画廊。
「うわぁ!人がたくさんいる!すげぇ!」
ここは王都の北の玄関口、商都チェイン。北側の物が集まる交易都市だ。
「本当に賑やかだね。ウルフあんた、迷子になるなよ。」
「ガキじゃねぇし!」ガキだろうが…
さすが商都。多くの商店が軒を並べる。見たことのないもんばっかりだわ…まぁ、もっとも最近まで乞食みたいなもんだったしな。ん?…。
「どうしたユーホ…ふくくく。女の子だったという訳だ。」
「違うよお師様。そりゃキレイとは思うけど、この宝石を絵具で表現するにはどうしたら良いかなとおもってさ。輝きと透明感…そして深み…」
「ほう。確か手持ちにあったな。後で見せよう。挑戦するといい。」
「お師様!大変だ!絵屋がある!」…絵屋?お師様の言う画廊の事?
「ほう。どれ見せてもらおうか。」…。
「主、ここの画廊は同一作者の個人の物か?それとも”商売”のためのものか?」
「どちらかというと後者となります。どうしても推している作家の物が多いですが。気に入った作家が居れば肖像画や邸宅絵、家族絵の注文もお受けいたします。」
「では少し見せてもらおうか。案内は要らぬ。」
「どうぞ。」
「人の描いたもの、見るの初めてな気がするなぁ」
「一通り見てみるがいい…」
…そうは言うもの…特に惹かれるものはない…なぁ。お師様の絵のように心に刺さる物はない。おっと失言。お金のために嫌々描いてるから?それと…同じ構図の物が数点ある…筆使いは違うのに?一つの絵を見本にし皆で描いたような…違和感。一通り見て回り店を出る…こんなものか…
「こんなものかぁ。」
「ふくく。で、どうだった?」
「気が抜けたような絵ばかり。お師様の絵みたいだな。」ズバッと言うなや!ウルフぅ!
「景色じゃなく絵を見て描いたような感じ?」
「職業画家とはそういったものだな。貴族にしてもそこまでは求めておらぬ。まぁ、名の知れた画家に頼みたいだろうが恐ろしく金がかかる。」
「希少な素材みたいなものか?需要があってどんどん高くなる…」
「そうだな。何せ一枚書き上げるにしても相当時間が掛かろう?死ぬ前に描ける枚数なんぞも決まってくる。その一枚…画家の人生の一部を買うのだ。妥当であろう。画家にしてもその責務なり重圧を感じるだろう。必然に”気”がこもるという物だ。だがな…まぁ良い。」
「教えてくださいよ~いいところなのに!」
「…まぁ良かろう。そういった連中に多いのは晩年や死の直前。好きなものを自由に書いていなかった事に気づき、絵に念がこもる…多少なら、”名作”ともなろうが。最悪、己の魂すら込める輩もいる。その後も人を魅了し、魂を抜いたりとな。で、”魔物”の仲間入りという訳だな。初めて筆を執った時を思い出せばそのようなことも無いのだろうが。」
「怖!そんなことあるんだ…」ひぇええ!
「でも、今までみせてくれなかったね。他の人の絵。お師様?」
「まぁお前達なら心配はしていなかったが、変に引っ張られるのもいかんと思ってな。帰る頃には”名作と”いう物を見せられるだろう。まぁ、私の見解ではあるがな。」
「そいつは楽しみですね!まぁ、俺の参考になるかは分かんないけど。」あんたは闇落ち一歩手前じゃない…
「ウルフも”魔物”にならないようにねぇ~」
「ふふん!ならないさ!ため込まずにぶつけてるからな!ユーホこそお気楽な絵ばっか描いてアホになんなよ?」
「なるか!」
「くくく。さて宿を探そうか。折角の町だ。このままじゃ野宿だぞ。」
「お風呂!」「ご飯!」…職業絵師…かぁ。自由にできる才能…技術…私にあるんだろうか…いや!明るい未来を信じて今は進まねば!環境は用意されているんだ!
「ああ!こっちの方が面白い!」
はしゃぐウルフ。ここはもう一軒の画廊…というより画商だ。無造作に絵が置いてある。肖像画もある。…ってことは。没落貴族の家にあった…訳あり品?
「ほう。こういった商売をする者も居るのか。ふむ…主よ、肖像画なぞ売れるのか?」
「ふふふ。小さいものはね。特に女性の絵は売れるぞ。面白いだろう?オヤジの絵は、まぁ…な。年に数件、先祖様だ、復興が叶ったやら、借金が返せたとかと引き取られる絵もあるさ。」
「へぇ~~~思い入れがあるってことだね。」
「そいつはどうかな?お貴族様の考えることだからな。他所の邸宅画も風景画として買っていく連中もいる。コレクターも少なからずいるな。おっと、有名どころのが混ざってることはほぼないぞ?ここに来る前にオークションにかけられるだろうからな。」
ふ~ん…これなんか作者の思いがこもってなかなか見ることができる作品…偉そう?ははは。だね!油彩絵ってこういうふうに描くんだ…
「お師様!」ウルフが持ってきたキャンバス。そこに描かれていたのは…ゼクス神像を描いたもの…あれ?
「ほう…良く見つけたな…主。これはいくらになる?」
「そいつか…坊主…良く見つけたな。そいつは呪物に近いものだが良いのか?」
「ほう。そこまでわかってるのか?それで置いてあると?」
「まぁねぇ。教会に持って行っても良いんだが…これ以上穢されるのもねぇ。」?
「ここに置いておいても仕方あるまい。我が引き取ろう。先に言っておく。彼の勢力とは無関係だ。」
「…そうかい。わかったよ旦那。旦那なら大丈夫だろう。持って行ってくれ。」
「ああ。預かろう。保管料だ”がちゃり”」おお!
「お師様、この風景画も良いでしょうか?」
「ん?…ほう。なかなかに面白いな。これもいただいて行こう。」
さっきの画商で聞いた画材屋に来ている。なんでもキャンバスの出来が秀逸だそうだ。お師様が何やら注文をしている。あれはヴァートリーに納品させるつもりだな…。
多くの顔料も売っている。石材、これって虫?、奇麗な貝殻?何かの牙やら、頭蓋骨?人?あ!宝石じゃん!これ!…これらを粉にして薬品やらと混ぜて絵の具になる。
誰が考えたんだか…あの人の骨みたいのは…嫌だなぁ…俺っちが入れなくても勝手に”念”…じゃないね。”怨念”が宿りそうだわ…そういや、さっきのゼクス神像画にも感じたな…
「ねぇ、ウルフさっきの絵だけど…」
「ん?あれ?なんかいろいろ憑いていたなぁ。とっても…古いものだよ…くふふふ…」…お師様の真似してるときは悪魔思考だわ…放置しよ…
適当に画材を仕入れ、再び町へ繰り出す。ここには2~3日の滞在予定だ。特に気を引く画題も無さそうだし、適当に食材、屋台飯を仕入れて出立になると思う。




