休憩所到着
道中色々とあったりしたけれど、なんとか日暮れまでには休憩所に到着することが出来た。
休憩所には馬車が3台。それとそれを守るような形で野営の準備をしていた冒険者が2組いた。
結構な人数ではあるけれど、休憩所は広いので問題はない。それと、ここはなにやら魔物避けの柵が設けられているらしく、弱い魔物は近づくことは無いのだとか。
………まぁ、裏を返せば、強い魔物は入ってくるんだよね。それは仕方ない。
それに盗賊とかも防げないから、結果として見張りは必要なんだよね。
でも私は結界を張ればいいので、そこら辺の問題は無い。
「何処にしましょうか?」
「とりあえず迷惑にならないよう、離れたとこにしましょうか」
「そうですね」
ということで、団体から離れた場所で私たちは野営をすることにした。無限収納庫にテント類は入っているので、今回はそれを使う。
……周りの目がなかったら魔法で即席の家を作っても良かったんだけどね。今回は仕方ない。無限収納庫から2人用のテントを取り出すことにする。
「あ」
ここで気づく。サーニャさん、私と一緒に寝れない……格の違いのせいで。前みたいなことは起こしたくない。
「サーニャさん」
「はい、なんでしょうか?」
「その……テントは分けたほうがいいですよね?」
するとサーニャさんは一瞬だけ何でなのか分からないといった様子で首を傾げたが、すぐに納得したような顔になった。
「えっと……できるなら、ですが」
「大丈夫ですよ。幸いテントはまだありますから」
「あ、大丈夫ですよ。私のテント使います」
あぁ、そう言えばサーニャさんは野営とかしてたはずだから、持ってても不思議はないか。
サーニャさんは腰に着けたマジックポーチから、おそらく1人用と思われる大きさのテントを取り出し、設置し始めた。
そしてさすがというか……手つきに迷いがなかった。おっと。惚けてないで私も設置……
「ほいっと」
突然現れるもう組み立てられたテント。…いやあのね、無限収納庫が超有能すぎてさ。もう組み立てた状態で出せちゃうんだよね。
《主様ズボラ……》
うるさいやい!
「……マリーナ様、何したんですか?」
作業の手を止め、サーニャさんがこちらを見ながら尋ねてきた。
「ちょっと私のスキルの効果ですよ」
「はぁ……まぁ、マリーナ様ですしね」
…ちょっと待って。なんでそれで納得できちゃうんだろう?
《主様だしね》
『マリーナ様ですから』
プレナとハクまで!?……というかハクは分かってるでしょうが!
『ここは乗ってみました』
乗ってみたって……もう益々人間味が増してきたね。まぁ、私としてはそっちの方がいいけど。
『……ありがとうございます』
うん。これからもよろしくね。
「出来ました」
サーニャさんもテントの組み立てと設置が完了したようだ。晩御飯どうしようかなぁ……
「ねぇ、君たち?」
突然後ろから話しかけられた。
……いやまぁ索敵してたから来てたのは分かってたけど。だから無限収納庫の説明もぼかした。
「はい。なんでしょう?」
振り向きながら答える。そこに居たのは、商人ぽい男の人。多分あの馬車の持ち主だろう。
「君たちは、旅人かい?」
「まぁ、そうですね」
「なら、食料などには困っていないかい?今なら安くするよ?」
うーん……なんというか、嫌だな、この人。子供だと思って舐められてるよ。
「結構です。幸いありますので」
「そ、そうかい。でも、もしなにか必要になったらぜひ来てくれよ」
そう言って去っていった。はぁ……面倒なやつに目をつけられたなぁ。
「大丈夫ですか?」
「……はい。なんというか、下に見られていい気はしませんでしたね」
「それは私も思いました。エルフの私もいたのに」
あ、ちょっとしょげてる。何故?
「……マリーナ様から交渉は任せると言われたのに…」
あぁ、そういうことか。
「そこまで気にしないでください。ああいう輩は私が対処しますから、サーニャさんは宿の人とか、私の容姿では交渉しにくい人に対して交渉してもらえればいいです」
「……はい」
ふむ。ちょっとは機嫌が治ったかな。さてと。今日の晩御飯は……
「晩御飯はパンとスープで大丈夫ですか?」
「もちろんです」
良かった。まぁサーニャさんの性格上絶対文句なんて言わないとは分かってたけど、一応ね。
寸胴鍋はここで出すのははばかられるので、無限収納庫でスープ皿に移す。本当に便利だよ。
スープはコーンスープ。パンは……まぁ、適当に。
……なんか並ぶと朝ごはんみたいだな。やっぱりスープは前試作したミネストローネにしよう。ゴザを敷いて、その上に並べて座る。
《「「いただきます」」》
道中サーニャさんにはいただきますについて教えていたので、2人同時に声に出し、食べ始める。
プレナはパンをリスみたい(実際見た目リスだけど)に、ちまちまと食べていた。
「おいしいです……」
ほぅ……と惚気けたような顔でスープを飲むサーニャさん。そ、そこまでかなぁ…私としてはまだ改良の余地ありなんだけど。ちょっと酸味が強いね。トマトが地球のより酸っぱめなのが原因かな。
《「「ごちそうさまでした」」》
サーニャさんは結局スープを1杯お代わりし、パンも4つほど食べた。どこにそんなに入るんだろうか……
ちなみに私はスープ1杯とパン2つでギブ。そこまで胃は大きくない。プレナはパン1個だった。
「では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
ゴザ類を片付けてそれぞれのテントに入り、就寝の挨拶を交わしてから、テントを閉めた。
「疲れた……」
なんというか、精神的に。ここまで疲れたのは久しぶりかもしれない。
とりあえず体をクリーンで綺麗にし、結界を展開。もちろんサーニャさんのテントも含めてね。それと……ちょっとした細工を施して……っと。よし。
じゃあ、制御はよろしくね。ハク。
『はい』
結界の制御をハクに任せ、私はプレナと共に眠りについた。