別れ
とりあえず夕食の後リナさんに話したんだけどね……
「私もいくわ!」
うん。予想はしてた。一緒に行くって言うだろうなぁーって……。
「なんでそうなるんですか……」
「だって心配じゃない」
「大丈夫ですよ。そこまで弱い訳では無いことは知っていますよね?」
「それは…そうだけど…」
正直来ないで欲しい。もしかしたら、本気で魔法を使うかもしれないから。見られるっていう心配よりも、巻き込みそうなんだよね……
「リナ。諦める」
「うぅー…」
「別にマリーナ帰ってくるつもりなんだろ?」
正直迷ってはいる。私は人ではないのだから。いつまでここに居れるか…
「……もしかしたら、帰ってこないかもしれないです」
「それは……ここが嫌になったか?」
「いえ。そういう訳ではなく……旅したいなぁーと」
満喫してって言われてるんだから、どうせなら旅したい。
「そうか…まぁ、それもいいかもしれんな。腰を据えるにはまだ若いだろ」
「腰を据えるに若いもないとは思いますけどね……そういうギルさん達はここに住むんですか?」
「どうだろうなぁ……ここは依頼が多いから、依頼がないとかって困ることはねぇしな。そこはいい所だと思うぜ。だから、しばらくはいるつもりだが、住むかは分からん」
「そうですか。じゃあもう会えないかもしれないですね」
「まぁそんときはそん時だ。冒険者ってのは、出会いと別れを繰り返すもんだからな」
「出会いと…別れ、ですか」
別れっていうのは、今回のような別れと……今生の別れのことだろうね。
「まぁ頑張れ。また会えたらな」
「はい。また会えたら」
私とギルさんはお互い顔を見合せ、微笑んだ。
「……なんでギルはそんなに割り切れるのよ……」
リナさんがギルさんを睨みつける。まぁギルさんは今までも別れを繰り返したのだろう。だからこその慣れ、みたいなものかな。
リナさんもそれなりに経験はしているだろうけど……ギルさんとは違って一緒に寝てたから、ギルさんより親しくなったと言える。だから別れるのが嫌なんだろう。
「リナさん。これ、あげます」
このままでは勝手に付いてきそうなので、あるものを手渡した。
「……なにこれ?鱗?」
私が渡したのは、1枚の白金色の鱗。光に反射して煌びやかに光っている。
「はい。私の宝物です」
「え!?宝物って…そんなの貰えないわよ!」
「いいんです。リナさんが持っていてください。それがあれば、何時でも繋がっていると思えるでしょう?」
「マリーナちゃん……分かったわ。大切にするわね」
リナさんが胸に大切そうに鱗を抱き込む。言葉に偽りはないだろう。
……あと、ついでに言うと、繋がっている、っていうのは比喩じゃないのよね。ほんとに繋がっている。なんたって私の鱗だからね。
『神龍の鱗1枚で一生暮らせる額になりますけどね……』
……確かにそうだけどね。普通は神龍の鱗なんて思わないでしょう。一応隠蔽してあるから、鑑定しても分からないはず。それに、リナさんが売るとも思わないしね。
「……リナ、ずるい」
フィーナさんがそう言うけど、ごめんなさい……。1枚しか用意してない。一応何枚でも出せるけど、隠蔽に時間かかるんだよね……。
「明日でお別れか…んじゃお別れ会でもするか?」
「いいですよそんなの。今生の別れじゃあるまいし」
「それもそうか」
ガハハっ!とギルさんが笑う。
「マリーナちゃん。今晩抱かせて!」
真剣な顔でリナさんが言ってくる。
「……まぁいいですよ」
断る理由はないからね。了承すると、リナさんが満面の笑みを浮かべた。そ、そんなに嬉しいですか…。
「……リナばかりずるい。マリーナ、私も」
「えぇっと…寝にくくありません?」
「大丈夫」
いや寝にくいの私なんだけど……ま、最後くらいいっか。
《じゃあ私は主様の影入ってるね》
「あぁ、ごめんね、気を使わせて」
《いいの別に。主様とは何時でも寝れるんだから!》
「ふふっ。確かにそうだね」
プレナの頭を撫でてあげる。すると気持ちよさそうに目を細めた。
「ほんとにマリーナちゃんとプレナちゃん?仲良いわよね」
「そうですか?眷…従魔ってだいたい仲良いんじゃ?」
「そうでもないわよ?従魔ってつまり使役してるってことだからね。心が通じあってるような人はそう多くないわ。大体の人が道具としてしか見ていなかったりするからね」
それは少し……いや、すごく酷いと思う。魔物であれなんであれ、生きているのだから。人形や道具ではない。心がある。
従魔を道具としてしか見ていないなんて、知りたくなかったな……
「悲しむことはないわ。そういう人には大体ツケが回ってくるんだから」
「ツケ?」
「そう。自分の従魔に殺されたりね。意外と多いんだけど、それでも認識は変わってないのよね…ほんと馬鹿よね」
お、おう……ナチュラルに馬鹿って言ったね。その通りだけど。
「…っと。暗い話はここまでにしましょうか。もう寝ましょう。明日早いのよね?」
「はい。まぁいつもとそこまで変わらないと思いますけどね」
「それでも長く動くことになるんだから、しっかり寝ましょ?」
「はーい」
部屋に入り、ベットへと潜り込む。このベットももう使わないと思うと、すこし寂しいね。
そしてプレナに影に入ってもらったタイミングで、両方から挟まれた。
「……やっぱり寝にくくありません?」
「「大丈夫」」
あ、そうですか……
これ寝れるのか?って思ってたけれど、案外すぐに眠気がきて、意識を手放した。