護衛依頼【1】
依頼までの間、私は色々と簡単な依頼をこなしたりしながら過ごした。
それと、頼んでいた武器…刀が完成したって報告きて、もらったんだけど……あれだ。あの、石川とかが持ってる銃の弾とか切っちゃう刀。それと同じくらいの性能があった。
試し斬りしてみたけど、今のところ切れなかったものがない。
こんにゃくは切れるのかなー…こっちにこんにゃく芋あるのかなぁー…とか思って現実逃避しかけたよ、まじで。
刀身は銀色。そして刃紋が金色。とっても綺麗で、長さは私が背中に担げるくらい。
……うん、腰に差せないんだよ。ぐすん。
とりあえず外に出かけるときは背中に担ぐようにした。
いちいち無限収納庫から出してたら間に合わないからね。
ただ…あまり力を入れて振るわないようハクから釘を刺された。
『マリーナ様が本気で振るえば、巻き起こった風であたりが吹き飛びます』
と言われたのだ。普通ならそんな事ないじゃんとか思うだろうけど……実際しちゃったんだから素直に従うよ。ほんと周りに人がいなくて良かった……
あ、あと、システムキッチンはまた新しく作ってくれた。それと…オーブンと冷蔵庫も。
いやなんで知ってるの!?ストーカーですか!?
…とまぁ色々あって……とうとう護衛依頼の日になった。
「今日はよろしくお願いします」
ぺこりとギルさん達に頭を下げたのは今回の護衛対象。
緑色の髪に同じく緑色の瞳。首には同じ色のスカーフを巻いていて……なんと耳が長かった。
「まさかエルフだとはね…」
そうです、エルフです。初めて見たよ。
それで……言っちゃなんだけど、身長が低い。私と変わらない…いや、少し高いかな?でも見た目で年齢が分からないのがエルフだ。
「あなたは?」
大の大人に混じっていた私が気になったのか、近づいて話しかけてきた。
「マリーナといいます。ギルさん達の見習い…と思っていただければ」
そう。私は表向き見習いという立場でここにいる。なんでかって言うと、私みたいな幼女?が護衛なんてふざけてると思われかねないから。
あ、ちなみにプレナは今いない。聖域で特訓してる。
《私も主様の役に立ちたいの!》
と言ってきたからだ。私としては別にいいとは思うんだけど…プレナの決意は固く、瑠璃に特訓を任せてきた。頑張ってね、プレナ。
「見習い…?あなたが?」
なんか信じられないみたいな顔された。
あれか。こんな小さい子が冒険者やってるってことにかな。
……小さい子。うん、もう諦めた。今の私は子供だ。
「そうですよ?なにか?」
「あ…いえ」
結局なんだったんだろう?
「よし。じゃあ馬車に乗っていくか」
馬車の手配は冒険者ギルド…まぁカリナさんがやってくれた。すっかり忘れてたので有難い。
それと今回、ギルさん達は来るけど、基本私が護衛するので、危険なことがない限り手出しはしない、ということになっている。
「あ、まだ名乗ってませんでしたね。私は"サーニャ"といいます」
馬車に乗り込んだ後、サーニャさんがそう言ってまた頭を下げた。
「じゃあ出発しますね」
御者台から声が聞こえる。馬車を運転する人も込みで手配してくれていた。今回は泊まり込みということなので、馬車は寝床として使われる。なので御者さんの護衛もしなくてはならない。
大変そうだけど、頑張ろう!
「あの…マリーナさんはどうして冒険者に?」
馬車で暇になったからなのか、対面に座る私に話題を振ってきた。
なった理由かぁ……
「そう、ですね…1番はお金です」
「お金、ですか?」
「はい。実は私、身寄りがなくて…」
「あ…す、すいませんでした」
申し訳なさそうな顔をする。
「気にしないで下さい。現に私も気にしていません」
「そうですか…それでお金を?」
「はい。まぁお金は一瞬で稼げてしまったんですけど」
私が苦笑混じりにそう言うと、サーニャさんは目を丸くした。
「そうなんですか!?」
そこまで驚くことだろうか?
「なにかおかしいですか?」
「あ、別にマリーナさんの実力を疑っている訳では無いですよ!?ただ、その…小さいのに凄いなぁと」
…サーニャさん、それ。盛大なブーメランですよ?あなたも十分小さいですからね?
……実年齢は上かもだけど。
「その…どれくらい?」
「ええっと…」
私はギルドカードに魔力を流して残高を確認し……目を逸らした。
「え、どうしたんです?」
「……だいたい、150000リシアです」
「150000……って、金貨150枚!?」
またしても驚愕するサーニャさん。まぁこれは理解できるけど。
「そ、そんなに…ほんとに見習いですか?」
「あぁ。これは商業ギルドで薬草が高く売れたからですよ」
「薬草…?」
言っていいかな?いいよね。
「ジリル草です」
「ジリル草?確かに高級品だとは思うけど…」
「えっと…100本売ったんです」
また目を丸くし、固まる。
「えぇーー!?」
そして馬車に響き渡る叫び声。私は人より耳がいいので、思わず耳を塞いだ。
「あ、すいません…でも100本って…」
うん、普通は信じられない量らしいからね。
「私、実は森に住んでて、そこでためてたんです」
そう言うとジリル草についてはなんとか納得したようだけど、今度は私が森に住んでいたことについて驚かれた。
「マリーナさんって一体…」
「ただの、女の子ですよ」
「ただの……それにしては……」
最後の言葉は、ボソボソと言っていたのと馬車の音のせいで、私でも聞き取ることが出来なかった。
まぁ気にしなくていいよね!……多分。