アタシの家じゃないかも
突然始まった同居人のギャル幽霊、ユウカの死因探し。とはいえ私だって死んだことなんてないんだから何から手を付けていいのか分からない。とりあえずユウカの姿をまじまじと眺める。バッチリ決めた髪の毛。瞼で光るザクザクのラメと黒いアイライン。ツヤツヤのリップが塗られた赤いポテッとした唇が、ファンデーションを塗りたくった白い肌によく映える。かなり際どい服を恥ずかしげもなく着ている。私だったら彼女の隣を歩きたくない。こんな人と友達と思われるなんて嫌だから。
「ユウカさんっていっつもそんな格好してたんですか?少なくとも、死んだときはこうやってバッチリ決めてたんですよね?」
「そんな格好言うな! かわいいでしょ! メイクも服もこだわってんだから!」
ぷんすか怒り出すギャル。どうやら地雷を踏んでしまったようだ。
「でも、それっておかしくないですか?」
「えっ?」
「この家は前の住人の家具が置きっぱなしになっているらしいんですけど――ないんですよ。ユウカさんの素敵なご趣味のお洋服を沢山収納できるようなクローゼットが。」
「言われてみれば確かに……」
「それともう一つ。ユウカさんって絶対読書家じゃないですよね? この部屋、リビングと寝室にやけに大きい本棚があるんですよ」
そう言って私は右側の壁を指差す。立派な本棚を見てユウカの顔は青ざていった。
「もしかしてここ……アタシの家じゃないのかも」
ユウカの姿が薄くなる。記憶を取り戻しつつあるからだろうか。
「……ちょっと外の空気吸ってくるわ」
ユウカは何処かへ行ってしまった。
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引っ越したばかりの新居の扉を開ける。玄関のちょとしたものを飾るスペースには幸せそうなカップルの写真が飾ってある。私は少し後ろめたさを感じながら403号室の中へ足を踏み入れる。キシっとフローリングの音が鳴る廊下を忍び足で進んでいく。すると左手側の部屋、今私が物置にしている部屋から何やら話し声が聞こえる。好奇心に駆られた私が扉を開けようとするも、なぜか開かなかった。仕方がないので耳を扉につけて会話を盗み聞くことにした。
「あーくん。何か隠し事してない? 」
「なに? オレのこと疑ってんの? 」
「別に……」
「大丈夫、オレは☓☓☓ちゃんを裏切ったりしないから」
突然、左肩に鈍い衝撃を感じて後ろを振り返った。後ろには目が落ち窪み、異常に痩せた髪の長い女が立っていた。女のカサカサの唇が開いて言葉を紡ぐ。
「アイツを……アイツらを、ころシテ」
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夢からの覚醒はいつも突然だ。私はガバっと状態を起こして辺りを見回した。どうやらユウカを見送った後、そのままソファで眠ってしまったらしい。私は普段夢なんか見ない。ましてや悪夢なんてここ5年は見てなかったのに。この家は、変なことばかり起きる。間違いなく『事故物件』だ。




