ゴルディア視察行 20
「じゃぁ、上流に向かいましょうか…」
{応!}
お爺ちゃん達の情熱?その圧に負け、上流目指して移動することに…はぁ。
アタシら、逃亡中なんですけど!…うん?何も悪いことしてないわよねぇ。逃げてる…移動中?ま、そこいらはいいわ…ねぇ。帰ろうよぉ。
「本当は、帰りたいけどぉーーーー!」
「…お嬢、往生際が悪いぞい。」
「今更じゃぞ」
「そうじゃぁ!」「同族じゃろが!血が騒ごうよ!」
違うわよ…ふぅ。
「ごめんね~ローラたちも…ごはん係いないと…」
「大丈夫ですよ。」
「ええ。楽しいです!」
「目指せ!へそくり十億です!」
「そ、そうね…ならお願いね。」
逞しいわね…
「アツミも頼むわよ。」
「ええ。ペン先十本くらいは…」
おいおい…お主もか。
「お師様はどん臭いからなぁ。おいらは結構見つけたぞ?」
「むむむ…」
「ペン先も良いけど、まとめる方もよろしくね。」
「はい。そちらの方は終わってますよ。これで心残りなく採掘に集中できます。」
「…そう…ほどほどにね…真火、ヒューイさんたちも頼むわ。」
「はい。」
「お任せください」
「じゃ、出発しましょうか。お爺ちゃん達、ベースキャンプの設営が先よ。馬たちのことも考えてね…」
「まかせろ!」
「良い場所みつけるぞい。」
…大丈夫かよ…
「このあたりでどうじゃろか。」
「…結構入ったわね…」
…予想以上に…ここって魔の森でしょ?
「たぶんあすこが鉱床の一部じゃろう…試し掘りするのに都合がよいの。」
「?掘るの?」
「あたりまえじゃろう。埋蔵量を見んことには始まらんぞい?」
「ぞい?って…まぁ、そうなのかな?…今、目ぇそらしたでしょ!ジジィ!」
「いや、砂がの…」
…よく言うわ…飲み会の時、”長くて奇麗なまつ毛ね!”って言ったら、”まつ毛で採掘や洞窟の中でも砂や鎚の飛沫が入らないぞい”って自慢してたじゃない…
「まぁ、良いわよ。もう…それじゃ、伐採から掛かりましょうか。」
「応!」
…調子良いんだから…。
が、調査は開墾、キャンプ設営が先という事なので、本気のドワーフパワーでガンガン開墾されていく。
切り倒された木も一定の長さにされる。何でも坑道の補強に使うんだそうだ。端材は薪ね。馬たちも付近の草を食んでいる。
魔素が濃いのか、美味そうに食んでるように見える。勢いもすごいな。がふがふ食べてる。
「セツナ様…」
「あら、ハン…どう?セーラは…」
「まだまだですな。この爺についてこれぬのですからま、直来るでしょう…。報告ですが、敵方の斥候が現れました。下流のキャンプ跡から一日の距離です。明日にはキャンプ跡に到着、こちらを目指すでしょう。」
「捕まえる?」
「魔の森ですので、入ってくるかどうか…入って来たら一人二人は良いでしょう…」
「任せるわ。で、本隊は?」
「そうですねぇ…キャンプ地まで2~3日…でしょうか…」
「そう…引き続きお願いするわ。」
「お師様ぁ~」
「遅い…報告は終わったよぉ。」
「んな!」
「では…行くぞ…哨戒だ」「ひぃ~~~」
「がんば!」
にっこり。さて…やはり来たか…どうせ陣頭にはいないだろう…屑が。お礼参り確定だね。
恐ろしい速さで、たった一日で開墾は終わり、簡易な牧場も。馬たちはウチの馬に付き従い逃げる気配もない。世話してる人たちにも懐いてるようで見ていて微笑ましい。ブラッシングも念入りにしてもらってるものね。
今日は川辺に”風呂”を作ろうと思う…いい加減…ねぇ。大き目に掘って木の枠を埋め込む形だ。底?ドワーフのお爺ちゃんたちが坑道の壁を補強する魔法”土魔法”の一種があるって。それで補強してやれば大丈夫…っていうけど…ここでもドワーフパワー炸裂!穴掘り早いわ…侵入する水、湧いてくる水何のその!
「坑道じゃ、水やら湯などよくあるぞい?」
だそうな。ワッシャワッシャと掘って、木枠といっても丸太を横にして土留め。隙間に粘土みたいのを詰めて”魔法”でお終い。最後に底を補強し完成となった。10人は入れるだろうか…
「で。お嬢…風呂もええが、どうやって沸かすのじゃ?」
「鉄板があれば、窯も作れるが…のぉ。」
「魔法でボン!よ」
「お嬢がやるのか?」
「ええ。暖取り用の焚火で石を焼くのも良いわね。」
「わしは入らんからええがのぉ」
「わしもじゃ。」
「偶には入ってよ…お風呂嫌いでも…バッチいわよ」
「まぁ、一回沸いちまえば、保温位はわし等でもできるじゃろ。」
「”火魔法”使えるの?」
「わし等、鍛冶師じゃぞ?」
「”火”と”土”はつかえるぞい!」
「土留めと、着火、操作だけじゃがの…」
「無理しないでね…あ、レヴァティン突っ込んで置けばいいか…」
「…お嬢」「お嬢!!!」
{お嬢ぉ!}
な、なによ!
「なんちゅう罰当たりな!」
「あの剣はいかんぞ!」
”わいわいわい(怒)”総スカンである…
「わ、わかったわよぉ。やらない、やらない!」
{あたりまえじゃ!}
「全く…。」
一応、布地で衝立を作り準備完了。堰を開放。川の水を引き込む。うむうむ。なかなかに良さげだ。一杯になったら再び堰をして…
「ふぁいあ!」
”どじゅぅうう!””ちゃぷん”
「どれどれ…もういっぱつ!」
”どじゅじゅん!”
「うん。良いわね…では早速…。うん?ヒューイさん達も一緒に入るの?」
「!?し、失礼しました!」
男どもがダッシュで逃げていく。
「さて、ローラ達。先にはいっちゃおう!」
{はーーーい}
…。
おふろたいむ(内緒)つまんない?大っきなスイカが8個浮いてただけよ…
「きったないわね…」
やべぇ…お湯の色が…変な泡も出てるぞ…
「…私たちって…」
「しょうがないわね…ここまでとは…かけ湯のスペース作らないと…」
堰全開…洗濯機のように湯舟が渦巻いてる…直奇麗になるでしょう…急遽、洗い場の設営をお願いする。まぁ、丸太並べておしまいだけど。
これで、念願のお風呂が出来たわ!…その後順番に風呂へ…お爺ちゃん達はそんなに汚れてないのよね…干からびてるからかしら(笑)。
その日の夜はみんなよく眠れたそうだ。お風呂最高!
朝食後、試掘が始まった。ダワーリン老が何やら地面をなでながら場所の選定をしているようだ。
「ここじゃぁ!」
{応!}
川から離れた小高い丘…その中腹に横坑を掘るそうだ。
「本当に早いわね…」
「ええ…驚きです。」
「そういえば…この”結界石”ってなぁに?知ってる?」
前回鹵獲した荷物に入っていたものだ…。結界を張る石?が、使い方がわからない。
「…セツナ様…それは野営の時に使うもの。…今まで使ってなかったんですね…」
「寝る前に見回りしてたじゃない。来れば判るし?」
「その石でキャンプ地を囲めば魔物は寄り付きません…ただし、人、動物…猪くらいは通ってきます。また、強大な力を持った魔物も。」
「ふ~ん…保険…ね。じゃ、設置しておいて。」
「了解!」
「お…結構あるな…」
そういって、石の入った箱を担いで去っていくヒューイさん達。まかせた!…一回、利用方法がわからんモノは出して聞くか…
「お嬢!この鉱床はすごいぞい!普通なら結構掘らなんだら出んモノじゃ。」
「じゃ、隆起は決定ね。」
「うむ…魔の森だしの…誰も手が出んかったのじゃろ。」
「この川の下流域に村とかないのかしら…」
「そうじゃの…昔に取りつくされたか…話には聞かないの…」
「そうだったわね…”昔の川”だったわね…」
「そうじゃ。今の川でも極く小さい物は流れるじゃろうがの。」
「奇跡ね。」
「そうじゃのぉ。時の流れと、封印されし土地…かのぉ。」
「んじゃ、帰るかぁ!」
「ん?まだじゃぞ?」
「なんでよ?」
「あと候補が5か所あるしの。奥も…」
「…奥は…無し!!!」
「…り、了解じゃ!だが、この周辺は…」
「…解ったわよ…もう…。逃げてるの忘れてない?ふう。でも一回は帰って、ギルドの見直し、人員の再編成…してから来ましょう。商会との契約もあるし?」
「帰ったら、お嬢はもう来んじゃろ?」
「ええ。」
「誰が、鉱石を運ぶんじゃ?」
「…まさか、”収納”期待してたの?」
「そうじゃ。沢山入れてもらおうと思っての。」
「…そう…」
ちゃっかりしてるわね…このお爺ちゃんは。年の功ね…
「商会も支部出して対応するでしょ。」
「そうじゃのぉ。輸送が一番手間だからの。」
「その辺も詰めないとね。」
「そうじゃのぉ…面倒くさいから、お嬢に全権移譲じゃ。」
「…もう。」
こんな感じで”平和”な時間が進む…そしてとうとう…
「セツナ様…敵方の本体が直に下流のキャンプ地に着くでしょう…」
「で、その者たちは?」
「へい。斥候の者どもです。魔の森に入った時点で捕縛しました。」
「そう…」
そこには斥候職の装備…武装解除されてロープで拘束され、猿轡もされている。
「「「!…」」」
「さて…と。どうしましょう…か。」
「先ずはこの者から聞きましょうか。」
「ええ。」
「…むぐ、ぐ…はぁ。”勇者”様!は、話を!」
「ええ。聞かせてもらうわ。でも、こっちが先。」
「はい…何なりと!」
なんなりとぉ?…?
「?…討伐隊…よね。あなたたち。…なんで私ってわかったの?」
「はい。総大将エネル率いる、”偽勇者”の討伐隊です。”勇者”様の御姿は、戻った国軍から。」
「”偽”だと…貴様等…」
「お!お待ちください。私どもは信じていました。国軍も兵を出していません!監査として5名来ているだけです。ですが…領主さまは…。我ら町の衛兵でして…逆らうことも、逃げることもできず…」
「そう…で、その領主さまは?」
「御大は町で吉報を待つそうです。」
「そう…」
「ここに囚われてる者も同志です…」
「同志?」
「はい。”勇者”様と対峙した折には平伏し、降伏すると決めていました。エネル派、報奨金目当てで集まった者以外、ほとんどの者が降伏する予定です。」
「あらまぁ…。エネル…?…うん?どっかで聞いた名ねぇ。」
「ほっほ、これじゃぁ討伐隊の体もねぇですね…」
「お姉様…追加。」
そう言って二名の男を引きずってくるセーラ。
「ご苦労様。この二人は?」
「は、はい。同志です」
「じゃ、彼ら拘束も解いてあげて。」
「はい?」
「敵対の意思、無いって。そうでしょう?」
「は、はい!」
他の者もコクコク頷いている。
「はい。わかりましたぁ!」…。
「それで…どうしたら良いわけ?私たちは従わないわよ?」
「そこが問題でして…」
「仕方ないわね…明日此方から出向く…かぁ。」
「この者たちは?」
「そうねぇ…解放で良いんじゃない?」
「解りました。森の入り口まで送り届けてきますね。」
「お願い。」…。
「セツナ様、聞きましたよ。敵が来たと。」
「ええ。明日にでもこちらから出向く予定。」
「そうですか?」
「自暴自棄になって、火でもつけられたら面倒でしょう?」
「そうですね…では、人員は?}
「私一人でも…」
「オレぇも行きますぜ。」「俺も!」「俺も。」「私もいきますぅ!」
「う~ん…皆で行きましょうか…」”どがどが”
「わしらも行くぞい。」
「おう。」
「了解…明日護衛少ないから、試掘休みでいい?」
「まぁ、仕方なかろう。選別、整理もせんといかんしのぉ。」
「しかたないの。」
「あ、あと、私、その後、出かけてくるわね。」
「お嬢?」
「頭来たから、城壁くらい吹き飛ばしてくるわ。自ら来ればよかったものを…ふふふ。」
「あ!お姉様!私も行って…」
「遅いとおいていくわよ。」
「はい!」
「ほ、本気で?」
「こちらの本気もちょっとは見せておかないとね。普通三度も兵を送ってこないわよ?」
「それは…」
「まぁ、三兄弟殺ったし。仕方ないか。」
「3人?」
「ええ。三男?次男だっけ?腕もいで見逃したんだけど…騎士団と襲撃してきたから、ぶち殺してやったわよ。」
「…何と…」
「あの事件…お姉様が。腕を捥ぐのですか?」
「そうよ。関節から、案外簡単よ。あ!思い出した!エネルって、警備の担当のアホの文官君だ!懲りてないわねぇ…」
「アホですか?」
「ええ。ドワーフの様子を2月後に見に来るわって言ったら、すっかり安心してたわ。速攻来たけど。」
「…アホですね。」
「でしょう。じゃ、明日もあるし、今日はゆっくりしましょ。」
さてさて。どうなることやら。ふふふ




