二周目のプロローグ
さて、目が覚めたら赤ん坊に転生していたわけだが、そこからの生活は地獄だった。
意識に体がついてきていないものだから、泣きたいわけでもないのに泣いてしまうし、寝たいわけでもないのに眠ってしまう。
授乳もキツかった。知らない人のおっぱいを吸うという行為の恥ずかしさでおかしくなってしまいそうだ。
だが、乳幼児期を過ごすことで、僕は人間がいかに他者に助けられて生きているか身を持って知ることができた。逆に、この時期に僕が得たことはこのくらいだ。
少しずつ体が成長し始め、人の話が聞けるようになってきた頃、人の区別がつき始めた。
新しい人生での俺の名前はアマムラ コウ というらしい。そして両親は医者と看護師であるようだ。
家や食事、服をみる限り、裕福なのは間違い無いだろう。しかし裕福さゆえの他人を見下したような態度が見受けられない。二人とも、とても優しいのだ。神様の行っていた好条件とかいう話は本当だったのだろう。
僕は幼稚園に入る頃には、朝は新聞を読み、昼は読書やら運動やら、夜は父、母と談笑する、というような毎日を過ごしていた。
いわゆる天才児だが、そんな僕を両親は無理に教育しようとしたり、人に自慢したりするわけでもなく、僕がしたいようにさせてくれていた。本当にいい人たちだ。
ただ、実家に帰った時は祖父母達と共に、宇宙飛行士だの総理大臣だのノーベル賞だの将来の壮大な夢物語について語り合っていたが。
幼稚園では、主に人との接し方を学んだ。三年間かけてようやく同年代の子供達に合わせることにもなれ、毎日のように遊びにつきあいながらも、夜は勉強をしたり、両親に頼んでいろいろな習い事をさせてもらったりしていた。
前世では特に秀でたところがなかった分、今回の人生ではあらゆる習い事に手を出した。習字、ピアノ、バイオリン、英会話にプログラミングなど、あげるとキリがない。さらにこれらの習い事は全て、ある程度習熟するまでやめないという縛りを自分にかけ、ひたすらに励んだ。
小学校、中学校は近所の公立に進み、学校では目立たなくする術を身につけた。
そして高校。ようやく高校生になることができた。非常に長かったな。前世から合わせるとアラサーだからな。
僕はこの高校生活で成し遂げなければいけないことがあるのだ。そのための準備は、文字通り生まれた時からしてきた。少しくらい感慨に浸ってもいいだろう?
僕はこの高校生活で、世界を変える。
次回から本格的に始まります