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ノリナ国 四竜将軍

 ここは王城。奥まった会議室。招集された4人の将軍が顔を合わせる。彼らは4竜将軍とよばれ、この国の防衛指揮を担っている。

  

「おいおい。セラティこいつは本当か?」

 分厚い書類の束をバサバサとさせながら華奢な男に声をかける。この男、筋骨隆々、いかにも”将”という風貌。北鎮黒竜将軍ファレグ。公爵家四男坊だが武の才があり、武家の侯爵家を起こす。

 

「ああ。本当だ。三人目の勇者様…だ。信じられんだろうがな。」

 セラティと呼ばれた男。一見文官に見えるほど華奢だが、意志の強い眼力、細剣の名手、戦略武官。”魔の森”の監視者、東護蒼竜将軍セラティ。領地は無いが、辺境伯と同等の爵位を持つ。

  

 「先のエキドレアの件と関係があるのか?あれも”勇者”絡みと聞くが…アヌヴィアトの勇者と関係があるのか?」

 年の頃50代。若者にない思慮深い思考、4竜将のまとめ役と言ってもいい。多くの武勲を上げてきた武人。西進白竜将軍ヴァルク。たたき上げの軍人。平民から辺境伯にまで上り詰めた実力者だ。

  

 「ああ。最近報告が上がってきた。商業ギルドのマシューからな。今、あすこはゴタゴタしてるからな…無能な臣下と。お飾りの領主様。俺なら、勇者たちとももっとましな関係が作れたであろうよ。」

 そう言い放つこちらも筋骨隆々な壮年の男。少々ぶっきら棒であるが、部下からの信頼も厚く。主にディフェンに目を光らせている。南征赤竜将軍ナハス。この男も軍人一筋。一兵卒から4将に加わる逸物。

  

 「そこの辺の話を先に聞きたい。」

 とヴァルク。

  「ああ。最初、ディフェンから”召喚者”が2人来たと聞いただろう?若い方が”当代の勇者”で、もう一人、が巻き込まれてきたとか…尤も、例の事件のおかげで今じゃ神の使いやら、”使徒”様と呼ばれてるがな。」

 とナハス。

  「それとどう関係が?」

 とヴァルクが返す

  「セラティの報告書にある”セツナ”という名…これが本当なら、”当代の勇者”トワの実姉にあたる…」

 とナハス。

  「なんと…」

  「それは本当か?」

  「見た目は”少女”となっているが?」

  「ああ。見た目は少女と聞いている。何でも”前に召喚されたところで神薬を飲んだ”とか…でセラティ?」

  「!!!」

 「それじゃ、”多重召喚”か?いや…そのような…」

  「まさか…な。」

 「いや…いろいろと納得できる。あの容姿、確かに少女。しかし”目”は違う。知性にあふれ…見かけの年と不相応…そして…恐ろしい…」

  「セラティ?」

 「セツナ様自身も”私は年増よ”と公言されていた」

  「そうか…古より、”召還者の世界”はとても平和で人を殺すと心が砕けるとか、タガが外れて暴走するとか伝わっている。特に黒目黒髪はな。それでいて今回の事件…」

 とヴァルク

  「まぁ、そういわれてるな。あの国と聖王国の手法にも大いに問題があるようだが。」

 「セツナ様は…恐ろしい…多くの”命”を刈り取ってきたのであろう。考え方も我らとそう変わらん。」

  「変わらない?と?」

 「ああ。こちらの”法”も理解し、己の”法”も持っておられる…もちろん、行使する力も持っておられる…」

  「己の”法”か…」

 「ああ。この国に組み込まれることはあるまい。手を出さないことだな。」

  「報告書にある…ゴルディアの惨状だが…」

 「本当だ。”城壁破壊”の場には俺も立ち会った…」

  「止められぬ…か。」

 「ああ。選択を迫られたよ…つべこべ言うのなら、3回襲われた。王都、ゴルディアともう一都市選べとな。それで相殺だと。」

  「はぁ?無茶苦茶だな…おい!」

  「いや、そうだろう?”国”とみれば即”開戦”だ。こっちから三回も仕掛けているのだぞ?とくにお前など、1回すら我慢できまい?ファレグよ」

  「…ちっ。」

 「それで、ゴルディアは諦めろとな。力を示せばバカは減るだろうとのことだ。」

  「なるほどな。良い見せしめにはなるわな。」

 「もちろん、破壊前には避難勧告がなされ、人的被害にも配慮されていた。」

  「ん?その割に…ああ。貴族共か。」

  「奴らは自分に手が届かないとタカをくくっているからな。」

 「ああ。剣闘士をけしかけて、城壁上で賭け事、宴会をしていたよ。本当にお目出度い奴らだった。」

  「…で、どうだった。」

 とナハス。目つきが変わる。

 「どうとは?」

  「戦いぶりだよ!偽物じゃぁないのだろう?」

 とファレグも続く。

 「おい…舐めるな…セツナ様は偽物ではない…。そのように決めつけゴルディアは…我らとの交渉が無ければ、地図から消えていたぞ」

  「ふん、そんな 「よせ。話の続きを」 …わかった。すまん」

 とヴァルクが先を促す。

 「なら、話そう。剣闘士の名は確か、”ガジオ”」

  「ぬぅ!あのガジオか?」

 「?あのといわれても俺は知らなかったが。」

  「一応、剣闘士最強を自称していたやつだ。満更嘘ではなく、対人戦ならかなり腕が立つな。」

 「そうか…で、そのガジオが女…確か5人引き連れて現れてな。戦いを挑んだ。」

  「そうか。さすがの”勇者”でも苦戦しただろう?」

 「苦戦?ふ、ははははは…」

  「セラティ?」

 「そうであればどれだけホッとしたか…女どもは、投擲手だったよ。ガシオの斬撃をことごとく避け、同時に投擲された複数のナイフを正確に女の”心臓”に投げ返し…手刀にて鎧ごとガシオを引き裂いたよ。両肩から、このようなV形にな…それで”心臓”を引き抜いて終了だ。しかも遊び半分。息の乱れもない。」

  「な…」

  「まさか…」

 「ああ。本当だよ。目の前で行われた”事実”だ。」

  「信じられん…な…」

 「ああ。信じてくれなくとも結構だ。ただ。手は出すなよ。”国”に災いが及ぶ。その後、魔剣の一振りで物見遊山の貴族ごと城壁は破壊された。まさに一振り…貴族共も粉みじんだ…その後も数振り…城壁が紙のように斬られたよ。」

  「剣で城壁を割った?」

 「なにも驚くこともあるまい。”勇者”は大地をも割る」

  「…」

 「その後、魔剣の力か、一撃で”城門”が消し飛んだ。軽く小突いたようにしか見えなかったがな。」

  「そうか…」

 「それと、ナーナのギルドについても報告しておく。」

  「ああ。この…受注書の写し…転写紙か…本物だな?で、敵対したのだな…」

 「ああ。確認に早馬で行った。証言によると、15人くらいの冒険者に襲われたそうだ。ギルドの発注でな。それがその受注書だ。もちろん皆、死んだよ。それとギルドの建物、たぶん、”結界”を用いた”極大魔法”だろう。隣り合った建物には被害なし。かなりの高温だったのだろう。地面が”溶けて”いたよ。ギルドも石造り…しかし跡の形もなく…な。職員もろとも。」

  「”極大魔法”か…しかも周りには一切被害がない…岩をも溶かす…」

 「目撃者の証言だと、太陽が落ちて来たようだったと。」

  「益々おとぎ話の世界だな…」

 「此度の顛末…全ての非は領主と冒険者ギルドにあるが…」

  「納得するか?」

 「説得するしか他あるまい。少なくてもアヌヴィアトを切り取られるぞ…」

  「なぜアヌヴィアト…ああ、本拠地…か。」

 「聖王国が言うことが本当なら、ダンジョンを有している。仮定の話だが、町中に広がって、ダンジョン壁で囲えたら?」

  「はははははそれこそ、まさかだろう?…万が一にも…」

  「しかし…勇者の御業…何が起こるか…」

 「まぁ、仮定の話をしても仕方あるまい。王に報告に行こうと思う。」

  「論点は…2つ。ゴルディアに対する行いの落としどころ。セツナ嬢が開村する村の扱いか?侵攻はあるまい…な?」

 とヴァルク

 「論点?そんなの一つだ。”手出し無用”とだけだ!」

  「セラティ?それでは…」

 「なら貴殿は罪を問うと?ゴルディア公?盗賊の類ではないか。貴族だからと…」

  「落ち着け。それは王が決めるだろうさ。」

 …。

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