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天使のツバサ  作者: 黄原凛斗
天使どもがやってくる
4/9

日常の崩壊と再生


 放課後、天野は女子たちに詰め寄られていた。

「天野さん、部活とか興味ない?」

「折角だから体験に来てよ!」

「ぶかつ……? よくわからないけどちょっとなら」

 そのまま女子どもに引きずられていく天野を追いかける恵美。恵みの意図が全く見えない。

 恭一が近寄ってきて苦笑しながら聞いてきた。

「んで、実際由良ちゃんとは何なんだよ」

「いきなり名前呼びかよ……。別に何にもないって。ちょっと電波入ってた」

「電波娘か……いいじゃないか」

 こいつは何が言いたいんだ。守備範囲が広いと自負している恭一は天野に興味があるらしい。

 俺よりモテるくせにちょっと軽いところがあるんだよな……長く付き合ってるところを見たことがない。

「そういや今日は特売日だったな……早く帰るか」

「お前そういうところは変に家庭的だよな。まあ、お前らしいけどさぁ」

 恭一は笑いをこらえながら俺の背中を叩く。何かおかしいところあったのか?

 首を傾げながら教室を出て特売をしているスーパーへと向かった。



 その頃――。

 ドリブルの音が体育館に響く。バスケ部の面々を前にして由良は自称初めてのバスケを体験していた。

 現役バスケ部たちが驚愕するほどの運動神経で次々とシュートを決めていく。

「天野さんすごい運動神経いいのね! 本当に未経験? バスケ部はどう? 楽しいわよ!」

「何言ってるの、天野さんはソフトボール部のほうが向いてるわ!」

「あんたたちうるさいわね! 天野さんはテニス部に入るべきよ!」

 女子たちが不毛な争いを繰り広げてる中、恵美が由良に話かけていた。

「天野さん、あのさ……言いたくないんだけどその……」

「ふぇ? どしたの」

 由良は傍にあったタオルで汗を拭い貰ったジュースを飲んでいた。

 その様子を見て恵美はわずかに躊躇い言葉を飲み込んだ。

「ううん、何でもないよ」

 いずれくるその時は今ではないから。



「おーし、久しぶりに買いだめしたなぁ。しばらくもつだろうけど少し買いすぎたかな」

 両手にスーパーの袋を持ち帰路につく。

 家に帰っても自分一人なので食事くらい適当にしてもいいと思ったことがあるが恵美にちゃんと食べなさいとお説教を食らって以来ちゃんと自炊をしている。

 元々料理は嫌いではないが独りで作って独りで食べるため虚しいところがある。

 いつもと変わらぬ帰り道は日も暮れかかっていて少し早足になる。

 すると、先程から抱いていた違和感に気づいた。


 ――人がいない。


 この時間帯なら学生とか買出し帰りのおばさんとかがいてもおかしくない。

 なのに一人も通らない。

 さすがにおかしい。そういえばスーパーを出たあたりから人を見ていない。

 周りを見回すと視界がぐにゃりと歪んだような感じになる。

 そのまま風景は溶けるように崩れ荒れ果てた大地が現れた。

「なんだよ……どういうことだよ……!」

 わけがわからずその場で叫びを上げるも反応するものはどこにもいない。

 ふと、後ろを振り向くと見たこともないような怪物がそこにいた。

「ひっ……!」

 思わずその場にへたりこんでしまう。怪物は息を荒くして俺を睨んでいた。

 怪物が動いた瞬間、俺は本能的に感じた。


 ――喰われる!


 動けと命じているのに体は言うことを聞いてくれない。

 駄目だと思い目を瞑る。

 しかし、痛みなどは感じず特に変化は感じられない。

 恐る恐る目を開くと巨大な口を開けた怪物をファンタジーに出てくるような剣で抑えている――天野だった。

「え、何で……何なんだ……」

「後で説明してあげるね。少し待ってて!」

 少々早口で告げる天野は凛々しくて、学校のときに電波なこと言っていたのが嘘のようだ。

「アタシは! 天界からの使い、天界戦士のユリスラル! 人間界での名を天野由良!」

 一息に叫ぶと怪物を押し返し剣で切りつける。

 怯んだ怪物は天野と距離を取り唸り声をあげる。

「本気出すまでもないねっ」

 それは一瞬のできごとだった。

 怪物の体はぐらりと傾きその場に崩れ落ちた。

「魔物討伐かんりょっ」

 場違いなほど明るい声。差し伸べられる綺麗な手のひら。

 これは夢だろうか?

 夢でも現実でも何でもいい。だから――。

 俺の平凡を壊さないでくれ。




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