ゴルディア視察行 18
「おはよおぉう?おお?」
お爺ちゃん達…今日は早起きね…
「遅いぞい!」
「たるんどるの。」
「…お爺ちゃん達…幾ら早く起きても…食後よ。前倒しはしませ~ん!」
{な!}
「な!じゃないわよ…もう…遠足じゃないんだから…ローラ達にも失礼でしょう。折角作ってくれてるのに。」
「だの!失礼したの。」
「気が急いでのぉ。」
「解ってくれればいいのよ。で、お爺ちゃん達、川漁り?調査?どのあたりにするの?護衛少ないからできるだけ固まってほしいのだけれど…」
「そうさのぉ。」
「今日は下流域を調べてみるか。」
「上流だけじゃダメなの?」
「お嬢の言うロマン…が無いのぉ…徐々にじゃ。」
「それに回収せんと勿体ないじゃろ?」
「…はいはい。で、ローラ達はどうする?一攫千金してみる?」
「それも良いですが…午前中はニコ君に文字と計算教えてもらおうかと。」
「私達おバカだし?」
「それも良いわね。革職人の皆さんは?」
「そうですね…ツルなどがあれば繊維を取って袋などを…アカシアもありますので、鞣し液でも作ろうかと。」
「ドワーフさんもいるから、ついでに”軟革石”も集めてもらいましょう。」
「”軟革石”?」
「字の通り、鞣し液に少し入れると革が軟らかく仕上がります。浸ける前にその粉で毛を洗うと奇麗になりますし、腐りづらくなるんですよ。」
「ふ~ん。お爺ちゃん達、いい?」
「おう。直ぐに持ってくるぞい」
「ヒューイ達は周辺警戒。ハンさんはその統括、ゴルディア方面にも気を付けてね。そうだ、ハンさん、このあたりに村ってある?」
「小さい村なら何か所か。それで、セツナ様は?」
「…薪拾い行ってくるわ…獲物も居るといいなぁ…は、ははは。」
「…ご苦労様です…」
「お爺ちゃん達、一応、武器置いてくわね。一応よ。早まらないでね。」
{おう!}
「それじゃぁ、いただきましょうか。いただきます!」
「応」「ごちそうになるかの。」…
食後。お爺ちゃん達はまさに蜘蛛の子を散らすように…。って!バラバラじゃん!まとまれって言っただろが!
「もっと纏まってよぉ~」
{お~~~!}
まったく…返事だけは良いのだから…
「わぁ!セツナ様!奇麗な石発見!」
「わお!良かったわねぇ。クリス」
三人娘の一人、クリスが皿洗い中に見つけたようだ。こぶしより大きい…アルミみたいな?光沢。そこへおトイレにお籠もりになってたダワーリン老が通りかかる。
ちなみにおトイレは穴を掘ったところに…スライム…だ。スライムパワー恐れ入ったわ!脱臭効果もあるし。今度洋式便器だけ持ち歩こう…衝立もいるわね。と、それはさておき。
「むぅ?」
「どうしたの?」
「そりゃ、聖銀じゃ…良くもまぁ見つけたの。あ奴らより腕が良いのかもの。ふぉふおふお」
「おいくら万円?」
「?ん?そうさのぉ~その量だと…金貨100枚くらいじゃの。」
「ほへぇ?」
「あらら。一攫一千万ね。良かったね。」
「100枚…き、金貨…」
「思ったより大規模かもしれんの…産出物の種類が多い…何か所かの鉱山が重なってるのか…川のせいなのか…魔素の濃度も良さげだしの…聖銀で裏付けられたわい。」
「…直ぐに帰りたいのだけど?」
「…さてと。スッキリしたし。川攫いでもしようかのぉ。」
むんずと老師の服を掴む。ボケたふりしてすぐにフケるから。
「真剣な話よ。」
「うむぅ…これだけの鉱床を後にはできんじゃろう。わしらの矜持じゃ。商会と話が付けば…権利が認められるのなら…その時は。」
「矜持ね…仕方ないか…トワたちがきて…あああ!トワ達、海洋国家に行ってるじゃん!困った!」
「お嬢が書状を…」
「駄目よ。私はここの砦。一回、ハンにでも届けさせて交渉、応援を呼ぶわ。」
「そうじゃのぉ。…じゃぁの。そういうことでのぉ!」
ぴゅぅ!…足速いわね…
「セツナ様、コレ…」
「持ってなさいな。これからの生活に必要でしょう?」
「セツナ様にさしあげますぅ。救出いただいたばかりか…」
「気にしないで。ついでよ、ついで。とりあえず預かっておくわ。本拠に戻ったら考えましょう。」
「はい。」
「どんどん見つけちゃいなさいな。老後の分まで。ローラ達もよ?」
{はい!}
…薪拾いには獣人の職人たちがついてきて、各々、細工に必要な植物の採集や素材採集を行っていく。
「セツナ様!」
「どうした…ああ。」
「流石。お解りで。」
「ええ。一回狩ったことがあるわ。」
「では?」
「ええ。革取るのに頭あった方が良い?」
「できましたら。首の後ろから肩口までの皮の鱗が…大変美しいのですよ」
「了解!さぁ!お覚悟!バジリスク!」…
「お見事です!」
「これほどの完品なかなか流通しませんぞ。」「串刺し…」
口から槍の柄をはやした大きなカメレオン…もちろん絶命している。首の皮だったかしら…
「本当ね…細かくて滑らか。」
こ、こりゃ良いわ。バッグのみならず、革ジャンでも作る?
「”柔革石”を使うとまた面白い感触になるのですよ。」
「楽しみね…私、革の鞄とか作ろうと思ってるのよ。」
「鞄?冒険者用でしょうか?」
「違うわよ。もっと、お洒落な。普段使いのものを。」
「ほう。面白そうですね。」
「ええ。お願いするわ。流行の最先端を行くわよ!」
「それでしたら、素材や、鉱石も集めましょう。」
「そうね。”収納”にブッコんでおけばいいし…」
「おお!」
「セツナ様!」
「どしたの?」
「この岩石、塩でしょうか?」
「岩塩?こんなとこに?どうなってんのよ…地殻変動にしても…」
「昔、勇者様が山を破壊したとか?」
「…ありえない…って言えないから困るのよね…この”魔法”の世界は…。一応、持って行きましょう。私の”鑑定”じゃ”岩塩”としかわからないわ。硫黄やら、重金属が入ってないかみてもらいましょ。」
「はい。そういうのが入ってるとどうなるんですか?」
「食用には向かない…ってことよ。他にも服や革製品に使える金属やら素材なんかがあれば教えてね。」
「はい。お役に立てますよう。」
「…もっと、軽く。言葉も普通にね。」
「はい」
「じゃ、もうちょい入ってみましょうか。」…
その後、もう二匹仕留め、キャンプ地に。
「バジリスクって、美味しかったわよね?」
「ええ。あっさりしていますが、焼いてもスープの具でも。魔物肉ですので、高級食材ですよ。」
「じゃ、丸や…あ、皮取らないとね。解体はシュリさんたちで大丈夫?」
「お任せあれ。」
「大丈夫ですよ!」
「骨は…」
…獣人さん…ニコも、真火もいい笑顔じゃない…か~い!
「…良いわよ…食べちゃって。ちゃんと焼くのよ…」
「やほ~」
可愛いわぁ…捕縛しようと手を伸ばすが…ひょい…
「勘…良いわね…野生の勘ってのかしら。」
昼食にはお爺ちゃん達もちゃんと上がってきて食事と暖を取る。痩せちゃった人たちは体力的に少々きつそうだ。…て、無理すんなよぉ…。
「で、異常なし?」
「はいセツナ様…ちょいと、街の方に遠出してみやしたが、行軍は見られませんね…」
「そう…なら…」
「騎兵は出せないでしょうから、明日は大丈夫かと。夜襲掛けられるくらい肝が据わったのもいねぇでしょう。」
「そう?」
「へぇ?種族特性とでも申しましょうか、獣人族、ドワーフ族は夜目が利きますんで。あっしら人族じゃ対抗できやせんて。」
「そういえばそうね…」
「まぁ、わし等、洞窟大好きじゃからの。」
「昔は住んでたというしの。」
「それでお爺ちゃんの方は?」
「うむ。堆積物の内容から川の流れが大きかったのじゃろう。今のじゃなく、昔、昔のぉ。大河というより急流であったのだろう…」
「ということは、”魔の森”の辺りは山だった?」
「そう考えれば楽じゃのぉ。古の魔術や技で削り取られたやも知れん…」
「私らも、”岩塩”見つけたのよねぇ、隆起した山あってもよさそうだけれども…」
「まぁ、今は”無い”のだから…単純に鉱床の有無の確認じゃの。」
「そうね…上手くいけばむき出しになってるかもしれないし…深部により近く…」
「そう!それじゃ!結晶の類もたくさん出るやもしれん。」
「宝石?」
「磨けばの。」
「楽しみねぇ?」
「興味あるんか!お嬢!」
「な、なんと…」
「なによ!これでも乙女よ!」
「「おお!」」
「もう…お酒出すのやめようかしら…」
「ぬぅ!冗談じゃ!なぁ、皆の衆!」
{応。}
「もう。」…
食後に岩塩を見てもらった。質は良く、調味料として使えるようだ。色は淡いピンク。ヒマラヤソルト?辛みもピンと立っていて美味しい塩だわ。ローラ達も”箱”に鉱石やら入れて持ってきた。老後の保険にね。
「どれ…むむぅ…この嬢ちゃん達のが質が良いぞい…わしらが負けてどうすんじゃ!」
「ぬぬぬ…午後は気合を入れるぞい!」
{おう!}
{やったね!}
「お爺ちゃんどれが一番?」
「先の聖銀もじゃが…こいつじゃ。」
ころりと子供の拳大の石…半分くらい赤い?ルビーかしら?
「こいつがあるとはのぉ…カラーダイアじゃ。」
「色付きダイヤ?」
「そうじゃ…見よ…結構大きいのが取れるぞい。”銘”が付くかもしれん…」
「”ごくり”…お、おいくら万円?」
「さて…のぉ。取り出して磨いてみんことにはのぉ…ここの部分だけでも数千枚じゃろ。」
「ほぇ~すごいわねぇ…宝石商に預けて加工?」
「いんや、わしらの仲間のフロイダインが上手じゃぞ。あ奴は細工もいけたとおもう。後で見せてみよ。驚くぞい。」
そう言って川へ行ってしまった…
「せ。セツナ様…」
「ないす!当分ここに居るんだから、バンバン拾っちゃいなさい。」
「で、でも…そんな高価なもの…とは…」
びびっちゃって…愛いやつじゃ!お乳もみもみ。
「きゃ!」
「大丈夫よ。これから生きてくのにあって困ることは無いでしょう?なにも貧乏することないって。お店だってできるわよ?見つけた奇跡より、こんな機会がある方が奇跡なのよ。バンバン拾って貯めるわよ!へそくり一人目標10億K!」
「そ、そうですね!」
「はい!」
「お店…がんばりますぅ!」
「いいなぁいいなぁ。オレ…私は貧乏まっしぐら…」
「お給料ちゃんと出すわよ…。…もう…解ったわよ。午後は採掘しなさいな。ただし、お爺ちゃん達の邪魔は無しよ?」
「「やっほ~~~~い!」」
シシリーぃお主もか…
「良いのですか?」
「私が代わりに見張りに立つわ。今日は襲撃なさそうだし。それに女の子だし。光物にも興味はあるでしょう…もしや…貴方達も?」
少々羨まし気なヒューイ筆頭の男性陣…。まぁ、そうねぇ。
「い、いえ…ですが…良い鉱床が出ましたら…」
「そうね。ギルド所属の護衛隊が鉄剣じゃぁねぇ…解ったわその辺りも考えておくわ。」
「お願いします!」
ふふふ。セーラ…見つかるといいわね…貴女に物欲センサーが無いことを祈ってるわよ~。




