神様は呼び名が欲しい
イシュワーム様に武器を作ってもらえることになったけど、そんなにすぐにはできないらしい。
まぁ武器に誇りを持ってるって言ってたし、生半可な武器を作りたくないんだろうね。
「でも、私も作ってみたい…」
「マリーナさん、武器を作りたいのですか?」
しまった。グランパパに聞かれてた。
「…はい。ちょっと興味があります」
「そうなんですか。じゃあイシュワームに頼んでみましょうか?」
「いや、今は忙しいでしょうし」
「そうねぇ。マリーナちゃんの力に耐えうる武器を作るのは、イシュワームでもかなり大変でしょうね」
「そうなんですか?」
なんかものすごくさらっと作ってやるって言われたけど。
「多分カッコつけたかったんじゃない?」
アニスお姉ちゃんは面白そうに微笑んだ。カッコつけって……
「それより、エアリーズは?」
「あと少しで来ますよ」
エアリーズ様はどんな方なんだろう。石像から想像するに、とてつもなく美人ではあるだろうけど。
……できるなら、アニスお姉ちゃんとは正反対の静かな性格だといいな。
「マリーナちゃん、今なんか変なこと考えなかった?」
「べ、別に考えてませんっ!」
鋭い!
「ならいいけど…じゃああれ、作って!」
「あれ……あぁ。餃子ですね」
以前も同じ感じだったので、予想はできる。
とりあえず無限収納庫からシステムキッチンを取り出す。
ちゃっちゃと餃子を作る。皮は余ってるから、早いものだ。
「出来ましたー」
振り向くと、もう既にテーブルなどはセットされていた。抜かりない…
「そういえば、私がこの世界で食べたらどうなるんです?」
「味としては認識しますが、栄養とはなりませんね。本体ごとこちらに来れば別ですけど」
そうなんだ。まぁ精神だけっていうのは知ってたし、予想はしてたんだけどね。
「やっぱりマリーナちゃんの料理は美味しいわぁ〜…」
「そう言って貰えると嬉しいです。でも、今まで異世界の人がこちらに来たことはあるんですよね。なら、こんな料理とかも広まったりしないんですか?」
「それねぇ。私にもよく分からないのよ」
分からないとは?
「何故か召喚される人はほとんど料理できないのよねぇ。それにもしある程度知っていたとしても、レシピ登録する暇もないみたいだからねぇ」
な、なるほど……謎が解けたような解けないような。
「……じゃあ私がこぼれ落ちてしまった理由と関係あるんでしょうか?」
「それはないとおもうわ。実際こんな料理を独占している国もあるから」
独占しているので、レシピ登録すらしていないらしい。
レシピ登録をしてしまうと、否応なしに広まってしまうからね。まぁレシピ登録は広めることが目的なんだけど。
「独占されっぱなしも嫌だから、じゃんじゃん登録していいわよ。私の担当だから」
あ、やっぱりそうなんだ。
「お。エアリーズが来ますよ」
グランパパがそう言うと、風が吹き、いつの間にか人が立っていた。登場の仕方が個性豊かだなぁ…
翡翠色の髪にエメラルドのような透き通った瞳。綺麗…
「ふぅ。やっと終わったわ」
「お疲れ様です」
「ほんと疲れたわ…あら、その子がマリーナちゃん?」
私に目をつけた。とりあえず椅子から立ち上がって挨拶する。
「はい。初めまして、エアリーズ様」
一応礼儀は通す。神様だから。
「うーん。堅いわね。もっと別の呼び方ない?」
「そう言われても…」
私は助けを求めてグランパパとアニスお姉ちゃんを見る。
でも、首を横に振る。どうやら別の呼び方をするしかないようだ。
「うーん……」
悩む。そもそもどういった性格なのかが分からない。
「……エアねぇ?」
何となくお姉さんやお姉ちゃんではないし。それしか思いつかなかった。
「ふふっ。いいわね。それでいいわ」
どうやらお気に召したらしい。
「とすると、イシュワームだけないのは可哀想よね?」
「えぇっと…本人に聞いたほうがいいのでは…」
「うーん、一理あるわね。まぁどんな呼び方でも受け入れそうだけど」
どうでしょうかね、それ。
「おっと。もうそろそろ限界ですね。これ以上は負担が大きすぎる」
私も感じていた。重い。体がじゃない。思考が。疲れてきている。
「もうちょっと話したかったわ」
不服そうな表情をするエアねぇ。確かにほとんど話してないしね。
「また来ますから」
今度は武器を受け取る時かな?でも、無限収納庫に直接送り込むことも出来るような…
「武器は取りに来たほうがいいですか?」
「そっちの方がイシュワームも喜ぶわ。出来たら手紙を送るわ」
「お願いします。それじゃあ」
その言葉を最後に、意識が引き戻される感覚がする。
「ふぅ……」
目を開けると、教会に戻ってきていた。まだ日は高い。けど、体がしんどい。今まで以上だ。
「しんどい……帰ろう」
このまま宿で寝よう。ギルさん達はどうしているだろうか。寝てる?それともめぼしい依頼でも探しに行ったかな?
「うぅ…思ったよりキツい」
身体中に重りがついているように体が重い。
やっとの思いで宿にたどり着く。
「おや、おかえり。早かったね」
ダリオさんの奥さんが出迎えてくれた。
「色々ありまして…ギルさん達は?」
「ギル達ならさっき出でったよ。用事でもあったのかい?」
どうやら行き違いになったらしい。
「いえ。ちょっと聞いただけです」
「そうかい…顔色悪いね」
近づいて私の顔を覗き込む。
「色々とあって疲れたんで、寝ます」
「それがいい。なんなら運んでやろうか?」
あまり迷惑は掛けたくないが、今回はお言葉に甘えることにした。
「ゆっくり休みな」
「はい。ありがとうございました」
ゆっくりと扉が閉まる。それと同時にプレナを呼び出した。
《主様ァ!!》
「ごめんごめん」
実を言うと、すっかり忘れていたのだ。だが、今の私に構う余力はない。
「ごめん…起きたら、話そう…」
《あ、え!?主様大丈夫!?》
「大丈夫…寝れば良くなる」
多分ね。
《…分かった。ゆっくり休んで。私が守るから》
「ふふっ。ありがと」
プレナの言葉でほっとしたのか、すぐに眠りについた。