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桃崎蘭は魔法少女で、

不可思議な場面に遭遇した際、アニメでは環境音が大きくなって、見えている不思議を凝視しているシーンが多くある気がする。そしてキャラクターの瞳孔が開いて…。嫌という程に引きこもってた時に見たシリアスアニメではよくあった、気がする。


明るいアニメだと心が萎んで呼吸が浅くなるので暗い話をずっと見ていたが、暗いアニメもそれはそれで辛くなって、キャラクターに感情移入しちゃって泣き出す。そんな場面に遭遇したような、他人事すぎて、いや他人すぎてあまり分からなかったけど、目の前の女性が疲れているのはわかった。


そして、何を聞いていいのか分からず、私の瞳孔が開くのだった。聞こえないセミの音が響いた所でふと現実に戻る。少しの沈黙の後に話すのは心臓が拒否していたが、風が背中を押すように流れた時、自然と背筋が伸び、話す為息を吸った。


「あの、もしご迷惑でしたらいつでもバイト辞めますので…カウンセリングとかカウンセラーとか正直名前だけで私が出来るのなんて……」


言葉が詰まった。こんな会って数分の目の前に座っている女の子に対して。


もし、もし未成年なら、応援とか明るい言葉?服とか、社会人お節介おばさんとして連れ出せる?もし大学生なら飲みとか?いや、今なら遊園地お出かけとか?SNSの見すぎ?映画とか?もし社会人ならやっぱ飲み?飲みなのか?全部出来る。できるからこそ困る。


目の前の虚ろな瞳をした女性はよれよれのキャラもののTシャツと黒い長ズボン。お手入れが行き届いてない髪は長く胸あたりまであった。笑っているような悲しいような瞳をしていたが、不思議と愛くるしい感情を抱いた、気がする。


今にも泣き出しそうで、案外普通そうな、変な空気。


「えっと、私近くの一軒家、あの青い屋根の…あそこ実家で、戻ってきて…ただの無職なんです」


「青…?あ、犬飼ってました…?ご両親とか…」


「飼ってたらしいですね…といっても親戚の犬を預かってただけと聞いてます」


「急に見かけなくなっちゃって、その…」


「全然生きてますよ…!!元気です!今度写真、持ってきます」


「……ありがとうございます!…良かった」


「急に見かけなくなると心配になります、よね」


「それもありますが…2年前、天気系の怪物が現れた時、倒した反動で近隣住民の方に被害が出てしまって…… わんちゃん、お外でお散歩中だったので…」


少しづつ暗くなってきて、雰囲気が出てきた所で

会話が始まって感じた事や思った事が頭をよぎる。


この方、蘭さんはおそらくとても優しい方なのだろう。私が話した時、少し目が開いた気がする。きっと空から細かい所まできちんと見る人なんだろう。


わんちゃん呼び、可愛い


シリアスな空気にはならなかった、ただ、それは今だけというのもわかっている。だけど不思議とさっきまで抱いていた何歳なのか的な悩みは消えていた。魔法少女としての蘭さんのお話を聞いて、少しづつ脳内ノートに書き記していく。忘れちゃうけど、覚えておきたくて、2年前のわんちゃんの話を昨日の事かのように汗ダラダラで話す姿を見てしまったら、流石にそうなんだ、で終わらせたくない気持ちが湧いた。


蘭さんが明るい話に持っていこうと雑談混じりにちぐはぐな話を広げようとした時、顔が緩んだ私の顔を見て、そして外を優しい目で見た。まつ毛が光に当たって、少し透ける桃色の髪と、暖かい夕暮れの光。蘭さんの瞳の中に沈む光を感じながら、今日のご飯の話を振った。


「え、ご飯ですか?」


















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