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魔法少女食事中

一通り自己紹介が終わった時、チアさんは待ちきれない!と叫び、唐揚げが乗っているお皿に被さった剥がせないラップと戦っていた。しばらく口から漏れ出る熱いという言葉を聞いた後、息を吐き出すように話す。


「あたしは戦いの後で疲れてるのになんで取れないのさ〜!!イオファやって!」


「なんでよ」


苦笑いしたり爆笑したり、心配したりと皆は自然と受け入れているが、ひとつ、私の目には見えた。


桜色とはまた違う色が、チアさんの瞳から、髪色へと移るのが見えた。水色や緑か、一瞬だったせいで瞬きと共に消えてしまった。


チアさんはイオファさんに開けて欲しいと懇願し椅子に脱力するかのように座る。髪色はさっきの桜色で、瞳はやっぱり青空を思い出す清々しい瞳。悔しそうに睨みつける顔は可愛いが、マーブル状のような、絵の具が混じる直前のような髪色を見て、なんとも言えない感情も沸いた。


これが澱みなのか、違うのか。蘭さんの髪とはまた違った雰囲気を感じた。


アカリさんは火傷をしないようにと声をかけていて、嫌々ながらもラップを剥がすウルフカットの魔法少女の姿を見て、またもやイロさんの笑い声が響く。


この空気感の中で私は少しの違和感を感じた、が…魔法少女についてはまだまだ未知すぎて、あまり重く考えないようにした。勝手に重く捉える癖がある私の中に、印象に残った『カウンセラー』という言葉が頭から離れないうちは、笑顔でいようと思った。意識するだけいいと思う。素敵な職業だと、一時期憧れていた時もあるし。


ただただ、私には向いていなかっただけ。


チアさんの髪色の話とは違うと思うが、モノさんは蘭さんの髪を撫で、悲しそうな声で囁いた。


「この澱みは、どうすれば無くなるかな…」


「美容院行けば?」


取り皿をイオファさんに差し出しながら、蘭さんにめり込むように覗く丸い目。

「もう、それは私がするから、お水は自分で注ぎなさいよ」苦笑いしながらも菜箸で唐揚げを積み上げる。ライカさんの取り分け術は凄まじく、あっという間に私の分まで取り分けられていた。目線は真剣で、一瞬のうちに菜箸が消える。もりもりの唐揚げや他料理の揚げ物、サラダまでもが自然に。


綺麗に盛り付けられたサラダの数を見渡して思わず息を飲む。


「ありがとうございます…」


「もうこの子達気にせず食べちゃって、急に押しかけちゃったんだから。ほらほら」


「いえいえ、驚きはしましたけど、嬉しいですよ!では…いただきます」


「莉緒さん〜サラダも美味しいよ〜!あたしシーチキン入ったサラダ好きなんだよね!!」


クラゲを時々口に入れたそうに箸で掴もうとする少女を横目に、それを焦ったような表情で見守る魔法少女を見てしまい、私は何も言えずに「サラダ…美味しいですね」とイオファさんの後ろ姿を見るしかできなかった。


横に顔を向ければ、蘭さんは少し険しい顔つきでスマホを握っていた。


「……髪切り、いかなきゃだめなの…?」


「モモちゃん、もしかして美容院調べてる?」


取り皿とお箸を手際良く置きながらも、心配そうに隣に腰掛ける。


「そうです、チアさんが美容院って…」


「別に澱みと伸びた髪は無関係なんだけどね…」


「いいシャンプー使ったら結構、変わるよ…?」


「ないからねモモちゃん。チアの言う事あんま信じなくていいですからね。すみません本当に…」


「ははは……」


髪を縛りながら眉をしかめるイオファさんと、楽しそうに目を細め唐揚げを頬張るチアさんのハート型のアホ毛が信じられないほど跳ねていて、少し面白いと思った。


イロさんは一通り笑った後、蘭さんの髪を優しく撫で、ポケットから出したピンを机に置く。


うさぎ、狼、クラゲ、ラベンダーがモチーフになった4つのピン。それぞれ種類は違うが、とても可愛くて、思わず聞いてしまう。


「……それ、可愛いですねそれ…!もしかして皆さんのモチーフだったりしますか?」


「正解〜!頑張って集めたの!」


「モモちゃんご飯食べにくいでしょ?だから前髪止めるのに使って」


「わぁ……!ありがとうございます!」


「……ここ、モモちゃんの所だけうさぎがもうひとつついてるの、探すの大変だったんだから!」


「モノさんのことですね?!凄い…!」


「でしょ〜?」


前髪を4つのピンで止めた蘭さんはにこにこと頬を赤らめる。一緒見つめあったが、恥ずかしそうにそらされてしまった。前髪をあげるのをあまりしないようで、あまりにもカラフルな魔法少女が居る店内を見て、「莉緒さんって凄いんですね…」と呟き、水を半分飲み干していた。


そんな横でカレイの煮付けをつつきながら眺めるアカリさんとイオファさんは「煮付け美味しい」「凄い美味しい」とうちの母のおふくろの味なるものに大興奮なのが伝わった。


「こっちの小骨取れましたよ、多分ないと思います」


「ありがとうイオファ、モノさんも…せっかくだし食べませんか?」


「……うん、骨ないなら」


「………」


どうしても見つめてしまう、食べる瞬間を。


アカリさんは爪楊枝を器用に煮付けに刺して、ぽたぽたと汁が落ちながらも頬張る。「おふくろの味ですね、美味しい」と目を閉じて分かりやすく膨らむ頬と、隣でそれを真似してちまちまと食べているはずが、分かりやすく口周りが汚れていくモノさんの姿。


「……もっと細かく分けましょうか?」


「…お願いします」


涙目になりつつ爪楊枝をそっと置くその姿を見て、少し、少しだけだがきゅんとしてしまった。


母がよく作っていたハンバーグを、意外と大きい一口で咀嚼する蘭さんを見て可愛いと思ったが、少し思うことができた。

蘭さんの澱みを含んだ髪もそうだが、モノさんの言い方的に澱みは何か悪いものなのだろうか…澱みという言葉の意味を考えると、その考えしか浮かばない。検索すれば出てくるかなと、聞くのもなんだか忍びないと席の端っこでコソッと調べてみる。ハンバーグはもう3分の2食べられている。


調べてみても、あまり明確なものは分からなかった。だが、個人のブログが検索に引っかかり、試しにと開いてみる。


そこには既に『魔法少女は引退済み』とプロフィール欄に書かれた匿名の元魔法少女の方だった。結構昔から投稿しているらしく、おそらく現役時代のブログも投稿されていた。食事中なのもあってさらさらと、『魔法少女達の淀みがキツかった』とタイトルが書かれた、引退された時に書かれたブログをスクロールしていく。




『魔法少女って可愛い衣装着てる割には魔法少女の思想が結構反映されてて、テレビでたまに映るときに見るの面白い。歴を重ねている魔法少女は意外と変身前の魔法少女にも気づける。オーラを感じるしね。魔法少女してる女にあんままともなやつ居ない、今の現場がどうなってるのかは知らんけど。』


『澱みってなんだろな、普通に放置するとまずいんだよな。澱むほど頑張りすぎた魔法少女には休みを与えてあげてくれ。私の時はなかったけど。変身前でもわかるほど澱んでる魔法少女には極力近づかない方がいいって教わったけど、ついて行かないと仕事もらえんかったな〜変な人多かったけど魔法少女としてはいい人多かった』




所々『ん?』となる部分も多かったが、早々にスマホの電源を落とし、残り少ないおかずを新しい取り皿に乗せる。結局何が理由なのかは分からなかったけど、放置すると何がまずいのか…澱んでいる魔法少女には近づかない方がいい?というのも気になったが、おそらくここで書かれている事は私の無知すぎる価値観では理解できないとすぐわかった。


「……うーん」


家に帰ってからまた考えようと、ハンバーグを贅沢に2つ取る。昔ながらの味付けが好きで、たまに「和風にして!」「中にチーズ入れて!」とリクエストして、1人だけ違う味付けを自慢しながら食べるのが嬉しかった記憶が蘇る。


だからかハンバーグだけ異様に種類が多く、ライカさんは和風ハンバーグがある事に喜びを感じていた。


そして何故か白米とお味噌汁が机に置かれている事実に多少慣れてしまった自分がいたが、これはちゃんと蘭さんのお家で作ったものだと知って凄く安心した。


味付けなのか、中華スープの風味がするお味噌汁がびっくりするほど美味しくて、「たまにお手伝いするんです」とコソッと教えてくれたおかげもあってかとても心が暖かくなったのと、ドヤ顔でお味噌汁のおかわりをしてくれる蘭さんが誕生したりした。



Twitterでこれからこの創作の人達のイラストを描いていこうと思います。あとがきでの宣伝はOKと書いてたので、@mgr_xx_で調べると出てくると思います。元はただのあんまりお絵描きしてない垢なので、ここから魔法少女達のイラストを通して、絵も文字も成長していけたらな……と。気が向いたら覗きに来てください。

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