はじめまして、魔法少女
現代に生きる色んな事情を抱えた魔法少女達が悩んで人生を考える小説がとても読みたかった。
この世界は、魔法少女によって成り立っているとか。
街には【魔法少女募集中】のポスター。可愛らしい衣装に身を包み、明るい髪色をしたキラキラしている女の子が微笑んでいる。
その横にはマスコットなる存在が小さいステッキを持って描かれており、魔法少女の肩に乗って笑っている。
マスコット、それは魔法少女の側につくお助けキャラであり心臓。マスコットの存在は人によっては嫌悪感を抱かれる事もある。人語を話し、魔法を使い、ただの人間を強化し勝手に支配下に置くのだ。
アニメなどでは魔法少女がマスコットに力を借りて敵を倒し、皆に褒められ少女達がライバルや友達として切磋琢磨しているシリーズが何十作もある。実際に活躍している魔法少女をモデルにしたり、魔法少女に新しい要素を付け足し、子供達の注目の的として、将来の夢としてランキングに毎年載っている。
なのに魔法少女は年々減っている。給与も申し分ない額なのだが、理由は様々。マスコットが現れないせいだとか、魔法少女の素質を持つ人間がいないとか。
マスコットの存在は時代が経つにつれ変わってきた。今は陸地の生き物欄に当然の様に載っているが、神話に載っていたり、種類によってはまた違ったカテゴライズをされていたりする。
基本は魔法少女となる少女がいないとマスコットは現れない。姿も魔法少女付近にいないと見えないようになっている。だが見た事ないマスコットが空を一匹で飛んでいたとか、事故を起こしたとか、都市伝説として今も語られている。
こんな世界で魔法少女になるなら、普通に働いて魔法少女を街から見上げる方が幸せなのではないかと、ふと思ってしまう。単純に、とても危ない仕事だからと皆が言う。
そんな魔法少女専門のカウンセラーとして、資格もない私が働く事になった。表はただの中華料理屋バイト。裏は魔法少女を慰め立ち上がらせる、カウンセラーとは呼べないただの応援する26歳。仕事で精神をやられて実家に戻っただけの無職が、どうしてこんな事になったのか、自分でもあまり分からない。
ただ、実家の近所に魔法少女が数人いて、店長の娘さんに魔法少女がいただけ。
店長さんは言っていた。
「賄いとかもつけるから娘と話してくれないかい?最近ぐったりしてるというか、友達と離れたそうでね…」
最初はただの相談役として、全国的に活動している強いと噂の魔法少女のモモちゃんと話すだけのはずだった。ちょっと有名人に会えるドキドキも感じてた。
自分の人生も、魔法少女の人生も、変わるとか思ってもない26歳の私、清水 莉緒 と、魔法少女のモモちゃんと、桜色のうさぎのマスコット、モノちゃん。
出会って気づく事もある。魔法少女という女神様のような存在も、1人の人間だと、か弱い女の子だと。変身道具で造られた姿はまるで2次元から飛び出してきたようで、可愛くて、キラキラしていて。
普段見る魔法少女とは差が激しすぎて、追いつかない所もあるけど、モモちゃんの明るく華やかな可愛らしい桃色の髪は濁った暗い色をしてた。日に当たると微かに色が変わるのを見たりもしたけど、どこか澱んで手入れが行き届いてないのを一般人でも感じた。
「はじめまして、モモさん」
「私、ここのお店でバイトと相談役?になった清水莉緒と申します。精一杯お店に貢献できるよう務めて参りますので、どうか、よろしくお願いします!」
どもりながらもなれない敬語の羅列を流れるように話し、後ろ側が見えるまで頭を下げた。昔のバイトでも失敗を思い出したくないぐらいやらかし、同年代の他校の人にも裏で悪口を言われた事があるのを脳裏で思い出しながら、始まる私のカウンセラー生活。
実家にあるダンボール片付けなきゃとか、夕ご飯何かなとか考える暇がないくらい頭の中で魔法少女でいっぱいになった今日の日。
モモちゃんの虚ろな瞳が脳裏から離れなくて、久しぶりに夢を見た。
虚ろな瞳の奥に輝くミルク色の輝き。優しくも可愛らしいモモちゃんらしい瞳。
「はじめまして、魔法少女のモモと言います。本名は桃崎蘭って言います…。そんな固くなくても、お父さんがカウンセラーみたいなのをやれって、言ったんですよね?ごめんなさい、あの、とりあえずよろしくお願いします」
もうすぐ春が終わろうとしてる季節、風が店内を回るようになびく。
静かに腰を下ろす彼女の姿に、少しだけ不安感を抱いた。
設定とか書き方もっと頑張りたいです。魔法少女バンザイ!