聖域の小屋……だったもの
寝ていると、帰ってきたリナさん達から心配された。
疲れた理由を話せないから、説明するのが大変だったよ…
次の日すっかり元気になったのでプレナを構い倒して、武器はまだ出来ていないようなので、簡単な依頼を受けることにした。
「うーん、めぼしい依頼がないなぁ」
ほとんどの依頼は無くなっていた。あるのは場所が不明の依頼ばかり。
「聖域でもいこっか」
帰ってきたばっかりだけど。
《うん。いいよ》
プレナも良さそうなので聖域へ。
身体強化をせずに霧の森へと向かう。
「ハク、案内できる?」
『はい』
道がわからなかったので、道案内をハクに頼んだ。私だったら絶対迷うよ……
《着いた!》
聖域は前と全然変わらなかった。まぁ当然と言えば当然なんだけど。
やっぱり聖域は落ち着く。深呼吸すると余分なものが洗い流される感じがする。
〈おや、来ていたのですか〉
どこからともなく瑠璃が現れる。ちょっとビックリするからやめて欲しい…
「うん。といってもそんなに長い間はいないけど」
〈そうですか。おお、そうだ。こちらへ来て下され〉
そう言われたので瑠璃の後をついて行く。なんだろ?
しばらく歩くと、私が寝たりしていた小屋に着いた……んだけど…
「……何これ」
目の前にあったのは……もはや小屋ではなかった。でっかい屋敷。
〈森のものが作ったのです。お気に召しましたかな?〉
すると元小屋のほうから、沢山の魔物たちがでてきた。
そして私のほうへと走ってくる。
〈みな、褒めて欲しいのです〉
「もしかして…この子達が作ったの?」
瑠璃が頷く。褒めて欲しいって……
「えっと…ありがとね」
とりあえず頭を撫でる。その中にはミーソの実を持ってきてくれたクリスタルなうさぎさんもいた。
「これは私が使っていいの?」
〈無論です〉
せっかく作ってくれたのだから、使わない訳にはいかないね。
みんなにお礼をもう一度言って、中へと入る。
二階建てになっていて、とても広くてキレイな木造。
「凄い…」
よく見ると細かい装飾まで施されている。ほんとに綺麗。
「あ、キッチン?」
キッチンはあったけど、コンロは竈。まぁ仕方ない。
とりあえずスペースがあったので、システムキッチンを出しておく。ここに置きっぱにしようかな?人前では使えないから。
「よし。じゃあ色々と作っちゃおう!」
この際なので料理を作り置き。
ついでに天然酵母を作っておく。無限収納庫は時間停止だから、発酵させるには外に出しておかないといけない。それが今まで作ってなかった理由だったりする。
……忘れてた訳じゃないよ。
とりあえず創っていた瓶を煮沸消毒。それにポアの実を入れて、水を入れる。本当は冷やしたほうがいいんだけど、冷蔵庫はないので常温で保存する。
「となるとオーブンとか冷蔵庫とか欲しいなぁ…」
後で商業ギルドで探してみようかな。
《主様、何作るの?》
「とりあえずスープ数種類と……ご飯を炊こうかな」
せっかくの竈があるので、それを使う。
土鍋にお米を入れて研ぎ、水を吸わせておく。
「もうひとつ創ろうかな」
外に出て、土から土鍋を創る。
戻ってそっちにもお米を入れる。
「スープは……」
ポトフやトマトスープ。コーンスープなどなどを作っていく。
「そろそろかな」
竈に火を入れて、土鍋を乗せる。はじめチョロチョロ中パッパっと。
「手軽に食べるならサンドイッチだけど、食パンがない…」
そして食パンの型もない。どうしようかな……
『錬金術で創ってみては?』
確かに鉄鉱石は余ってる。武器を作るには少ないと思っていたもの。確かに足りるかも。
料理を作っている間にやる。イメージは曖昧なんだけど……
「でき…た?」
ちょっと歪な形の型ができた。むぅ。やっぱりイメージが曖昧だったからかなぁ?
「ま、いっか」
使えたらそれでいいよね。
「あ、そうだ。瑠璃、ここって家具は?」
ずっとそばに居た瑠璃に話しかける。
〈マリーナ様の分なら用意してあります〉
「えっと…ベットとかテーブルとか?」
〈はい、そうです〉
なら大丈夫かな。ここに人を呼ぶことなんてないだろうし。
「よし。でーきた」
スープは完成。寸胴鍋で作っていたから、それごと無限収納庫に収納する。
「ご飯は……蒸らすかな」
《主様ー。食べたい!》
「ふふっ。いいよ」
器に出してあげる。スプーンを渡してあげるけど、ちょっとよたつく。大きいかな?
「この際だから作るか」
《なにをー?》
「うん?プレナ用のスプーンとかだよ」
あと私が使う箸とか。
〈木で作るのですか?〉
「そうだよ?」
〈でしたら工房を使ってください〉
「え……工房?」
あるの?ここに。
〈作りましたので〉
「あ、そう…じゃあ案内して。プレナは?」
《私もいく!》
ぴょんっと私の肩に乗ってくる。身軽だねぇ。
プレナの食べかけは収納。
瑠璃に案内されたのは1階の小部屋。工房といっても何も無い。テーブルと椅子があるくらい。
「こんなとこまで作ったの?」
〈はい。あと鍛冶場もありますよ〉
何故に!?いや確かに武器作りたいって思ってたから有難いけど。
「えっと…」
手頃な木をナイフで削る。うん、不格好!
『……工具なら無限収納庫にありますよ』
先に言って!いやそれよりいつ入ってたのよ。
『結構前に』
結構前って……まぁ入れたのは誰なのか分かるけどさ。
見てみると、ノミとかヤスリとか木工用具がいっぱい入ってた。これは工具フォルダにっと。
………私が前に作った工具類は永遠に無限収納庫の肥やしだな。明らかに出来が違う。
とりあえず箸を作る。細めの木をヤスリで削る。それだけで形になる。
スプーンは窪みが難しかったけど、風魔法で荒く抉り、そこから削ることで上手くいった。中々上出来。
「これでどう?」
《ちょうどいいよ!》
プレナが嬉しそうにする。良かった良かった。ついでに瑠璃の分も作る。
〈いいのですか?〉
「いいのいいの。じゃあみんなで食べよっか」
キッチンへと戻り、ご飯でおにぎりを作る。3分の2を収納して、残りはみんなで食べる。うん、水加減はいい感じ。スープも食べて、満腹。
《美味しかった!》
〈満足です〉
「ありがとう」
プレナも瑠璃も美味しかったようだ。
「キッチンは置いて行っていい?」
〈構いませぬ〉
瑠璃から許可を貰ってシステムキッチンは置いていくことにした。転移魔法は使えるから何時でもこれる…はず。
一応アニスお姉ちゃんにもう一個作ってもらおうかな?
「じゃあね」
〈また来て下され〉
聖域の魔物達に見送られ、私は街へと戻った。
そしてすっかりと忘れていたお金をカリナさんから受け取った。ホント忘れててごめんなさい……