表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

なろうラジオ大賞6応募作品集

ベランダから望む空は、何故こうも青いのでしょうか?

作者: 富井トミー
掲載日:2024/12/24

 貧乏男爵令嬢は、青く澄み渡る空へ向けて、盛大にため息を()いた。


「はぁ、綺麗な青空ですわ」


 ため息を除けば、とても前向きな発言。されどもその表情は、雨が降り始める空のように曇り切っていた。


「今頃、隣領の伯爵令嬢や子爵令嬢は……王都で雅なお茶会の真っ最中ですわね」


 隣の芝は青い。しかしそれ以上に、空の青はもっと青い。

 隣は隣、うちはうち。両親から聞かされ続けた文句(セリフ)

 それでも諦めきれないのは、我が儘というモノなのだろうか?


「お茶会が終われば、その後は豪華絢爛(けんらん)な夜会かしら?」


 美しいドレスを身に(まと)い、貴公子たちとのダンスに興じる。

 そんな中、ふいに芽生える恋心。

 夜会を抜け出し、静かな庭園で……愛を(ささや)き合う。


 そんな桃色妄想に、男爵令嬢は身悶えながら声を上げる。


「きゃあ! なんて素敵なラブストーリーなのでしょう!」


 そう言った直後、男爵令嬢はすんと表情を引き締めた。


 王都の社交界とは無縁の我が家に、起こり得ない夢物語。

 現実はあまりに無情。

 眼下に広がる長閑(のどか)な農村風景に、否が応でも現実を思い知る。


「周囲の男性は、貴公子ではなく領民の農夫。抜け出した先は、静かな庭園ではなく長閑な農園ですわね……」


 男爵令嬢は、再び青い空を望む。物憂げな表情のままに。


 きっとこのまま、愛も恋も知らぬまま、適度な相手に嫁いでいくのだろう。

 ここと似たような田舎で、そこそこの幸福と不幸の中、人生を終えるのだろう。

 うちと同格の男爵家あたりでは、やはり社交界とも無縁だろうから。


 男爵令嬢は、どこまでも青い空へと手を伸ばす。決して掴めぬと知りながら。


「ここから見える空は、何故こうも青いのでしょうか?」


 呟きが空に吸い込まれていった瞬間、ド田舎に相応しくない馬車が屋敷の前を進んでいく。


 馬車に刻まれた紋章は、王家のモノ。

 きっと、隣国へと向かう最中なのでしょう。

 貧乏男爵家とは、一生関係ない存在だろう。


 男爵令嬢は、悲し気な表情で馬車を見つめる。馬車の中の男性と、視線が交錯した事に気付かぬまま。


「この空のように美しい男性でしたわ」


 男爵令嬢は、そう呟いて自室へと戻っていった。


 後日、男爵家に一通の文が届く。差出人はこの国の王子。

 内容は……。



 数年の時が過ぎた。王妃は、王城のベランダから青く澄み渡る空を望んでいた。


「綺麗な青空ですわ。ねぇ、あなた」

「ああ。まるであの日のようだ」


 王は微笑みながら、王妃へと頷いた。

 二人が出会うきっかけの青い空を想いながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ