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ギルドどこいった?

・ゴルディア視察行 

 

 ゴルディアに行き散々……でもないけど、舐めた態度を取られご立腹のセツナ嬢。再びの来訪を心に誓い、それを実現に移す。先方にはかなり先の予定と伝え、すぐさま急襲するという。騒動起こす気満々だ!さぁ!セツナ!その己の”正義”で断罪しろ!

 

 「うっさいわ!」


『ゴルディア崩し』と恐れられることになる事件の全貌が!(そんなに大げさなものじゃないけどね)

 例の騒ぎ(御曹司襲撃事件。返り討ち済み)後、鶏を置いて、おじさまに無理を言って、速攻でゴルディアまで送ってもらってる。

 ”鍛冶師”達の現状視察だ。『鍛冶師組合ギルド』の視察団として。

 

 今回のメンバーは私とアツミ君、ニコっち、真火君。

 当のギルドからは、ノリナ総括ギルド長のグローヴィン師、役員のブロール師、フロイダン師。そして遊びに来ていた? ダワーリン老師。なんでも”鍛冶国”の王族とか。食えないお爺だけどぉ。

 

 アツミ君は”麒麟児”と言われる天才さんで、うちの村では珍しい文官さんだ。ほら、ウチって獣人率が高いから……皆、脳筋さんでしょ。

 ……で、ニコっち、真火はミツルおじさまの養子。大きなお耳とフカフカ尻尾のキュートな狐人族の青年がニコ。彼もまた文官志望でアツミ君の弟子。抱き枕にしようにも”野生の勘”? で悉く躱される……勇者の力を使ってもだ! くそぉ!

 で、大人しいこの子が真火君。猫人族の”チーター”かな? 涙模様が特徴的な青年。美形……だな。うん。

 只今、双剣の修行中だ。この子はニコっち以上に勘も反射も良い。……つまり……より捕まえられない。……私の癒しはビルック君だけだよぉ……とほほ。

 そのビルック君は今回は御留守番……しくしく……。私の癒しはどこにあるのよぉ!

 

 それとブースト要員……ははは……で、ミツルおじさまにも来てもらっている。おじさまの使う魔法なのかな? ”魔纏”……身体”極”強化なのよねぇ。

 獣人族、馬にも効果あり。人族には効果は薄いがそれなりに極めた者には恩恵がある。恐ろしい速さで移動ができる。この力を使ってトワと二人であちこち”輸送業”を営んでいるそうだ。”無限収納”もあるし、正に天職ね。

 

 ”がらがらがらがらがら……”

 もうじき、ゴルディアだ。

 途中、おかしな獣人の集団に遇ったが……おじさまなら上手くまとめるだろう。 

 (本編、第119部辺り 『今度は、森の中ぁ~獣人さん達にであったぁ~』)

  

 「セツナ様、先程の集団……」

 と、話しかけてきたのはアツミ君。

 「ええ、ディフェンからだそうよ?」

 「国力低下、民衆の流出に歯止めがかかりませんねぇ」

 「とりあえず、自分たちの権益を守るのに必死なんでしょう? 獣人などどこぞから攫ってくればいいとか、勝手に戻ってくるとか思ってるんでしょう?」

 「……笑えませんが。……獣人たちを受け入れる環境無くば現実に。今までもそうでしたから」

 あらら。そうなの? アツミ君……それじゃ統治者の思うがままね。哀れね……

 「なるほど。そうか……集落できたら攫い、どこにも受け入れられなれば……戻るか……」

 「はい。獣人の国、【獣王国・ドラセリア】でも農民の立場は低いですからね。上位の冒険者が数人集まれば……いや、それでもジリ貧か……」

 「そうね。畑なくば……しばらくは森の恵みでしのげてもね……」

  

 「じゃぁ、森で生活すれば?」

 「ニコ君、人族が来れない……つまり中層位だと、生きてくだけでもしんどいよ? 魔物の質、量ともに。一日中襲撃に怯えなけりゃならない」

 「そうね……農民とか、非戦闘員を保護しながらなんて不可能ね。よほどしっかりした拠点があれば別だけど。農民さんなんか先に精神がやられちゃうわよねぇ」

 「おっと、そろそろ……」

 もう、到着? さすがおじさま。デタラメねぇ。

 「じゃ、私は引っ込んでるわね」

 「はい。お任せください」


 ゴルディアに到着。門も特に問題なく通過した。お爺ちゃんたちギルドの紋章馬車、それとミツルおじさまの口先三寸……流石だわ。……私ならひと悶着。血の雨が降っただろう。

 

 「セツナっち、もういいかい?」

 おじさま、そわそわしちゃって。さっきの難民の所に置いてきた子供たちが心配なのね。

 「そんなに焦らないで。手紙預かってたでしょ?」

 わからなくもないけど。もう、”お父さん”なんだから。

 「後で……いや、解かった行ってくるよ。仕事だもの」

 「落ち着いておじさま」

 「ああ」

 ……トワ頼んだわよ? 私の目を見て頷くトワ。

 察したようだわ。おじさまのフォローをね。


 門から続く大通りを進む。ヴァートリー商会は進めばイヤでもわかると言われたわ。

 あ、あれね。大きな建物が見えてきたわ。この商会、実直な商売してるからか、店も派手さがないのよね。

 確かに大きいのだけれども、商品、品ぞろえに比例してって感じ。

 店のわきに馬車を横付けして、降車。

  

 「ふぃいいい~~腰が痛いのぉ~~」

 腰を叩きながら降りる老師様。

 「もう、ついたのかぁの」

 「早いの。」

 「はぁ、しんどいわい」

 荷台から零れ落ちるように樽……じゃ無かったドワーフ族の重鎮の方々が。

 

 「大丈夫? お爺ちゃん達?」

 本来は歩いていく! って言ったんだけど……。短足だしぃ。

 それに、領主の野郎に不意打ちするからと無理無理に馬車に乗せた。どうやらドワーフ族はあまり速い乗り物、特に馬、馬車は苦手らしい。特にその馬自体にも絶対馬には乗らん! とおっしゃってるわ。不安定な高さがプラスされるから益々ね。

 

 「まだまだ若いもんには負けんわい!」

 「爺様、無理はいかんぞい」

 「ふん!」

 ま、元気そうね。

 「じゃぁ、挨拶してくるわ。ちょっと待っててね。宿は商会が提供してくれるそうよ」

 ……


 「セツナ様……」

 ……私の話? 美少女はつらいわ。先に入っていたおじさま、トワ、ドレンさんが会談中だ。

 「なに? 私がどうしたって? ドレンさん、お言葉に甘えて滞在中お世話になるわ。酒代は洒落にならないからこちらで出します。ご心配なく。騒がしいですがよろしくお願いします」

 「お嬢ぉ……酷いのぉ。まぁそういうことで世話になるのぉう」

 あら、来ちゃったの? ……待っててって言ったのに。お爺ちゃん達、せっかちだから。

  

 「! こ、これはダワーリン老? 当店に来訪いただき……」

 「大げさじゃなぁ。普通にたのむぞい」

 「爺様もそういっておるし。楽にしてくれ」

 「あ、グローヴィン様? ブロール様? フロイダン卿?」

 「おっちゃん達有名なんだな!」

 「商人だからじゃろ。それにワシらは滅多に外に出んでの。珍しいんじゃろ?」

 「私の部下のアツミとニコ、真火ね。これで全員だわ」

 「当店においでくださりありがとうございます。このあとすぐに離れの方に案内いたします。お寛ぎください」

 「おじさま。ご苦労様でした。後は適当にぶらぶら帰ります」

 「ああ。セツナっちも……やりすぎないように! 真火頼んだぞ」

 頷く真火君。

 「失礼ね! あっ、トワ、蒸留酒の良いヤツ、置いていきなさい」

 「ああ。姉貴頼んだ。キノコもおっちゃん達に食わせてやってくれ!」

 そう言って酒樽、キノコが大量に入ってる籠と……たぶん金貨? の入った袋を渡してくる。できた弟であるな! 褒めて遣わそう!

 

 「おお、トワよ。いつもすまぬのぉ」

 「よばれるぞい」

 お爺ちゃん達も大喜びね。何故に我が弟ながら、ドワーフが好きなのか解らないけどぉ。おじさまみたいに、エルフぅ! LOVE! って言われるのも姉として困るけどぉ。  


 「ミッツ様、この書状をお願いします」

 「承ります。では失礼します! 行こうかトワ君!」

 「気を付けてね!」

 ふふふ、おじさま。聞こえてないか……。心ここにあらずだわ。書状を懐に入れ駆け出すおじさま。

 その後ろ姿を、商会から見送る。見えなくなるまで。

 ……元気ねぇ。

 

 商会がある敷地内の一角。

 裏にうまや、社員寮、来客の宿泊施設が完備されていた。お風呂もあるそうだ。大きな宴会場のような部屋を案内された。

 さて……と。

  

 「セツナ様、町の様子を見てきますね」

 とアツミ君が立ち上がる。

 「大丈夫?」

 「大丈夫でしょう。まだ太陽もありますし」

 「俺もいく!」

 ニコっちも一緒に行くようだ。

 「3人で行動するのよ。真火君頼むね」

 「はい!」

 「はい。行こうかニコ、真火」

 「はい!」

 3人を送り出し、お爺ちゃんのとこへ。

 

 「ゆっくり寛いでくださいな。私も町の様子見てくるわ」

 「わしらも行こうかの?」

 「いえ、お爺ちゃんたちは明日以降お願いするわ。今日はゆっくり、旅の疲れを癒して。早かったけど、馬車は馬車だし。結構な距離の移動だったからね」

 「……すまんの。ゆっくりさせてもらうわい」

 「お言葉に甘えようかいの」

 「お風呂もあるそうよ?」

 「わしら……水が嫌いでのぉ……」

 「うむ……蒸し風呂なら入るがぁのぉ」

 「あら、勿体ない! じゃ、お酒おいてくわね。夕食用意してくれるそうだからほどほどにね」

 「おう! まかせい!」

 何を? ふふふ

 

 「あ、そうそう、このキノコって生?」

 「そいつはぁ出さんでよいわ……。止まらなくなる……」

 「食事の時に出してもらおうかの」

 「ふふふ、了解。じゃ、ちょっと行ってくるわ」

 酒樽を一つ設置し、部屋を出る。

 そのまま玄関、通用口は使わず、塀を乗り越え外へ。

 はしたないって? 関係ないわ。

 特に監視はない……みたいね。居るとしても、正門。店の方やら、勝手口だろう。

 先ずは【鍛冶師ギルド】ね


 町をブラブラ。御曹司はクソだったが、街自体は綺麗ね。比較的新しいのでしょう。鍛冶師ギルド……無いわね。……どこよ。お爺ちゃんたちに聞いてから出てくりゃ良かったわ……。

 とりあえず情報収集いてと。お酒も買わないとね!

 

 「すいません!」

 ここって酒屋よね? 樽沢山あるし……? 飲み屋?

 瓶磨いてる? 昔善き時代の”量り売り”なのかしら?

 「なんだい? 嬢ちゃん?」

 「お酒、樽で売ってる……卸しみたいなとこってありますか?」

 「……お嬢ちゃんが?」

 「まさかぁ、お父ちゃんに言われて!」

 てへ♡

 「だ、だよなぁ。この先を右に行ってすぐだよ。気をつけてね」

 「ありがとう!」

 ……なによ。文句あるわけぇ?


 先ほどの店主に言われた通りより大きい店があった。

 種類も量も。樽がたくさん積んである。

 

 「うん? どうしたい? お嬢ちゃん?」

 「ビアの在庫ってありますか? 樽で欲しいのですけど」

 「へ? 嬢ちゃんがか?」

 と、見下ろす店主。困惑の表情に。

 「あら、私、残念ながらこれでも成人なのよ。身分証いる? お金ならあるわ」

 と、『商業ギルド』の身分証を出す。

 「へぇ!? そ、そうかい? ビアなら5樽あるが……」

 「皆もらうわ。おいくら? 蒸留酒も欲しいわ」

 「毎度ぉ、で、どこに運べばいい?」

 「私、マジックバッグ持ちなの。ここに持ってきて」

 「へぇ。マジックバッグもちかい! 羨ましいねぇ」

 奥の倉庫からビアの中樽? 蒸留酒の中樽? ワインの半分くらいの高さだから多分中樽ね。

 ”こんこん”叩いても解んなわね。

 

 そっと”鑑定”。……よくわからんわ。結果、”ビール樽”って。……そんなの見ればわかるわ! ボケェ!

 おじさまの”鑑定”のようにはいかないわね。この世界の知識への、”鑑定”のばーじょんあっぷ! 求む!

 

 「……いただいていくわ。変なの売り付けないでね。いつでも抗議に来るから!」

 「あ、ああ。もちろんだ! こちとら、温度管理にも自信がある!」

 ふん! と腕まくりの酒屋の旦那。信用できそうね。

 「それは失礼しました。店主殿。そだ、私、初めて仕入れに来た他所者なのよ。最近変わったことや、危ないことってある? 私ぃ、こんなナリでしょう?」

 「……。……そうだなぁ。ここの領主の次男坊が失踪したとか。大きな声じゃ言えんが、我儘な奴でなぁ。そこいらじゅうで悪さばかりしていたから恨みも多かろうさ。それを気にして第二夫人が床に臥せってるとか……。いい気味……おっと。そんなわけで、少しバタバタしてるな」

 ……最初の間なによ! え! そこじゃないって? ごもっとも 

 「失踪? いざこざとかは?」

 「さぁなぁ、どこぞの商会ともめたと聞いたが……。殺しはせんだろ? 商人だしなぁ。大方、馬から落ちて死んじまったんじゃねぇか? 性病とか? で、領主様も体裁悪くてよ。病死と失踪ってのはお決まりだろ」

 殺しちゃったけど?

 「ですよねぇ。おほほほ。そういえば、ここ、鍛冶屋さんか【鍛冶師組合】無いの? 武器の保全メンテに出したいのだけれど?」

 「ん? ああ。組合は北門の近くに。事務所はあるが……今は全く機能してねぇなぁ」

 「そうなの? 困ったわ」

 うん? 冒険者の街じゃなかったのかよ。おかしいわね。

 「東門、ナーナに続く道があるんだが、そこらに行けば整備屋は沢山あるぞ」

 「ありがとう! これももらっていくわ」

 「毎度ぉ~」


 機能していない? 確認のために早速鍛冶師ギルドへ行く。

 通りのわきにあるわね。確かこの”看板”だったわね。紋章も間違いない。……のだが? 事務所機能だけのようね。鍜治場は併設されていない。と。どらどら……

 ”ぎぃ””がららん”

 

 「すませ~~ん」

 「はい? なんでしょう? ん? お嬢ちゃん?」

 ……品のない女ね。……まるで安い娼婦だわ。しかも、カウンターの中は一人だけ? 他の職員はどうしたの? 中層部の村【ナーナ】の玄関口、冒険者の街! 鍛冶師は商売繁盛! でしょうに? どういうことよ?

 

 「ここって、本当に鍛冶師ギルド?」

 本当に受付? この女?

 「はい、そうよぉ」

 おいおい……本当に他に職員居ないのか?

 「研ぎと、ナイフのオーダーしたいのですが……」

 「ここは、そういった業務はしてません。研ぎは東門に」

 面倒くさそうに対処する女。客だぞ

 「へ? ドワーフの組合員は? 確かいたと思ったけど?」

 「はぁ? いないわよぉ。みなナーナに派遣されたわ。全員」

 「そうなの? こんな大きな町なのに……」

 「強制的に連れてかれちゃったわよぉ。あっちの方が需要があるのよぉ」

 「そうなんだ……じゃぁ仕方ないわね。……違う街に行ってみるわ」

 「そうなさいな~~」

 この女、ギルドよりも自分の爪を磨くほうが忙しいらしい。

 だめだこりゃ。こんなのに給料なんて……なんか段々腹立ってきたわね。

 

 「ここってギルド長っているの?」

 「はぁ? いないわよ~~。フッ」

 本当に人を馬鹿にしてるわね。爪のカス飛ばすな

 「貴女より偉いのは?」

 「……さっきから、うるさい子ね……ほら、さっさと他所の街に行きなさいよ」

 「いいから呼んで来い……」

 「な、なによ!」

 懐から身分証を出す。そう、金ピカの、鍛冶師ギルドの理事のモノを。

 控えおろぉ~~! このギルド証が目に入らぬかぁ! なんて。

 「私、これでも、鍛冶師組合の理事セツナよ。早く呼んで来い!」

 「はぁ? どうせ、偽物でしょ。しっし」

 ったく……。

 「もういいわ」

 スルリ、カウンタの中に滑り込み、女の腹にみぞおちパンチ! 

 ”ずむぅ!”

 「げはぁ!!! がふがはががぁ!?」

 気絶? そんな気絶なんて、そうそうしないわよ。ドラマみたいにいかないわよ? 悶絶よ、悶絶。

 腹抱えて転げまわっているわ。そんな女の背を踏みつけ紐でくくり上げる。猿轡をかませ、お店……まぁ一応クローズに。もともと開店休業でしょうけどね。

 

 他の職員の痕跡はなし。しかし、ずいぶん狭いわ。お爺ちゃんたち結構金回りは良いはずなのに。

 人を雇って事務所を構えていたとは到底思えない。

 事務所の奥、普通大きな書庫、書類棚位あるわよねぇ。ここは魔法の世界。マジックバッグや魔道具みたいのもあるからアレだが。ここはそういったものじゃないわ。

 階段を上がり二階に。奥に明かりのついている部屋。

 ”がちゃり”

 ノックなどせず侵入。

 小太りの人族の男がこれまた一人。ここには職員二人だけ……か? 一体どうなってるんだ? ここは?

 ドワーフの一人も……っと、そこはアヌヴィアとも一緒ね。お爺ちゃんたち、自分の工房に引き籠もってるから。 

 

 「ん? お嬢さんこんなとこにどうしたの?」

 年の頃は40くらいか。う~~ん。黒ね。どうみても悪人だわ。

 「ここの偉い人に会いたくて。下、誰もいなかったから」

 「たく……。使えんな。で、ご用はなにかな?」

 「あなた、ここの組合員?」

 「ああ。そうだよ。今は私が一番偉い」

 「ふ~~ん。ギルド証見せてくれます? ダワーリン様から重要な書状をあずかってるの」

 「ダ、ダワーリンだとぅ? 良いから見せてみなさい。ほら、お駄賃上げるから」

 あら、お爺ちゃんの名前聞いて顔色が変わったわ。さすが王族! ビックネームね!

 

 「ギルド証見せてくれなければだめよ。持って帰るしかないかぁ。んじゃ!」

 と踵を返し、部屋の出口に

 「待ちなさい。私はこの町で行政にかかわる仕事をしている」

 訳のわからんことをいいながら慌てて追ってくる男。

 でも行政? ということは町ぐるみってことでいいのかしら? なにを偉そうに。

 「だから何? これは『鍛冶師ギルド』の仕事ですので」

 「命令だ! 出しなさい! ……だせ! ガキが!」

 ……これが本性ね。

 

 「大きな声出さないでくれます? お断りします。どこの馬の骨か知らない方には見せられません。ごきげんよう」

 「ガキが! 生意気言わずに素直にだせぇ!」

 掴みかかってくる男。とろいわね。

 血はまずいわね……

 ”ずっどぉ!” ”どぼぉ!”

 「げはっつ! ばぁ!」

 右に回り込むように移動! 相手の腕を躱し、がら空きになったわき腹をえぐるように! 打つべし! 打つべし!! 打つべし!!! 右拳をねじ込む! 

 (美)少女の小さい拳だから刺さる、刺さる♡ 肝臓レバー爆裂しちゃえ! ほりゃ! ほりゃぁ! ほりゃ! ほりゃ! 

 ”ずむ!” ”どむ!” ”どぉむぅ!” ”どすぅ!”

 「ふん、雑魚が」

 「はぐぁ! あぐ! あぐ! げはぁ! ごばぁ!」

 悶絶して床を転げまわる屑を後ろ手に縛り上げて放置。ふぅ。まだ吐いていなくてよかったわ。ばっちいもの。

 しかし困ったわ。アツミ呼びに行くか……。

 未だに悶絶してる小太りの顔を踏みつける。

 「ひぶぅぐぅうう! ぶひぃ!」

 「あなたに聞きたいのだけれど。ドワーフの構成員は?」

 「じ、らん!」

 そ。

 ”ぐきりぎぎりりりぃ、びききぃ”

 踏み込む足に力を込める。

 「いだ! い、痛い! が、がぁああ!」

 「このまま……頭蓋、踏み砕くわよ?」

 ”ぎぎぎぃぎりぎり……”

 「ま、はぐ! 待ってくれぇ! ぶひぃ、ほ、本当に知らんのだ! わしは、わしはぁ! あがぁあ」

 ”コキキ……”

 お、おっと、ヤバ! 骨の悲鳴が足に。踏み抜く所だったわ。あぶねぇ、あぶねぇ!

 「で? なに?」

 「て、手紙やら……ぎひぃ、か、確認と……人員の斡旋……」

 「だから、どこに斡旋してるのよ! 頭悪いわね! 要らないんじゃない? そんな脳みそ」

 ふんふん! 踏みつける力をこれ以上強めると頭蓋が割れるから、男の背をスタンピング! スタンピング! げしげしと踏みつけてやる。

 「いげぇ、い、痛ぇ、痛てぇ! までぇ! いぎぃ! 待ってくれぇ!!! ナーナへ、ナーナへ送ったぁ!」

 「ん? なんでそんなこと。隠す事ないでしょう?」

 「そ、そうだろう? そうだろ。ほ、ほら、解放しなさい! いぎぃいいい!」

 バカねぇ。するわけないでしょうに? 再び頭を踏みつけ、徐々に加圧していく。

 「正直に話しなさいな。割るわよ」

 「なに、いでぇよ! な、何もやましいことはしとらん! いぎぃ!」

 本当に知らないのかしら? 結構追い込んだのに。悪の組織の末端構成員?

 「そう……じゃぁ、生かしといてあげるわ。ナーナに連れて行ってあげる。……何もなければそのまま解放するわ」

 「な!」

 「良いわね。何かあったら……くくく。お仕置きねぇ」

 「わ、わしは……」

 「おやすみなさい」

 ”どげぇしゅ!”

 「ひぐごぉががぁ!」

 こめかみキック! 卒倒するオッサン! こりゃ、早急にナーナに行く必要があるわね……

 

 小太り男の懐を漁る。身分証? うん? これって『冒険者ギルド』、所属? ロキソン? ……冒険者ギルドも一枚噛んでるの?

 階下に行き女の身分証は……と、

 「むぅむぅ!」

 懐を漁るとこれまた冒険者ギルドの証……

 「うっさい! ……ファタ? か。こいつも冒険者ギルド? 何でよ?」

 二人を別々に奥の部屋へ放り込む。一回戻るか……書類もアツミ君の方が詳しいだろうし?

 ……決して面倒だからじゃないわよ? うん。

お付き合いありがとうございました。是非、本店もお寄りください。

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