第46話
オクタヴィオが唐突に感じたのは揺れと言いようのない胸騒ぎであった。
300年前に感じて久しい焦燥感にオクタヴィオは一息入れる事でそれを捩じ伏せた。
そして周囲を見渡すも特に変わった様子は無いように見える。
しかし、それはあくまでも表面上の事であり内面的には大きな変化が起こっていたのだ。
「この感じは……」
オクタヴィオはこの感覚を知っていた。
いや正確に言うのであれば思い出したと言った方が正しいかもしれない。
何故ならこれはかつて自分が体験した出来事だったからだ。
「ユイエの魔力波……何処だ? 上か?」
「おや、イザイアがやったのか」
オクタヴィオの後ろからリスタルの声が響く。
振り返るとそこには相変わらず不敵な笑みを浮かべた彼女が立っていた。
「……リスタル」
反射的に銃を抜き放ちそうになるが何とか堪えると、改めて彼女に話しかける。
「今何が起きているか分かるのか?」
オクタヴィオの問いにリスタルは小さく首を振ると答えた。
「残念ながら私にも分からんよ」
その答えを聞いて少しだけ肩を落とすと、オクタヴィオは再び歩き出す。
そんな彼の背中を見つめながらリスタルは呟く。
「……さて、そろそろ幕引きの時間だな」
「幕引き? どういう意味だよ?」
思わず振り返るオクタヴィオにリスタルは言う。
「難しい意味じゃないさ。 これから世界は変わるんだよ」
「世界が……?」
「ああ、そうだとも」
そう言うとリスタルは自分の胸元に手を当てて静かに目を閉じる。
すると彼女の体から星屑のように輝く物が溢れ出した。
「なっ!?」
驚くオクタヴィオを尻目に、リスタルはその輝きを操り始める。
次第に形を成していき、最終的には一つの球体となった。
「オクタヴィオ、魔女達が望む楽園とは何だと思う?」
突然の問いかけにオクタヴィオは答える。
「……何者にも邪魔されない、誰もが平穏な世界、か?」
それを聞いたリスタルは満足そうに頷くと、続けて語りだした。
「そうだな、私もそう思うよ。 だが魔女達はそれでは満足しないのさ」
そこで一旦言葉を切ると、悲しげに目を伏せてから話を続ける。
「彼女達は知っているからだ、この世には決して平等など無いということを」
そしてオクタヴィオに向き直ると、更に続ける。
「だから彼女達は願った、自らの望みを叶える為の力を」
そこまで聞いたオクタヴィオは、ある考えに至った。
つまり、それはーー
「そう、それが導きの力だよ」
「その為にシーリスを利用したのか……」
リスタルはニヤリと笑うと肯定するように頷いた。
「その通りだ、彼女は自ら進んで協力してくれたよ。 世界を救う為に、ね」
その言葉を聞いてオクタヴィオは、ギリッと歯を噛み締める。
今すぐ駆けだしてユイエやシーリスの元へ向かいたい衝動に駆られるも、目の前の魔女はそれを許してはくれないだろう。
ならばせめてとばかりに睨みつける事しか出来なかった。
そんなオクタヴィオを見て、リスタルは小さく微笑むと彼に問いかける。
「それで、どうする? もうじきこの世界は完全に生まれ変わるよ?」
その言葉に反応するように、周囲の風景が一変していく。
室内の色が、灯りまでもが黒く染まっていき、やがて闇夜に包まれたかの様になった。
「何をするつもりなんだ?」
オクタヴィオの質問に、リスタルは笑いながら答えた。
「言っただろう? 世界を塗り替えるんだよ。 これから始まるのはその計画の第一段階」
そう言って手を広げると、その闇はリスタルの身体に纏わり付くように集まっていく。
同時に部屋全体が大きく揺れ始めたかと思うと、次の瞬間には床や壁が全て消え去ってしまったかのような浮遊感が襲ってきたのだ。
あまりの事態にオクタヴィオが驚愕していると、リスタルに絡み付いていた闇は彼女の後ろの方ーーー魔水晶が置かれている部屋にも伸びていく。
そしてその先端が魔水晶に触れると同時に、まるで吸い込まれるかの如く溶け込んでいく。
その様子を見たリスタルは静かに呟く。
「さぁ、君はどうする。 オクタヴィオ?」
その言葉と同時に、魔水晶の光が徐々に弱まっていくのが見えた。
それと同時にオクタヴィオの中に嫌な予感が走る。
あの闇は魔水晶を構成する何かを吸収しているようにしか見えない。
しかし、それを止めようにも魔水晶の中にいるのは、何の罪もない魔女達である。
下手に撃てば魔水晶を貫通して、傷を負わせてしまう。
女性を、ましてや魔女を撃つ事に忌避感を持つオクタヴィオにそれは酷な話であった。
「ーーーくっ、済まない!」
オクタヴィオの勘がここにとどまる事をやめるように騒ぎ出す。
ユイエに追いかけられたあの時と同じで、逃げ出さなければ命に関わる予感がしたのだ。
そうしてその場から立ち去ろうと、オクタヴィオはまだ闇に侵食されていない通ってきた通路へ走っていく。
「そうだよ、今は逃げる時だ。 そして外に出た時、君はどんな顔をするんだろうね? それが見えないのが残念だけど、まあ頑張りたまえ」
背後から聞こえてくるリスタルの声を聞きながら、オクタヴィオは全速力で駆け抜ける。
「そう、それでいい。 私の仕事もここまでだ。 後は頼んだよ」
階段へと向かっていくオクタヴィオを見ながら、リスタルは魔力で押さえ付けていた闇をやりたいようにさせる。
足も、手も、身体も、そして顔もゆっくりと侵食されていき、リスタルの意識は溶かされるように闇へと消えていった。
「闇の侵食が思った以上に早い……! このままだと城自体が持たないぞ!?」
上階へと戻る螺旋階段まで戻ってきたオクタヴィオは、様々な場所から漏れ出す闇から逃げるようにして走り続けていた。
時折見える扉からは悲鳴が聞こえていたが、今のオクタヴィオにはそれに構っている余裕はない。
何故なら後ろから迫り来る闇から一刻も早く離れなければならないからだ。
「くそっ! やっぱり闇の出所をどうにかしないと駄目か……!」
しかし、闇の出所と考えていの一番に出てくるのはイザイアのいる場所だが、魔獣達から逃げ出す時に部屋の位置がわからなくなり、全く見当がつかない状態だった。
「仕方ない……とりあえず、上に上がらない事には始まらないか」
少し休んだ事で体力も戻り、オクタヴィオは気合を入れて螺旋階段を駆け上がる。
螺旋階段を踏破したその時だった。
「……っ!? あぶねぇ!!」
上から大量の瓦礫が降ってきて、咄嗟に横に飛び退くことで何とか避ける事が出来たが、あと少し遅れていたら押し潰されていただろう。
「誰だッ!」
「うーん、失敗したか……。 これで潰れてくれたら良かったんだけど」
闇に侵食されかけていて少し見辛いが、コツコツと靴を鳴らして人影が歩いてくる。
「久し振りだねぇ……魔女付きのオクタヴィオ君」
「お前は……」
ヘラヘラと笑い、スーツを着こなして茶色の癖っ毛が特徴的な男ーーーコルネリオは、オクタヴィオの前へと姿を現した。
どうやら先程の岩を落としてきたのはコルネリオがやったようだ。
「さて、挨拶はこの程度でいいだろう? 僕は君を始末しに来たんだ」
そう言ってコルネリオは懐に手を入れると、そこから一丁の拳銃を取り出した。
それを見てオクタヴィオは身構える。
「おいおい、そんな物騒な物を俺に向けるなよ」
「……相変わらずだな、君のその態度は」
コルネリオは呆れたように溜息を吐くと、銃口を向けてきた。
「まぁいいさ、どのみち君もあの魔女と同じようにここで死ぬ事になるんだから」
そう言いながらコルネリオは引き金を引く。
銃声と共に放たれた弾丸がオクタヴィオに向かって飛んでくる。
だがその弾道は直線的で狙いが分かり易く、オクタヴィオは難なく躱す。
しかし、コルネリオの言葉にオクタヴィオは違和感を覚える。
「お前さん、今あの魔女って言ったよな?」
「あれ、もしかして知らないのかな? いつも君のそばにいた魔女ーーーユイエって名前だったかな」
その言葉を聞いた瞬間、オクタヴィオの中で全てが繋がった気がした。
(まさか、あいつが……?)
オクタヴィオはその考えを振り払い、目の前の敵に意識を集中させることにした。
「ユイエがどうした」
「あぁ、そうかまだ知らなかったんだね。 それじゃあ教えてあげようじゃないか!」
ニヤニヤと笑うその顔に苛立ちを覚えながらも、オクタヴィオは黙って話を聞く事にした。
「彼女は死んだよ。 ウチのトップと戦ってね」
それを聞いた途端、オクタヴィオの動きはピタリと止まる。
俯いた表情は闇も合わさって見えなくなり、コルネリオはその様子を好機と見たのか更に言葉を続ける。
「信じられないかい? でも事実だよ。 その証拠にあたり一面が闇に覆われ始めているだろう」
その言葉に反応するようにして、暗闇が蠢く。
それは徐々に広がっていき、辺り一帯を覆い尽くそうとしていた。
その光景を見て、オクタヴィオは確信した。
やはりこの現象を引き起こしたのは自分の知る魔女だと。
「その様子だと心当たりがあるみたいだね。 さっきまで話していただろうから、その辺りは当たり前か」
「……」
黙り込んでしまったオクタヴィオを見て、コルネリオは楽しそうに笑う。
そしてコルネリオは銃を構えると、躊躇なく発砲してきた。
それをオクタヴィオは横に飛んで避けてみせる。
まだ、オクタヴィオは顔を俯かせたまま、腕をだらりと下げてその場に立ち尽くす。
「どうしたんだい? もう終わりなのかな?」
挑発するように話し掛けてくるコルネリオを無視して、オクタヴィオはゆっくりと顔を上げる。
その表情を見た時、コルネリオは思わず背筋が凍り付くような錯覚を覚えた。
そこにあったのはまるで死人のような無表情で、その瞳からはドス黒い殺意が形になったかのように見えたのだ。
先程までとは打って変わり、不気味な雰囲気を纏ったオクタヴィオに対してコルネリオは警戒を強めていく。
そんな彼の様子を知ってか知らずか、オクタヴィオはゆっくりと口を開く。
「……お前らを倒す理由が出来た」
静かにそう言い放つと、オクタヴィオは一歩ずつ踏みしめるように前へ進んでいく。
その姿はまるで幽鬼のようで、彼の不気味さに拍車をかけていた。
「へぇ、言うようになったね。 だけど、君に僕を倒せるのかい? 人へと銃を撃つ事を嫌がる君が?」
「お前こそ、俺を倒せるのか……?」
「面白い、そこまで言うならやってみようじゃないか!!」
二人は同時に駆け出し、円を描きながら互いの間合いを詰める。
オクタヴィオは拳を握りしめると、そのままコルネリオの顔めがけて突き出す。
しかしコルネリオはそれを避けると、今度はお返しとばかりに蹴りを放つ。
それに対してオクタヴィオは腕でガードするが、衝撃で吹き飛ばされてしまった。
壁に叩きつけられそうになるが、身体を捻って着地し体勢を整える。
そんな隙だらけの姿を逃すはずもなく、コルネリオは二発三発と追撃を仕掛けてきた。
それに対し、オクタヴィオも負けじと応戦していく。
コルネリオの攻撃を避けつつ、カウンターを叩き込むべく機会を窺う。
そしてコルネリオのパンチを掻い潜るようにして懐に入ると、オクタヴィオは鳩尾目掛けてアッパーカットを放った。
「ぐっ!?」
オクタヴィオの予想外の反撃に驚いたのか、コルネリオの反応が僅かに遅れる。
それでもギリギリのところでガードしたようで、オクタヴィオの拳は鈍い音を立てて阻まれる。
「やるな……!」
互いに一撃必殺の間合いであり、二人は格闘戦を仕掛けながら銃撃戦も織り交ぜて攻防を繰り広げる。
銃弾が飛び交う中、オクタヴィオは確実に弾丸をコルネリオに撃ち込む為にタイミングを見計らう。
必要な時間とタイミングはほんの一瞬、その一瞬を作り出す為ならば多少の無茶は厭わない覚悟があった。
銃を握る手に力を込めると、オクタヴィオは照準を合わせて引き金を引く。
放たれた弾丸は真っ直ぐにコルネリオの方へと向かっていく。
「あぶないねっとぉっ!」
しかし、コルネリオはそれに気づいていたらしく、素早く身を屈めて攻撃を躱すと、すぐさま態勢を立て直して蹴りを放ってくる。
「ほら、お返しだよ!」
その動きを読んでいたオクタヴィオはそれを受け止流しつつ、勢いを殺さずに投げ飛ばす。
コルネリオ空中で一回転して地面に着地すると、すかさず銃を構えて引き金を引いた。
「ちっ……!」
舌打ちをしながら弾丸を回避すると、オクタヴィオは一気に間合いを詰めてコルネリオに肉薄する。
コルネリオは咄嗟に銃を盾にするが、オクタヴィオは構わずに殴りつける。
「ぐはっ……!?」
銃越しに伝わる衝撃に思わず顔を歪めるコルネリオだったが、それでも銃は手放さない。
オクタヴィオは容赦なく連続で殴り続け、その度に鈍い音が響く。
コルネリオは必死に耐えていたが、オクタヴィオの腕が伸び切った瞬間を狙い、身体を絡ませて体制を崩す。
「なっ……!?」
驚く暇もなく、倒れたオクタヴィオの上に馬乗りになると、コルネリオは顔面に向かって何度も拳を振り下ろす。
殴られながらもオクタヴィオは冷静に状況を見極めていた。
(流石に戦い慣れてるな。 泥臭くても勝ちにいく、そんな戦い方だ。 でもなーーー)
オクタヴィオは両手をクロスさせると、上から迫ってくる拳を受け止める。
そして腕を掴み、頭の上へと通るように腕を引いていき、その空いた隙間に足を差し込んでコルネリオを上空へ投げ飛ばす。
「なにっ!? うわぁぁぁ!」
突然の出来事に対応出来ず、コルネリオは成す術も無く投げ飛ばされてしまう。
地面の上をバウンドしながら転がっていき、ようやく止まった時には身体中傷だらけになっていた。
「くっ……くそっ! この僕がこんな無様な姿を晒すなんて……」
悔しげに歯噛みしながらも立ち上がるが、ダメージは大きいといった様子である。
一方のオクタヴィオはというと、殴られていた筈ではあるが、軽傷で済んでいた。
それを見て、コルネリオの表情はますます険しくなる。
「……なるほど、あの体制で僕の攻撃を躱すとは恐れ入ったよ」
「ほら、さっさとしてくれ。 こっちも暇じゃないんだ」
「言ってくれるじゃないか。 それなら見せてあげようか、本物のガンマンの力をさ!」
そう言うと、コルネリオは腰の後ろに手を伸ばし、そこに差していたもう一丁の拳銃を取り出した。
「ほう? ダブルトリガーってか?」
まさかの二刀流だとは思わず、オクタヴィオは口笛を鳴らしながら、左右に駆け出す。
その間にコルネリオは左手でリロードを済ませ、両手で銃口をこちらに向けてきた。
「さぁ、始めようか!」
その言葉と共にコルネリオが先に撃ってきたが、それは威嚇射撃だったようで弾道は外れている。
それでも反射的に避けることが出来たが、続けて撃たれた二発目は流石に避けられない。
だからこそオクタヴィオはーーー
「ーーーふっ!」
刹那にも満たない時間の中で、ベティを取り出して構え、そして弾丸を放つ。
コルネリオが放った弾丸とオクタヴィオが放った弾丸は空中でぶつかり合い、弾け飛んだ。
それを見たコルネリオは驚愕の表情を浮かべると同時に、自身の額に冷や汗が流れるのを感じた。
(こいつ……! 今の一瞬で僕の狙いを読んで、その上で銃弾を撃ち落としたのか!?)
内心動揺しつつも、すぐに気持ちを切り替えて再度発砲する。
それをまた同じように撃ち落とすオクタヴィオを見て、コルネリオは恐怖を覚えた。
「(ありえないだろ……こんな事があり得るのか……? いや、あり得てたまるか!!)」
コルネリオは自身の中に芽生えつつある感情を振り払うように、次々と銃弾を放ち続ける。
だが、それら全てがオクタヴィオによって防がれてしまい、遂に最後の一発となってしまった。
「これで終わりか?」
ただ淡々と問い掛けてくるオクタヴィオに対し、コルネリオは焦りを感じていた。
あまりにもオクタヴィオとの力量の差があり過ぎるのだ。
「ふざ……けるなぁ!!」
コルネリオが怒りに任せて引き金を引くと、大きな銃声が鳴り響く。
それと同時にオクタヴィオの姿が消え去ると、背後から声が聞こえてきたのである。
「チェックメイト」
振り返るとそこには銃を構えたオクタヴィオの姿があった。
呆然とした顔で自らの手を見つめるコルネリオに対して、オクタヴィオは静かに告げたのだった。
「勝負あったみたいだな」
その言葉に反応する余裕すら無いのか、それとも敗北を認めたくないのか、コルネリオは黙ったまま俯いていた。
そんな彼の様子を見て、オクタヴィオは肩を竦めると踵を返して立ち去ろうとする。
「ま、待て……! 殺すなら殺せよ!」
コルネリオは慌てて呼び止めると、オクタヴィオはゆっくりと振り返った。
その表情は無表情であったが、その瞳の奥に宿る光はどこか冷たいものを感じさせるものがあった。
それを感じ取った瞬間、背筋にぞくりとしたものが走り、コルネリオは無意識のうちに一歩後退ってしまう。
そんな彼の様子を見ても表情を変えることなく、オクタヴィオは再び口を開いた。
「殺さないよ、別に殺したい訳じゃないからな」
そう言ってオクタヴィオの後ろ姿を見つめながら、コルネリオは悔しさのあまり唇を噛み締める。
「くそぉ……!! なんで負けたんだ……!」
コルネリオは悪態をつくも、現実は変わらない。
彼は敗北したという事実だけがそこにあるだけだ。
「どうしてなんだ……僕は誰よりも努力してきたはずなのに……」
ふと脳裏に浮かんだ疑問を振り払おうとするも、どうしても気になってしまう。
自分は何か間違っていたのか、それとも相手が上手だったのか、様々な考えが浮かんでくるものの答えは出ないままだった。
譫言のように呟くコルネリオの言葉を聞き、オクタヴィオはくるりと振り向くと言った。
「確かにお前さんは強い。 だけど、こちとら300年近くコレだけを鍛え続けたんだ。 負けるわけにはいかないのさ」
そんなオクタヴィオの言葉を聞いた途端、コルネリオは何故か無性に笑いが込み上げてきてしまった。
これ以上は戦闘の意思は無いと、雰囲気から感じ取ったオクタヴィオは崩れてかけている扉に向かって歩いていく。
城の上層部のほうから放たれている異様な魔力波が、オクタヴィオの警戒に値する程になっていたからだ。
「それじゃあ、俺は行くぜ」
そう言い残して去ろうとした時だった。
突然足元が崩れ、体勢を崩してしまったところを何者かに掴まれてしまう。
何事かと思い顔を動かすと、そこにはしてやったりの形相をしたコルネリオがオクタヴィオの足を掴んでいた。
「最後の最後まで懲りない男だね君はァ! さあ、僕と一緒に底まで落ちてもらおうかァ!」
このまま落ちてしまえば、怪我では済まないだろう。
どう考えても不味い状況ではあるが、オクタヴィオは冷めた眼でコルネリオを見下ろす。
「お前も懲りない奴だな……」
「なんだと……?」
訝しげに眉を顰めるコルネリオに向かってオクタヴィオは言い放つ。
「お前が最後に何かしてくるのはわかってるんだよ! 前回もそれでまんまと逃げ仰られたからな!」
そう叫ぶや否やオクタヴィオは穴へと自らの身体を投げ出したのだ。
「嘘ォ!?」
そのまま重力に従って落下していく二人だったが、途中でコルネリオは袖から小型の銃型ワイヤーを射出して逃げ出そうとする。
しかし、それもオクタヴィオには予測済みだったようで即座に銃弾で弾かれてしまい失敗に終わる。
「ほらよっと!」
弾かれた銃型ワイヤーをオクタヴィオはキャッチすると、そのまま引き寄せて逆にコルネリオの足に巻き付けた。
「うわっ!? ちょっと待っ……うわぁあああっ!!」
そしてそのまま力任せに引っ張ることで空中でバランスを崩していた彼の体勢を立て直すことに成功する。
その隙を狙ってオクタヴィオが蹴りを入れると、コルネリオは勢いよく吹き飛ばされていった。
「あばよ、お前さんに時間を取られる訳にはいかないんでな」
瓦礫に掴まり直し、オクタヴィオは崩れる前に先ほどまでいた場所へと戻っていくのだった。
感想や評価がありましたら、作者のモチベーションに繋がりますのでよろしくお願いします!
後、誤字や脱字があったら教えてくれると助かります。




