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「やっと、終わりましたね。」
誰もいなくなった部屋で一人、華英がつぶやく。ここは403号室のあの物置部屋だった。なぜ、ベットと椅子が置かれているのに物置部屋になっているのか――
それは、部屋のすみに置かれた白い棺のせいだった。
「ヒカリ。私は上手くやれたでしょうか。」
華英は椅子から立ち上がり、棺へと歩みを進める。華英の手がゆっくりと棺の蓋を開けると、絹のような白い肌の女の顔が現れた。うっすらと紅がさした頬に濡羽色の髪がかかっている。胸の上で手を組んでまぶたを閉じている姿は、まるで彫刻のように美しかった。華英の手が伸びて、その女の顔に触れた。
「子供の頃、いじめられていた私をヒカリが助けてくれたときから、私は生涯をかけてヒカリを守るって決めたんです。高校も大学も、変な虫が寄り付かないようにずっと先手を打ってたんですよ。それなのに……。急にあんなゴミみたいな男と結婚するって言われたときは驚きました。あのムカつく馬面を叩き割りたいって、何度思ったことか……。でも、ヒカリが幸せそうだったから、私は身を引いたんです。それが、あんなことになるなんて。」
華英は狂ったかのように一人で話し続ける。
「どうしてわざわざユウカさんの記憶を消すなんて、面倒くさいことをしたんですか? ……ふふっ。ヒカリってば、容赦ないんですから。たくさん苦しんで、自分の行いを反省してくれるといいですね。」
華英は女に微笑みかけて、椅子から立ち上がった。
「それじゃあ、次はあーくんのところにいきましょうか。ヒカリのお願い通り、『ころシテ』きます。ヒカリが味わった苦痛、何倍にもして返しますから。だからどうか、ここで待っていてください。」
華英が物置部屋の扉を閉めた。誰もいなくなった部屋は、再び闇に包まれた。
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閉ざされた403号室の扉。白い棺の中の女が起き上がった。この世に並々ならぬ思いを残した幽霊――怨霊となったヒカリの目は虚ろで、何も捉えていなかった。だが、柘榴色の唇が開いて、同じ言葉を何度も繰り返し始めた。
「アイシテ、誰か、私をアイシテ」
ヒカリの頬には一筋の涙が伝っていた。
『ふたりぐらしの403号室』これにて完結です。最後まで読んでくださり、ありがとうございます。




