冤罪令嬢ハーキラ
今回も2話
R2/9/7 2:00,3:00
美しい夕陽のティータイムは、続く。
「ハッキスの誕生日パーティー、あいつだけにドレス贈ったのよ~見せつけやがって」
「お嬢様、また」
「はー、やってらんね。あたし、クソ王子に石ころすら貰ってね~」
「お嬢様!!」
「カレシほし~イケメンくれ~」
「お、じょ、う、さ、ま!!!」
とうとう、完全に騎士団の乱暴な言葉が飛び出した。ハーキラ嬢は、従者ツッキー・ビトーに怒られる。
カエサン国のシラーネ朝は、シラーネ第4代国王ゲンジョーの御代である。初代で政権を獲得、次代に発展、3代が安定を成し遂げた。4代目は安定を維持したい。
その意味でも、好んで辺境に赴くハーキラ嬢は、シラーネ王家にとって邪魔だった。
由緒も名誉も実力もあるカエサン国辺境騎士団は、シラーネ朝成立より遥か昔から存在するのだ。建国以来、国境を守り続けている。そんな団体と仲の良いハーキラ嬢は、政敵と言っても過言ではない。
ハッキス王子の誕生日がやってきた。婚約者なので、強制参加である。この国は、パーティーへの1人参加も珍しくない。それをいいことに、ハッキス王子はハーキラ嬢を迎えに来たことなどなかった。
「1度も!1度もよ!」
従者ツッキーに手を借りて、チュケーン伯爵家の馬車に乗る。
「エスコートとやらは、されないし、迎えの馬車すら寄越さない!何なの?16までは、辺境にも行ってなかったのに!」
「確かにおかしいですね。望まれた婚約ですのに」
ハーキラ嬢は、鼻を鳴らす。
「はんっ、最初から、ツナギだったんでしょ。田舎伯爵家だと思って、見下しやがって」
「お嬢様、お慎みを」
「ちっ」
今度は舌打ち。
会場に入ってしばらくすると、ハッキス王子が、見事に飾り立てたデーレニナ嬢を伴って登場した。小柄でスタイル抜群のご令嬢である。一気に会場の視線を独占した。
主役の登場へ拍手が贈られる。ミニステージに登った王子が、にこやかに口を開いた。
「我が21の生誕の記念に、相応しき発表がある」
会場の拍手。ハッキス王子は、デーレニナ嬢の腰に手を回し引き寄せる。
「この度、留学生デッレ・デーレニナ嬢との婚約が相整った」
会場、拍手。デーレニナ嬢は、微笑む。天使の笑みだ。
「それに伴い、凶悪な犯罪者である、ハーキラ・レータとの婚約は破棄されている」
ハーキラ嬢は、流石に聞き流せない。
「犯罪者?!」
疑問には答えず、ハッキス王子が手を上げる。するとハーキラは、両脇から衛兵に拘束された。衛兵は、心なしか青ざめている。
ハーキラ嬢の辺境通いは、周知の事実だからだろうか。
犯罪の内容すら明かされず、事前ではなく今拘束された理由も解らない。
引っ立てられながら、ハーキラ嬢は、1つの目標を胸のなかで打ち立てるのだった。
(恋は弱肉強食!あたしが弱いから負けたのよ!)
(第一興味ないなら、あたしの方から、さっさと離れたら良かったんだわ)
(コネだってあるし、いくらもやりようは、あったのよ。失敗しちゃった)
(でも、これから、これからよ!)
(最高の夫を引き連れて、返り討ちにしてやる!)
(クソハッキス、首を洗ってまっていやぁがれ!!)
覚醒しました