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治療院

不定期ですいません……

「あの、スーさん」


「なぁに?」


「スーさんのお母さんみたいな病状の人って、他に心当たりとかあります?」


 本来呪いは人伝いにはかからない。けれど、今回の呪いは違う。人伝いになってしまう可能性があるのだ。まぁ、怨念が原因だからね。それがうつってしまうのだ。


「そうねぇ……そう言えば最近治療院が忙しいって聞いたことあるような……」


「治療院ですか?」


 治療院は言わば病院のようなもの。それが忙しいとなると、病人や怪我人の治療に追われているとみるのが妥当か。

 ………もし呪いにかかった人が多いのなら、これはかなり問題かもしれない。


「ええ。来る人の会話を聞いただけなんだけどね」


 うーん……まぁ、行ってみるだけいってみようか。


 《主様、食べないの?》


「うん?もういいの?」


 《うん。ありがと、美味しかった!》


「それは良かった」


 プレナから残りのすいとんとスプーンを受け取る。スプーンはクリーンをかけて無限収納庫(インベントリ)に。すいとんは3分の2くらいで少し冷えてたけど、残さず食べる。

 うん、いい味。


「マリーナちゃんそれだけでいいの?」


 心配そうにスーさんが聞いてくるけど、問題ない。神龍である影響で、本来なら食事などは必要ないからだ。だから私にとって食事っていうのは、ただの娯楽のようなものなんだよね。


「大丈夫ですよ」


 だからそれだけ返事し、ご馳走様でした、とすいとんを食べ終わる。


「サーニャさん。私はいくところができましたが、どうします?」


「………ついて行かないほうがいいですか?」


 サーニャさんは私が言いたいことが分かったようだ。私としてはついてきて欲しくない。なぜなら、サーニャさんは呪いに抗えないから。比較的かかりにくいとは思うけれど、絶対ではない。以前盟約で守護するとはしたけれど、この呪いは特殊で肩代わりできない。だから、私がこれから行く場所、治療院にはついてきて欲しくない。

 でも馬鹿正直に言葉には気持ち的にしたくないので、曖昧に微笑んでおく。


「……分かりました。私はここにいます。お気を付けて」


「はい。すぐ戻ってきますね」


 念の為、プレナはサーニャさんと一緒にいさせることにした。


《気を付けてね?》


「もちろん」


 プレナと会話してから席から降りると、私は足早に宿を後にした。


 ーーーーーーー


 マリーナちゃんが一人で宿を出ていってしまった。


「大丈夫、なの?」


 思わずサーニャちゃんに尋ねる。

 以前サーニャちゃんがマリーナちゃんのことを「マリーナ様」と呼んでいたので、おそらく2人は主従関係なのだろう。だけどそうなると、サーニャちゃんが従者ということになるけど、それならば尚更ついて行かなくていいのだろうか?


「問題ありません。むしろ私がいた方が邪魔です」


「邪魔って……」


「それに、心配しなくてもマリーナ様は私なんかより遥かに強いです」


 サーニャちゃんがそう言うけど……正直信じられない。だって背丈が小柄なサーニャちゃんより小さいのだもの。それで強いなんて言われても信じられない。


「ふふっ。信じられませんか?」


「それはそうよ……」


「まぁ信じられないのならそれで構いませんよ。実際に実力を見ることなんてないでしょうから」


「…そうね」


 私はほとんどこの宿からでることはない。忙しいし。だから確かに実力を見る機会なんてないでしょうね。


「…もしかして最近になって販売され始めたレシピって…あの嬢ちゃんが?」


 隣でマリーナちゃんからもらったレシピと睨めっこしていたお父さんが、突然そんなことを呟いた。確かに最近になって多くのレシピが販売され始めたけど……


「あぁ、そうだと思いますよ」


 サラッとサーニャちゃんが答えた。けど…あの量全て?!


「どれだけ出しているのか私も把握していませんが、最近になって販売されるようになったレシピの大半は、マリーナ様が登録したものだと思います」


「まじでか?!」


「はい」


 ニッコリと笑顔を添えて言い放つ。あんな小さい子があれだけのレシピを……


「……世界って広いんだな」


「奇遇ねお父さん。私も同じこと考えてたわ」


 本当に世界って広いのね……


 ーーーーーーー


「クシュンッ!」


 いきなりくしゃみが出た。風邪なんてひかないはずなんだけど……となると誰かから噂されてる?まぁいいか。


「治療院はーっと」


 道行く人に尋ねると、意外にも快く道を教えてくれた。そこまで危機感を抱いていないのだろうか?

 そうしてたどり着いた治療院と思しき建物は、真っ白な清潔感ある綺麗な建物だった。造りとしては教会みたい。

 出入口に扉はなく、誰でも気軽に入れそうな感じ。

 そして、その出入口から忙しなく人が出入りしていた。その全ての人の表情はどこか焦っているような……そんな表情をしていた。


「これは深刻なのかもなぁ……」


 忙しそうな人を後目に治療院へと足を踏み入れる。


「ポーションはっ!?」

「こっちもないぞ!」

「治癒魔法使えるやつ!はやく来てくれ!」

「魔力がもうないのよっ!」


 ……中は阿鼻叫喚という言葉がピッタリな状態だった。ベットに寝かされた人に何度も治癒魔法をかけている人もいるけれど、あまり効果は無さそうだ。

 それもそうだろう。これに治癒魔法は効かないのだから。


「どうしようかなぁ……」


 この状況を予想していなかった訳では無いけれど、問題はこれからどうするか、だ。助けようにもこう人が多いのでは……

 私は力を見せびらかすことはしたくない。だからこの衆人監視の中で神力を使いたくない。後が大変だもん。

 さて、どうしようか?





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