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サーニャ、怒る

「きゃぁぁぁ!」


「どうし…うぉ!?誰だ!?いやそもそも大丈夫か!?」


 うるさいなぁ……なんでみんな朝から騒いでるんだろう。私は昨日のあれでもうちょっと寝たいのに……。


「……マリーナ様、起きてください」


 ゆさゆさと体を揺らされる。この声は……。薄らと目を開けると、やはり予想通りサーニャさんがいた。


「……おはようございます?」


「なんで疑問なんですか…というか早く起きてください。なんか騒ぎになってるんですよ」


 あぁ……さっきから聞こえる声か。

 私は仕方なくベットから体を起こし、ふぁーっと欠伸をしながら体を上に伸ばした。


「……その服…」


「え?……あぁ、ちょっと切れちゃったんですよ」


 伸びた拍子に、昨日の出来事で切れてしまった箇所が見えてしまったようだ。私は内心の焦りを出さないよう、ただそれだけを答える。


「いつです?少なくとも昨日そんな切り傷なかったですよね?」


 ……案外よく見てるんだなぁ。


「うーん……よく分からないです」


 敢えて誤魔化す。おそらくサーニャさんは自分を責めてしまうから。


「そう、ですか……あ、昨日はありがとうございます。ベットまで運んでもらって…」


「気にしないでください。ただのお節介ですからね」


 ヒラヒラと手を振る。私が気になっただけだ。感謝される筋合いはない。


「……分かりました。じゃあ行きましょう。この騒ぎがなんなのか知りたいですし」


「そうですね」


 全くなんの騒ぎなんだか……


「あっ!あなた達大丈夫だった!?」


 部屋からでると、宿のお姉さんがそう言って駆け寄ってきた。はて?なんの事?


「どうしたんです?」


「朝起きたらお客さんが騒いでてね。それで上に上がってみたら……」


 お姉さんの目線の先を追う。そこには壁で死んだように折り重なる男3人……あ。


「へ、へぇー…あ、あの人たちは?」


「分からないのよねぇ。私は下の食堂で食べてるのは見たけど、そもそも泊まっている人じゃないのよね」


 ほう。ただ食事をしていただけだったんだね。


「だから強盗かなぁーって思ったんだけど…まぁ通報はしたから、もうちょっとしたら衛兵がくるはずよ」


 それなら良かったよ。


「………マリーナ様、ちょっといいですか?」


「へ!?あ、は、はい…」


 サーニャさんから聞いたことないほどの低い声が聞こえ、思わず吃ってしまった。見るとジト目だった。あ、あれぇー?


 とりあえず部屋へと戻る。ついでにベットの脇で眠ったままだったプレナを起こした。


「……あの男3人、もしかして、いや、間違いなくマリーナ様の仕業ですよね?」


「な、なんの事だか…」


「とぼけないでください。これでも私はエルフです。魔力の残滓を感知するのは得意です。あの男達……いや、微かですがこの宿自体からマリーナ様の魔力の残滓があります」


 ま、魔力の残滓……そういえば拡散するの面倒でやってなかったな…気付くことないだろって思ってたんだけどなぁ…。


「どうなんです?」


 じーーっとサーニャさんに見つめられる。うぅ……


「……はい。私がやりました」


 正直に自白すると、サーニャさんは深いため息をついた。


「はぁ……まぁ状況は想像できますし、やりすぎだとも思いません。ただ……ちゃんと言ってください。黙らないでください。隠さないでください。もし今度何も言わずにこんなことがあったら……」


「あ、あったら…?」


 ゴクリと唾を飲み込む。


「………泣きます」


「……へ?」


 思わず素っ頓狂な声が出た。な、泣く?


「…マリーナ様に何かあったらどうするんですか!心配する私の身にもなってください!」


「は、はいっ!」


 そっか……朝服が切れていることに気付いたことといい、サーニャさんは本気で私のことを心配してくれているんだね。ちょっと嬉しい、かな。


「聞いてますかっ!」


「き、聞いてますっ!」


 心配してくれることが嬉しくて、少し微笑んでいたのが聞いていないと思われたらしい。泣きながらサーニャさんが詰め寄ってくる。そ、そこまで心配してくれてるんだ……。


「わ、分かりましたから!ちゃんと言います。今度から」


「……ほんとですか?」


 疑うような視線が私を射抜く。


「ほんとです」


「……なら、いいです」


 サーニャさんが離れる。見ると涙は無くなっていた。……嘘泣きですか。はぁ…。サーニャさん、恐ろしい子!


「今日はどうします?」


「……なら、冒険者ギルドで話を聞いてもいいですか?」


 なん為に……あぁ。


()()ですか」


「はい。私が聞いたところから、()()()()()()可能性があるので」


 ふむ。それはそうだろうな。あれはその場に留まらないだろう。寧ろ、今の状態なら尚更。


「じゃあ食べてから、冒険者ギルドへと寄りましょうか」


「はいっ!」


「プレナもいくよ」


 《ふぁー…はーい》


 起こしたはいいけど、私たちの会話について行く気がないのか途中から眠ってたのよね。

 プレナを肩にのせて、下へと降りる。男3人はもう既に運ばれた後だったようだ。


「あ、おはよう!今日は朝からごめんね?」


「いえ。お姉さんのせいじゃないですから謝らないでください」


「(…マリーナ様のせいですからね)」


 それ言わないで……。


「朝食はいつでもいいわよ?部屋で食べる?」


「いえ。ここでいいですよ」


 カウンター席にサーニャさんと2人座る。


「じゃあ待っててね。あら、その子は従魔?」


 お姉さんがプレナを見ながらそういう。昨日は気づかなかったのかな。


「はい」


「かわいいのね。その子の分はいる?」


 《私はいらないよっ!》


「いらないみたいです」


「そう。なら、すぐ2人分持ってくるわね」


 お姉さんが去ると、近くの席にいた人が話しかけてきた。


「今日は災難だったね。怖かったんじゃないかい?」


「いえ。誰かがやっつけてくれたみたいなので、怖くなかったですよ」


「そうか。まぁ宿に泊まってるやつが倒したとは限らんだろうがな。しっかしあいつらをあそこまでコテンパンにするなんてな。顔が原型とどめてなくて一瞬気付かなかったぜ」


 あぁー……うん。顔思いっきり腫れてたからね。ちょっと強すぎたか…。


「そんなにあの3人有名なんですか?」


「有名、まぁ、有名だな。素行が悪い冒険者として」


 あ、あの3人冒険者だったんだ。


「まぁランクはDだが、そこそこ強かったからな。倒したやつに会ってみたいぜ。多分男だろうな。大柄な」


 すいません。倒したやつ、今あなたの目の前にいます。少女です。男じゃないです。小柄です。


「男…大柄…ぷぷ…」


 隣りからサーニャさんの笑い声が聞こえた。そこ笑うとこじゃないでしょ!?じーっと睨むと、サーニャさんは直ぐに澄まし顔に戻った。全く……いいんだい!この街でたら姿変えるんだから!




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― 新着の感想 ―
[一言]  あれ?切られた服着替えていないですよね( -_・)?  そのまま外出するの?
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