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結局村造り 4

 囚われだったドワーフたちの腕も太くなってきた。お腹はまだだ。…いまの体形を維持すればいいものを、腹筋だって割れてるし、肩甲骨回りも逞しい。だが、”貧相””貧乏くさい”のだそうだ。理想はビア樽だって。髭も大分伸びては来たが…お爺ちゃんたちと比べるとね…エクステでも作ってあげようかしら。ピンクとか。ぷぷぷ。

 彼らの力で大分家も建ち、村っぽくなってきた。心なしか、当初予定より奥に向かって広がってるような…意識的な”誤差”なんだろうな…全く…どうせ指摘したところで、お爺ちゃんにはぐらかされるのが落ちだ。

 まぁ、彼らの村だし、好きにすればいいさ。

 

 集会場のわきに大きな倉庫が出来、採掘された鉱石などが集められる。この隣に精練場が作られる予定となっている。今はまだ大きな広場だ。町の外、東西北に炭焼き小屋も建ち、炭が焼かれている。主に鍛冶に使うそうだ。炭焼き焼肉用に後で分けてもらおうか。

 

 ルー謹製の”ドラゴンシェル”の効果範囲が思ったより広い。もう2つ、3つ作ってもらうつもりだったけど、賄えそうだ。余った”結界石”は、街道から村までの側道に設置することにした。街道から魔の森に入った浅い場所に”門”も出来ている。所謂関所だな。

 そこから側道を魔の森に入るとまず第一城壁があらわれる。木柵と門の簡易なものだ。次に丸太壁を擁する本当の壁が作られる。その壁と壁との間に櫓が3基建つ予定だそうだ。川にも逆茂木?みたいのを設置予定だとか。何を目指してるのか…まぁ、安全性も少しは上がるでしょ。

 ちなみにこの川、大きい魚はいない。佃煮サイズだね。甲殻類も小さい。その代わり、シジミが結構いる…のだが、水自体清浄なので身が痩せている。ろくに出汁も出ないだろう。残念だ…川の対岸部の伐採も進んでいて畑ができるとのこと。

 魔の森のど真ん中だ。村自体も衛生管理はしっかりしている。スライムマスター(笑)いや、いや、重要なポストだ!彼のおかげで伝染病、環境汚染が防がれているのだから…しかし…自立式連鎖スライム浄化装置?ぷぷぷぷぷ…なんじゃぁそりゃぁ!である。よ~判らんから丸投げだ。


 いやはや…みんな本気だ…何がって?”村”…いや、どうも、”魔の森”の恵みを得るための前線”町”ナーナに代わるものの建設だ。

 中層部まで張り出した格好になっているのが大きい。鉱石の試掘じゃなかったんかい!全く。それにどこぞからか、獣人の”開拓民”が流れてきている。ナーナの住人か誰かが、”招集”を掛けたらしい。開拓民って良く言ったもの。材木の切り出し、簡易ではあるが、長屋のような住居が建ち始める。伐採したままの原野も奇麗に抜根され、農地へと変わっていく。魔の森中層に近いこともあり、穀物の生育も上々のようだ。

 「セツナ様、大ごとになりましたね。」

 そこにはアツミ君と、ニコっち。今日もキュートだわね。その大きなお耳。

 「アツミ?そうよねぇ。ズルズルしちゃったのがいけなかったのかしら。」

  「いえ、彼らが望み、行っているのです。セツナ様の手を離れた…と思っては?」

 「そうよねぇ。」

  「それに伴いまして、”長”を決めねばなりますまい。」

 「そうね…次の打ち合わせで決めましょうか。そしてさっさと、帰りましょう。」

  「…はい。」

 「ん?まだなんかあった?」

  「…ペン先分の金属が思うように揃わず…」

  「お師様、どん臭いからな。おいらのわけたげようか?」

  「む。心配無用ですよ。ニコ」

 「ニコは結構集めたの?」

  「はい。結構いろいろと…ドワーフの爺ちゃんに聞いたら、普通の生活ならそれこそ何十生分でしょうねぇ。もう働かなくても良いくらい?」

 おいおい…でも…

 「そうよねぇ。一攫千金、宝の山…ドワーフさん達の興奮もわからんでもないわね。」

 しかぁし!今度こそ帰る日を決めねば!

 

 「という訳で。会議よ。」

  「はぁ?」

 「なんじゃお嬢、呼びだしとは。」

  「セツナ様?」

 「はいはい。お爺ちゃん達。もう調査は良いわね?商会とも話ついてるから。」

  「ぬ!ヴァートリーでも採掘量の目安位ほしかろう?」

 「心配ご無用。アスターのとこが信用でやってくれるってさ。」

 「ぬ!アスターか…」

  「どうした?爺様?」

 険しい表情のお爺ちゃん。

 「お察しの通り。でも心配無用よ。知り合いだったわ。勿論ヴァートリーも噛ませるから不便はないと思うわ。」

 「むぅ。」

  「セツナ様?」

 「アツミには後で教えるわ。で、ここはどこまで大きくするつもりよ?」

  「ふむ。さぁの。」

  「勝手に大きくなっとるのじゃ。」

  「わしらは採掘できればええ。」

  「獣人族の移民が多いですね。開拓民たちが入ってから、開拓速度が一気に上がり、もう村ですよ。」

 「そりゃ、構わないけど、ここの長って誰よ?」

 皆の視線が…

 「私はイヤよ。帰るし。ブランドだって、ギルドだってあるし。…そうね…お爺ちゃん、村長やる?」

 「面倒くさいから嫌じゃ!」

 …はっきり言うわね…

 「じゃぁ、ザルバック村で良いか。」

  「良くないですぞ!」

 「でも、長は要るでしょう?どうよ?」

  「む、ムムム。」

 「ドワーフのお爺ちゃんはイヤって言うし、他のお偉いさんは帰らなきゃだし?」

  「うむ。お主しかおるまいよ」

  「ラング?」

  「お主なら、獣人たちから文句は出まい。」

  「ええ、我らも。”3獣王”殿」

  「ヒューイ殿…むむ。」

 「まぁ、(仮)ってことで。」

  「セツナ様、なし崩し的に…」

 「まぁ、それも良しね。暫くはそれで行きましょ。決めるのはおじさま達と合流してからでもいいでしょう。」

  「はぁ。」

 「という訳で、一回帰るわよ。マジで。」

  「…仕方あるまい。」

  「ああ…約束じゃからの…」

  「本当に老師は残るんか?」

 「もちろんじゃ!」

  「ええのぉ…」

 「また来ればいいでしょう。…出さないけど。”ぼそり”」

  「お、お嬢!」

 「当分無理でしょうに!ギルド改革しないと!!!」

  「しかしじゃな。」

 「また同胞が痛い目見るわよ。」

  「…ぬぅ。そうじゃのぉ。そっちのが大事じゃし、今回の目的だったの。」

  「そうじゃ…そもそも論じゃの」

 「そういう事。一回まとめない事には仕方ないでしょう。おっけ~?」

  「了解じゃ。」

  「本部をここに移すのも良いの。」

  「そう 「どっちにしても一回帰ってからよ!」 …了解じゃ」

 もう…未練たらたらね…

 「じゃ、そういうことで。他に何かある?」

  「お嬢、ルー様に”炉”の結界お願いできんかの。そうすればすぐにでも精製に掛れるのじゃが…」

 傍らの籠で居眠りこいてるドラゴンにドワーフたちの視線が集まる。

 「う~ん。起きたらルーに聞いてみるわ。一応、持ってきた”炉”とか出しとくね。レンガ位取れるでしょ。」

  「おう。たすかるぞい。」

 「後なんかある?」

  「そうさのぉ~」

 「行商の方はどう?」

  「ええ。中層部付近の素材だけあって引く手数多の売り手市場ですよ。特殊な薬草についての問い合わせもありますが…その辺りは自主規制しようと。禁止品目の策定に入りたいと思います。」

 「そう?その辺りは任せるわ。猛毒とか?」

  「そういったものより、マシマシ草の仲間が性が悪い。効果を増幅する作用ですので。」

 「なるほど…有用であるが…ってやつね。」

  「はい。この村の近くに効果の低い品種は確認済みです」

 「任せるわ自家消費にする分には良いわね」

  「はい。指定薬師制度みたいのを作ってもいいでしょう。」

 「…って、私が出張っちゃダメだったわ…村長お願い。」

  「わ、私ですか…」

  「決まりじゃ。」

  「諦めろ。」

  「…では、ラング、お前、副村長だ。補佐してくれ。」

  「…解った。」

 そんなにイヤか?全く…

  「ラング。狩りの状況は?」

  「うむ。問題ないな。獲物が濃い。それにデカイ。俺達なら問題なく狩れている。」

 「必要なものはある?」

  「今のところ交易も上手くいっております。穀物についても”今のところ”問題ありませんね。」

 「そう。”今のところ”ね…そろそろ嗅ぎ付けてくる、ダニやら、ノミやらが来そうね。」

  「どういたします?」

 「貴族、冒険者ギルドは断固拒否で。抜けば斬れ!いいわね。」

  「良いのでしょうか?」

 「ええ。(ノリナ)国には”警告”はしてるわ。まさか、よその国が出張ってきたりはしないでしょう?」

  「そりゃ、通行自体赦されんでしょうな。」 

  <…むぅ、騒がしいな。相棒殿、ワインくれ。>

 「…そりゃ、会議中だもの。活気があるといってよ。居眠りドラゴンさん。」 

  <ふむ。それは失礼した。で。ワインくれ。>

 「…はいはい。ねぇ、ルー。鍛冶の炉の強化の結界ってできる?」 

  <ん?熱を閉じ込めるのか?炉の強化か?ふん。ワインくれ。>

 「待ってよ…はいどうぞ。だって、お爺ちゃん。どっち?」

 ”ごっぐご””ぷふ~”…飲兵衛ぇ。

  「ルー様、何が必要ですかの。」 

  <そうだな、炉の強化なら、小さい魔石。炎を閉じ込めるのなら、この前の魔石くらいは欲しいな。げふ。>

 「ばっちいわね。ルー。だってさ。」

  「ふむ…お嬢…無いか?」

 「無いか?じやないわよ。自分らで用意しなさいな。」

 「…お嬢…理事じゃろ…」

 ぼそりと…この、大狸じじぃ!

  「そ、そうじゃ、ギルドの為に一肌脱いでくれ!」

 「はぁ?都合のいいときだけ。」

  「この通りじゃ!の!皆の衆!」

  {おお!}

 会議に出ていた役員、見学してたちいさいおじさんが一斉に頭を下げる。…全く…

 「ふぅ。予備はあるわ。」

  {おおお!}

 「さて、条件は何にしようかしら。ふふふ」

  {…お、おおおぅ…}お、お嬢…お手柔らかに…の…」

 「お酒抜きとか?」{!!!}

 「わ、わしに死、死ねと?」

 …死なないわよ… 

  <それは酷というものだろう。セツナよ。奴らの血肉は酒でできているのだぞ。>

 「おお!流石!ルー様!」

  「良くお分かりで!」

 「冗談よ…」

  「ふぃい。死ぬかと思ったぞい」

 …だから、死なないって。

 「ずるずるしても仕方ないから。炉が出来た1週間後に帰ります。いいわね!」

  「な!」「試し打ち…」

  「お嬢…」

  「セツナ様、殺気を引っ込めていただけませぬか…」

  「じじぃを虐めおってからに…」

 「良いわね!」

 「仕方あるまい…」

 「それとお爺ちゃん。料理用のお酒、盗ったらチャラよ。完成後も取るからね。」

 「んな!す、すきんしっぷ…他種族交流の…」

 「はいはい。解った?」

 「承知…した…」

  「爺様?」

  「そんなことしておったのか?」

 「茶目っ気じゃ!」

 「ローラ達から言われてたのよ。注意するとボケた振りして行っちゃうって。」

 「…」

  「…交流になっとらんの。爺様よ…」

  「うむ。ただの飲み逃げじゃの」

  「困った爺様じゃ…」

 「…」

 お爺ちゃん、皆に呆れられて沈黙。

 「じゃぁ、ルーお願い。」 

  <…我にはないのか?報酬。>

 「…何が欲しいの?お爺ちゃんにツケとくからいいわよ?」

  「お嬢!」 

  <そうだな…ビアというのを呑んでみたいな。エールとは違うのだろう?後は…寝床。もうちょい良いのを作ってくれ。>

 「ビアはお爺ちゃんの割り当てから供出するとして…籠じゃ嫌なの?」

 「お嬢ぉおおお!」 

  <昼寝には良いがな。>

 「あら、一緒に寝ればいいじゃない…あれ?そういえば、最初のころは一緒に寝てたわよね?」 

  <…お主…無自覚か?寝相めちゃくちゃ悪いぞ…>

 「…まじ?」 

  <朝になると不思議と枕にもどっておる。ぐるりと足の方にも回ってるのにな。人間時計か?お主は?>まじぃ?

 「…ごめん。」

 ぷぷぷぷ…と皆の押し殺した笑いが…

 「…了解。ベッド作ってもらいましょう。”結界石”お願いしてもいい?」 

  <うむ。魔石を出せ。ビアもな。>

 「…アル中ドラゴン…あ、畑の方にも置きたいから、”ドラゴンシェル”もう一個作ってよ。」 

  <魔石まだあったな…残りくれ。それで手を打とう。>

 「…了解。元々、ルーを縛っていたものだしね。いいわよ。」 

  <心配するな。2個で”ゲート”を作ろうと思っている。本拠地があるのであろう?>

 「!流石!ルー!めっちゃ有能ね!流石イケメンドラゴン!」

  「お嬢…ホイホイ頼むものじゃ無いぞい。」

  「うむ。恐れ多い…」

 「いいじゃない。皆の安全の為よ。」

  「だがのう…」 

  <よい。遠慮せずに貰っておけ。造ることは大したことではない。魔力を込める方が大変だからな>

 「あ!もしかして、炉の方も?」

  <当り前だろうが。>

 「お爺ちゃん達。私への…報酬は?」

 「ギルド長昇格…」

 「い・や・よ!」

  「むぅ…」

 「しかたないか…貸しよ、貸し。」

 「もう、返せん位溜まっておるがの。」

 「…まぁ、いいわよ。」

 「すまんの…」

 ルーの拘束に使われていた魔石と予備の魔石、残り7個を渡す。 

  <其処の革職人。我にポーチを献上せよ。しなやかで丈夫な素材でな。容量は、この魔石の半分くらいで良かろう。無論、お洒落でなくてはならぬ。手を抜くなよ。>

 ふんぞり返ったルー。たまにやるのよね…まぁ、可愛いけど。

  「はっ!お任せください!」 

  <うむ。>

 「うむ…じゃないわよ…他はなんか…あ、私が仕切っちゃダメね…引っこむから進行よろしく。」

  「ははははは。構いませんぞ。我らの頂点においでる方、何の問題もありませぬ。」

 「あるわよ…ここはあなた方で運営してもらいたいの。私は隠居したいのよ。」

  「ははははは、では、話を進めましょうぞ」

 その後は、現状報告、”臨時の学校”についても報告がなされる。ロンとシシリーが中心になってやってくれてるようだ。アツミはオブザーバー的な立ち位置だね。

  「それではセツナ様、出発は大体一月後位でしょうか?」

 「それくらいを予定しておいて。アツミも早く帰りたいでしょう?」

  「…少なくとも十本分確保せねば…」

 おいおい…まだやってんのかよ…ペン先探し…

 「…いい?お爺ちゃん。約束よ。」

  「…了解した。」

 「わしは残るから良いぞい」

 このジイィは…

  「くっ」

  「わしら、ゴルディア組も残るぞい。」

 「ドローヴァンさんは、出頭よ」

  「んな!」

 「当り前でしょう?ギルド長だし。」

  「し、しかし…わしがおらんと…」

 「心配無用じゃぁ。わしがおる!」

  「爺様…」

 …売ったな…”ばむばむ”と肩を叩くお爺。

  「諦めろ。決定じゃぁ。」

  「一緒に帰ろうかのぉ。」

 嬉しそうね…アヌヴィアト組の連中は…まったく…


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