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なろうラジオ大賞6応募作品集

ベランダから望む空は、何故こうも青いのでしょうか?

作者: 富井トミー

 貧乏男爵令嬢は、青く澄み渡る空へ向けて、盛大にため息を()いた。


「はぁ、綺麗な青空ですわ」


 ため息を除けば、とても前向きな発言。されどもその表情は、雨が降り始める空のように曇り切っていた。


「今頃、隣領の伯爵令嬢や子爵令嬢は……王都で雅なお茶会の真っ最中ですわね」


 隣の芝は青い。しかしそれ以上に、空の青はもっと青い。

 隣は隣、うちはうち。両親から聞かされ続けた文句(セリフ)

 それでも諦めきれないのは、我が儘というモノなのだろうか?


「お茶会が終われば、その後は豪華絢爛(けんらん)な夜会かしら?」


 美しいドレスを身に(まと)い、貴公子たちとのダンスに興じる。

 そんな中、ふいに芽生える恋心。

 夜会を抜け出し、静かな庭園で……愛を(ささや)き合う。


 そんな桃色妄想に、男爵令嬢は身悶えながら声を上げる。


「きゃあ! なんて素敵なラブストーリーなのでしょう!」


 そう言った直後、男爵令嬢はすんと表情を引き締めた。


 王都の社交界とは無縁の我が家に、起こり得ない夢物語。

 現実はあまりに無情。

 眼下に広がる長閑(のどか)な農村風景に、否が応でも現実を思い知る。


「周囲の男性は、貴公子ではなく領民の農夫。抜け出した先は、静かな庭園ではなく長閑な農園ですわね……」


 男爵令嬢は、再び青い空を望む。物憂げな表情のままに。


 きっとこのまま、愛も恋も知らぬまま、適度な相手に嫁いでいくのだろう。

 ここと似たような田舎で、そこそこの幸福と不幸の中、人生を終えるのだろう。

 うちと同格の男爵家あたりでは、やはり社交界とも無縁だろうから。


 男爵令嬢は、どこまでも青い空へと手を伸ばす。決して掴めぬと知りながら。


「ここから見える空は、何故こうも青いのでしょうか?」


 呟きが空に吸い込まれていった瞬間、ド田舎に相応しくない馬車が屋敷の前を進んでいく。


 馬車に刻まれた紋章は、王家のモノ。

 きっと、隣国へと向かう最中なのでしょう。

 貧乏男爵家とは、一生関係ない存在だろう。


 男爵令嬢は、悲し気な表情で馬車を見つめる。馬車の中の男性と、視線が交錯した事に気付かぬまま。


「この空のように美しい男性でしたわ」


 男爵令嬢は、そう呟いて自室へと戻っていった。


 後日、男爵家に一通の文が届く。差出人はこの国の王子。

 内容は……。



 数年の時が過ぎた。王妃は、王城のベランダから青く澄み渡る空を望んでいた。


「綺麗な青空ですわ。ねぇ、あなた」

「ああ。まるであの日のようだ」


 王は微笑みながら、王妃へと頷いた。

 二人が出会うきっかけの青い空を想いながら。

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