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第30話


 目を閉じて眠れば、人は夢を見る。

 それは、人であるオクタヴィオも例外ではない。

 彼も夢を見る、遠い遠い過去を追走する様に。

 

 夢の中は真っ暗だった。

 

 何も見えない、光すら届かない闇の中で、ただ自分の体だけが浮いている様な感覚がある。

 だが不思議と不安感は無い。

 

 寧ろ懐かしい気分であった。

 

 暗闇の中を彷徨う内にふと気付く。

 オクタヴィオは何かを追いかけている事に。

 追い掛ける度に足音が大きくなる。

 

 近付いている証拠だろう。

 

 しかし一体何を追い掛けているのか分からない。

 追いかける理由はある筈なのに思い出せない。

 そして、遂に足音が止まった。

 

 目の前には誰かがいる。

 

 オクタヴィオは声を掛けようとして―――そこで目が覚めた。

 

「……んあ?」

 

 オクタヴィオは寝ぼけ眼のまま身体を起こし、周囲を見回す。

 そこはいつも通りのベッドの上だった。

 

「おはよう、オクタヴィオ。 良い朝ね」

 

 黒のネグリジェを見に纏ったユイエがオクタヴィオを蠱惑的に見つめる。

 

「ねえ、昨日は激しかったわね」

 

「何もしてないだろうに」

 

 そう答えると、彼女は不満げに頬を膨らませて抗議してくる。

 

「酷いじゃない、あんなに私を求めて抱いてきたくせに……」

 

「言い方ァ!」

 

 誓って昨日は抱いていない。

 ユイエと共にベッドに入りそのまま寝て、起きたら彼女がいただけだ。

 

「あら、そうだったかしら?」

 

 そう言って微笑むユイエを見て、オクタヴィオは溜息をつくしかなかったのだった。

 そんな会話をしながら、オクタヴィオは魔力で浮かんできたユイエの背中と両足の下に手を入れ、横抱きにして部屋を出ていく。

 

 向かう先はリビングだ。

 

 閉めていたカーテンを開けつつ、オクタヴィオはポストに入っていた新聞を取ってリビングにある椅子に座ろうとするが、その前に朝食を作ることにした。

 

 冷蔵庫から卵二つとベーコンを取り出してフライパンに油を引いて火をかける。

 その間にパンをトースターに入れて焼き始める。

 

 目玉焼きを作って皿に移し、そこにベーコンを乗せる。

 更にその上から塩胡椒を振りかけて完成である。

 それらをテーブルに並べていると、着替え終わったユイエがやってきたので食事を摂る。

 

「いただきます」

 

 手を合わせながら言って食べ始める2人だったが、その途中で不意にインターホンが鳴った。

 

「何だなんだ? まだ朝っぱらじゃないか。 はいはいどなたですかねぇ?」

 

 オクタヴィオがドアノブを掴んで開けると、そこには1人の少女が立っていた。

 黒髪黒目でツインテールの少女で、年齢は10代前半といったところだろうか。

 服装は白いワンピースで、靴は履いておらず裸足であった。

 

 そして何よりも目を引くのは、彼女の背中から生えている純白の翼と頭上に浮かんでいる光の輪っかの様な物であろう。

 

 少女はぺこりとお辞儀をすると、口を開いた。

 

「初めまして、私はシーリスと申します」

 

「え、あ、はい、どうもご丁寧に」

 

 突然の事で戸惑いつつも、反射的に挨拶を返すオクタヴィオだったが、そんな様子を気にせずにシーリスと名乗った少女が話を続ける。

 

「オクタヴィオさん、貴方とそこにいる魔女さんに用があって参りました」

 

 魔女という単語でオクタヴィオは警戒の段階を数段引き上げる。

 オクタヴィオの纏う空気が一変したことに気付いたユイエが、オクタヴィオの前に立ち彼を制した。

 

「待って頂戴、話を聞いてからでも遅くはないわ。 それで、一体何の用かしら」

 

 ユイエの言葉に、オクタヴィオも頷く。

 するとシーリスが答えた。

 

「あなた方に依頼をしたいのです」

 

「依頼……?」

 

「ええ、そうです」

 

 オクタヴィオの問いに、シーリスは頷くとこう続けた。

 

「オクタヴィオさん、私を此処で匿って欲しいんです」

 

 それを聞いてオクタヴィオが口を開くよりも早く、ユイエが言葉を発した。

 

「きな臭いわね」

 

「ちょ、ユイエ!?」

 

 即答するユイエに対し、オクタヴィオが慌てて声を掛けるが、ユイエは気にした様子もなく、それどころか目の前の少女に対して警戒心を露わにしていた。

 

 そんな彼女の反応を受けて、シーリスは困った様に眉根を寄せると、再び口を開く。

 

「そこを何とかお願いします。 でないと私、殺されてしまうかもしれません……」

 

 その言葉に、オクタヴィオは首を傾げる。

 

「どういう事だ?」

 

 話の流れからして、恐らくだがこの少女は何かに追われているのだろう。

 でなければわざわざオクタヴィオの所に来たりしないだろうし、そもそも見ず知らずの2人を頼る必要もない筈だ。

 

 だがそうなると、問題は何故追われているのか、という事になる。

 考えられる可能性としては、この少女が誰かの命を狙っていて、それがバレて追っ手が来たか、或いは別の理由か。

 

 そこまで考えたところで、オクタヴィオは再び口を開いた。

 

「……取り敢えず中に入ってくれ。 詳しい話はそこで聞く。 良いよなユイエ?」

 

 オクタヴィオがそう言うと、ユイエは少し悩んだ様子を見せたが、やがて渋々といった様子で頷いた。

 

 それを見たオクタヴィオは満足そうに頷くと、ドアを開けて彼女を招き入れるように横に退いた。

 それを見て、シーリスは笑顔を浮かべると家の中へと入っていくのだった。

 


感想や評価がありましたら、作者のモチベーションに繋がりますのでよろしくお願いします!

後、誤字や脱字があったら教えてくれると助かります。

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