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護衛依頼【6】

 サーニャさんはずんずん森の奥へと進んでいく。

 その後ろを私が、さらに私の後ろをフィーナさんとバケットさんがついて行く。


 索敵はしてるんだけどねぇ…まぁ見事にいないよ。

 昨日はビックボアが来たり、寝てるときだけどフォレストウルフが来たりしたから、今日も来るかなって思ってたんだけど、全くいない。

 いやまぁありがたいけどね?ただ……このままだと護衛依頼の意味無いなぁーと。


「サーニャさん、目指す場所があるんですか?」


 ちょっと気になったので尋ねてみた。もし手当り次第に探すつもりなら、ちょっと無理があるからね。


「竜霊草は魔素の濃い場所に生えるので、とりあえず魔素が濃い方へ進んでいます」


 なるほど…?でも、魔素が濃いって分かるの?


『これは感覚が頼りになります。マリーナ様からすれば、魔素が濃い場所は居心地がいいので、その感覚がする方が魔素が濃い、ということになります』


 ふむ。とすると、聖域は魔素が濃いってこと?


『その認識で間違いないですが、正確に言えば、聖域は"清らかな"魔素が濃いです』


 うーん。よく分からないけど、別に重要そうではないし、そういうものって理解すればいっか。


 その後しばらく歩いたけど、一向に見つからない。ついでに魔物もいない。

 奥に行けば行くほど木々が鬱蒼としていて分かりにくいけど、日はおそらく既に真上。


「お昼食べます?」


「そう、ですね。そうしましょう」


 サーニャさんが立ち止まったので、私は簡単に作っておいたサンドイッチを無限収納庫(インベントリ)から取り出す。さすがに森の真ん中でテーブルを広げる訳にはいかないからね。手軽に食べれるよう作っておいた。


「どうぞ」


「ありがとう、ございます…」


 恐る恐る私からサンドイッチを貰うサーニャさん。昨日よりもちょっとぎこちない。やっぱり私のせいだよね…


『それは仕方の無いことです』


 それはそうかもしれないけどさぁ。


「マリーナちゃん。俺もいい?」


「あ、いいですよ。どうぞ」


 ギルさんとフィーナさんにも渡し、私もサンドイッチを1つ食べる。

 うむ。上出来。


「ふかふかで美味しいですぅ…」


 そうでしょうとも。このパンにはこだわったからね。


「サーニャさん。今日中に見つかりそうですか?」


「えっと…難しいかと……ただでさえ貴重な薬草ですから」


 まぁそうだと思う。今いる場所は私からしたら少し居心地がいいので、おそらく魔素が濃いんだろう。それでも、魔素が濃いからって竜霊草があるとは限らない。まだまだかかりそうだな……


 休憩を終えて、また歩き出す。私も目を凝らして探すけど、赤い薬草はない。目立つ色だと思うんだけどなぁ…


「……っ!あれはっ!」


 サーニャさんがいきなり駆け出した。って速いな!?さすがハーフ…って、そんなこと考えてる場合じゃない!私から離れたことで、サーニャさんの周りに魔物が集まり始めちゃってる!


「サーニャさんっ!」


 私も急いでサーニャさんのもとへと駆け寄る。


「ちょっ!はやっ…!」


 後ろでなんか言ってるけど気にしない!


「ありました!」


 サーニャさんが手に持っていたのは、赤い薬草。ほんとに赤いな!


「サーニャさん、あまり離れないで下さい!」


「ご、ごめんなさい…つい」


 私が近づいたことで魔物は大方撤収したみたいだけど、それでもまだ残っているみたいだ。

 サーニャさんもそれに気づいたらしく、すこし顔が青ざめている。


「サーニャさん。どれくらい戦えます?」


 一応聞いておく。ハーフとはいえ、龍だし。


「えっと…すいません。あまり戦力には…」


 だと思ったよ!だって戦えるなら護衛依頼なんて出さないだろうからね。


「じゃあ動かないで下さいね」


 私はサーニャさんの周りを結界で覆う。これで大丈夫なはずだ。


「やっと追いついた…って、なんか魔物集まってない!?」


「ほんと……凄い数…」


 そうでしょうね。減ったとはいえ、30くらいの反応があるんだから。


「バケットさんとフィーナさんはサーニャさんを頼みます」


「えぇ!?こんな数だよ!?俺たちの助けを貰っても大丈夫だと思うよ?」


「大丈夫です。任せてください」


 私は背中から刀を抜いて、魔物が潜む森へと駆け出した。


「バケット。任せよう」


「あぁもう!気をつけてよ!?」


 バケットさん達なら大丈夫だろう。問題は私だ。


「乱戦ってやったことないんだけど…」


 魔法を使いたいんだけど、魔素が濃い場所で魔法を使うと、えげつない威力になるらしいので、使えない。刀だけでやるしかない。


「って、ワイバーンまでいる!?」


 空に見えたのは、ワイバーン三体。

 ワイバーンはドラゴンの亜種であるけど、魔法が使えないので私がいても襲ってくる。厄介以外の何物でもない!


「まずは1つ!」


 走りながらビックボアの首を切り落とす。

 すると横からフォレストラビットが飛んできたので、かわす。


「せい!」


 フォレストラビットの胸を突き刺し、魔石を破壊して倒す。


 ワォォン!!


 群れなすフォレストウルフ。10体。てか反応のほとんどこれだよね!?


「…っ!」


 連携が取れていて、かなり厄介。身を隠す場所はどこにでもあるので、どこから来るか分からない。


「でもっ!」


 連携するが故に10体全部ではなく、数体ずつしか出てこない。これならば一体ずつやればなんとかっ!


「えいっ!」


 正面から飛びかかってきたフォレストウルフの脳天を突き刺す。すると後ろからも襲いかかってきたので、刺さったまま刀を後ろへと振る。


 キャインっ!


 倒すことはできなくても、吹き飛ばすことはできたので問題ない。

 それが原因なのかフォレストウルフの動きが鈍くなり、連携が乱れたので、そこから確実に一体ずつ仕留めていった。


「ふぅ…」


 さすがにちょっと疲れた…けど、まだワイバーンが残ってる。


「……っ!血の匂いで…」


 辺りには血の匂いが充満してしまっているからか、魔物がまた集まりそうになっている。だけど、ワイバーンがこちらに来てくれた。

 とりあえず注意を引くため手頃な石をワイバーンへ投げつけ、これ以上こないように血の匂いを浄化する。


 グワァ!?


 ワイバーンに当たった!……って、あれ?




 ………えーっと。目がおかしくなったかな。ワイバーンの一体が落ちてきたんだけど?……しかも腹の部分に風穴を開けて。


 ズシンっと地響きを起こして、ワイバーンが地面に衝突した。

 近づいてみると、もう死んでいるっぽい?


「倒しちゃった?」


 あれだよね。この風穴ってわたしが投げた石だよね…?


『そうですよ?』


 ……私の力が人外だってこと忘れてたよ。はぁ…。


「…まぁ、他のワイバーンはおかげでどっかいったみたいだし、いっか」


 とりあえず軽く索敵して魔物がいないことを確認し、フォレストウルフやラビット、ビックボア、ワイバーンを収納して、私はサーニャさんのもとへと戻った。







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