俺の話? 短編だって?
・『鉄見の目』の儀式って話?
【マーレン町】に帰還して一週間。ゆっくりと休養を取らせていただいた。
その間、エアフルト老師やヴァイマールさん達と再び会うことができた。髭はまだまだ寂しいが下腹のほうは大分出てきたか。今の痩せてる方がいいと思うが、ドワーフ族は樽型体型が”貫禄のある理想的な体型”とされてるからね。
そりゃぁ、再会すれば約束通り酒宴になったさ。ドワーフ族が酒の約束を反故にするわけないだろう? エアフルト老師からこの町【マーレン町】、【ザルバック村】の重鎮、ダワーリン老やグローヴィン・ギルド長らには報告はいっていたようで老師達も交えての大宴会、大歓迎を受けたよ。
で、儀式? いや、酒宴の酒肴? ドワーリン老師とギブリさん連名の『鉄見の目の証明書』を提示を求められ、ダワーリン老に手渡すと替わりに採掘鑿と槌を手渡される。そして、大きめの鉱物が3個置かれているところに連れていかれた。それを指さす老師様、片手には酒の満たされたゴブレット……。おぅ。
どうやらドワーフ族がぐるりと壁を作り注目する中、『鉄見の目』の鉱石割りを披露しなくてはないらしい。仕方なし……ヴァイマールさんに前に打撃点が見切れれば、砕くのにそんなに力はいらないと言われていたので印ではなく鑿を当てることにした。もちろん、 『俺、ダンンジョン壁専門ですよ?』 と、砕けなかった時用に保険をかけておくのも忘れない。この辺りはミッツ様から学んだことだ。ふふふ。
老師達はこのショーを楽しみながら、既に一杯やってるし……。良い酒の肴だろうねぇ。もう!
若いドワーフ衆は真剣に俺の手元を凝視する。中には未だ信じられないって表情の方も。ま、仕方ないでしょ。人族の痩せっぽちの若造君だし。
「どれ……」
じっと、鉱石を睨みつける。まず一個目。頭頂部に打撃点が。鑿をあて、槌でコン! と叩けば鉱石塊は真っ二つに。
{ぅおおぉぉぉ!}
「見事じゃ!」
「だから言っただろうに! 本物じゃぁと!」
ありがとうございます! エアフルト老! どれ! 老師の信に応えるかぁ! ……なんて。真面目にやらんとなぁ。
次、大きめの鉱石の前に移動。見えづらい? どっかと腰を下ろし集中。2……いや3カ所の打撃点が見えた! 初撃で真っ二つに割り、半分になったそれぞれの打撃点に一撃ずつ入れていく。都合4つに分かれる。その断面には宝石の原石のようなものが顔をのぞかせる。
{ぅおおおおおぉぉぉーー!}
先ほどよりも大きな歓声が。打撃点、多いものな。てか……なんか気持ちいいな!
「ほぅ! それも見切るかぁ!」
「ほれ! わしの言う通りじゃろ! このクソジジィ!」
「さすがだ! カルネラ師!」
い、いや、ヴァイマールさん……この場で”師”は無しで……。エアフルト老……ダワーリン老師をクソジジィって……
最後の石の前に移動。うん? 見えないな。再び石の前に腰を下ろし、精神集中……。深呼吸しながら……。普段の鍛錬、”魔力回し”も行う。といっても大した量の魔力がある訳でもないがね。が、精神がより研ぎ澄まされるようで気持ちがいい。
「あった……」
こういった『小さい感じのもの』もあるんだな。すごいことはドワーフ族ともなると採掘しながらこれを見つけることだ。俺は集中してやっとだもの。経験の成せる技だろうね。
そっと鑿を当てる
「む!」
さっきまでの歓声は何処に? 誰一人声も出さねぇ……かえって緊張するのですが。
ひゃぁ~~。この固唾を飲むドワーフ達の前でやらないといけないのか……。えぇい! いけぇ! コン! とな。
軽く槌で叩けば、パカリと一撃で割れる? ぅ? ぅお? 中身、金属? 金属質の鉱物か? キラキラと日の光を反射する。
”し~~ん”
あ、あれ? これ、割っちゃ不味かったか?
{ぅおおおおおおおぉぉぉぉぉーー!}
ひ、ひぃ! ”びくぅ!”
「おうおう! よぉやった! カルネラよぉ! まこと! 『鉄見の目』! それも上等の部類じゃ!」
{おおおおぉぉぉぉ!}
「ほれ! 伊達に”師”を名乗っておらんじゃろうがい!」
「い、いや、それは……勘弁して! エアフルト老! でも、最後のは集中してやっとでした。坑道じゃ俺、見つけられないでしょう」
「当たり前じゃ! 数回しか坑道に行った事のない主に見切られたらわしらドワーフ族の立つ瀬がないわい!」
「そうじゃ! そうじゃ!」
「そ、それもそうですね……は、ははは……」
「しっかし……どれほどの鍛錬を重ねたんじゃ? 主は……」
老師様が喜んでくれてるのはわかる。わかるけどそれ以上に呆れてるのもわかる……
「おう! その辺りの話しも是非に聞かせてもらいたいのぉ」
「問題あるまい? カルネラはわしらの友じゃ。ほれ! 酒もたんとある!」
「腸詰も焼こうかのぉ」
「おう! 歓迎しよう!」 「今日は飲み明かそうぞ!」 「めでたい! めでたい!」
は、ははは……嬉しいけどぉ……。俺、生きてられるかな?
……
……翌日、目が覚めたら酒瓶抱えて広場で寝てたわ……。若いドワーフ達もコロコロと……。その中で歓談しながら、まだ飲んでいる老師達……。これがドワーフかぁ! ははは……
そして俺が重度の二日酔い? で死人のようになったのは言うまでもない……。
……
その後? 何故か気が付いたらミッツ様の前に……あれ?
どうにもぶっ倒れて、老師様達に担がれてきたらしい……
「カルネラ君。急性アルコール中毒っていってなぁ。酒も飲み過ぎると死んじまうぞ。ドワーフの”師”も良いがほどほどになぁ。老師も。カルネラ君、ドワーフ族じゃぁないのだからあまり無理に飲ませないように!」
どうやら、死人のように……ではなく、本当に死ぬところだったらしぃ……
「うんむ。すまなんだなぁ」
「うむ。友を亡くすとこじゃったわい」
「マジ? 注意しよ……。ありがとうございます。ミッツ様」
「ああ。そうしてくれよ」
ああ……やっちまったぁ! こんなことでミッツ様の御手を煩わせるとは! でも、激痛だった頭痛もとれたし? 良かったわ。またお願いしよ……。なんて? 下手したら死んじゃうもんなぁ……。ドワーフ族と飲むときは注意だな……
……
・『副』ってなに? って話。
「あのぉ。老師様。この通知ってばなんでしょう?」
「おう! カルネラ副ギルド長殿ぉ。副が不満じゃったらギルド長でも構わんぞい?」
「いや? そういう訳では?」
今朝方、家に一通の手紙が。【鍛冶師ギルド】からだった。何事よ? と封を切って文に目を通す……
~副ギルド長就任~についてと。申し送りがあるから後で来いと。
就任願いや、就任要請ではないのね……。この文面を見るにどうやら俺、知らんうちに既に『副ギルド長』に就任してるようだ。
そんな面倒くさいのは御免だとすぐに役所に向かう。が、あの曲者老師様だ。どこまで根回しが済んでいることやら……
ん? あちゃ~~。既に役場の広報の掲示板にはデカデカと俺の事が……。舐めてたわ……。ドワーフ族内は諦めだったが――何せ老師様だ。そもそも師達もギルド長なんぞやりたくない。心ゆくまで採掘やら鍛冶をと。言葉は悪いが適当な人材がいれば擦り付ける……。まさか、俺がその標的になるとは……。
この様子を見るに役所の方にも既に話が回ってるなぁ……。老師様はこういう事は抜かりないから……はぁ。老師達のにたりと笑う顔が思い浮かぶわ!
……
「俺……人族ですよ? 老師。若造ですし?」
もっさりと生えた眉毛、まつ毛の奥から覗く老師様の目をじっと見る……。うん。こりゃ、退かねぇなぁ。
「かまわん、かまわん。のぉ、グローヴィンよ」
「おうよ。わしも替わってもらいたいくらいじゃわい。上等の『鉄見』もあるで。他所の連中も文句も無かろうよ?」
「い、いや、そういう訳じゃなく? 俺が構うんですが?」
「わしの証明書も付けるでのぉ。これで問題無かろうよ。ほっほっほ」
「……問題ありすぎですって」
聞いちゃいねぇし! セツナ様と老師様の掛け合いを面白がって見てたけど……まさか自分がする羽目になるとは……。
「わしらドワーフが問題ないと言うてるのじゃ! それにのぉ。カルネラ副ギルド長、まだまだドワーフの地位は低いで。わしらのように鍛冶の”腕”があればまだましじゃがなぁ。マシっていうだけで、ほれ、ゴルディアやらシペラみたいな場所はまだまだあるじゃろ。地位向上……ま、獣人族同様長い歴史もあるでそうそう上手くはいかんじゃろうがその手助けをのぉ。人族との交渉やらのぉ。主はなかなかの曲者とも聞くで。頼むぞい」
なるほど……。今回の旅だって……。俺の力が必要とされている!?
「さすが爺様じゃぁ」
「おうおう。さすが理屈をこねさせたら右に出るものはおらんのぉ!」
「屁理屈ばかりじゃがの!」
「うるさいわい!」
「はっ!」
っと、あぶねぇ! ストンと納得する所だったわ! そもそもセツナ様が理事で、この国の頭領の部長はドワーフ大好きだ! 二人の勇者様が付いてるんだ。俺、何もやる事ねぇじゃん!
「まぁ、そう変な顔するでない。もう就任しとるのじゃぁし? 問題なかろうよ? ボチボチ頼むの。ほっほっほ」
本当に就任してるんだ……。俺の意思なんか関係ねぇなぁ。まったく!
「……ボチボチですか」
「うんむ? 張り切ってやってもらってもええがの。副ギルド長殿。そこのギルド長はとんと役に立たんでなぁ」
「……はぁ」
えらいことになったな……。これじゃ、ダンジョンいけなくなるかも? てか、何やればいいんだ? 俺って??? ……セツナ様の処行くか……




