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転生しても現代社会だった  作者: うんごろげ
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人生2周目で無双する話

 人生は不平等である。

 遺伝子や家柄で大抵のことは決まってしまう。人類皆平等などという綺麗事を抜かすつもりはない。

 僕は取り立てて取り柄がない。運動はできない、別に顔がいいわけでもない、頭がいいわけでもない。だからと言って努力でどうにかしてやろうという気にもならない。

 長所と言われれば、親から厳しく言われ続けてきた、人に優しくする、ということだけだろう。

 非常に毎日がつまらない。

 いつしか「人に優しくする」という教えは「人を傷つけない」に自分の中ですり替えが起き、それを言い訳に人付き合いも諦めた。教室の中では完全に空気だ。まあ、いじめられないだけマシなのかもしれない。

 毎日がモノトーンの僕は、いつ死んでもいいような投げやりな気分で毎日を過ごしていた。


 だからこそ、あの時僕は自らの身を投げ出せたのかもしれない。

 いつもと変わらない、退屈な通学路。僕はそう決め付けていた。

 だが、信号待ちをしていると、明らかな異常事態が起きていることがわかった。迫ってくる車、気づいていない親子。

 そのあとはもうよくわからない。

 気がついたら、俺は見渡す限りが白い、暖かい白さの空間に浮いていた。

「天国って本当にあるんだな…というか俺死んだのか」

 周りを見回してみるが、地平線も、水平線も、遠近感も、陰影もない。とても気持ち悪い。

 少し歩いてみたが、地面を踏んでいる感覚もしない。深く水に潜った時の、浮力と水圧が釣り合っている時の感覚に似ているだろうか。それとも、高熱を出している時のふわふわとした感覚。

 一通り確認し終わった瞬間、声がした。確実にさっきまで人がいなかった方向から、絶妙なタイミングで。

「もう話をしても大丈夫かい?」

 そこにいたのは神だった。

 声、立ち姿、容姿、などなど。直感的に、本能的に僕は判断した。

 いや、確信した。きっと人類を作り、導いているのはこの目の前の存在なのだろう、と。

「もう顔をあげてください。少しお話をしましょう。」

 そう言われて僕はようやく自分が頭を垂れていることに気がついた。

 恐る恐る顔をあげると、そこには今まで見たことがないほど整った顔をした、質素だが美しい純白の服をきた少女がいた。

 人間という生物における顔の模範解答とでもいうべき容姿。芸能人たちはあくまで「いい線をいっている」程度なのだなあとぼんやり感じた。

 「あなたは自分がどうしてここにいるのかわかっていますか?」

声も、非の打ちどころのない、安心感を覚える美声である。僕の緊張は初めからなかったかのように消滅した。

「僕は死んだのですよね、そしてここ天国へ送られた」

神様は大きく頷いた。

「大体があなたの理解する通りです。あえて注釈をつけるならば、今いる場所は天国の出口ともいうべき場所であることかしら」

「死んだばかりなのにもう出口なのですか?手違いで実は地獄行きだったとか?」

神様はクスリと笑い、世界平和を確実に促進させること間違いなしの微笑みを僕に向けた。僕の心が豊かな感情で満たされていく。

「地獄などはこの世界には存在しません。あるのは死者の国、天国ただ一つ。生前の善行、罪状は来世への生まれ変わりの際に考慮されるだけで、天国では皆が平和に暮らしているのです。」

なるほど。現世の人間が考えてきたよりもずっと優しい世界なんだな。まあこんな素晴らしい神様がいるんだ、平和なのも当然だろう。

神様は僕の思考がひと段落つくのを待ってから言葉を続けた。思考が読めるのだろうか?

「話は戻りますが、あなたが天国の出口にいる、というのは今からあなたには転生してもらうからです」

なるほどなるほど、今から僕は転生するのか。

「あなたは前世で善行を多く積み、最期には自分の命を投げ出して他者の命を救うという最上級の善行を成し遂げましたからね。来世は素晴らしい人生になることでしょう」

涙が溢れた。暖かい涙だった。あの灰色の人生を、誰からも認められなかった人生が認められるだなんて。両親の顔が思い浮かぶ。

母さん、父さん、僕を育ててくれてありがとう。本当に、ありがとう。

「それでは、転生を開始します。良い人生を!」

僕はずっと涙が止まらなかった。



気がつくと、狭い箱のような空間に入っている。どうやら泣き疲れて気がつかないうちに眠ってしまっていたらしい。

意識ははっきりしているが、体がうまく動かせない。

そういえば、転生はいつ始まるのだろう?もう始まっているのか?体がうまく動かせないのは転生中だからだろうか?

そこまで考えて僕は、ようやくあたりが赤ん坊の鳴き声でいっぱいなことに気がついた。

そうか、僕はもう転生しているのか。


これから僕の、人生2周目が始まる。




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