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第35話


 翌日、朝食を終えた3人は昨日とは変わってレステ・ソルシエールの店内で寛いでいた。

 

 オクタヴィオはベティの整備、ユイエは茶葉を混ぜて独自のブレンドを作り、シーリスは黙々と本を読んでいた。

 パチリパチリと金属が合わさる音が響いた後、オクタヴィオは一息吐いて顔を上げる。

 

 ふと、目についたシーリスが読んでいる本が気になり、オクタヴィオは彼女に声を掛けた。

 

「シーリス、お前さんが読んでる本は何だ?」

 

 声を掛けられたシーリスは顔を上げると、読んでいた本を閉じて表紙を見せる。

 

「これですか? 『在りし日の魔女』っていう童話、物語です」

 

 それを聞いたオクタヴィオは興味深そうに頷いた。

 

「へぇー、魔女のことを描いた童話ねぇ?」

 

 そう言われたシーリスは、少しだけ得意げになって頷くと、説明を始めた。

 

「昔、何でも出来た魔女が1人の人間に出会ったお話なんですよ」

 

 そう言ってシーリスは本のページをめくっていく。

 

「何でも出来るけど、それを鼻にかけることなく、誰にでも優しい魔女はある日、森の中で倒れている男性を見つけます。 男性は怪我をしていて、今にも死にそうな状態でした。 そこで彼女は男性の傷を癒やしてあげるんです」

 

 そこまで話すと、シーリスはオクタヴィオの方を向いて言った。

 

「それで、ここからが面白いんです」

 

 目を輝かせて語るシーリスを見て、オクタヴィオは苦笑しつつ言った。

 

「わかった、わかった。 続きを頼むわ」

 

 その言葉にシーリスは小さく咳払いをすると、再び話し始めた。

 

「分かりました、えっとですね……」

 

 それから暫くの間、シーリスによる朗読会が続き、それが終わった頃には昼前になっていた。

 

「もうこんな時間か」

 

 オクタヴィオは時計を見ながらそう呟いた。

 

「もうそんな時間ですか? まだ話し足りないです……」

 

 残念そうに呟くシーリスに、オクタヴィオは苦笑する。

 

「また今度話を聞こうかね」

 

 オクタヴィオの言葉を聞いて、シーリスは満面の笑みを浮かべた。

 

「はい、約束ですよ」

 

 オクタヴィオはそれに頷きつつ、手元にある銃の整備用具を片付けていく。

 

「さて、そろそろ出発しようかね」

 

 その言葉を聞いたユイエは、カップに残っていたコーヒーを飲み干すと立ち上がった。

 

「そうね。 ならどこまで行こうかしら」

 

 ユイエに続いて、シーリスも立ち上がる。

 

「私は食べられるなら何処でも」

 

 二人の言葉を聞いたオクタヴィオは、やれやれといった様子で肩をすくめる。

 

「じゃあフューリムの酒場まで行きますか」

 

 そう言って、3人は店を出て歩き始める。

 少し歩いた所でオクタヴィオが急に立ち止まると、二人に声を掛けた。

 

「2人とも悪い、大事なもの忘れちまったから一旦取りに戻るわ。 ユイエ、シーリスを頼んだぞ」

 

 3人の間に微妙な空気が流れる。そんな中、最初に口を開いたのはシーリスだった。

 

「……えっと、お財布なら持ってますよ?」

 

 シーリスの言葉を聞いたオクタヴィオは、慌てて訂正する。

 

「違う違う。 いや確かに忘れたんだがそうじゃなくてだな……」

 

 オクタヴィオの言葉を受けて、シーリスは首を傾げる。

 そんな二人を見ていたユイエは、小さくため息を吐くと言った。

 

「なら先に言ってるから、オクタヴィオは用事を済ませたら早めにいらっしゃい」

 

 その言葉を聞き、シーリスは頭の上にクエスチョンマークを浮かべるが、そう言うものだと納得した。

 

「おう、了解だ」

 

 オクタヴィオは返事をすると、踵を返して走り出す。

 そんな彼を見送りながら、シーリスはポツリと呟いた。

 

「なんだか慌ただしいですね」

 

 シーリスの言葉に、ユイエも同意するように頷く。

 

「こう言う時もあるわ。 それじゃ、行きましょうか」

 

「そうですね」

 

 そう言ってゆっくりと歩いていく2人の姿を片目に、オクタヴィオは気を取り直してレステ・ソルシエールへと戻っていく。

 戻ってきた店内は耳鳴りがするほど静かで、物音一つしなかった。

 

「……さてと」

 

 そう呟きながら中に入り、オクタヴィオはカウンターにゆっくりと座り込んだ。

 

「なあ、いるんだろう? 入ってこいよ」

 

 誰もいない入り口のドアに向けて、オクタヴィオは声を投げ掛ける。

 しん、としている店の中で、オクタヴィオの声が反響して数秒後ーーー

 

「ーーー驚いた」

 

 ドアが開き、現れたのは長身の男性であった。

 機能性が高そうな服に身を包み、少しの驚きを見せながらオクタヴィオのいる店内へと入ってきた。

 

「かなり離れていた筈なのによく、ワタシが見ていることに気付いたな」

 

「あれだけ露骨に見られてりゃ何かあるのはすぐわかる」

 

 そう言いながら、オクタヴィオは目の前の人物を観察する。

 

 目の前にいる人は身長が高く、手足が長く、スタイルが良い。顔立ちも整っており、モデルと言われても違和感がない容姿をしていた。

 

 服装は黒のスーツで、シャツの色は白。ネクタイの色は青で、靴は革靴である。

 そして何より目立つのが、左目を覆う眼帯だろう。その目は閉じられており、外す様子は無い。

 

 オクタヴィオは目の前の人物に問う。

 

「あんた、何者なんだ?」

 

 その問いに、男は答えた。

 

「ワタシの名前はイザイア。 君にわかりやすく説明するならーーー魔女協会のトップ、とでも言おうか」

 

 それを聞いて、オクタヴィオは怪訝そうな表情を浮かべた。

 

「……組織のトップである人物が俺に何の用だ?」

 

 オクタヴィオがそう言うと、イザイアは首を振る。

 

「いやなに、ウチの組織でよく聞く君がどういう人物なのか知りたくてね」

 

 それを聞いたオクタヴィオは、目を細めると、静かに言い放った。

 

「俺はただの何でも屋だよ」

 

 だが、その言葉を聞いた瞬間、イザイアの目が鋭く光る。

 その視線はまるで獲物を狙う獣のようだった。

 それを見たオクタヴィオは思わず身構えるが、すぐに力を抜く。

 

「……まあ、いいさ。 それより本題に入ろうぜ」

 

 その言葉を聞いたイザイアは小さくため息を吐いた後、口を開く。

 

「では単刀直入に言うが、君をスカウトしに来たんだ」

 

「断る」

 

 即答するオクタヴィオに対して、イザイアは特に表情を変えることなく言葉を続ける。

 

「何故だ? 君は魔女を助けてその見返りを貰う、ワタシ達は魔女が生きやすい世界を作る。 手を取り合えばより良い世界が作れると思うが?」

 

「アンタの求めていることと俺がしたいことが致命的なまでに噛み合わない。 どちらにせよ答えはノーだ」

 

「ふむ……」

 

 それを聞いたイザイアは顎に手を当てると、少しの間思案した後、再び口を開く。

 

「ならばこういうのはどうだろうか? 君が協力してくれるのならば、報酬として君が望むものを可能な限り与えよう」

 

 それを聞いたオクタヴィオは、眉をひそめる。

 

「だから俺はそう言うものが欲しい為に何でも屋をやってるわけじゃないの」

 

「なるほど、それは残念だ」

 

 オクタヴィオの言葉を聞いて、残念そうに首を横に振ると、イザイアは懐から何かを取り出した。

 それを見たオクタヴィオは反射的に手がホルスターへと伸びるが、それを見たイザイアはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「安心するといい、これはただの写真だ」

 

 そう言うと、彼は写真を差し出してきた。

 それを見たオクタヴィオは、思わず拍子抜けしてしまう。

 だが、それと同時に疑問が浮かんだ。

 

(なんで今この写真を俺に見せてきた?)

 

 疑問に思いながらも、差し出された写真を受け取る。

 そこには1組の男女が写ったものだった。だが、そこに写っている人物はどう見ても……。

 

「これ、シーリスじゃないか?」

 

 それを見て驚くオクタヴィオに対し、イザイアは静かに告げる。

 

「その通り、彼女は我々にとって重要な存在でね。 是非とも返して欲しいのだが?」

 

 その言葉に、オクタヴィオの表情が険しくなる。

 しかし同時に頭の中で冷静に思考を巡らせていた。

 

(どうする……? はいそうですかと簡単に返してやれる状況じゃないぞ)

 

 オクタヴィオは考える。

 どうすればこの状況を乗り越えられるのか。

 すると、その様子を見ていたイザイアが口を開いた。

 

「もし君が彼女を返してくれるのなら、君の願いを一つ叶えてあげよう」

 

 その言葉を聞いたオクタヴィオはピクリと反応する。

 

「さっきから思ってたんだが……そんなに簡単に願いってのを口にするが、アンタはそれを叶えられるだけの何かがあるのか?」

 

「ああ、あるとも。 ワタシは嘘はつかない主義でね」

 

 それを聞いたオクタヴィオは暫し考え込むと、決断を下す。

 

「……答えはノーだ」

 

 オクタヴィオの言葉に、イザイアは残念そうな表情を見せる。

 

「そうか、非常に残念だよ」

 

 それだけ言うと、イザイアは踵を返すとそのまま立ち去ろうとする。

 それを引き留めるように、オクタヴィオが声を掛ける。

 

「ちょっと待てよ」

 

 その声に反応して、イザイアは足を止めて振り返る。

 

「まだ何かあるのかね?」

 

「一つ聞きたいんだが、どうしてシーリスにこだわる?」

 

 オクタヴィオの問いに、イザイアは答えた。

 

「彼女が持っている『力』が我々の計画に必要な物だからだ」

 

 それを聞いて、オクタヴィオは眉を顰める。

 

「力ねぇ……?」

 

 オクタヴィオが興味なさそうに呟くと、イザイアは淡々とした口調で話し始めた。

 

「我々は魔女の力を使って新たな世界を作ろうとしているのだ」

 

「魔女の力で新しい世界だと?」

 

 訝しげな表情になるオクタヴィオに対し、イザイアは頷く。

 

「そうだ、今の世界は間違っている。 だから我々が変えなければならない」

 

 そこまで聞いたところで、オクタヴィオは呆れた表情を浮かべる。

 

「で、そのためにシーリスが力が必要って訳か」

 

 オクタヴィオの言葉に、イザイアは頷く。

 

「その通りだ。 彼女さえいればこの計画は成功すると言っても過言ではないだろう」

 

「ふーん、なるほどね」

 

 それを聞いたオクタヴィオは、暫く考え込んだ後に言った。

 

「よし、分かった。 じゃあこうしようぜ」

 

 オクタヴィオの提案に、イザイアは首を傾げる。

 

「提案とは?」

 

 それに対して、オクタヴィオはニッと笑って答えた。

 

「俺とゲームをしないか? 俺が勝ったら大人しく帰ってもらう。 アンタが勝ったらーーーそうだな、望み通りシーリスに話をしよう」

 

 そう言って笑うオクタヴィオに対して、イザイアは小さくため息を漏らすと言った。

 

「いいだろう、受けて立とうではないか」

 

 その言葉を聞くと、オクタヴィオはニヤリと笑みを浮かべた後、言葉を続けた。

 

「ルールはコインを弾いて裏か表かを当てる。 簡単だろ?」

 

 その提案を聞いて、イザイアは少し考えた後、小さく頷いた。

 

「……構わないよ。 それでいこうじゃないか」

 

 それを聞いたオクタヴィオは大きく頷くと、ポケットから一枚のコインを取り出す。

 

「さて、それじゃあ始めるとするか。 俺は表だ」

 

「ワタシは裏だ」

 

 オクタヴィオの言葉を合図に、コインが指で弾かれ綺麗に回転しながら宙を舞う。

 2人の視線が回転するコインに集中する中、やがて重力に従って落下していき、そしてーーー。

 

「「ッ!!」」

 

 同時に手に持っていた物、魔力弾を生成し、コインにぶつける為にそれらを手から放つ。

 

 1秒にも満たない時間の中で放たれた鉛玉と魔力の塊は、空中でぶつかり合い、そして弾ける。

 

「コインに手を出すなんて組織のトップにしちゃあ手癖が悪いな!」

 

「何を言う。 そちらこそ同じだろうに」

 

 そう言い合いながらも、2人はコインが落ちていく光景を視界に収めながらその行末を見守るのだった。

 

「さあどうなる……?」

 

 オクタヴィオが小さく呟いた瞬間、コインは地面に落ちて、カラカラと転がっていく。

 そしてーーーー。

 

「俺の勝ちだな」

 

 オクタヴィオがニヤリと笑みを浮かべつつそう言うと、イザイアは特に表情を変えることなく呟く。

 

「ふむ、どうやらそのようだね」

 

 毅然とした態度を取る彼を見て、オクタヴィオは愉快そうに笑うと言葉を続ける。

 

「で、約束は守ってくれるんだろうな?」

 

 その問いかけに、イザイアは頷いて答える。

 

「勿論だ、約束は守る。 この場は引くとしよう」

 

 その言葉に安心したのか、オクタヴィオはイザイアに気づかれない程度に息を吐く。

 

(ふぅ……とりあえず一難去ったか……)

 

 心の中で安堵しつつ、それと同時にイザイアが服を正して店の入り口へと歩いていく。

 そして、ドアに手を掛けたところで振り返り、オクタヴィオに言った。

 

「では、また会おう」

 

 それだけ言うと、彼はドアを開けて去っていった。

 

「行ったか……。 もう2度と来ないでくれよ……」

 

 オクタヴィオは緊張の糸が切れたように大きく息を吐き出すと、その場に座り込む。

 

「とんだハプニングだぜ」

 

 このタイミングで組織のトップが出てくるということは、近いうちに何かあるということに他ならない。

 対策のことを考えるだけでも頭が痛くなりそうだが、今はそれよりもオクタヴィオは休みたかった。

 

 少し休んで緊張がほぐれたのかオクタヴィオは立ち上がり、コインがあるところまで歩いていく。

 そして、落ちているコインを拾い上げるとーーー

 

「持っておいてよかった……両面どっちも表のコイン」

 

 そう言いながら、オクタヴィオは苦笑いを浮かべる。

 賭けをする直前、オクタヴィオはポケットに入れっぱなしにしていたこのコインを取り出していたのだった。

 

(まさかこんな所で役に立つとは思わなかったけどな)

 

 そう思いながら、オクタヴィオは拾ったコインを指で弾き、そのままキャッチする。

 こう言う賭けをする時は、相手がイカサマをする前提で動かなければならないのは当たり前だろう。

 イザイアはその点に関して少し、慎重になるべきだとオクタヴィオは思った。

 

 しかし、それも杞憂に終わったようで安心する。

 

「まあ、あちらさんがそんな小細工を仕掛けて来るようには見えなかったから、その点は安心か」

 

 そう言いながら、オクタヴィオはコインをポケットに仕舞うと、忘れていた財布を持って歩き出す。

 外へ出る為にドアノブを握れば、音もなく勝手に開いていく。

 

「おろ……?」

 

 オクタヴィオが開いたドアの先に視線を向ければ、そこには腕を組んだユイエが立っていた。

 

「遅かったわね」

 

「あれ、先にフューリムの所へ行ってたんじゃ? シーリスは?」

 

 てっきりユイエは先に行っていると思っていたオクタヴィオだったが、彼女は戻ってきたようだ。

 

「あの娘は酒場にいるわ。 置いてから戻ってきたのよ」

 

「忘れ物しただけだからそこまで心配しなくても」

 

「嘘ね」

 

 嘘と断言されてオクタヴィオの肩が微かに跳ねる。

 その様子を見たユイエは、呆れたように溜め息を吐いた。

 

「どうせ厄介事に巻き込まれたんでしょう?」

 

「あー、いや、うん、まぁそんな感じかな?」

 

「ふぅん……」

 

 誤魔化す様に頭を搔くオクタヴィオに対して、ユイエは見透かしたかのように視線を向ける。

 

「それで、これからどうするの?」

 

「ん、そうだな……まずはシーリスを拾ってから考えるさ」

 

「そう、なら早く行きましょう」

 

 そう言ってユイエは歩き出そうとするが、オクタヴィオはその場から動かない。

 

「どうしたの?」

 

 不思議そうな表情を浮かべているユイエに向かって、オクタヴィオは言った。

 

「いや、何でもないぜ」

 

 それから二人は店を出てフューリムの酒場へと歩いて行くのだった。




◇◇◇




「ふふ……ああ、楽しい。 楽しいよオクタヴィオ」

 

 レステ・ソルシエールから離れた所で、イザイアは恍惚とした表情でそう呟いていた。

 

「次はどうやって遊ぼうか……? ああ、楽しみだ」

 

 まるで恋する乙女のように、頬を赤く染めて呟く彼ーーーいや、彼女の姿からは、先程までの威厳やカリスマ性は感じられない。

 

 ただ欲望のままに生きる一人の魔女の姿がそこにあった。

 

 そんな彼女の背後へ忍び寄る影が一つ。

 

「おい、アンタこんなところで何してるんだァ?」

 

 不意に声を掛けられ、一瞬で恍惚とした表情が消え去り、男の方へ振り向く。

 すると、そこに立っていたのは、見るからに浮浪者と言う風貌の男が立っていた。

 

「きひひっ、今日はツイてるな。 こんな綺麗どころが目の前にいるんなら手を出さずにいられないよなァ?」

 

 下心を隠さずニヤニヤと笑みを浮かべる男に、イザイアはただ無表情に睨み返す。

 だが男はそれを気にする様子もなく距離を詰めてくると、イザイアの手を掴んで強引に引き寄せようとする。

 

 その瞬間、イザイアは男の手首を掴み返し、そのまま捻り上げると同時に足を引っ掛けて転倒させる。

 

「はれーーー?」

 

 突然のことに受け身を取ることもできず、男は顔から地面に激突し悶絶している隙に、イザイアは懐からナイフを取り出して男の首筋に当てる。

 

「汚い手でワタシに触れるな。 触れて良いのは彼だけだ」

 

 冷たい声で言い放つイザイアに、男は冷や汗を流しながら何度も頷く。

 

「わかっ、わかったから! 頼むから殺さないでくれ!」

 

 必死に命乞いをする男を見て、イザイアはつまらなそうに鼻を鳴らす。

 

「ふん、いいだろう。 見逃してやる」

 

 そう言って、ナイフを収めた瞬間、男は飛び起きると一目散に逃げていった。

 

「やれやれ、品性の欠片もない男だ」

 

 呆れた様子で呟きながら、微かに乱れた服装を整えると、何事もなかったかのように歩き出した。

 

「さて、彼と次に会えるのはいつだろうか。 楽しみだ」

 

 イザイアがそう呟くと、暗い路地の奥へと消えていった。


感想や評価がありましたら、作者のモチベーションに繋がりますのでよろしくお願いします!

後、誤字や脱字があったら教えてくれると助かります。

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