもも勘づき始めた。下級は僕が四度ほど葬っているが先ほどの下級でも腕の立つ悪魔が襲ってくるとなると危険だろう。四流天使は使えないしな」

「誰が四流だエクソシストもどき!!」

「僕がお前に求めることはできるだけ力を安定させ自分の身をある程度守れるようにすること。そしてできることなら天使どもがいなくても問題ないほどの力をつけることだ」

 ショウの叫びを完全に無視して話を続けた霧夜の要求は数秒考えてようやく無茶ぶりだということに気がついた。

「いやいやいや。俺つい最近どころか今の今まで一般人だし。わかんねーよ」

「わからない、じゃない。やれ」

 やれと言われても。

 とりあえず、霧夜は俺の味方(味方……か?)らしいので少しだけ安心する。

「そういえばシオンとショウ。二人はよく学校の場所わかったね?」

 天野、ことユラは嬉しそうにおかずをつついているシオンに言う。

「あ~、私はユラちゃんの気配たどって歩いてたら学校についたのですが……学校で迷子になってしまって。その時丁度カイトさんと会ったので運が良かったです」

「俺様は適当に歩いてたらなんかデカイ結界張ってあったからとりあえず壊してみただけだ」

 シオンはともかくショウの理由が色々ツッコミどころしかない。

「本当は三人揃ってカイトに会いにいくはずだったのに転移ゲートが不調で別々に飛ばされちゃったんだよね。私はかなり近かったんだけど」

 そんな事情があったのか。

「これで、明日から一緒ですね」

 シオンの不吉な言葉。それはつまり――






 次の日。





「で……またこれかよ……!!」


 黒板に丁寧に書かれた『花ノ宮紫苑』と乱暴に書かれた『舞岡翔』という二つの名前。そして教壇のすぐそばに立つ二人の姿。

「花ノ宮さんと舞岡君は汐崎君と天野さんの遠い親戚だそうで見知らぬ土地で苦労することもあるだろうから、皆さん仲良くしてあげてね。二人とも、一応自己紹介、ねっ?」

「花ノ宮です。つい最近まで海外で暮らしていたので右も左もわかりませんがどうか色々教えてくださると嬉しいです。趣味はガーデニングとお裁縫です」

「舞岡だ」

 これまた極端な二人の反応。『花ノ宮紫苑』ことシオンはきっちりと制服を着こなしており優等生といった佇まいだ。一方で『舞岡翔』ことショウはさっそくだらしない一直線の服装でブレザーなんかもうすでに改造されているような気がする。うちの校則は割と緩いので多分平気……だと思う。髪に関しては紫だの青だのよく誤魔化せたなと思ったが一応セーフだったらしい。この学校、大丈夫だろうか。

 そしてさりげなくユラと俺が遠い親戚設定で更にシオンとショウも親戚だという苦しい言い訳になっている。聞いていないぞ。

 そして例によって清楚でお淑やか美少女のシオンは男子に、態度は悪いく不良っぽいが顔は整っていてクールなショウは女子に大人気だった。


『やっべ!! レベル高すぎだろ!! マジ美少女!!』

『本物の人間!? 冗談抜きで人形みてー!!』

『うおおおお!!紫苑ちゃーん!!』

『きゃああああ!! 超カッコイイ!!』

『モデル! モデルとかじゃないの!? イケメンすぎるでしょ!!』

『翔君こっち向いてー!!』


 相変わらずこのクラスってテンション高いな。

 ざわめく教室の隅にいる霧夜に視線を向ける。不機嫌が三倍くらいになった顔で窓の外を見て何やら考えているようだ。昨日気づいたけどこいつってうるさいの嫌いなんだな。

「はぁ……」

 あ、寝た。



 そんな感じで、騒がしい日常が始まろうとしていた。




時間が空きすぎた……。

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