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禁術令嬢ハーキラ

今回は1話です

 脱獄して直ぐに、ハーキラ嬢は自宅へ向かう。


「ただいま~。すぐ居なくなるけど」

「ああ、ハーキラ。晩御飯は食べていくかい?」


 ハーキラ嬢の事は、誰も心配していなかったようだ。魔術学院から帰宅して、友達と出掛けようとしている御令嬢のように扱われた。


「お嬢様、また下町言葉を」


 従者ツッキー・ビトーも変わりがない。


「カエサン国辺境騎士団言葉だって」



 家を空けて牢屋に居たのはほんの数日だったが、ハーキラ嬢は懐かしさで胸が一杯になった。黒い焔を燃やした事実は、ハーキラ嬢の記憶から抹消された。


「おいてくよ」


 デール師が声をかけた。夕食を共にするのは無理なようである。


「ツッキー、お婿さん候補教えて」


 去り際に、抜け目なく婚活情報を得ようとする。


「わたくしは、除外して下さい」

「候補教えてよ、意地悪ね」


 ツッキーは、しばし思案して発言する。


「そちらの大魔術師様など、お似合いかと」

「適当なことを言わないで下さい」


 瞬殺拒否である。ハーキラ嬢は、デール師に嫌な顔をされた。



 デール師は、冗談抜きに忙しかった。あの町で決壊した堤防を治し、この村で難産の妊婦を助け、世界中を駆け回る。総て国からの依頼だと言う。


(本当かしら?)


 辺境騎士団の助っ人までしたのだ。国と辺境騎士団は、冷戦状態にある筈だ。


(騎士団のみんな、相変わらずだった)


 思い出すと、思わず笑みが溢れる。


「どうしたんだい、だらしない顔で」


 デール師が、怪訝そうな顔をする。


「もしかして、本命が辺境騎士団にいるの?」

「違う。騎士団のみんなは家族だから。対象外」

「ふーん」



 そんなある日、ハーキラ・レータ嬢は、移動の魔術をいじっていた。幸か不幸か、デール師が側に居ない時だった。


(ん?何処だ、これ?)


 指定可能な訪問先座標に、知らない土地が示されていた。この世にあり得ない場所へ行く『世界渡り』は、禁術である。

ハーキラ嬢は、勿論気にしない。


(行ってみよ~)


 デール師には簡単な書き置きをして、座標をセットする。



「わっ!君何?どっから出てきた」


 何やら柔らかそうな素材の上下を着た、誠実そうな男がいた。見た目は歳下だった。来歴暴露を遣う。22歳独身、彫金師。


「初めまして。ハーキラ・レータです。18歳です」

「あ、どうも。チトセ・キミト、22歳。キミトが名前です」


 物凄い適応力を見せる青年に、ハーキラ嬢は、今まで感じたことのない胸の高鳴りを覚えた。



「あたし、とっても遠くから来たの」

「まさか、異世界から?」


 聞けば男性は、14歳から16歳まで、別の異世界にいたのだと言う。この国では『神隠し』と言うらしい。


「ハーキラ・レータさんは、自分で世界を渡れるなんて、凄い」


 キミト青年は、感激に瞳を潤ませる。


(ときめいていいのよ、キミト!)


 ハーキラ嬢は、ずずいっと距離を詰めた。


「近すぎ」


 キミトが笑うと、ハーキラ嬢の頬が薔薇色に染まった。

次回異世界青年の場合


よろしくお願い致します

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