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怒リト鎮メル者

残酷描写あり。

 次の日。やっとフォルタスを出発することができた。


 《今度は、今度は絶対忘れないでねっ!》


「うん、わかってるよ。本当にごめんね」


 これでプレナのこと忘れたの何回目だっけ……


『おそらく4回目かと』


 お、おう……そんなに忘れてたのか。そして私も学習しないなおい。

 とりあえずその話は置いといて。一応向かうのは隣国、リリシア王国だ。

 馬車を借りるっている手段も考えたんだけど……あれ結構乗り心地悪いのよね。私は神龍だから体力には自信があるし、サーニャさんもハーフだから常人より体力はある。だから歩きでもいいかなぁって。


「以前は1人歩き旅でしたから……こうしてマリーナ様と共に行けてとても嬉しいです」


 まるで花が咲いたような笑顔をするサーニャさん。そ、そこまで嬉しいのか……まぁ、一人旅って自由だけどその分寂しいしね。


「私もサーニャさんと旅できて、嬉しいですよ」


「そうなんですねっ!」


 私が同意したからなのか、さらに嬉しそうにする。……可愛い。癒しだわぁ……。っと。惚けてないで索敵しとかないと……


「日が落ちる前には休憩所に着きそうですね」


「そうですね」


 休憩所とは、街道の随所に作られた休憩するための場所だ。ただの広場だったり、人通りが多い道にはちいさな宿が建っていたりする。この先にあるのは……テントとかを広げられる広場だね。


 そしてしばらくの間歩き、お昼になったので、道をそれてゴザを敷き、そこに座って作っていたサンドイッチを食べることにした。


「おいひい……」


「それは良かったです」


 サーニャさんがとても美味しそうに食べてくれた。やっぱり美味しいって言われると嬉しいね。


 …さて、と。……さっきから気付いていたけど、周りに()がいるね。まぁ、とりあえず様子見かな。

 ……そう、思ったんだけどね。


 ヒュッ!


「っ!……まさかこんな手を使ってくるとはね」


 風切り音を立てて飛んできたのは……ちいさな針。咄嗟の判断で針は刺さる前にキャッチした。だけど、サーニャさんの首筋には刺さってしまった。


「あ、え?マリーナ、さみゃ……?」


 どうやら呂律が回らないようだ。


「……毒か」


 種類としては、人を殺せるほど強い毒じゃない。弱い、動きを鈍らせる毒。だからサーニャさんの呂律が回らなくなったみたい。


「おうおう。もう一方の嬢ちゃんには刺さらなかったか」


 そんなことを吹きながら、森から男が出てくる。


「どういうつもり?」


「どういうつもりだぁ?ははっ!こりゃ世間知らずな嬢ちゃんだなぁ!」


「うるさい。さっさと答えて」


 ほんとうるさい。こっちは待って()()()()んだから。


「……おい。そんな口聞いてただで済むと思うなよ。おい!」


 ゾロゾロと男たちが出てくる。数は……うん。把握していた通り、先にでてきた男も含めて全員で5人。


「へへっ。エルフは高く売れるからなぁ。そっちの口の悪い嬢ちゃんも上玉だ。傷つけるなよ」


 人身売買か……ただ、相手が悪かったね。


「抵抗したら?」


「出来んのか?やってみろよ」


 ほらほらと挑発するように両手を広げる男。


「そう。なら──」


 ───遠慮なく。


「ぐはっ!」


 一気に近づいて腹を思っきり殴る。すると男の体がくの字に曲がり、吹き飛ぶ。


「あら。弱っちいね」


「っ!舐めんなぁぁ!!」


 別の男が剣で切りかかってくる。力任せの、ずさんな振り。

 私は無限収納庫(インベントリ)から刀を取り出し、その攻撃をいなす。そしてそのまま男の手首を切り飛ばした。


「う、うわぁぁ!?お、俺の腕がァァァァ!」


「うるさい」


 膝を蹴って跪かせた後、頭を蹴って黙らせる。


 グキっ!


 あっ。


「やっちゃった……ま、いっか」


 こいつらに人権なんてない。だから慈悲もない。


「こ、このぉぉ!!」


 また別の男がナイフで突っ込んでくる。その後ろでは魔法を準備するやつと……筒を構える男がいた。


「お前か」


「っ!」


 襲いかかってきた男と魔法を準備していた男は、すれ違いざまに腹を殴って気絶させ、筒を構えた男へと近づく。

 男は慌てて懐からナイフを取り出すが、私は手首を切り飛ばして持てなくする。


「ひぃぃ!や、やめてくれ!」


 尻もちをつき、ジリジリと後ろへと下がっていく。


「なぜ?なぜやめないといけないの?」


 私は淡々と言葉を紡ぐ。


「あなたは私の大切な人を傷付けた……ただで済むとでも?」


「ひ、ひぃぃ!」


 後ろを向いて逃げようとする。だから、足首を切る。


「うわぁぁ!!あ、足がァァ!」


 その場へと倒れ込む。そして私のほうへと向く。


 ……あぁ、そうだ。その顔が見たかった。恐怖に染る顔を。


 私はさらに男に近づく。男は後ろに下がろうとする。だが、背中が木にあたり、それ以上下がれなかった。


「や、やめてくれ!」


「ふふっ」


 思わず笑いが零れる。なぜだろう。

 ………あぁ、そうか。私は怒っているんだ。

 だが、そんなことは今更どうでもいい。今は、この男を……


 そう思いさらに近づこうとする。……だが、誰かに後ろから服の裾を掴まれ、進めなかった。

 誰がと振り向くと……青い顔をしたサーニャさんが立っていた。


「マ、マリーナ、さま」


「……サーニャさん?どうして…」


 どうして、止めようとするの?


「…怒りに、飲まれ、ないで、くだ、さい。……私が知る、マリーナさま、は、そんな方じゃ、ありません!」


 途切れ途切れでも、弱々しくても、最後の言葉は、私の胸に響いた。

 私は、何を、しようとしていた?


「……すいませんでした」


「…わかって、もらえたのなら、いい、です……」


 そう言ってほっとしたのか、その場に座り込む。だいぶ顔色が悪い。無理に動いたせいで毒が回ってしまったようだ。すぐに魔法で解毒する。私が先に治しておけば、こんな事にはならなかったのに……。


「サーニャさん。大丈夫ですか?」


「………はい。大丈夫、です」


 まだ顔色は悪いけど、解毒はできたから、もう大丈夫だろう。

 ……だから私は、座り込み、怯えている男へと向き直る。


「マリーナ様……」


「もう、大丈夫です」


 刀の切っ先を男の喉元へと突きつける。


「……次はない」


「は、はひ……」


 そのまま男は気を失った。ふぅ……


「マリーナ様……大丈夫ですか?」


「……はい。思ったよりも」


 私は、今回初めて人を殺した。だけど、罪悪感とかそんなものはなくて、ただ虚無感が襲うのみ。


「とりあえず男たちは縛って転がしときましょうか」


「それでいいかと」


 ロープを無限収納庫(インベントリ)から出して、生きている人だけを縛る。死んだ人は、穴を掘って燃やして埋めた。墓石の代わりに木の棒を1本だけ突き刺しておく。


「……行きましょうか」


「はい」


 まだ、日は高い。







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― 新着の感想 ―
[一言]  衛生面(疫病とか)でなく墓の意味で埋めている分、マリーナは十分優しい。
[一言] 足首、手首を切られて縛られていたら、出血で死ぬでしょうね。
感想一覧
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