現れた三勢力
転校してきてから一日で誰かと一緒に登校、しかも相手が異性となると話題にならないはずがない。
天野を振り切って一人で登校しようとしたのにも関わらずしつこくくっつこうとしてくる。
恭一はそんな俺を見て一言、「刺されるなよ」と言い残して校舎に走って行った。
「天野……いい加減離れてくんね……視線痛い」
「えーなんで? それと天野じゃなくてユラでいいよー」
誤解度高める真似だけはしたくないのでそれは無理。
深い溜息をつき教室に入ろうと扉を開け――た瞬間女子に掴みかかられた。
「汐崎いいいい!! アンタどういうつもり!?」
「うぇっ、苦し――」
「最低最低最低っ!」
乱暴に放される。その勢いで尻もちをついてしまった。
何がなんだかわからない状況でクラスの女子からの冷たい視線と男子の好奇の視線が一斉に突き刺さり冷や汗がどっと吹き出る。
後ろで首をかしげてる天野は完全に理解していないためよくわからないといった表情だった。
掴みかかってきたのは恵美と仲のいい女子で殺さんばかりに睨んでくる。
「な、なんでいきなり――」
「とぼけんじゃないわよ! 天野さんを家に泊めたんでしょうが! 出会って一日で女の子連れ込むってどーいうこと!? 恵美というものがありながら――」
「なんか根本的なところから誤解してないか!?」
勘違いが酷いくらい先走って伝わっているようでひそひそと明らかによくないことを言われている気がする。被害妄想と言われても仕方ないがそんな気分に陥るほどなのだ。
「おい、邪魔だ」
そんな状況を打ち破ったのは不機嫌が形になっているような男、霧夜優矢だった。
俺が扉の前で尻餅をついていたからなのだろうがまさに救世主というタイミングだった。
クラスメイトは霧夜の威圧感に気圧されて無言になる。
そして霧夜は俺を睨んだかと思うとまるで何もいないかのように通り過ぎていった。
結局あのあと先生が教室に来たおかげで何とか追求から逃れることができた。
が、昼休みなるとそうもいかず四時間目が終わった瞬間に全力で教室から逃げる羽目になった。
「あーもう、めんどくせぇ……天野――はついてきてないな」
適当に逃げた先は校舎裏。特に行く宛もないのでフラフラすることにした。
「あの~、すいません」
唐突に背後から声をかけられたかと思うとそこにいたのはウェーブがかかった薄紫色のロングヘアの女の子だった。年は恐らく自分とそこまで変わらないだろう。日本人離れした容貌の彼女は可憐で青い目は透き通っている。
最近、同じようなことがあった気がしたが思い出す前に女の子が口を開いた。
「私、シオンと言います。初めましてカイトさん。まさか迷い込んだ先にいるだなんて――」
なぜかいきなり自己紹介をされたうえに俺の名前を知っている。やっぱり拭いきれない既視感があるなと考えていると不思議な音が聞こえてきた。
「……何だ?」
「――まさか!? カイトさん!耳塞いでください!!」
いきなり強く言われ思わず言われたとおり耳を塞ぐと微かに甲高い音が響いた。
同時刻、教室で質問責めにあっていた由良は謎の音が響いた瞬間肌がぞわりと粟立つのを感じた。
そして、それと同時にクラスメイトが例外なく倒れたかと思うと力が入っているのかと疑うほどだらんとした動きでユラに襲いかかった。
「――!? な、何!?」
由良はそれを避けるが次々と襲いかかるクラスメイトを攻撃するわけにもいかず防戦一方に追い込まれてしまう。
「わわわっ……!」
「何をちんたらやってるんだ? 所詮能無しだな」
冷静な声が聞こえたかと思うとクラスメイトたちを拘束する光の鎖が出現し動きを止めた。
そして教室のド真ん中にこの時代、普通の人は持つはずのないもの――細身の剣を突き刺した。
「しばらく眠ってもらうだけだ。お前らみたいな無能と違って僕は人間の犠牲を出さない」
「あ、あなた……」
彼――霧夜優矢は剣を軽く振ったかと思うとスッとまるで持っていなかったかのように消した。
「さっさと動け三流天使。悪魔のおでましだ」