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親も親なら子も子だな

 ……


 本日も晴天なり! 風も穏やか! 只今、逃走中也。 


 今日も馬上……といっても馬車の御者台に腰かけてる。

 

 御者はニコっち。楽しそうに馬を御している。自分の意志通りに巨大な馬が動くのだから楽しいのだろう。世話もマメにしてるから、馬もニコっちを信頼してるようだ。

 真火も横を騎乗して並走してる。乗馬をマスターしたようね。

 

 そういえば、隣でニコニコのニコっち。大きなお耳のもふもふ尻尾。フェネック系の狐っ子。この子も冒険者のおかげで死にかけていたのよね……ああ、ムカつくわ。冒険者!

 

 「お姉様、何やら黒い物が……」

 と、セーラ。修行の一環で隣を走っている。もち、駆け足よ。

 「気のせいよ」

 そぉっと、ニコっちを捕縛しようと手を伸ばす。が、するりとかわす……生意気な! えい! えい!

 ひょいひょいと、禄に見ずに! やるわね!

 「お姉! 邪魔!」

 「ふぇ」

 しつこいと嫌われるな? やめとこ。ビルックくらいだわ。大人しく捕縛されるの。うん? 私ってばシツコイの? そんな……まさか?

 「お嬢ぉ! あんまりしつこいと嫌われるぞい」

 「んな!?」

 ショック……

 ……

 

 「昼食にしましょう!」

 {応!}

 竈を並べ食事の用意。元飯炊き奴隷のローラたちのおかげで回っている。

 「ろ~~らぁ~~何時も美味しいご飯ありがとぉ~~」

 この子もおっぱい大きいのよね。鷲掴みじゃ!

 「きゃ! セツナ様?」

 「助かってるわ~~。マジで。私ってば、飯マズなのよ~~」

 「私も~~」

 セーラも続く。

 「私も……」

 と、小声でシシリー。お前もかい!

 

 「このキャラバン、ローラたちが居なかったら瓦解してるわね」

 「大袈裟ですよぉ~~」

 「いやいや、ここ女子いないから。飯マズしか。暴動になるわ。本当に助かるわ~~。どう? アヌヴィアトで店やらない? 応援したげる」

 「え? お、お、店?」

 「そうそうお店、お店。食堂とか?」

 「お店……そんな夢みたいな……」

 いいわね! 可愛い娘の涙は! う~~ん! 応援しちゃる!

 「ウチにもいるのよ~~料理バカが。これまた、こだわり料理バカの父親に指導されてるから、”料理、料理”なんだよねぇ」

 「お姉様? 料理は料理でしょうに?」

 と、首を傾げるセーラ。他のも?

 「なんていうの? その点、ローラの造るのは、やさしい味の毎日食べてもいい味。家庭の味の”料理”ね」

 「難しい……」

 「例えるのならば、ウチのは”レストラン”。ローラは”食堂”わかった?」

 「はぁ? オレ……私、そんな洒落たレストランなんか行ったことないし~~」

 「かなりの腕よ~~。応用も利くし。獣人特有の鼻も舌も格段にいい」

 「お会いしたいですね。その料理がお上手なお父様にも」

 「大丈夫、会えるわよ。おじさま、おっぱい大好きだから」

 「へ? おっぱい? ですか?」

 「まぁ、男で嫌いな人はいないでしょうに? ねぇ、貧乳」

 と、シシリー……

 「はぁ? 何よ、垂れ乳」

 「なにぃーー!」

 また始まった。今度は垂れ乳……ね。うん。それなら悪口ね。が、シシリーの名誉のために。垂れてないし。しっかり詰まってるわよ。

 

 「ふふふ。そうかも。で、そのコックの父親。真火君、ニコっちの父親でもあるわ。沢山の獣人の子を養子にしてるのよ。大丈夫、大丈夫。理不尽なことはしない、理性のある? ひとだから。……ヘタレだし」

 「お姉様。疑問形でしたわよ……」

 「そりぁ、一応は”男”ですしぃ~~理性が飛んじゃうときもあるでしょう? 男は下半身は別人格って話もあるしぃ」

 「まじそれ!」

 「そうかも!」

 キャッキャ、キャッキャと久しぶりの女子トーク。たまにはいいでしょう。おじさま今頃、大くしゃみね。

 

 昼食後の一服。平和のひととき。

 ニコっちは読み物。真火君とヒューイ達は狩に出たようだ。

 で、お爺ちゃんたちに”食後酒”という、理由のわからんものをせがまれる。そんなの聞いたことねぇ! ただの食後の飲酒だろ、それ! 寝酒というのならまだわかるが、今、昼だけど。

 すっぽりと”逃亡中”ってこと忘れとるな。

 

 真火君たちが猪を担いで戻ってきた。なかなかの成果だ。”収納”に入ったので、解体は明日に回し、荷物をまとめて出発だ。できるだけ離れないとね。


 道程も良好。盗賊の襲撃も無し。荷馬車ではなく頑丈な鎧馬車が8台の車列だ。そうそう手は出せまい。何気に騎馬のヒューイ達も目立つ。伊達にAじゃない。見事な運用だ。これ見て襲うのはアホだね。

  

 「セツナ姉! 後方に砂塵! 騎馬!」

 来たか……。言ったそばから…… 

 「ヒューイ、馬車、街道脇に方陣! お爺ちゃん達もお願い!」

 「はっ――! ぬかるみにハマらぬように寄せろ! ザイド! シュリ殿! その二台は壁に!」

 「応!」

 「はい」

 「応さ! やっとわしらの出番かの!」

 と、お爺ちゃんたちが物騒な獲物を持って降りてくる。うん? よくもまぁ捕まえて奴隷にしたもんだ。

 お爺ちゃんたちが相打ち覚悟で暴れたら甚大な被害が出たでしょうにね。

 

 「念のためよ。お爺ちゃんたちの手は職人の手。あんなカスどもの血で汚すことは無いわ。……それは私の仕事」

 「お嬢……」

 「さて、どんな話しが聞けるのでしょうか。セツナ様。ふふふ」

 「前に出るのはいいけど、あまり煽っちゃダメよ? アツミ君。そうね真火君はアツミ君の護衛を」

 「はい」

 「お姉様、私もアツミ殿の護衛につきます」

 「助かる。セーラ」

 「私は魔法で援護を!」

 「いや、シシリーは馬車に。皆を守って。私は大丈夫。何千何万来てもね」

 「は、はい!」

 「私も出る。当事者だろうから」

 と、ヒューイ

 「了解。じゃ、戦闘になれば、前に出るのは私とヒューイね」

 「応!」

 「俺も壁くらいはなる!」

 「アホね。ザイド。こんなとこで死ぬことは無いわ。馬鹿らしい」

 「……はっ――! セツナ様! が、俺も前に。アツミ殿を、守りましょう!」

 「それはいいけどぉ。誰も”私”を守るって言ってくれないのね。こんなに可憐な少女なのにぃ」

 {……}

 「そ、それは……」

 「セツナ姉、魔物みたいに強いからだろ」

 「こら! ニコっち!」 

 ふふふ。やるわね、ニコっち。これで皆の余計な力も抜けたでしょ


 一頭の騎馬、先ぶれの者がやってきた。

 「止まれ! そこの者共!」

 と。目が悪いのかしら? 停まってるでしょうに。しかも、道も開けているわ。

 

 「なんのご用でしょうか? 私たちはヴァートリー商会のキャラバン。相応の理由でしょうか? それにすでに停車しておりますが?」

 堂々と言い放つアツミ君。たいしたものねぇ。

 「え? か、『鍛冶師ギルド』の者ではないのか?」

 「そこの紋章をお確かめください。それでどのようなご要件でしょう?」

 「し、しかし……」

 「重ねてお聞きいたします。何の用ですか?」

 「……」

 「見当違いでしたか? それではどうぞお先に。我らはしばらく休憩してからたちます故」

 問答をしている処に遅れて本体の登場だ。騎兵は20。功を焦って先行したか。遅れて、おそらくは兵員を乗せた大型の幌馬車、ご丁寧に物資を乗せた輜重しちょう馬車もついてきている。大げさな。

 で、騎士の間にそこそこの位の貴族だろうな。あの人を見下した目。大方、司令気取りのアホだろう。

 さて。 

 

 「何をしている。そいつらをさっさと捕えよ」

 出たよ。アホが

 「はて? 何の容疑でしょうか?}

  

 「黙れ平民! 平民の分際で我に口を利くな! 逆らうな! 無礼者めぇ!」

 こんなのもいるのねぇ。商会に対してもこれ。おそらくは領主の息子か? この前、と殺した豚に似てなくもないわねぇ。お! ザイド、いうだけはあるわね。いい場所取りだ。 

 「罪状を示すこともせずに捕らえよ、とは。どこのお家のおかたでしょう? その紋章……ゴルディア家の?」

 ふふん。やはりね。じゃぁ、殺しちゃってもいいわね。

 「しゃべるな! 何をしている! さっさと捕らえよ!」

 と、こちらに馬鞭を向ける御曹司。

  

 「レファス様、無理を言っちゃいけねぇ。この方たちは何の容疑で?」

 騎士の間から、ベテラン風の冒険者? にしては……中々の身のこなしね。隙がないわ

 「貴様も逆らうのか! 斬り捨てるぞ!」

 これだからお坊ちゃんは。斬りかかれば逆にその首、落とされちゃうわよ。

 「で、ですから、容疑……罪状をと。先方も訳が分からぬでしょう? そ、それにあの紋章、ヴァートリー商会のものですよ」

 「関係なかろうよ! そんなもの不敬罪でよかろう。捕えよ! 逆らえば切り捨てろ。俺は、次期領主だぞ! 皆のもの! かかれ!」

 あらあら。それはそれは。生きて帰れると良いわねぇ。

 「はぁ? ああぁ? ……ほ、本気で?」

 「兄さ~~ん。それじゃダメだって」

 「ん? ラファル?」

 「女は生かしておかないとぉ! 何しにこんな所まで来たかわからないでしょう? 兵たちだって楽しみにしてるのだしぃ。あとは……斬っていいやぁ~~」

 甘ちゃんの屑どもめ……

 「くっくっく。それもそうだな」

 「レ、レファス様?」

 何を言っても無駄。醜悪な顔がより醜悪に。こいつら、こんなことばかりやってるのね。ゴルディア。親が親なら子も子ね。

 

 「……アツミ、もういいわ。下がって。本当に屑……ね。交渉すらままならない。貴様ら……これ以上何かぬかしたら……皆殺しにするぞ!」

 殺気発動!

 

 「なにぃ~~このガキがぁ!」

 「小娘の分際で。ここは私がいきましょう!」

 騎士にでもなったつもりか。剣など立てて。相手は小娘だというのに。それに、殺気も感じないほどに堕落しきっているのか。豚以下だな。こいつらは。

  

 「ぼ、坊ちゃん! いけねぇ! おい騎士! 引かせろ! られるぞ!」

 騎士? ふふん。甲冑の中身は主人と同類のチンピラだろうさ。殺気を感じたのは、アサシンの男だけか。

 「ふん! ガキが! 舐めた態度の代償は大きいぞ。私の剣をくらうといい!」

 馬のまま近寄り、ニヤリと笑う屑。馬上で振りかぶり、刃を落とす。

 

 弱い。そんなもの食らうか。アホ

 

 降ってきた剣を両手の拳ではさみ、叩き折る! 

 ”きん!”

 折れ飛ぶ剣先

 「あ? あんん?」

 その折れた剣先を馬上の屑に向かい蹴り返す。おじさまならこう叫ぶでしょう! ドライブ……まぁいいわ……。なんでもない。

 

 「あ? ああーー……」

 ”ぼしゅ!”

 回転しながら飛翔する剣先が見事に屑の首を天空に斬り飛ばす

 ”どざり!”

 と、馬の背より雪崩落ちる胴体。飛んだ頭はもう一人の屑の乗る馬の足元に転がる。

 「ラ、ラファルぅ?」

 「ふふん! すぐに弟と再会できよう! わが名はセツナ! 神より『断罪の剣』を授かりし者! 来い、レヴァティン!」

 レヴァティン! 聖なる白炎を纏う神の剣! どうだ! 美しかろう! この剣に斬られるのだ。誉れだろう!

  

 「んな! ひ、引け! ”勇者”様だ! っちっ――!」

 あら、年の功? 良い身の入れ方ね。だけど。

 「貴方ごときに私を止められて?」

 殺すには惜しい。伝令係になってもらおうかなっと、アサシンの男を蹴り飛ばす!

 「ぐっが!」

 これでしばらくは動けまい。

 「ザイド! そいつ、拘束しておいて!」

 そのままレファスとやらの腹に蹴りを入れ、地面に叩き落とす!

 「ぐげぇ!」 

 背から落ちてさぞや苦しかろう

 「レファス様! おのれ!」

 「ふふん! エセ騎士の分際で。お前たちも死ね!」

 ふん。ザコが。剣を合わすまでもない。

 「がひゅ!」

 ぽ~~ん。と飛んでいく首。

 口ほどでもない。ああ、退屈。

 「ま、まて! まて! なぁ、待ってくれぇ!」

 と、手をかざすレファストやら。あらあら。そんな無様な態度。弟さんががっかりしてるわよ。

 「ダメに決まってるでしょ。馬鹿」

 ちょん! とかざしていた右腕を切り飛ばしてやる

 「ぐぎゃぁ~~~~!!! て、手がぁ!」

 「レ、レファス様!」

 ふん。この程度で腰が引けるか。ほら、主人が死んでしまうぞ。

 そんな騎士どもの首を一つずつ飛ばしていく。レヴァティンで斬ると、血が出ないからいいのよねぇ。手足を切り飛ばしても”出血多量”で死ぬことは無い。

 最後の騎士は、主人を捨て、背を向けて逃げ出す始末だ。さすがチンピラのエセ騎士だ。追ったりはしない。足元に転がっていたお仲間の頭を拾い上げ放る。

 ”ばしゃり”

 あら。顔が混ざっちゃったかしら? くくく。これで騎馬は壊滅ね。

 

 どれ。遅れて到着した馬車、面倒だ。兵員が出てくる前にまとめて魔法で消し飛ばしてやるか。荷台に乗ってる連中を消せば、残るのは御者と輜重隊だ。降伏するだろう。

 「ふん……さてと。雷光よ、ことごとくのものを無に帰する聖なるまばたきよ、」

 「げほ。ごほほ……ま、待ってくれぇ! 勇者様ぁ!」

 「うん? 貴様がこの場を預かるというのか?」

 「あ、ああ……時間を! 5分くだせぇい!」

 「良かろう。降伏させよ。一人でも敵対したら、皆死んでもらう。輜重部隊の荷、騎士の馬はこちらでいただく。5分やろう」

 アサシン男の縛を解き、放つ。

  

 「お姉様、よろしいのですか?」

 と、セーラ。

 「次きたら、ゴルディアの町割りに行くわ」

 「は、あはぁ~~ん♡」

 変態……変な声出さないでよ。


 そしてきっかり5分後。

 「こ、降伏致しやす」

 先程のアサシンと、代表の兵が一人やってきた。

 部隊の隊長? やけに地味ね。騎馬の連中と比べ……うん? 国軍か?

 

 「貴様らの身柄など要らぬ。約定通り物資を明け渡して帰るがいい」

 「レ、レファス殿の身柄は……引き渡していただけるでしょうか」

 と、兵。

 「ん? いるのか? あんなの。あのまま放置して殺してしまった方が民のためぞ」

 「はい。それでも」

 「ふん。まぁいい。上着をぬがせろ。試練に耐えられたら……耐えられなくとも証明になるだろう。私に剣を向けたな」

 「たす……助けて……。手がぁ痛いよぉ」

 どいつもこいつも。このクソ貴族が。何が”助て”だ。馬鹿が。

 「貴様は今まで好き勝手やってきたろう? 不敬罪だと威張り散らし。刑場に送り、そう命乞いをした者を助けたことがるのか? ううん?」

 「助けて……」

 屑が。真っ青な顔のレファスの上半身に白光するレヴァティンの刀身を押し当てる。そのまま動けぬように、地面に押し付ける

 ”じじゅぶぶぶうじゅじじゅじゅじゅじゅぅーーーー!”

 辺りに白煙とともに肉の焼ける匂いが広がる。

 「ぎゃあーーーーーー! ひぃいいいうぅ……! ぐぎいやぁーーーーーー!」

 ”じぶじぶぶうじゅじじゅじゅじゅじゅぅーーーーー!”

 

 聖なる炎、気持ちよかろうが。

 聖剣を離すと、そこにはくっきりと、レヴァティンの刀身にほられた文様が焼き付けられていた、反逆者の烙印とともに。

 

 「ほら、連れて行っていいわよ。もう私らと関わらないことね。ちゃんと馬鹿領主に言っておくのよ?」

 苦痛で伸びた屑を蹴とばす。

 「は、はい。承りました」

 

 物資は全ていただいて、兵が乗っていた馬車、輜重隊の馬車は馬諸共返してやった。屑や死体の運搬に要るだろう。私だって鬼じゃない?

 領主のバカ息子や、子分のエセ騎士が乗ってた上質な馬はもちろん馬具ごといただいたがな。

 さて、出立の準備をするか。これで襲撃ももうあるまい。

 ……


 「ハン殿」

 と、アサシンに声を掛けるヒューイ。顔見知りか。

 「あ、ヒューイ殿か……」

 「領主様の依頼で?」

 「あ、ああ。そうだ。借金を踏み倒したドワーフの捜索。そして貴殿らがギルドや領主の依頼を反故にし、馬を強奪して逃げたと。ミロの奴も騒いでいてねぇ。貴殿らにも捕縛の命が出た」

 「なるほど。して、手配書、褒章額は」

 「そういった話は聞いていねぇ」

 「だろうな。自分から罪を告白するようなものだ。ほら、ハン殿、見てご覧なさい。あのドワーフたちの姿を。あれで俺たちの心も決まった」

 「ああ、ハン殿。革職人のシュリ殿もな。奴隷にされていた」

 と、ザイド。

 「本当に? ……あの姿は」

 出立の準備をしているドワーフ達を見て言葉も濁るハン。

 「本当だ。ハン殿。領主とギルドは結託してドワーフたちを奴隷にし、隠し鉱山を掘らせていた。武器屋も。冒険者の村という割に、武器屋が無かったろう? あれもそうだ。高い税金、高い手数料。割安な買取価格……まとまって稼げる環境だから仕方なかったが、今思うと、領主、代官、ギルドの不正の温床だったわけだ」

 「それは……」

 「まぁ、どっちにしろ、早く出立した方が良いわよ? ハン。その御曹司、死んじゃうわよ?」

 「な! それでは失礼いたします”勇者”様……」

 「ハンとやら、行くところがなくなったら、アヌヴィアトの『鍛冶師ギルド』においでなさい。私がコキ使ってあげるわ」

 「は、はい」

 名刺を渡しておく。

 「こ、これは?」

 「窓口で出して。伝わるようにしておくから。待ってるわ」

 「へい。しからば、御免……」

 去っていく荷台の馬車を見送る。

 「彼、殺されなければいいわねぇ」

 「はい。老練な斥候職です」

 「まぁ、成るようにしか成らないし。それにしても馬が……増えたわね。欲張りすぎた?」

 「じゃぁ、ひとつ、馬商でもするかの。お嬢」

 「お爺ちゃん、乗る? ドワーフ初の騎兵とか?」

 「わ、わしに死ねと?」

 「大袈裟ねぇ」

 「あんな高いところから落ちたら……死んでしまうわい!」

 「死なないでしょ。それくらいじゃ。お爺ちゃんたち、無駄に丈夫そうだしぃ」

 「無駄じゃぁとぉ!」

 「いくらお嬢でも少々過ぎるぞい!」

 「同族じゃろがい!」

 わいのわいのと苦情が。変な所にこだわりがあるのだから、ドワーフ族は。

 「人族よ! はいはい。わかったから! ほら、酒樽も結構あったわ。後で開けましょう!」

 {おお!}

 ……買収成功? ちょろいわね。

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