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坑道に

 皆の食事中に店舗に戻り、金貨などの貨幣、書類、呪物、店に並んでいた商品を片っ端から”収納”にぶっこむ。接収じゃ! ドワーフたちの見舞金には到底足りないがな!

 ……店長(死体)もね。ああ~いやだ、いやだ。

 

 飯炊きの若い女性3人も、”奴隷”だった……。付いて来るということなので食事に送り出す。たしかに可愛いし、スタイルもいい。ったく。これだから……金◯引っこ抜いてやろうかしら

 ここの始末はこんなものかな? ついでに、鍛冶の道具、炉……入るかな? 入った……このままは無理でも、バラしてレンガは取れるだろう。

  

 「うん? お嬢……何やっとるんだ?」

 と、ゴブレットをもってドローヴァンお爺ちゃん。まだ飲んでるのかい! もう。

 それにしても、髭やら頭髪も刈られ、ドワーフ族の象徴? のお腹もぺったんこ。見る影ないわね。本当によく生きていたものだ。

 「使えるもの、かねになるもの片っ端に持って行こうと思って。他にある?」

 売り場の棚はすっからかんよ。

 「お嬢……”勇者”様か?」

 「そうよ? 一応?」

 「こ、これは失礼を……この度は……」

 「やめてよ。勇者の前に理事よ理事」

 金色のギルド証を見せる。

 「ふ、ふぉふぉふぉ! 理事殿でしたか!」

 「そうよ~だから、気にしないで。組合員と取り戻しにきただけだから」

 「感謝しますぞ! 勇者様。こちらです。こっちに鉱石と宝石類が。……あ、そこのインゴットもお願いしますぞ!」

 「了解~」


 ふむ。朝方、日が昇るまで……1~2時間といったところか。

 ぞろぞろと壁に沿って移動中。ここらの城壁は厚みもある。この壁の向こうは【魔の森】なんだろう。

 「真火、大丈夫?」

 「問題ないよ?」

 「で、お嬢。どこから出るんじゃ?」

 「そうねぇ。ここから出ましょうか……ふぅうううぅぅ……”きん!” 螺旋斬……」

 ここらは北側になるせいか木枠に土を詰めて固めた土壁になっている。確か版築土塀というものだ。

 城壁に刀を刺し、円を描くように切っ先をすべらせる。これを目に止まらぬ速さで繰り出す!

 こんな城壁楽勝よ

 「ほぅ……」

 と、ドローヴァンお爺ちゃん

 「さ、お爺ちゃん達、ここ押して。倒さないようにゆっくりよ」

 {応!}

 ”ずっつずずずっつずうぅぅ……”

 「じょ、城壁が……」

 「斬れてる?」

 「ゆ、勇者様……?」

 「勇者様!」 「勇者様ぁ!」

 獣人族と人族から歓声が上がる。が、私達、一応、逃亡中なんですけど!

 「しぃ! 静かに! バレちゃうでしょ!」

 {すいません……}

 「ふむふむ。切り口……見事! ……よほどの高速……」

 「ほら、行くわよ? 戻して」

 皆、外に出たところで、再び押して戻させる。

 ”ずっつずずずずずぅううぅん……”

 ぴったし! 完璧! 壁だけに! ! お、おじさまと同レベルぅ?!

 

 「後は、隙間に適当に土詰めときゃ、バレないわね」

 「……お嬢」

 「ほら、行くわよ!」

 ぞろぞろと……30人以上だと目立つわ……


 武器屋の店員の案内で森を進む。するとチョコンと、掘っ立て小屋が現れる。坑道があるようには見ないのだけれども。でも、説明がつかないわよね。こんな所に。

 「あそこが坑道の入り口? 宿舎とかは?」

 「……な、中に……あります」

 「監視員は何人?」

 「し、知りません! ……ほ、本当です! 本当に」

 「まぁいいわ。ちょいと行ってくるね。ドローヴァンお爺ちゃん、真火、ここ任せるわ。あ、武器要る?」

 「まだええじゃろ」

 「素手でも行けるぞい?」

 「無理しないでね。隠れてて」

 {応!}

 ……


 「門番は……一人かぁ。ここは森の中でしょ? 魔物、来ないのかしら?」

 結界の魔法でも使ってるのかしら? そんなことよりもさっさと片付けるか。

 素早く門番の眼の前に移動、

 ”わし”

 と、喉をとる。

 「うぐぅ!」

 「動くな。このまま首を握りつぶされたく無くば、門を開けよ」

 何を、このガキが! ってな目ね。ま、仕方ないわね。

 少し力を込める。驚きに目を見開く。ふふふ。察したのだろう。本当に握りつぶせると。

 「いぎ! は、はい!」

 ”ガチャリ”

 「良い子。お仲間は何人?」

 「中に……3人です」

 「縛るわよ」

 「……」

 

 ……さてと。

 掘っ立て小屋の後ろに丸い板? で塞がれた穴が。はしごがついており、垂直に5mくらいかな?

 門番はここにおいていくか。案内させたかったが……代わりはいるでしょ。

 懐を探り、鍵を入手。手招きをし、真火たちを呼ぶ。

 「コイツもお願い」

 「気をつけるんじゃぞ」

 「うん。三人だし。いってきます!」

 ぴょんと、穴中に。

 穴の底は5mくらいのロビーのようになっていて、ここにも門番がいた。

 目が合う。あちらさんは、空から降ってきた? なんでこんな所に? ってな顔だ。無理もない。

 「な、なんだ、このガキはぁ?!」

 先の門番と同じように喉を掴みをねじ上げてやる。

 「死にたい?」

 ふるふると首をふる男。ロープを出し、後手に縛る。猿轡さるぐつわも装着! もう代わりが手に入ったわ。

 分厚い木の扉の鍵を開け、するりと侵入――スパイ映画、忍者ね! 忍者! ニンニン! ……あ、きっと、おじさまと同じだわ……たぶん。……そんな気がするわ。

 

 人の声、槌の音がしないから、皆寝てるだろう……監督はと。それにしても……坑道ってイヤねぇ。崩れそうで。生き埋めは御免だわ。

 ん? 扉。鍵はかかっていないようだ。

 「ここ?」

 こくこくと頷く門番2。

 「どれどれ。あと二人かしら」

 ベッドに横たわる人族を一人ずつ、口を押えて部屋の外に連れ出し、拘束する。

 門番1が言っていたように三人だ。

 「で、責任者は?」

 皆の視線が一点に。冒険者というよりも、頭で食っていくタイプ? 恐らくお役人ね。

 「はい貴方」

 猿轡を外す。

 「貴様! こんなことをしてただで済むと思っているのか!」

 「うるさい。死にたくなければ質問に答えろ」

 「わ、わしは! この町の ”びきり!” ……おぐ、おぐぅう? おぐうぅ……」

 頭、伸びちゃって……。クスり。アイアンクローじゃ!

 「ああ、うるさい。話もできない猿が。さてと、話ができる方は?」

 再び視線が一点に。

 「じゃ、次。あなたに聞くわ。ここで働かされてるのは何人?」

 「さ、30人です!」

 「ナーナの町中の武器屋と、ここ……ほかに囚われてる場所は? 心当たりある? 嘘ついても判るわよ」

 はったりだけど。なにか。

 「いえ……最近は交代要員も来ません……」

 「そう……で、何人のドワーフを殺したの?」

 「!」

 「まぁ、良いわ……案内して」

 「……は、い」

 ……


 魔導灯の灯りが、坑道に転がるいくつもの人影を浮き上がらせる。

 ドワーフ、奴隷たちは坑道に転がされている。自分らは布団でぬくぬくと……

 

 「皆さん、お休みのところごめんなさい。てか、生きてますかぁ?」

 もそり、もそりと起き出す人影。

 「なんじゃぁ、嬢ちゃん? やけに物騒じゃのぉ」

 「ああ、生きとるぞい」

 

 「ケガや、病気……死にそうな人いる?」

 「ふん、病気になれば……怪我を負えば、お前さんたちが”処分”するんじゃろうが!」

 「違いないわい……」

 「で、今度はこんなお嬢にやらせるのかの? 酷い、酷いのぉ」

 「ここまでとは。ここの領主も頭が腐れとるのぉ」

 

 「あ、私、セツナ。ダワーリンのお爺ちゃん達と皆を助けに来たの」

 「はぁ? ダワーリン老じゃぁとぉ?」

 「ええ、ドローヴァンさんも外で待ってるよ。そうそう、一応、書状……」

 …… 

 

 「……む、むふ……ふむふむ! 確かに、老師の文じゃ!」

 「どれ」

 「どれどれ」

 「皆の衆、老師の指示じゃ、お嬢に従うぞい!」

 {応!}

 「わしは、トーキルンじゃ、救出感謝する!」

 「お礼は良いわ。うちのギルド員だもの」

 ギルド証を出す。

 「お、お嬢、理事様かぁ」

 「おうおう。かわいらしい理事様じゃなぁ」

 「でしょう! ここから出して、扱き使うから、まだ死んじゃダメよ?」

 {応!}

 よし。

 「貴方たち、やっぱり助けられないわねぇ」

 人を使い捨てにしやがって……

 「お慈悲を……」

 「ここにでおじいちゃんたちと同じように寝ていなさいな。動いたら殺す」

 「ひぃ!」

  

 あら? どうしたのかしら。皆さん? ジト目で?

 「うんむぅ。ただものじゃぁないのぉ。うちの理事様は」

 「しっこチビりそうじゃのぉ」

 「はいはい。ここから出るよ~~」

 「待ってくれ! お嬢……勇者様じゃろう?」

 「良く分かったわね?」

 「そんななりで、老成した思考と瞳……黒目黒髪だしのぉ。それにあの殺気……」

 「わしゃぁ、てっきり、うちの種族から”勇者”が出たと思ってたぞい?」

 「うむうむ」

 「一応”人族”よ。それで?」

 「ここにあるもの持って行ってよいかの?」

 「どうせ埋めちまうつもりじゃろ?」

 「あら」

 よくわかったわねぇ。

 「お、お慈悲を……」

 なんか言った? 鬼畜の言葉は聞こえないわ。

 「じゃ、持ってく物の指示して。さっさと入れちゃうわ、”収納”に!」

 {応!}

 ……

 

 「おお! トーキルン……随分と痩せたのぉ……」

 「そう言うお前様もまるっきり別人じゃぞい!」

 感動の対面。良かったわねぇ。ふぅ。私は疲れたわ……。

 お役御免の店員、門番1も坑道に降りていただく。

 「にしても、お嬢、ずいぶんと遅かったのぉ」

 「だってぇ。救出自体は即よ? その後よ。鉱石やら、道具、トロッコのレールやら車輪まで持って行くっていうんだもの……疲れたわ」

 「勿体ないじゃろうが!」

 「そいつはご苦労じゃったのぉ」

 「じゃ、行きましょうか。ここ、埋めようと思ったがやめとくか。……振動もあるし」

 てか、疲れたし。どこかで休憩したいわ。お爺ちゃんたちも今は歓喜で興奮してるから、アドレナリン、ドバドバ出て元気だけど、今日の今日までの重労働。休憩は必要だわ。 

 

 「いや、お嬢。埋めてしまおう」

 「じゃな。少々惜しいがのぉ」

 「わしら、落盤で生き埋めになったってことでよいじゃろ?」

 

 「……そうね。じゃぁ、それで行くか! はぁ~~あぁ! 牙門斬!」

 本来、鉄門を吹き飛ばす技だけど。

 

 ”どぎゅぅーーーん!” ”ずん!” ”ずん!” ”ずん!” ”ずぅぅーーーん!”

 

 坑道の開口部から打ち込まれた超高密度の圧縮された空気が、坑道内を破壊しながら突き進む。所々に空いた、換気用の縦穴からものすごい勢いで土煙が上がり、地面が陥没する。掘るとしたら、大掛かりな露天掘りか、最初からになるだろうね。

  

 「……容赦ないのぉ……お嬢……」

 「わしらが一生懸命堀ったのにのぉ……」

 ……どうせいと。……もう。

 

 「良いじゃない! ムカつく領主が利用できなくて!」

 「まぁのぉ」

 「坑道には罪は無かろうにの」

 「わしらの血の結晶が……」

 「……お爺ちゃんたちが、『やれ!』 って言ったんじゃない。もう! 行くわよ! 街道外れたところで休憩するわ。それまで頑張ってね!」

 {応!}


 街道は坑道の様子を見に来る者や交代要員と鉢合わせする可能性があるので大きく迂回する。ナーナを越えたあたり……そう盗賊のアジトがあった辺りで休憩だ。適度に開けているし。そこまでは強行軍になるでしょう。

  

 「着いたわ。ここで休みましょう」

 「ふぃいい」

 「ここは? うん? 野営地にも見えんのぉ。盗賊の溜まり場かなにかのようじゃの?」

 「そうよ、来る途中狩ったの。ここに馬車並べてね。そういえば、馬いなかったわねぇ」

 「ほう。定期的に移動しておったんじゃろう」

 「うむ。移動のときだけ馬ぁ連れてきての。ほれ、馬は人手もかかるし、熊なんかの魔物が寄ってくるで」

 「なるほど。一応、その馬車も出しとくね。自由に使って。程よく森の中だから、隠れられるでしょう。ゆっくりして。あ……と食料。……チョイ足りないけど……ごめん……もっと入れとけばよかったわ……」

 ありったけのパンやら屋台飯を並べる。

 

 「なぁ~に。こんなに多いとは思わんだろうさ。わしもびっくりじゃぁ」

 「のう。隣村やら、開拓村の連中もおるようじゃぁし?」

 「しかたなかろうさ」

 「ありがたや」

 気を使ってくれてるのだろう

 「セ、セツナ様、鍋があれば煮炊きくらいは」

 と、飯炊きをやらされていた三人が申し出てくれた。

 「そうね。たしか、麦はあったわね。お願いできるかしら」

 「「「はい!」」」

 

 「それに、皆、悪いけど、ゴルディアにも入れないわ」

 「当然じゃ、あの領主は信用ならん!」

 「ああ」

 それもそうね。

 「着いたらお爺ちゃん達、外に連れてくるわ。そうしたらアヌヴィアトに。うん。馬がいるわね……」

 「お馬? わしら……」

 「あまり好きじゃないがのぉ」

 「でも、馬車無いとすぐに追いつかれちゃうわよ?」

 「そうじゃぁのぉ」

 「これだけいると……キャラバンじゃのぉ」

 「そうね……お金もピンチね。……商会から借りられないかしら」

 「すまぬのぉ……」

 「問題ないわ。本当に良く生きていてくれたわ」

 「お嬢……」

 「それと……いやな事聞いていい? 大事なことでもあるの」

 「なんじゃ?」

 「お爺ちゃん達、奥さんやご家族は?」

 そう、奴隷にされたときにね。引き離されてるはずだ

 

 「ん? おらんぞ? そんなの?」

 「そうじゃぞ? 国元で元気にしておるじゃろう?」

 「わしの奥はとっくに死んだの」

 他の連中もコクコクと頷く……。

 「うん? そうなの?」

 「うんむ。これだけ好き勝手やっとる、わしらのような爺ぃは国を捨ててきた者じゃ」

 「皆、残る余生、好き勝手やっとるんじゃぁな」

 「それで……若いドワーフがいないの?」

 へぇ~~

 「若造は修行でそれどころじゃないのぉ。金子もないしのぉ」

 「あ! じゃ、お弟子さんとかは?」

 「そいつはどうにもなるまいよ」

 「無事を祈るくらいじゃな。が、ギルドってことでほとんど人族じゃぞ?」

 へぇ~~。

 「たまぁ~に、変わり者もおる。外の世界の技術を学びたいとの」

 「少なからず居るの」

 「主もその口だったろうが!」

 「まぁ、それで死にかけておるんじゃ」

 「まったくじゃ」

 「世話ないのぉ」

 「主らのことじゃ」

 「お主もであろうが!」

 ”ぶわっはっはっはっは”

 ……お爺ちゃん達。笑いごっちゃないわよ……。まぁ、生きてたから良しだな!

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