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護衛依頼【2】

 馬車に揺られることしばらく。ようやっと目的地である魔の森に到着した。


「これからどうするんです?」


「ひとまず日が落ちるまでは森で薬草などを探したいと思います」


 上を見ると太陽は真上。つまり今はお昼。


「お昼食べます?」


「そうですね…はい。食べておきましょう」


 そうなれば私が作りだめしていた料理が役に立つね。

 私は無限収納庫(インベントリ)からスープが入った寸胴鍋を取り出す。


「え!?そ、それなんですか?」


「えっと、スープです。あ、なにか苦手なものとかあります?」


「い、いえ、ないですけど…」


 なら良かった。私が出したのはポトフ。作りたての時に収納したから、まだ熱々だ。

 野外なので木の皿にスープを入れる。


「どうぞ」


「あ、ありがとうございます」


 恐る恐るサーニャさんが木皿を受け取る。もちろんスプーンも渡す。

 ……そして、複数の視線が集まっていることに気づいた。特に…リナさん。


「……食べます?」


「いいの!?」


 言葉とは裏腹にもう既に自前の木皿を差し出している。

 私は苦笑しつつ、リナさんの木皿にポトフを入れる。


「おれも、いいか?」


「いいですよー。御者さんもどうです?」


 御者台でこちらを羨ましそうに見ながら干し肉を齧っていた御者さんに尋ねる。


「いいん…ですか?」


「もちろんです」


 というか食べてくれないと視線が気まずい。

 みんなに配り、私もようやっと食べれる…


「この料理はなんですか!?」


 …食べれなかった。鬼気迫る勢いでサーニャさんが聞いてきたから。


「ポトフという料理です。レシピ登録はしてあるので、もし良かったら買ってみてください」


「ポトフ…とても美味しいです。絶対買います!」


 それは嬉しい。

 空になっていたサーニャさんの木皿にポトフのお代わりをよそう。

 ……そして他の人の分も。私はいつ食べれるの?





「はぁー、美味しかったぁー」


「ん、美味しかった」


「ほんとに美味しかったわ。ありがとね、マリーナちゃん」


「…どういたしまして」


 私は結局1杯しか食べれなかった。まぁべつにそれで満足なんだけどね。


 私が後片付けをしていると、リナさんが近づいてきた。


「ねぇ、マリーナちゃん?」


「なんですか?」


「その…馬車の中でギルドカードの残金みたでしょ?」


「………」


「ほんとは150000なんかより…」


「言わないでください。私も信じられないので…」


「そう、よね…レシピは売れるとは思ってたけど、まさか、ね…」


 うん、そうだよね。そんなにレシピは高く設定してないのにね…

 ほんとは……桁が4つくらい違ってたのよ。もちろん…多い方にね。

 使いきれるのかな………。



「ではお願いしますね」


「はい。任せてください」


 後片付けが終わり、サーニャさんの目的である薬草研究へ。


「…不思議ね。魔物の反応がない」


 リナさんが呟く。おそらく索敵スキルを使ったんだろうね。

 私も使ってみる。……うん、明らかに避けられてる。

 ちょっといい気はしないんだけど、今回は良いね。まぁ警戒は怠らないけど。


 今回はギルさん、リナさんが私の後ろにいる。そして御者さんと馬車はバケットさんとフィーナさんが守っている。


「それで、何の薬草を見つけるんです?」


「えっと…竜霊草と呼ばれる薬草です」


 …うん、説明!


『竜霊草は魔素が濃い場所に生える希少な薬草です。その分それを用いて作られたポーションは高い効果を発揮します』


 なるほど。


「ここに生えてるんですか?」


「分かりません。でも、可能性はあります」


 つまり手がかりはなしか。


「何に使うんです?」


「それは…」


 サーニャさんが言いにくそうにする。


「あ、別に言いたくないならいいですよ」


「…はい。すいません」


 うーん、言いたくない使い方をするって事なのかな?まぁそれなら聞かない方がいいよね。

 ハク、その竜霊草の特徴は?


『特徴は葉が赤いこと。それと、真っ白な花をつけることです』


 葉が赤くて花が真っ白……随分目立つ色合いだね。


「うーん、ないですね…」


 周りの薬草を採取しながら、サーニャさんが呟く。目立つ色合いとはいえ、希少な薬草なんだから、そう簡単には見つからないよね。

 私もちょっとだけ採取する。もちろん索敵はしてるよ?

 ……むっちゃ避けられてるけど。


「……あ」


 前言撤回。1匹近づいてくる。反応は……ビックボア。前に倒したことがある魔物だね。

 距離はまだあるから、とりあえず刀の柄に手をかける。

 ちなみに刀の鞘は特別仕様で、微力の魔力を流せば開くようになっている。背中に担いでたら抜けないからね。


「どうしました?」


「魔物です」


 リナさんは気づいていたようだけど、敢えて言わなかったようだ。

 とりあえず周りを索敵し、他に敵が居ないことを確認する。

 うん、大丈夫そうだね。


「……きた」


「ひっ!」


 木々の隙間からビックボアが現れる。

 私はサーニャさんを背にして守るように立つ。


「マ、マリーナさん…」


 不安そうな声が聞こえる。

 対してリナさんとギルさんはあまり心配していない。それはそれでちょっと傷付くんだけど……


「大丈夫ですよ」


 私は刀を抜き、正面に構えて、息を吐く。


 ブモォォォォ!!


 ビックボアが一気に突っ込んでくる。

 私は足に力を入れ、ビックボアへと突っ込む。

 そしてすれ違いざまに下から首を切り上げる。


 ブモ…


 さすがの切れ味だね。まさに一刀両断。


「凄い……」


「全く…その幼さで恐ろしいぜ」


 なんか褒められてる気がしないのは気のせいかな?

 とりあえず刀を軽く振って血を払う。そして鞘へと仕舞う。もう一度魔力を流せば閉まる。


「大丈夫でしたか?」


「え、えぇ…ほんとに見習いですか?」


「見習い……という設定です」


 サーニャさんは私を下に見たりとかしないから、言っていいよね。


「設定…?」


「はい。実は私が今回護衛依頼を受けているんです。ギルさん達はその付き添いのようなものです」


 一応ギルさん達も依頼を受けていることにはなっているけどね。護衛依頼ではなく、監督官として付き添うという依頼だけど。


「そうだったんですね……それならマリーナさんの実力も納得できま…す?」


 なんでそこで疑問形なんだろう。


「今日はビックボアで晩御飯を作りましょうか?」


「いいんですか?」


「はい。任せてください」


 解体は無限収納庫(インベントリ)がしてくれるからね。


「今日はもう終わりましょう」


 辺りはもう薄暗くなり始めていたので、今日はここまでということに。

 なに作ろうかな?





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