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王女フィロシュネーの人間賛歌  作者: 朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます!
1章、贖罪のスピネル

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48、ハッピーエンドさ!

 悪い子だ。

 空王アルブレヒトは、悪い子だ。


 呪術師は愉悦(ゆえつ)の中に、嫌悪をおぼえていた。


 口答えをするじゃないか、この俺に。

 罪を否定するじゃないか、若造が。


 ハルシオンに愛されやがって。

 王様にふさわしいのは、ハルシオンなのだ。

 こんな若造の下について、臣下みたいに尽くすなんて、ハルシオンの格が下がってしまう。冒涜だ。呪術王カントループの転生体に対する、許されざる冒涜だ。


「ここに悪がある。青王クラストスの名において、正義を執行するべきだと主張する!」


 王太子アーサーが紅国を頼ったのは、想定外だった。あまり空国以外の他国とは国交を持たなかったのに、咄嗟(とっさ)に他国を頼ることを思いつくとは。教育を間違ったか。

 二国だけの紛争でおさまっていれば、この段階で青王の絶対権力を振りかざして終わりだったのに。紅国の顔色を気にしないといけないとは。

 

(だが、この盤面はもう覆らないだろう!)

 悪逆非道のアルブレヒトは断頭台に送り、青王クラストスはハルシオンを王にするのだ。

(ハルシオンは国民に慕われる立派な王様になる! 俺がそうする! そこまで見届ける! えっへへ)


 その頃には、自分が過去に英雄からかけられた呪いも解けているだろう。

 英雄にはフィロシュネーを与えた。好きにしていいよって言った。だから、英雄は俺を許してくれる。


 英雄! 英雄!

 俺と酒を飲もうか? 仲直りだ!

 

 ハルシオンを讃えながら飲むんだ。

 酒がまわったら聞いてみようか。英雄、俺が育てた姫はどう? 幸せ? 俺を許してくれたよね? って。


 それで、それで、ハルシオンは、カントループは俺に笑ってくれるんだ。


『オルーサ、よくやった。えらいぞ。いい子だ』

 そんな風にカントループに褒めてもらって、俺はすべてを終わりにする……。

 

 

 えっへへ――ハッピーエンドさ!



「青国のフィロシュネー殿下にお越しいただきました」


 儀典官が声をあげて、呪術師は姫を見た。


 しゃらり、と白銀の髪が流れるさまが美しい。

 清らかで、城の奥で大切に愛でられるだけのお姫様だ。

 何も知らず、恋愛に夢をみて。ただ幸せを享受する――そんな「おばかさん」だ。


 無知で可愛い姫へと、呪術師は近付いた。

 優しい父の声と笑顔で。


「シュネー、元気にしていたかい? パパは心配していたのだよ……もっとゆっくりでもよかったのに」 

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